流体機械設計による近未来に役立つエンジニアリング

流体機械設計をベースとして近未来に役立つエンジニアリングを行う株式会社ターボブレードの社長 林 正基の毎日の活動

宇宙船工学:液体ロケットエンジンにおける燃焼過程

2021年11月23日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、液体ロケットエンジンにおける燃焼過程を説明しています。

・燃焼室内へ液状で噴射された推進剤は微粒化(霧化)して混合する。

・微粒化には衝突型、同軸型などの噴射方式が用いられる。

・燃焼過程は液粒蒸発過程で火炎が酸化剤蒸気と燃料蒸気の拡散燃焼(乱 

 流及び層流)を主体とする。

・部分的には予混合燃焼=液粒の燃焼の形態も存在する。

・超臨界圧混合燃焼は燃焼室圧力が臨界圧力以上にて考慮される。

・再循環と乱流拡散による上流側への熱と物質伝達が存在する。

右下図は、不均質燃焼過程を示している。


宇宙船工学:ロケットエンジン燃焼ガスの平衡組成と断熱火炎温度

2021年11月23日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、ロケットエンジン燃焼ガスの平衡組成と断熱火炎温度についてまとめています。

水素と酸素の燃焼反応での平衡組成と断熱火炎温度の計算手法:化学種はH2,O2,OH,H2O,O,O2として燃焼ガスに至る反応方程式は

   H2 + 反応方程式係数m*O2 = n1*H2 + n2*H + n3*OH + n4*H2oO + n5*O + n6*O2 となり、量論混合気に対しては m=1/2 となる。

化学種分圧をPi, 燃焼ガス1kgに含まれる水素と酸素のkg原子数をnH,nOとすると 水素kg原子数nH = Cp * (2*PH2 + PH + POH + 2*PH2O)、

酸素kg原子数nO = Cp * (2*POH + PH2O + PO + 2*PO2)となり、水素に対する酸素のkg原子数の比は、未燃混合気組成m = nO/nHである。

また m = (POH+PH2O+PO+2*PO2)/(2*PH2+PH+POH+2*PH2O)、全圧 P = PH2+PH+POH+2*PH2O), 化学反応平衡定数を Kp1(H2+1/2O2=H2O),

Kp2(1/2H2+OH=H2O), Kp3(1/2H2=H),Kp4(1/2O2=O)となり、Kp1=PH2O/(PH2*√PO2), Kp2=PH2O/(PH2*√POH), Kp3=PH/√PH2,Kp4=PO/√PO2、

Kp1~Kp4は温度だけの関数なので、温度が与えられるとKp1~Kp4、mimと全圧Pからなる6つの方程式から化学種の分圧を決められる。

未燃混合気の組成とその初期温度から燃焼ガスの断熱火炎温度Tafとそれに対応する平衡組成を計算する手順は次のようになる。

(1)未燃混合気のエンタルピーhu(kcal/kg)を計算する。Huには生成エンタルピーも含める。

(2)燃焼ガス温度Tbを仮定して、上記の未燃混合気組成、全圧P、化学種分の化学反応平衡定数から燃焼ガスの平衡組成を計算する。

(3)仮定したガス温度及びその平衡組成に対応する燃焼ガスのエンタルピーhb(kcal/kg)を計算する。hbには生成エンタルピーも含まれる。

(4)一般にhuはhbと等しくないが、Tbの値を修正してhu=hbとなるまで以上の手続きを繰り返しhu=hbの時のTbが断熱火炎温度であり平衡組成を計算する。

左図はロケット燃料RP-1と酸素の燃焼ガスの断熱火炎温度及び組成を示した図となる。

燃焼圧力は6.89MPa、燃焼ガスの主成分は、H2O, CO2, H2, CO となっている。

ガス平衡が化学平衡式 CO + H2O = CO2 + H2 として成り立っている.。


宇宙船工学:ロケットエンジンの液体酸素ターボポンプ両吸込みインペラの設計

2021年11月21日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、ロケットエンジンの液体酸素ターボポンプ両吸込みインペラの設計を3次元設計で作成しました。

インペラブレードの入口縁は3次元相対流入角度に合わせて3次元化しています。

しかし、ブレード途中から出口にかけては2次元翼形状となってい金属3Dプリンターで作る場合も最終の翼面仕上げ状態が良くなる利点を持ちます。

次に3次元設計するのは、液体酸素ターボポンプインペラ吸込み部のインデューサー翼を行います。


宇宙船工学:ロケットエンジンの推力特性  推力係数 、最適・不足・超過膨張 、 特性排気速度 、燃焼室所要容積

2021年11月20日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、ロケットエンジンの推力特性 を説明しています。

説明項目は、推力係数 、最適・不足・超過膨張 、 特性排気速度  、燃焼室所要容積となります。

エンジン推力F, 質量流量fm, 排気速度ue, 排気圧力Pe, 外界圧力Pa, ノズル出口面積Ae とすると F=fm*ue+(Pa-Pe)*Ae となり, ガス比熱比をkとすれば

 F=ノズルスロート面積At*よどみ点圧力P0*√(((2*k^2)/(k-1))*(2/(k+1))^((k+1)/(k-1))*(1-(Pe/P0)^((k-1)/k))+(Pe-Pa)*Ae であり、

 F=推力係数Cf*At*P0とすれば、

 推力係数Cf=F/(At*P0)=√(((2*k^2)/(k-1))*(2/(k+1))^((k+1)/(k-1))*(1-(Pe/P0)^((k-1)/k))+(Pe/P0 – Pa/P0)*(Ae/At) と表される。

最適膨張ではPe=Paの場合であり推力も最大値となる。最適膨張での推力係数Cfは最適推力係数または特性推力係数と呼ばれCfoで表わされ、その式は、Pa=Peなので

Cfo=√(((2*k^2)/(k-1))*(2/(k+1))^((k+1)/(k-1))*(1-(Pe/P0)^((k-1)/k))であり、外界圧力Paが0つまり完全真空の時に究極的最大値推力係数Cfomaxとなり

Cfomax=√(((2*k^2)/(k-1))*(2/(k+1))^((k+1)/(k-1)))で計算できる。

不足膨張ではPeがPaよりも大きい場合でありノズル出口下流で膨張が起こり、ノズル内で更に膨張させることが出来るので不足膨張と呼ばれる。

超過膨張の場合は出口圧力Peが外気圧力Paよりも低くなっていてノズル出口斜め衝撃波を発生したり更にPeが低くなるとノズル内面から流れが剥離してノズル内部で衝撃波が発生する。

特性排気速度Csは,

 Cs=有効排気速度C/推力係数Cf=比推力Isp*標準重力加速度go/Cf=ノズルスロート面積At*よどみ点圧力P0/質量流量fm=1/質量流量係数Cm

 =√(((一般ガス定数gR*よどみ点温度T0)/(k*ガス分子量molm))*((k+1)/2)^((k+1)/(K-1))となり、

 エンジン推力F=推力係数Cf*特性排気速度Cs*fm となる。

燃焼室所要容積は、ガス滞留時間τst、燃焼室内ガス平均密度ρcとして燃焼室容積をVcとすれば、Vc=質量流量fm*τst/ρc と計算出来て完全燃焼をする容積が必要である。

推進薬全滞留時間τstto=噴射液体状態滞留時間τi + τst となる。燃焼室特性長をLsとすれば、Ls=Vc/At=fm*τst/(ρc/At)となり, P0/ρc=ガス定数R*T0から

Ls=τst*√(k*R*T0*(2/(k+1))^((k+1)/(k-1))=τst*Cs*k*(2/(k+1))^((k+1)/(k-1))となり、Ls は τst に比例する。それにより燃焼室特性長Lsは次の特徴を持つ。大きいLsは燃焼室容積を質量を増大させる。大きいLsは冷却必要面積を増大させる。大きいLsは壁面の摩擦損失を増大させる。実際の所要のCs確保ではLsを小さく取る。


宇宙船工学:ロケットエンジン燃焼でのデトネーション波

2021年11月18日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジンの燃焼における、デトネーション波のまとめ説明です。

デトネーション波領域、燃焼波領域における流速、圧力、密度、温度、マッハ数を式により説明しています。

可燃性混合気中デトネーション波は燃焼反応衝撃波であり未燃混合気中音速以上の伝播速度となる。

デトネーション波が混合気中を伝播可能なデトネーション限界と呼ばれる濃度範囲が存在する。

燃焼波乱れ面加速圧縮波が燃焼波前面で重なり衝撃波が形成されて自己着火性の衝撃波となる。

火炎面の発生からデトネーションに遷移する距離をデトネーション誘導距離というが、それは燃焼速度

と発熱量が大きく、圧力が高く、管径が小さく、乱れを助長する条件があるほどに距離が短くなる。

デトネーション波は衝撃波から反応帯にかけて3次元構造で発生して螺旋スピンデトネーションを持つ。

1次元ガス力学による解析:火炎面前速度u1,圧力p1,密度ρ1  火炎面後速度u2,圧力p2,密度ρ2 として

 ρ1*u1=ρ2*u2, p1+ρ1*u1^2= p2+ρ2*u2^2,そしてエンタルピーをh1,h2、ガス単位質量発熱量qとすると

  h1 + u1^2/2 + q = h2 +  u2^2/2 となり、比熱一定完全ガスとすると Hugoniot の式 は次となる。

                発熱量q = 比熱比k/(k-1) * ((p2/ρ2)-(p1/ρ1))-(1/2) * (p2-p1)*((1/ρ1)+(1/ρ2))

この式は、混合気状態(p1,ρ1)と q に対して火炎面前後の燃焼ガス状態(p2,ρ2)を1本の曲線上に示す。

更に式を音速の式として、マッハ数 M1 = u1/√(k*p1/ρ1) を用いて書き直すと次の式となる。

                比熱比k * M1^2 = ((p2/p1)-1) / (1-(1/ρ2)/(1/ρ1))

式曲線上のABでは火炎面の伝播速度は、超音速伝播速度、曲線CDでは亜音速伝播速度となる。

デトネーション波では、p2>p1, u2<u1, ρ2>ρ1, T2>T1  ここでT1とT2は火炎面前後の温度 となり、

一方、燃焼波では、p2<p1, u2>u1, ρ2<ρ1, T2>T1 の火炎面前後状態となる。

図上で、未燃混合気状態Oとすると、C から J ではマッハ数が1となり、A から J および C から K では、

マッハ数< 1 となり、B から J 及び D から K ではマッハ数>1 となる。

実際に観測される状態は、J 近傍のデトネーション波と C に近い燃焼波だけとなる。


宇宙船工学:液体ロケットエンジン用ターボポンプ断面計画図

2021年11月16日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、液体ロケットエンジン用ターボポンプの断面計画図を作りました。

この横置き1軸式ターボポンプの主要な構成は、

・両吸込み燃料ターボポンプ

・両吸込み液体酸素ターボポンプ

・ポンプ駆動用単段衝動ガスタービン

以上の構成の横置き1軸式ターボポンプとしての構造詳細断面図にて内部構造を説明しています。

主軸両端部にある一般玉軸受(ボールベアリング)の配置により、液体酸素ポンプ用の特殊軸受を無くすことが出来ています。


宇宙船工学:液体ロケットエンジンの制御

2021年11月15日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として液体ロケットエンジンの制御についてまとめを行い説明しています。

開ループ制御:制御対象の量とそれを支配する要因との関係を予め知り較正によって要因を変化させて量を制御する制御系。

閉ループ制御:プロセス量を目標値と一致させるために量を測定して比較し目標値に応じた訂正動作を行うフィードバック制御系。

目標値が一定の場合は定置制御、目標値が変化する場合は追値制御となりサーボ機構により実施される。下図を参照。

制御要素はサーボ機構に相当するものであり、その制御要素型には、

ON, OFF 系の制御、 比例型の制御(動作信号に比例した制御)、微分型の制御(動作信号の時間変化に比例した制御)、積分型の制御(動作信号の時間積分値に対応した制御)がある。

閉ループ制御での制御量が目標値からずれて訂正動作が行き過ぎた場合に制御量振幅の振動状態のハンチングが起きる。

図の閉ループ制御系の動特性は、次の方程式で示される。

  R = A*V,   Z= R – b,  Y = B * Z,  X = C * Y,  b = D * X

ロケットエンジン制御要素に当てはめると、制御要素Bがガス発生器流量制御バルブ、 操作量Yがガス発生器のガス発生率、制御対象Cがターボポンプ、制御量Xが燃焼室圧力 となる。

推進剤の送出と停止はバルブの開閉により行い、精密な流量及び混合比の規定は流路のオリフィスにより行われる。


ロケットエンジン計画図 ターボポンプ断面計画図とノズル配置計画

2021年11月15日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジン計画図としてターボポンプの断面計画図とノズル4個の配置計画を行っています。

ターボポンプ1台に噴射ノズルは4個、そして姿勢制御ノズルが4個の構成のロケットエンジンです。

噴射ノズル1台の推進力は2トンなので、4個のノズルにて2トン×4台ノズル=全推力8トンとなります。

噴射ノズル4個は動かずに固定方式となっています。

バーニヤノズル4個による姿勢制御ではノズルが小型でありサーボ制御し易い設計です。

ターボポンプ主軸軸受としてタービン側には、軸受自由側の一般ボールベアリングを使用しています。

それにより液体酸素用の特殊軸受を完全に不要としました。

推進ノズルと姿勢制御ノズルは、金属3Dプリントで製作可能なように小型に設計されています。


ロケットエンジンターボポンプ用タービンの設計例

2021年11月15日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジンに加圧した推進剤を供給するターボポンプ用2段衝動タービンの設計例です。

このタービンは、タービン型式として速度複式の2段動翼を持つ衝動タービンとして設計しています。
 
そのような速度複式によりタービン羽根の周速係数は小さくなり、タービンの回転数が高速になりすぎるのを防いでいます。
 
速度複式タービンでは、初段ノズルでガスの全てのエンタルピーを開放してジェット流を作る方式です。
 

ロケットエンジン用の両吸込み型液体燃料ターボポンプの断面計画図

2021年11月14日 | 宇宙航空産業機械

ロケットエンジンに使う両吸込み型液体燃料ターボポンプの断面を計画した図です。

4連ノズル型のロケットエンジンで噴射推力8トンように設計している途中のターボポンプとなります。

燃料用ターボポンとして両吸込み型は耐キャビテーション能力が高くなり、インペラにかかる軸方向スラストも相殺して安定したポンプ運転を行います。

燃料ポンプ側の端に軸受が有り、液体酸素ポンプ側には軸受が無く、通常のボールベアリングを使用可能として液体酸素用の特殊軸受を無くします。

燃料ターボポンプの材質はステンレス製です。

・両吸込み渦巻ケーシングは、ラピッド鋳造製

・両吸込み遠心インペラは、金属3Dプリント製

・インデューサー羽根は、5軸加工製