流体機械設計による近未来に役立つエンジニアリング

流体機械設計をベースとして近未来に役立つエンジニアリングを行う株式会社ターボブレードの社長 林 正基の毎日の活動

宇宙船工学:ターボポンプ用遠心ポンプの実際の設計計算手順

2021年12月21日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、ターボポンプ用遠心ポンプの実際の設計計算手順を説明しています。

遠心ポンプでの昇圧値dP(Pa)、密度ρ(kg/m^3)、重力加速度g=9.8、とすると昇圧圧力ヘッドdH(m)=dP/(ρ*g)と計算できる。

昇圧する液体を密度450kg/m^3の液体メタンとして昇圧値を5MPa=5000000Paとすれば、昇圧圧力ヘッドdH=5000000/(450*9.8)=1133.7mとなる。

ポンプ流量をQ(m^3/s)として流量150Liter/sとすると、Q=0.15m^3/s=9.0m^3/minとなる。

ポンプ特性を示す比速度Ns=回転数N*√Q/dH^(3/4)となり、遠心ポンプの回転数を10000rpmとすれば単位を(m,m^3/min,rpm)としての比速度Nsは、

Ns=10000(rpm)*√9.0(m^3/min)/1133.7(m)^(3/4)=153.5 という低比速度遠心ポンプの範疇の設計となる。

遠心ポンプの効率ηpを75%と仮定すると、遠心ポンプが昇圧ヘッドdHと流量Qのメタン液体を送り出すのに必要な軸動力Ppは、Pp=Q*ρ*g*dH/ηp=0.15*450*9.8*1133.7/0.75=999923.4w=999.9kw≒1000kwとなり小型ポンプとしては非常に大きな駆動動力が必要なことが分かる。

つまりこのメタン遠心ポンプだけを運転するのに1000kwの出力を出すタービンが必要となる。液体酸素ポンプを運転するタービン動力も更に必要である。

そしてこのメタン遠心ポンプを120秒運転すると18m^3の体積を持つメタンタンクが必要となる。タンク直径が1.6mならば120秒で長さが9m必要となる。

比速度Nsが153.5で回転数10000rpmの液体メタン遠心ポンプ羽根の大まかな形状を求めるのに、最初に圧力を出すためのインペラ出口径D2が必要で

あるが、そのために出口での必要周速U2を求める。羽根枚数無限の理論昇圧ヘッドをdHthi(m)、羽根出口角度をβ2、出口半径方向速度をV2mとすると

dHthi = (U2^2/g) – U2*V2m/(g*tanβ2) となり、羽根数有限での羽根枚数、出口角度に依存するすべり係数をσとすると羽根数有限理論ヘッド上昇dHthは、

dHth = σ*dHthi となる。よってdHth = σ*( (U2^2/g) – U2*V2m/(g*tanβ2) ) と計算できる。ポンプ水力効率をηhとすると、ポンプ実揚程H = ηh*dHth となり、

ポンプ実揚程H = ηh* σ*( (U2^2/g) – U2*V2m/(g*tanβ2) ) =ηh*σ*((U2^2/g)*(1 – (V2m/U2)/tanβ2)) として計算できる。

ここで、比速度に関係する半径方向流出係数Km2を考えると、V2m = Km2*√(2*g*H) とV2mを計算できる。Ns153.5でのKm2 = 0.12 程度である。

更に、羽根枚数Zを8枚、羽根出口角度を40度、その時のすべり係数σは0.97程度、V2m = 0.12 * √(2*9.8*1133.7) = 17.89m/s、更に水力効率ηh=0.8として

実揚程1133.7 = 0.8*0.97* ((U2^2/g)*(1 – (17.89/U2)*Cot40度)) ∴1460.96 =  0.10204*U2^2 * (1 – 21.3204/U2) = 0.1024*U2^2 – 2.17553*U2 となる。

U2の二次方程式0.1024*U2^2 – 2.17553*U2 – 1460.96 =0 より、U2 = (-(-2.17553)+√((-2.17553)^2) – 4*0.1024*(-1460.96))/(2*0.1024) と計算することで

計算を進めて、U2 = (2.17553+√(4.73293+598.4092)/0.2048=130.54m/s と計算された。

回転数N10000rpmより、U2=π*D2*N/60なので、インペラ出口直径D2 = 0.2493m = 249.3 mm と計算出来る。ここでようやくインペラ出口径D2が計算出来た。

羽根入口径をD1とすると比速度に対するD1/D2比が0.3程度なので、羽根入口径D1=249.3mm×0.3=74.8mm程度となるが必要軸直径により変化する。

羽根出口高さB2は、D2でのV2mが出ていることからV2m=Q/出口面積A2なので、A2=(0.15/17.89)*1000*1000=8384.6mm^2 となり、羽根出口の円筒部

面積はπ×D2×B2 = A2 より、B2=A2/(π*D2)=8384.6/(π*249.3)=10.7mm である。

以上をまとめて、液体メタンポンプ昇圧値5MPa、設計流量9.0m^3、回転数10000rpm、必要軸動力1000kw、ポンプ効率75%、ポンプ水力効率80%、

ポンプインペラ入口径74.8mm、出口径249.3mm、出口幅10.7mm、羽根枚数8枚、羽根出口角度40度の遠心型ポンプを計算した。


宇宙船工学:液体ロケットエンジンの3次元設計図

2021年12月20日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、液体ロケットエンジンの3次元設計図です。

まだ完成ではなく、今後はタービン燃焼ガス燃焼器、始動用アウターローターモーター、油圧部を全て電気装置に変換などの作業が残っています。


宇宙船工学:液体ロケットエンジンの設計途中を別角度から見た図

2021年12月19日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、液体ロケットエンジンの設計途中を別角度から見た図です。


宇宙船工学:ロケットエンジン配管計画の途中

2021年12月17日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、液体ロケットエンジンの配管計画を行っている途中の計画図です。

液体酸素ポンプと燃料ポンプからの推進ノズルとバーニアノズルへの配管と吐出調整弁の計画を進めています。
 
バーニアノズルサーボ駆動可変用に配管途中にロータリージョイントを入れいてます。
 

宇宙船工学:カーチス式(速度複式)タービン設計例

2021年12月17日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、カーチス式(速度複式)タービンの設計例です。

タービン入口出口燃焼ガスエンタルピー差を初段ノズルで全て速度に転換して、2段の衝動動翼にて回転動力に変換します。

初段動翼で入口出口エンタルピー差全体の7割ほどの回転動力を発生します。

エンタルピー差全開放による流体速度に対して、周速係数を0.25以下に抑えることが出来て、タービン回転数の最適値を低く出来ます。


宇宙船工学:液体ロケットエンジン設計途中を下から見た図

2021年12月14日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として現在液体ロケットエンジンを設計中ですが、それを下から見た図です。

1ターボポンプ、4推進ノズル、4姿勢制御用バーニアノズルの型式ロケットエンジンです。


宇宙船工学:液体ロケットエンジン設計作業中の3次元CAD画面

2021年12月12日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、液体ロケットエンジンを設計作業中の3次元CAD画面を説明付きで載せてみました。

・油圧用遠心ポンプ断面計画図

・液体酸素出口調整バルブの断面計画図

・バーニアノズル用ピントル型インジェクタ断面計画図

以上の3つの設計作業を進めました。


宇宙船工学:液体ロケットエンジン設計途中 その2

2021年12月12日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として現在進めている液体ロケットエンジン設計の途中での要素追加と修正を説明しています。

1ターボポンプ4ノズル4バーニアノズル型式のロケットエンジン設計で今回は追加が少ないです。

タービン排気管変更

ピントル型インジェクタ用バーニアノズルヘッダ

各部への締結用ボルト

の追加などを行っています。


宇宙船工学: ロケットエンジンターボポンプの遠心羽根の入口出口速度関係図からポンプ作動原理を説明

2021年12月08日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、 ロケットエンジンターボポンプの遠心羽根の入口出口速度関係図からポンプ作動原理を説明しています。

V1:入口絶対速度=Vm1(入口旋回流無し入口半径方向速度)

V2:出口絶対速度

U1:入口周速、U2:出口周速

W1:入口相対速度、W2:出口相対速度

α1:入口絶対流入角度、α2:出口絶対流出角度

β1:出口相対流入角度、β2:出口相対流出角度

入口半径:R1、出口半径:R2

ポンプ羽根入口での絶対速度の周方向成分をVu1とすると

液体に与えられるトルクT=質量流量m*(R2*Vu2 – R1*Vu1)

角速度をωとすると、回転動力T*ω=m*(U2*Vu2 – U1*Vu1)

動力T*ω = m*g*ポンプ理論昇圧ヘッドHpthとなるので、

理論ヘッドHpth=(U2*Vu2 – U1*Vu1)/重力加速度g と計算できる。

液体がポンプ入口に半径方向流入する場合はVu1=0となることから

更に Vu2 = U2 - Vm2*Cotβ2 と示されるので、

T*ω = m*U2^2*(1 - ポンプ流量係数φ*Cotβ2) の関係となる。

よってHpth=U2^2*(1-φ*Cotβ2)/g=U2^2*ψth/g となり、

ポンプの理論ヘッド係数ψthφ=m/(出口面積A2*密度ρ*U2)より

ポンプ理論ヘッド係数ψth=(1-φCotβ2)と示される。

Hpth=((V2^2-V1^2)/2 + (U2^2-U1^2)/2 – (W2^2-W1^2)/2)/g より

(V2^2-V1^2)/2は運動エネルギーの増大を示す。

(U2^2-U1^2)/2 - (W2^2-W1^2)/2 はインペラ内圧力上昇を示す。

(U2^2-U1^2)/2 は遠心力によるインペラ内圧力上昇となり、

-(W2^2-W1^2)/2 は翼間通路の広がり減速による圧力上昇となる。

遠心ポンプでは遠心力による圧力上昇が主体となる。

軸流ポンプでは翼間通路の広がり減速による圧力上昇が主体となる。

運動エネルギーの増大分の(V2^2-V1^2)/2はインペラ出口ディフューザ

と渦巻きケーシングにおいて圧力へ転換される。


宇宙船工学:液体ロケットエンジンターボポンプの燃料ターボポンプ部設計が進んだ

2021年12月06日 | 宇宙航空産業機械

宇宙船工学として、液体ロケットエンジン用ターボポンプの燃料ターボポンプ部設計が進みました。

ポンプの特徴は、両吸込み遠心ポンプ耐キャビ性能が高いところです。

タービンの特徴は、単段衝動タービンで周速比が0.47程度のためにランナディスク直径が大きいところです。