宇宙船工学として、ターボポンプ用遠心ポンプの実際の設計計算手順を説明しています。
遠心ポンプでの昇圧値dP(Pa)、密度ρ(kg/m^3)、重力加速度g=9.8、とすると昇圧圧力ヘッドdH(m)=dP/(ρ*g)と計算できる。
昇圧する液体を密度450kg/m^3の液体メタンとして昇圧値を5MPa=5000000Paとすれば、昇圧圧力ヘッドdH=5000000/(450*9.8)=1133.7mとなる。
ポンプ流量をQ(m^3/s)として流量150Liter/sとすると、Q=0.15m^3/s=9.0m^3/minとなる。
ポンプ特性を示す比速度Ns=回転数N*√Q/dH^(3/4)となり、遠心ポンプの回転数を10000rpmとすれば単位を(m,m^3/min,rpm)としての比速度Nsは、
Ns=10000(rpm)*√9.0(m^3/min)/1133.7(m)^(3/4)=153.5 という低比速度遠心ポンプの範疇の設計となる。
遠心ポンプの効率ηpを75%と仮定すると、遠心ポンプが昇圧ヘッドdHと流量Qのメタン液体を送り出すのに必要な軸動力Ppは、Pp=Q*ρ*g*dH/ηp=0.15*450*9.8*1133.7/0.75=999923.4w=999.9kw≒1000kwとなり小型ポンプとしては非常に大きな駆動動力が必要なことが分かる。
つまりこのメタン遠心ポンプだけを運転するのに1000kwの出力を出すタービンが必要となる。液体酸素ポンプを運転するタービン動力も更に必要である。
そしてこのメタン遠心ポンプを120秒運転すると18m^3の体積を持つメタンタンクが必要となる。タンク直径が1.6mならば120秒で長さが9m必要となる。
比速度Nsが153.5で回転数10000rpmの液体メタン遠心ポンプ羽根の大まかな形状を求めるのに、最初に圧力を出すためのインペラ出口径D2が必要で
あるが、そのために出口での必要周速U2を求める。羽根枚数無限の理論昇圧ヘッドをdHthi(m)、羽根出口角度をβ2、出口半径方向速度をV2mとすると
dHthi = (U2^2/g) – U2*V2m/(g*tanβ2) となり、羽根数有限での羽根枚数、出口角度に依存するすべり係数をσとすると羽根数有限理論ヘッド上昇dHthは、
dHth = σ*dHthi となる。よってdHth = σ*( (U2^2/g) – U2*V2m/(g*tanβ2) ) と計算できる。ポンプ水力効率をηhとすると、ポンプ実揚程H = ηh*dHth となり、
ポンプ実揚程H = ηh* σ*( (U2^2/g) – U2*V2m/(g*tanβ2) ) =ηh*σ*((U2^2/g)*(1 – (V2m/U2)/tanβ2)) として計算できる。
ここで、比速度に関係する半径方向流出係数Km2を考えると、V2m = Km2*√(2*g*H) とV2mを計算できる。Ns153.5でのKm2 = 0.12 程度である。
更に、羽根枚数Zを8枚、羽根出口角度を40度、その時のすべり係数σは0.97程度、V2m = 0.12 * √(2*9.8*1133.7) = 17.89m/s、更に水力効率ηh=0.8として
実揚程1133.7 = 0.8*0.97* ((U2^2/g)*(1 – (17.89/U2)*Cot40度)) ∴1460.96 = 0.10204*U2^2 * (1 – 21.3204/U2) = 0.1024*U2^2 – 2.17553*U2 となる。
U2の二次方程式0.1024*U2^2 – 2.17553*U2 – 1460.96 =0 より、U2 = (-(-2.17553)+√((-2.17553)^2) – 4*0.1024*(-1460.96))/(2*0.1024) と計算することで
計算を進めて、U2 = (2.17553+√(4.73293+598.4092)/0.2048=130.54m/s と計算された。
回転数N10000rpmより、U2=π*D2*N/60なので、インペラ出口直径D2 = 0.2493m = 249.3 mm と計算出来る。ここでようやくインペラ出口径D2が計算出来た。
羽根入口径をD1とすると比速度に対するD1/D2比が0.3程度なので、羽根入口径D1=249.3mm×0.3=74.8mm程度となるが必要軸直径により変化する。
羽根出口高さB2は、D2でのV2mが出ていることからV2m=Q/出口面積A2なので、A2=(0.15/17.89)*1000*1000=8384.6mm^2 となり、羽根出口の円筒部
面積はπ×D2×B2 = A2 より、B2=A2/(π*D2)=8384.6/(π*249.3)=10.7mm である。
以上をまとめて、液体メタンポンプ昇圧値5MPa、設計流量9.0m^3、回転数10000rpm、必要軸動力1000kw、ポンプ効率75%、ポンプ水力効率80%、
ポンプインペラ入口径74.8mm、出口径249.3mm、出口幅10.7mm、羽根枚数8枚、羽根出口角度40度の遠心型ポンプを計算した。