一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

「蝶花楼桃花 独演会」 ……女流落語の歴史を変える“寄席のプリンセス”……

2023年07月24日 | 特別企画「逢いたい人に逢いに行く」


「逢いたい人に逢いに行く」という特別企画の第28回目は、
女性落語家の蝶花楼桃花。


【蝶花楼桃花】(ちょうかろう・ももか)
東京生まれ。
「女流落語の歴史を変える?」とも噂される、若手噺家のホープ。
2006年春風亭小朝に入門。春風亭ぽっぽとして前座修行を開始する。
二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。
「NHK新人落語大賞」では3度にわたって決勝に進出する。
10日間連続独演会、全国ツアー、海外公演など、
若手としては異例づくしの落語活動を展開し、
「笑点」若手大喜利・女流大喜利をはじめとするテレビ出演や、
ラジオ番組のパーソナリティも多数経験する。
女優として明治座「ふるあめりかに袖はぬらさじ」(主演・大地真央)などの舞台公演、
沖縄国際映画祭出品作品『耳かきランデブー』(2018年10月20日公開・主演)などの映画にも出演する。
2022年3月、待望の真打昇進。
これを機に高座名を「蝶花楼桃花(ちょうかろう・ももか)」と改め、
七代目・蝶花楼馬楽の没後途絶えていた歴史ある亭号を復活させる。
都内5軒の寄席で開かれた昇進披露興行、
昇進から史上最速4か月で抜擢の初主任興行(浅草演芸ホール)はいずれも大入りを記録。
9月には女性落語家として史上初めて、人気番組「笑点」のレギュラー大喜利に出演、
話題を呼ぶ。


私が、蝶花楼桃花という女性落語家を知ったのは、
まだ二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に出演した映画『耳かきランデブー』(2018年10月20日公開)においてだった。


『カメラを止めるな!』で知られる上田慎一郎監督の配偶者・ふくだみゆき監督作品で、
耳かきをめぐって繰り広げられる三角関係を描いた(上映時間33分の)ラブコメディであった。


この映画に主演していた春風亭ぴっかり☆にすっかり魅了されてしまった。


正統派美人というのではないけれど、
(安藤サクラや黒木華のような)個性派美人といった感じで、
特に(表情がゆるんだときの)ぷっくりとした唇の美しさに感動した。(コラコラ)


その後、2022年3月に真打昇進し、
これを機に高座名を「蝶花楼桃花」と改め、
2022年9月4日放送の「笑点」で、6代目三遊亭円楽の代理として女性落語家初の(レギュラー)大喜利の回答者として出演したときには大いに喜び、
〈新レギュラーメンバーになるのではないか……〉
と期待したが、その願いは叶わなかった。(新レギュラーメンバーは春風亭一之輔)


そんな今注目の女性落語家・蝶花楼桃花の独演会が、
佐賀の東与賀文化ホールで行われると知ったとき、歓喜した。
すぐにチケットを購入し、首を長くして待っていた。
そして公演日の昨日(2023年7月23日)、
会場である東与賀文化ホールに駆け付けたのだった。


東与賀文化ホールを訪れるのは初めてであったが、
我が家から車で35分ほどで着き、案外近かった。


駐車場には、久留米ナンバーや福岡ナンバーの車もあり、
隣県から駆け付けたファンも多くいたようだ。








会場は504席のこぢんまりとしたホールで、




全席自由だったので、
(空いていた)2列目の23番に着席。(車イスの方はいなかったので実質最前列だった)


開演時間の14時に幕が上がり、
開口一番(前座)で登場したのは、春風亭貫いち。


【春風亭貫いち】
1994年5月 茨城県日立市に産まれる。
2018年3月 茨城大学理学部卒業。
2018年4月 春風亭一之輔に入門。
2020年2月 「貫いち」で楽屋入り。


春風亭貫いちが10分~15分ほど座を温めた後、
蝶花楼桃花が登場すると、
会場がパッと明るくなるほど華やいだ雰囲気となった。
今回の独演会では、彼女は三つの新作、古典落語を披露したが、
思った以上に笑わされたし、
蝶花楼桃花自身もお客の反応が良かったからか、
興に乗っていろんな話も盛り込み、
面白くて、魅力的で、華のある落語を聴くことができたし、
蝶花楼桃花の落語をたっぷり堪能することができた。


本編に入る前の枕(前フリ)で知ったのだが、
落語界は、極端な男社会で、
現在、男性の落語家は約1000人で、女性の落語家は30~40人。
女性落語家が全体に占める割合は3~4%くらいで、まだまだ少ないとのこと。
「女真打」という枠が廃止され、男性と同じ扱いになってから二十年あまり。
女性落語家の真打は、彼女(蝶花楼桃花)で10人目で、
いろんな意味で、業界に新風をもたらすパイオニア的存在となっている。
「SOURCE:SPUR」(2023年7月号)の、
「新時代をリードする二人の女性落語」という記事で、蝶花楼桃花は、

真打になったからには、じっくり聴いてもらえるネタも身につけたい。年月をかけて向き合っていくものが、この先の自分を支える基盤になると考えています。私自身の言葉でしゃべれる噺も増やしたいし、新作の書き下ろしや後輩の落語会のプロデュースも続けます。落語界を盛り上げるというとおこがましいのですが、興味を持ってもらえるきっかけならいくらでも作りたいんです。やりたいことは後回しにせず、同時進行で挑んでいきます。

と語っていたが、
舞台や映画の出演、テレビやラジオへの出演も、
最終的には落語の糧になると思って取り組んでいるとのこと。
たくさんの人に寄席に来てもらうために、
今は、落語の幹を太くすることに取り組んでいる最中のようだ。
滑稽噺だけではなく、
今後は人情噺にも挑みたいと語る蝶花楼桃花。
そんな彼女からもう目が離せない。

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