日本国際貿易促進協会(国貿促)の中国訪問団に参加している玉城デニー知事は3日、中国北京に到着した。4、5日に習近平指導部のメンバーと面会し、新型コロナで停滞した経済や観光、文化交流の促進を求める予定。また、県独自の日程も組んでおり、6日には県が友好都市提携を結んでいる福建省の福州市を訪ね、地域間交流を深める。(政経部・大野亨恭、又吉俊充)

 知事は3日、県単独で中国国際航空を訪問し、新型コロナで運航が中止されている航空路線の再開や観光振興への協力を要請した。県によると航空会社側は「早期の路線再開の準備を進めている」と回答したという。

 4、5日に面会する要人は直前まで明らかにならないが、2017年には当時中国ナンバー2の李克強首相と会談している。国貿促は経済関係強化を目的に活動する日中友好7団体の一つで、財界を中心に約80人で訪中している。

 県は福建省を訪問し地域の平和構築を目的とした「地域外交」にも力を入れる考え。知事を支える県政与党からは「新たな戦前の始まりと言われるほど平和が脅かされており、県の自治体外交をさらに強める必要がある」(共産の渡久地修氏)と期待の声がある。

 一方、野党は知事が尖閣問題に言及しないことや、発言が中国側に利用されることを懸念する。沖縄・自民の大浜一郎氏は「安全保障や領土問題は『認知戦』の対象。知事の発言内容は極めて重要だ」と指摘した。

中国メディアも注目

知事の見解を掲載

 玉城デニー知事の訪中は、中国メディアも注目している。中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」傘下のタブロイド紙「環球時報」は3日付で、「日米は台湾海峡の平和のために努力すべきだ」とする知事の書面インタビューを掲載した。訪中による日中交流の促進や、直行便再開など、知事の期待を1ページを割いて紹介した。

 環球時報は、沖縄県は平和外交を求めているが日本政府と対立しているのか、沖縄県の地域外交に対する疑問を知事はどう見ているのか、など国内での沖縄の立場にも高い関心を示している。

 知事は書面インタビューで、米中の軍事衝突は両国の国益を失うとし、日米両政府には「有事を未然に防ぐ役割」があると強調した。

 また、日本政府が進めている南西諸島の自衛隊強化に触れ「軍事力による抑止力強化が予期せぬ事態を招きかねないことを憂慮している」と指摘。地域外交については、国家間外交と地域外交は別だとし、沖縄戦の経験から不戦を誓う沖縄の平和への願いを「積極的に世界へ発信したい」と意欲を示した。

 県によると書面インタビューは6月末に実施された。(政経部・大野亨恭)

(写図説明)玉城デニー知事の訪中に合わせ、書面インタビューの記事を掲載した環球時報の紙面

               ★

玉城沖縄県知事が3日から訪中、尖閣侵入に強く抗議せよ」(産経、「主張」