治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

目次発表

2010-04-30 07:22:56 | 日記

さてさて、みどりの日も一日校了作業をしていました。
ときどきついったーでぶつぶつつぶやきながら。

で、気づきました。

校了までたどりついたっていうことはもう目次を発表していいわけだ。
神田橋先生からこれ以上の赤は入らないからなあ。

というわけで目次を発表します。

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目次

マンガ 神田橋先生が本を書くことにした理由

この本が生まれるまで 花風社 浅見淳子

マンガ ぱっと見てわかる

第一章 発達障害者は発達する

 未来を思い描く
 発達障害って何?
 治療のための診断が必要だ
 脳の機能改善を考えてみよう
 一次障害とか二次障害とか
 藤家寛子さん治療場面・マンガ
 治療しながら診断つけりゃいいんだよ
 検証の先を行く治療
 神田橋処方
 脳が発達してきた人
 治しやすいところから治す
 なんでも社会のせい?

第二章 せめて治そう! 二次障害

 解離性障害
 過去の症状の中にある脳の素質
 ちょっと死んでみる
 虐待と解離性障害
 気分障害
 発達障害の人の気分障害の治療
 双極性障害とうつを間違えるととても大変
 医療によってめちゃくちゃになる患者たち
 治療のゴール
 フラッシュバック
 統合失調症と発達障害の鑑別
 三次障害
「境界例」の人を健康にする
 あるケース・スタディ
 神田橋先生のランチタイムを確保するために
 
 マンガ 神田橋先生は健啖家
 
第三章 問題行動への対処 「未熟な自己流治療法」という視点

 リストカット
 怒りと暴力
 イラスト フラッシュバックの仕組み
 感情の薄い人
 違う生き物になる
 自閉症の人の得意技
 引きこもり
 自分の脳が解決策を見つけることが一番
 克服ではなく活用
 不登校
 
第四章 発達障害と教育・しつけ

 いじめへの対応
 わがまま
 学校の先生でも使える判断材料を
 学校にお願いしたいこと
 セルフ・エスティームはほめれば育つのか?
 感情を持ち込まない
 自閉症者は世界の中心か?
 コミュニケーションの大切さとは?
 人々にどうわかってもらうか?
 頑張るっていいことなの?
 自己実現
 社会が変わったから生きにくくなったのか?
 中学生男子への治療・マンガ
 
第五章 治療に結びつけるための診断とは?

 診断が粗すぎる
 シナプスの発育ミス 
 リハビリという発想
 脳の可塑性の過大評価
 発達障害が増えた理由
 ニキさんの検査ビデオを見てわかること
 脳の育たない現代社会
 小学生時代にしっかりしたアセスメントを
 医療者と教育現場
 
第六章 一次障害は治せるか?

 大大大博士
「治療しよう」という研究
 ミラー・ニューロンの育成
 マンガ ミラー・ニューロン
 苦手を伸ばす
 種明かし効果
 生命体としての自分を考える
 知識を身につける
 検査から見る脳機能・伝達物質についてのまとめ
 現実の場面で役に立つ支援者は誰?
 カウンセリングの限界
 精神科医は身体に注目しているか?
 身体を使ってのコミュニケーション
 脳が発達する一人遊び
 漢方を使う理由
 自己セラピー 
 マンガ 焼酎風呂
 
第七章 養生のコツをつかむコツ EBMと代替療法

 代替療法を否定しない理由
 医者に治す気があるかどうかを見極める
 小さなEBMのススメ
 検証が追いついていない
「気持ちがいい」を探す
「気持ちがいい」の向こうにある「さらに気持ちがいい」

執筆・対談を終えて
 愛甲修子 発達障害者養生のバイブル
 藤家寛子 発達障害者と明るい未来
 岩永竜一郎 道しるべとなる出会い
 
あとがき
 神田橋條治


発達障害とお薬

2010-04-28 07:12:08 | 日記
この前も自閉症のお子さんを持つ親御さんたちと話していて、お薬の話が出た。

発達障害の人に処方する精神科の薬の処方量って、定型発達の人に比べて少なくていいらしい。
っていうか、少なくなければいけないらしい。
これが精神科の世界全体でどれくらい常識になっているか、私にはわからない。

私が出会うのは、発達障害にとくに詳しい方たちなので、まあたいていの先生がこれを知っている。
だから私の耳学問では、「発達障害の人には処方量を少なく」っていうのは普通のことになっている。

たまにあまり詳しくないお医者様に定型発達の人と同じ量を処方をされてしまうこともあって
そうすると調子を崩すらしい。

この話もよく聞く。

私は精神科の薬そのものをのんだことがないので(というか薬自体あまりのんだことない。風邪を引いても百薬の長で治す)
「薬で調子を崩す」ということがどういうことなのか実感ではわからないけど。

まあとにかく

今度の大大大博士の本は、別に「神田橋処方」に強調点が置かれているわけではないんだけど
「なぜ漢方というオプションを排除しないか」については触れている。
先生は西洋医学の精神科のお薬も使うし、漢方も使う。サプリメントも使う。それはなぜか? について触れている。

私もこの本を作る途中で色々調べて、結構発達障害の人に漢方が処方されているのを知った。
エビデンス重視のお医者様たちによっても。

そして、ある人に何が合っているのかは
本人もしくは周囲の人たちが観察して見測らないといけないみたいだということだ。あたりまえだけど。
先日お話した親御さんたちも、処方量とお子さんの変化を、注意深く観察していた。
そしてお医者さんにフィードバックしていた。多すぎると思われる場合は、きちんと報告して減らしてもらっていた。

その子に愛情があり、その子の未来を大切に思い、よく観察する機会のある人がすぐ近くで観察する。
お医者さんに報告して、処方量を調整する。
そうだとすると薬物療法って、身内と場合によっては本人、そして近くの専門家の協同作業なのでしょうね。
ネット上で自閉症理論を展開している誰かの役目じゃなくて。

その結果、漢方はやめたい、西洋医学のお薬のみでいきたいのなら、それはそれでそのおうちの選択の自由。
漢方を使いたいのなら、やはりそのおうちの自由。
だから
自分ところで決めた方針に、よそのお子さんまで巻き込むのなら、ちゃんと自覚してほしいね。

つまりね、うちから出る本で神田橋先生が漢方について触れてあるからというのが主な理由で漢方に対するネガティブ・キャンペーンをする人って出てくる「かも」しれないけど
その意見を受け入れるかどうかは、それぞれのご家族・主治医が決めるべきことです。
大事なのは「状態がよくなる」ことだとしたら、ネット上の誰かの意見を盲目的に聴くことはある人にとっては機会損失になるかも、
って頭の片隅に入れておいてほしいです。これは薬物療法に限らないけれど。

そして、もし「漢方なんてでたらめだ」と言い切ってキャンペーン張る気があるのなら
「もしかしたらよそのお子さんの機会を奪うことになるかも」というだけの覚悟をもってやってほしい。
そういう責任をちっとも感じずに、よそのおうちの療育方針に口を出すのは僭越だと思います。
療育というのは本来、テーラーメイドであるべきなのだから。

たくさんの人が漢方で救われているのも事実なんだからね。

たくさんの人が多すぎる精神科のお薬の処方量で健康を蝕まれているのだって事実なんだからね。

あ、それと最後にご注意。
薬物については、このブログをプリントアウトしていってもお医者様の信用は得られないので
あと一ヶ月弱待って神田橋條治先生のご意見として本を持っていくか
その他、きちんとしたお医者様の意見が書いた本を持っていって、主治医の方とご相談ください。

昨日神田橋先生から校了紙をいただきました。いよいよ印刷に向かっていきます。

空気を読める能力

2010-04-27 08:03:55 | 日記
さてさて昨日私は、お宝のきせのんとの2ショット写真を何人かの方々に無理やり送りつけました。
あまりに嬉しかったので。

まず大地君。大地君はお相撲ファンなので、別に送りつけても迷惑じゃないと思いまして。
こういうメールをくれました。

超すごいね。稀勢の里は元気でしたか? 大地は浅見さんと稀勢の里はお友だちだと思っていました。
それは、違ったようです。それでも、昨日の事があって友だちになったかもしれません。
大地も日馬富士と友だちになれたら最高です。夏の巡業では本当に会えるといいです。

先日療育手帳を無事ゲットした大地君。
これから色々なことに挑戦できます。
挑戦のご褒美に、夏の巡業につれていってとおねだりしているらしい。

ニキさんにも無理やり送りつけようかと思ったけどやめました。
何しろニキさんは「顔がてかてかした人」が苦手。
てかてかの顔の人が二人写っている写真なんか見たらおびえるだろうと思って。

そしてちゅん平さん。

「見たい?」ときいてみました。
「ぜひ!」というお返事。
これが社交辞令なのか、本当なのかわかりません。だって進化型自閉っ子であるちゅん平さんは、空気が読めるようになっているからなあ。

「私、最近ちょっとは空気が読めるようになってきたんじゃないかと思うんです」

こう話したちゅん平さんに大大大博士がした説明は感動的でしたよ。

自閉っ子には生まれつき「空気を読める能力」が備わっていないわけじゃないらしいです。
ただ、症状の重いときには別方面に使われちゃっているみたいです。

色々な意味でラクになってくると、それまで潜在的に持っていた能力が、「社会で使われる能力」に磨かれていくそうです。

まあ社交辞令か本気かわかりませんが
ちゅん平さんにも2ショット写真を見せてしまいました(笑)。
社交辞令でも本気でもどっちでもいい。一緒に喜んでくれた。それが嬉しい。

一度大大大博士にもお見せしたいなあ。

充実した週末

2010-04-26 08:02:50 | 日記

さてさて、私の週末はぐっと充実しておりました。

土曜日は前述のように感覚統合学会。実は岩永先生にお声をかけていただいたのは一週間前で、ニキさんじゃないですけど「早く言えよ」と思ったのですが、行ってみたら納得。学会のOTさんと学校の先生が圧倒的に多い会なのでした。
特別支援教育への感覚統合的視点の導入。感覚統合だけでは特別支援教育はできませんが、感覚統合の視点なしにはまた成り立ちません。実際に学校現場での報告等も含めて、実にお勉強になりました。

とくに岩永先生が開発中のチェックリストをげっと。これだけでも行った甲斐がありました。噂のチェックリストです。

このチェックリスト、どこで噂になっていたかって? それは、大大大博士とのお話の中でこの話が繰り返し出たからです。

皆さんはカリスマ精神科医なんて余人に計り知れない神業を披露するだけなんだろう、なんて思うかもしれませんが、そうではありません。実は神田橋先生「親や学校の先生、本人が自分でできることを開発する」のに大変に熱心な先生なのです。それが治療者の役割の一つだと考えていらっしゃいます。

「医師の仕事は診断だけ」という考え方とは大きく違う方なのです。大大大博士は。

まあともかくぎゅうぎゅうお勉強して帰ってきました。ついったーでも軽く実況中継させていただきました。

書籍の話題もばんばん出していただきましたから、片隅で販売させていただけたらもっとよかったんですが。感覚統合学会さん、今度からぜひご検討ください!

そして日曜日。うふふふふふ。

朝から仕事が手につきませんでした。でも二つだけ仕事をして出かけました。

このブログに書き続けていたご縁で、稀勢の里関に初めてお目にかかる機会にお声をかけていただきました。

もうとにかく、思った以上に美しいお相撲さんでした。そしてとにかく大きい。笑顔の素敵な若者でした。

握手していただき、サインをいただきました。一緒に行った小暮さんに、2ショットの写真を撮ってもらいました。著名な方なのでここへのアップは控えますが、キティちゃんハンカチにしていただいたサインだけ写真を載せます。

ていうかこれからしばらく私とリアルでお会いになる方は、自慢げにiPhoneにのっけた2ショット写真を見せられると思います。無理やり。何しろ私がすごく小さく見えるし(笑)。

ご本人にお会いしたあとはもう、ここであまり罵倒はできないかもと思います。

でもきっと負けが込んだらまためちゃくちゃ書くと思いますが。

本日番付発表。ついったーで速報を得ました。東の関脇です。がんばってほしい。絶対大関になってほしいです。ご本人に会ったあとは、そして親方の親心のスピーチを聞いたあとは、前よりその思いが強くなったかもしれません。

久しぶりにお天気のよかった週末。本当に充実していました。


今日は手抜き

2010-04-24 07:18:50 | 日記

ついったーのほうでもつぶやきましたが、本日は荒川区まで感覚統合のお話を聞きに行きます。
なんせ荒川区は遠いので、早く出なきゃいけないので、今日のブログは手抜き。



大大大博士の治療場面をじっくりと見た小暮画伯の感想ブログをリンク。


もっとも小暮画伯は書名を正確に覚えていないようですな。
飲みすぎ?


正確な書名は近日発表です。


行ってきます。


バカボンのパパルック

2010-04-23 09:33:34 | 日記
先日、ニキさんと私の「掛け合い漫才」へのオファーをいただきました。
時は6月下旬。
以前なら暑さに弱いニキさんの冬眠期間であることを理由にお断りしていた話ですが
私はふと考えた。

運動嫌いだったニキさん。
でも最近、意外とやっているんですよね、運動。
自転車に乗ったり。
で、効果が上がった? とか訊いてもご本人は自分の状態を相変わらずよくつかんでいないんだが
周辺情報をかき集めると、やっただけのことはあるみたいなんです。

それに講演会場がニキさんが日帰りで行ける場所。
主催者様がしっかりした方たち。
すでに自治体の共催も取っている。
夏っていっても7月とか8月じゃない。

「やってみない?」とニキさんに言ったんです。
私と一緒のほうが気が楽みたいだし。

そうしたら
「バカボンのパパルックでいいのなら。ただしハラマキなし」という答え。

何よそれ?

ときいたら

暑い時期にきちんとした上着とか着ると、講演まで余力が回らないかも、ということのよう。
カジュアルな格好でいいか? とのこと。

いいよ。
別にリクルート活動するわけじゃないんだから。
私も東京からカジュアルで行くよ。
そうしたら釣り合いが取れるでしょう?

と主催者様にお知らせしたら「わはははは」と笑われました。

まったくどこで引っかかっているかわかんないんだなあ。

というわけで6月末に関西方面に現れます。二人で。
日程とか決まったらまたここでお知らせしますね。

大大大博士と藤家さんの会話

2010-04-22 08:05:07 | 日記
さて、今回大大大博士の本を作るのにあたっての最初のオファーは「岩永先生に会って発達障害の話がしたい」。
しかも私たちが鹿児島に出かけるのではなく、大大大博士自ら、長崎においでいただけるということでした。
岩永先生は恐縮していらっしゃいました。
もっともなぜ長崎の地を選ばれたのか、後でわかったんですが。

当日近くなってから「藤家さんに声をかけてください」というお言葉。
「そうだな。佐賀から長崎なら日帰りもできる。ちょうどいい」と声をかけました。
藤家さんは喜び「養生のコツ」を読んで当日を待ちました。

岩永先生は神田橋先生との出会いを「人生の宝」とおっしゃっています。
私にとってもそう。
藤家さんにとってもきっとそうじゃないでしょうか。
まず、その場で治療してもらいました。その場面はマンガにして、本に収録してあります。
そのほかにも、たくさんのアドバイスをもらっていました。
そして何より、「希望」をもらったのではないでしょうか。

それが一方通行ではないのが、神田橋先生のすごいところ。
劇的に状態をよくしてきた当事者の一例として
神田橋先生は藤家さんから多くを学ぼうとされていました。
岩永先生も私も、あれだけの臨床の実績を上げられながら
「自閉っ子的心身安定生活!」に書いてあるような「当事者の成功例」に謙虚に学ぶその姿勢に感動しました。

下記に、現場で神田橋先生と藤家さんの間で交わされた会話をちょっと公開します。

藤家 専門家は、発達障害者の未来は暗いと考えているんですかね? どうしてよくならないという考え方が専門家の間に多いんですか?
神田橋 本当は発達障害者の未来が暗いのではなく、発達障害に対する治療者のサービスの技術の未来が暗いんでしょ。でも発達障害者がよくならないことにしておけば、自分たちの未来は暗くない。

そう。今度の本のキーワードの一つは「未来」です。
それと、現状の発達障害治療に対するカリスマの思い。
これまでの本とちょっと違うことは、上記の会話でもおわかりいただけると思います。

治らないという考えは治りませんか?

2010-04-21 08:51:51 | 日記
さてさて、昨日小暮画伯のブログにも書いてあったように
ちゅん平の立ち直り方は、近くでみているおじさんおばさんとしては本当に「涙が出るほどうれしい」ものがあります。

一時は感覚過敏がひどく、世界観も混乱し、食事もとれず、家で倒れていました。
数ヶ月に一回の講演会だってキャンセルしたことも。とうてい社会参加できる状況じゃなかった。
真剣に、死んじゃうのではないかと思っていた。

それが今は週に五日通勤し、目標を持って作業をこなしている。
一人暮らしも成功している。
週五日通勤しながら、沖縄まで講演に出かける。
彼氏ができて、焼肉デートに出かけている。

街中で煙にぶっ倒れていたことなどウソのようです。
目の前で肉焼いて食べるんですから。しかもその肉を昔と違ってちゃんと消化できる。
そして、一緒においしく食事できるパートナーもいる。

そして、ちょっとは空気が読めるようになった。
スルーすべきことは脳がスルーできるようにもなった。

「自閉っ子的心身安定生活!」にもちゅん平の成長の数々は書いてありますが
彼女の身に起こった変化を大大大博士は「本質的改善、すなわち一次障害の改善だと僕は思う」とおっしゃっています。
ただ二次障害が治ったというものではなさそうです。たしかに。

「発達障害者は発達します」というのはそういう意味なのです。

そしてそれはちゅん平の身の上だけに起きることではない。
他の人にも再現可能なのだと。
事実博士のもとを訪れ、劇的によくなっている人は多いのだと。
だったらどこにいてもそれが可能なようにする方向を考えなきゃいかんだろう、というのが今度の本のテーマです。

本当にそんなことできるんですか? といぶかしがった私たちに大大大博士が発した言葉。それが
「治らないという考えは治りませんか?」です。

楽しい夕べ

2010-04-20 07:54:45 | 日記

さてさて、講演終了後、岩永先生と大大大博士のお弟子さんと三人で都内まで戻りました。
有楽町に、「自閉っ子シリーズ」のイラストレーター、小暮さんが壁画を描いたお店があります。
そこでお食事をすることにしたのです。

小暮さんの描いた岩永先生の似顔絵はあまりに本物に似ているので
岩永先生はどこに講演に行ってもすぐにお迎えの人に気づいてもらえるんだそうです。
ところが実は、岩永先生と小暮さんが実際に顔をあわせるのはこれが初めて。
小暮さんという人は不思議な人で、どんな人も写真を見れば動画で動かして描けるんです。
画家っていうのはすごい目をしているなといつも思います。

でも岩永先生に関しては、感覚統合検査のビデオも見ているし、大大大博士のDVDにも登場していますし、小暮さんにしてみれば「そういえば初対面だったかなあ」という感じ。もうすっかり旧知の仲のように、宴は最初から盛り上がったのでした。
下戸の岩永先生を差し置いていつものように二人で二本ボトル(プラス追加のグラス)を開け、大いに語り合いました。仕事の話もありますが、つきあいの長い小暮さんから私の過去の暴露話も。
「この人(=浅見)はね、つきあい長いから知っていますけど、昔から腰抜けとか弱虫が嫌いなんですよ。大魔神佐々木のことを『8球しか投げないのにだらだら汗かいて弱虫』と言ったときにはびっくりしましたね」とか
「最近は浅見さんと飲みに行ってもいっぺんに赤白ワイン二本注文したりしませんね。一本ずつになりました。われわれもすっかり酒量が減りましたよ」とか
小暮さんは好きなことを言っていました。そんなことあったっけ? まあいいや、どっちでも。

小暮さんのブログに、その日の様子が書いてあります。

そして、以下が岩永先生の小暮さん観。

先日お会いして、小暮さんも障害のある方に対する理解が自然とできる方だと思いました。
お考えが浅見さんと似てますね。
異文化を興味を持って楽しめる人は、障害のある人に対しても柔軟ですね。
人の多様性を当たり前のこととして受け入れられるからなのでしょうか。

やっぱりね、平日午後二時から国技館で酒飲んでいるような人種は、人間の多様性にはぐっと寛大になります。
小暮さんにしても私にしても、「いいじゃんいろいろで」っていうのが障害者の方に対する原点だと思います。
でも自由を担保するにも、自律的な生活を送るための「修行」はしておいたほうがいいよね。
たぶん今後花風社が進むのはこっちのほうじゃないかな。

「障害があるからって何もせんでもいいというのは差別だ」
大大大博士もそうおっしゃっています。もちろんそのための援助は惜しまないことが前提ですけどね。

楽しい夕べでした。

写真は小暮さんの描いた壁画。こういう絵も描けるんですね。器用。


治りやすいところから治す

2010-04-19 08:48:25 | 日記
さてさて肝心の岩永先生の講演内容。
何しろかの神田橋先生が「正しい道を行かれる方」と評価されている先生。
うちの著者でもあるので、おつきあいは深いですが、講演をじっくり聴くのは初めてでした。

なぜなら岩永先生の講演会のときには、これまで並んで登壇して、ニキさんや藤家さんとの対談の仕切りを務めていたことが多かったからです。
純粋にお客として、先生単独の講演を聴くのは、実はこれが初めてなのでした。

まず意外だったのは、岩永先生が意外とおちゃめなこと(笑)。
まあニキさんとかと一緒だと、ニキさんがお笑い担当になるのは必然です。
でも岩永先生も実は笑いの取れるOTさんなのでした。

講演は二部構成+質疑応答。実に内容が濃かったのですが、神田橋先生が高く評価される理由がよくわかりました。
同席した神田橋先生のお弟子さんも同じことをおっしゃっていました。
理由はたくさんありますが、ここに一つだけ書きます。
「治りやすいところから治す」という姿勢が神田橋先生と岩永先生には共通しています。

治すとは無理強いではありません。
岩永先生は特性への配慮を求めて、ときには学校とかなり強い姿勢で交渉されます。
とくに視覚過敏と聴覚過敏は治りにくい特性で、そのための配慮を求めて学校に出向かれることも多いようです。
研究一辺倒の方ではないのです。かなり臨床と研究を両立されている方です。

でも一方で、治りやすい特性もあります。
たとえば前庭覚のバグ。
これはかなりの確率で改善することができるそうです。
そして前庭覚の改善によって、姿勢がよくなるだけではなく、情動が安定することが経験的に多いそうです。
これは、私なんかにとっては当たり前のことに思えます。
藤家さんが以前、新しい場所を怖がってばかりいたのは、このへんが大きかったと思います。
でも前庭覚が安定すれば、世界への恐怖感、対人関係への恐怖感が和らぐのは当然のことに思えます。
検証もこれから進むでしょう。
療育の世界は、まだまだ検証が後手後手に回っています。
どの段階でその療法を取り入れるかは、本当にそのおうちおうちの方針です。
あ、前庭覚については、「続自閉っ子」「続々自閉っ子」のP5のイラストがとても理解しやすいですのでぜひご参照を。

治りやすいところを一つでも治せば、全体のQOLは上がります。
そうするとそこが突破口になって、発達が促されます。
そうなると今まで治りにくかったところも、改善されます。
こういう臨床家としての姿勢が、神田橋先生と共通していると思いました。

会場では書籍の販売も行っていただきました。
お買い上げのお客様でご希望の方には、ありがとうございますオリジナルスタンプも捺しました。
一部銘柄は売り切れで、ご不便をおかけしました。
群馬県自閉症協会の皆様、大変お世話になりました。