ルドゥーテ「美花選」展

2015-05-31 00:00:43 | 美術館・博物館・工芸品
千代田区立日比谷図書文化館で開催中(~6/19)のルドゥーテ「美花選」展へ。日比谷公園の中ということで、日比谷公園が花に包まれる時期に特別展が開かれている。

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このルドゥーテさんだが、マリー・アントワネット、ジョゼフィーヌに仕えた宮廷画家ということであるが、マリー・アントワネットとジョゼフィーヌと一言でいうけれどその間にはフランス革命があって、次々とギロチンの上下運動が行われている。生年月日をみると、マリー・アントワネットが1755年生まれ、ルドゥーテは1759年生まれ、ジョゼフィーヌは1763年生まれ。ちょうど間である。マリー・アントワネットが捕まった時には故郷のベルギーに逃げていたのだろうか。

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そして、彼の作品は基本的に「版画」である。それも「点刻彫版」という技法で、特徴は、花弁や葉の輪郭を線で描くのではなく、無数の小さな点を刻んで表現する方法である。結果として緻密で繊細優美ということになる。デジカメの画素みたいな技法なのだろう。

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さらに、刷り上がった作品に、うっすらと着色をしているそうだ。初期の頃は肉筆も描いていたようだ。

チューリップとバラの品種改良はヨーロッパ文明の象徴ともいえるだろうが、特に描くのを得意としていた。そのあたりが宮廷画家の本領なのだろうか。

なお、本展覧会の付帯行事の一環の中に、定員40名、参加費500円で、「大人の塗り絵、ルドゥーテのバラを塗ってみよう!」というのがあるようだが、「それはまったく違うでしょ」と言いたい。

先駆者は塚田賞

2015-05-30 00:00:44 | しょうぎ
故酒井克彦氏の詰将棋作品集『からくり箱』を読む。

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長いものや短いものがまじっていて、問題を見て、ある程度の筋を見てから解答の棋譜を読みながら解読していく。要するに、勉強しているわけだ。ご存知のように、見つけにくい手の多い作家である。

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そして、驚いたのが第40問。1976年に発表され塚田賞を受賞となっている。この問題、いきなり▲2八金、△3九玉、▲9三角には、△4八角合以下、打歩詰になる。正解は、▲3八銀、△1八玉、▲2九銀、△同玉と銀を捨てると、先ほどの変化の先に、▲4九馬という手があり、以下△1九玉、▲2八角以下角が成って空王手に△3八歩という中合が出てくる。

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ところが2011年頃に私が作った作と途中で極似となる。ちょっと六段目あたりの構造が異なるのはさきほどの▲2八角以下の空王手で角が成れないようになっていて、逆に3筋に歩が立つので中合が△3八香になり、さらに中合歩が登場し、香で詰ますことになる。逆に序盤の打歩詰変化がない。

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もちろん盗作のつもりはないのだが、先駆者がいたというのは、ややがっかりである。ということで、おおた作に酒井流の序盤の打歩回避を合体させると別の図ができるのだが、なんというか、それだけの話である。門外不出の秘蔵ファイル行き。


さて、5月16日出題作の解答。

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▲1三飛 △同銀 ▲同歩成 △2一玉 ▲1一飛 △3二玉 ▲4三玉 △3一飛成まで9手詰。

動く将棋盤は、こちら

なお、角が4六にいても詰む。


今週の出題。

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比較的単純である。からくり無し。

わかった、と思われた方は、コメント欄に最終手と総手数と酷評を記していただければ、正誤判断。

この世のこととは思えない、とのこと

2015-05-29 00:00:18 | 市民A
先日、海上保安庁の方から職務以外の話として聞いたのだが、この1年で起きている二つのことが、ほとんど同じ場所なのに、そういう報道がされていないのが不思議ということだった。

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一つは、西之島の噴火。場所は、北緯27度14分49秒。小笠原諸島は南に二本の海底火山嶺が伸びるが、その西側の方の列の真ん中あたり(つまり、日本列島から非常に遠いわけじゃない)。ご存知のとおり、新島が旧島を飲みこみ9倍になり国土が2平方キロ増加している。

残念なことに、公海は西側にあるのに対し、溶岩が北側と東側に流れているので、排他的経済水域(EEZ)は、それほど拡がらない。

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そして、問題の二つ目は中国船の宝石サンゴ密漁事件。200隻もの密漁船が押し寄せ、取り締まる方の体制不十分でやり放題で、海底のサンゴ礁は底攫いされ、そこに住んでいた魚はいなくなってしまった。1キロ16万円という情報に群がったわけだ。

そして、この二つは、ほぼ同じ場所だったわけだ。もちろん密漁船は、あちこちに動き回るわけだが、取り締まる方は、火山の噴火を見ながら密漁船と戦うということになり、「この世のものとは思えない光景」が出現していたそうだ。

巡視艇の大きさを100とすると密漁船の大きさは10分の1の10位だが、実際に密漁船に乗りこむ小型艇のサイズはさらにその10分の1の1程度で、相手に体当たりされれば終わりだし、といって米国の警官みたいにやたらと銃器を撃ちまくるわけにはいかない。結構、怖いだろう。

その後、大至急改正された法律で、罰金が100万円から3000万円になり、密漁サンゴ1キロに対し600万円の罰金が上乗せになるということで、数人が捕まって裁判が始まったところだそうだ。それから、激減したそうだ。(案外、対中問題はあっという間に一致団結して法律ができることを考えれば、今の政権がやっている安全保障法案などあらかじめ作らない方が、「何を突然決めるかわからない国」と外国に思わせることになり、防衛上有効ではないかとも思える。


そして、同時に起きている二つのことが、バラバラに報道されるのは、報道する側の人間が、現場にいないからわかっていない、ということに尽きるのだろう。

女帝(上田正昭著)

2015-05-28 00:00:58 | 歴史
jotei日本の女帝問題というと、イコール皇太子ご長女さまの問題と捉えられかねないが、本著が書かれたのは昭和46年。その時、現皇太子さまは10歳で、現皇太子妃は7歳で、現皇太子弟親王は6歳で現皇太子弟親王妃は5歳位のはずで、その後、こういう展開になろうとは想像していなかっただろう。

つまり、本書のテーマは女帝制の是非ではなく、古代日本に登場した女帝たちの存在の意味を問い直した著である。ということで、江戸時代の明正天皇のことも、ほんの些少しかふれていない。

まず、邪馬台国の卑弥呼。日本史の最初のスターである。3世紀の日本で何が起こっていたかは、わかっていないために、邪馬台国がどこにあって、どれくらいの国であったかは不明だ。この問題は日本史の学閥の踏み絵みたいになってしまって、現代史の解釈とともに、史学の発展を妨げることになっている。

ということで、卑弥呼はシャーマン的な存在なのか、実質的支配者なのか、現代日本のような部族民の象徴なのか、よくわかっていない。そしてその後混迷の時代があり、再び女王台予が担がれて国はまとまる。この台予についても手掛かりは少ない。

そして、4世紀のヒロインは神功皇后。「神」という字を持つ天皇は、かなりの実力者であった。同時に皇后の場合も同じだろう。朝鮮半島との抗争では中心的な権力を持っていたということになっている。このあたりは記紀や神話の世界による。卑弥呼のことを神功皇后が知っていたかどうかは不明だが、知らなかったのだろう。

そして、推古天皇。彼女と聖徳太子とは血縁(叔母と甥)で、それぞれ蘇我氏に近い。このあたりは政権争いの真ん中にいたわけだ。

その後、女性天皇多発時代が来る。奈良時代七代の天皇のうち四代は女帝である。

そして歴代の女帝のうち、ある意味で最も評判が悪いのが、称徳天皇。愛人道鏡を天皇にしようとしたと言われている。

本書では、なぜか彼女の肩を持つ書き方で、相当のページが費やされていて、女帝と道鏡の関係について、「愛慾関係」ではなく「恋愛関係」であったとされている。俗説では、道鏡の天然の持ちモノが気に入っていただけというのだが、それを否定し、二人の関係は真実の愛慕だったと書かれている。

少し調べると、女帝は770年に53歳で他界し、法王は左遷され北関東のある寺院の別当として2年後、72歳にして亡くなる。道鏡が女帝と出会ったのは760年、60歳である。その時、女帝43歳。なんとなく、すさまじいものを感じる。

そして、本書は、ここまでで終わる。

あふれだした難民の責任は

2015-05-27 00:00:23 | 市民A
地中海で難民船が沈没するたび多数の犠牲者が発生している。今年はすでに4000人という説もあるが、もともと密航なのだから統計なんかないわけで本当のところは誰も知らない。

これについて大手の海運会社の人がレポートしている。

まず、難民の背景には「アラブの春とその後の混迷」がある。民主化運動の先にあるはずの理想についてバラバラであったがために、宗教間の戦いとか政府対反体制勢力とか、今まで独裁制の元でコントロールされていたものが噴出したし、複雑すぎる関係のため欧米や中露も深入りしないため、延々と出口なき混迷が続いている。

そして泥沼化した祖国を離れるしかなくなった人がたくさんいて、主に二つのルートになる。一つは、シリアやイラク方面。こちらは陸路を経てトルコに向かう。160万人ほど。

もう一つが、北アフリカや地中海沿いのシリアから欧州へ向かうルート。これが難民船である。

そして、そもそもお金を持っていないので、小さな船に溢れんばかりの数の人達が乗りこみ、通りがかる外航船舶に救助を求めるという方法である。そして欧州の安全な港に連れて行ってもらうというのが唯一の安い方法だ。中には、自走できない小舟やゴムボートに乗って、潮任せで漂流し、近くを通る船舶に拾ってもらうことを神に祈るだけの場合もある。インシャラー。

一方、この地域を通る船舶は多いし、漂流民がいれば救助しなければならない。国際法により義務付られているし、船乗りの掟みたいなものだ。

しかし、遭難船の船員の救助というのとは、まったく状況が違うわけだ。数が多い。500人の時もある。子どもや病人も多い。テロリストが混じっているときもあるし、暴れられてもコントロールできない。貨物船の場合、人間を収容する場所も少ない。結局、最寄の国であるイタリアの港に連れて行くことになる。費用はかかるし、本来の貨物の運送のスケジュールはめちゃめちゃになる。誰からも何ともしてもらえない。助けても喜んでもらえない。

結局、問題の押し付け合いとなっていて、言い出した人が責任を取らなければいけないということになりそうで、前に進まない。

日本海でもそういうことが起きるのだろうか。地中海ほど船舶はいないが、中国から米国に向かう大型船は青森と函館の間の津軽海峡を通っているらしい。

陸続きという意味では中国がトルコ的になるのだろう。一方、海路ではとりあえずイカダに乗って漂流し、見つけた船舶は、ピックアップしたのち、近場の青森とか函館に置いていくのだろうか。

学歴不要論とタイガーマザー

2015-05-26 00:00:05 | 市民A
何を今頃、という感が強いが、世界屈指の学歴偏重国家(屈指というより韓国と並ぶ双璧と言った方がいいかも)であるシンガポールが、「学歴」よりも「職業訓練重視策」へ舵を切ったようだ。政策名は「アーン&ラーン」。大学ではなく専門学校卒業生で職業に就いている人に国がお金を出して、高等技術を学ぶためにOJTの場を提供しようということ。

背景としては、高等教育(大学卒)を受けた人の就職先がなく、一方、工場やホテルの従業者が少なくなって、移民が流入したり、経済成長が鈍化している事情がある。

そのために、リー・シェンロン首相は、学歴がないのに成功した人を称えたりしているらしい。

まあ、日本ではずいぶん以前からこんな話はあって、高学歴と高収入は、直結しているというよりも単に確率の問題と思われている。だいたい高収入になる方法がよくわかっていないということもあるだろう。数十年前に学生に人気の企業といったことを考えれば、電気のS社とか航空のJ社とか・・東大出身の企業家が太り過ぎて刑務所でダイエットしたりとか・・

ところが、シンガポールの問題は、「急ブレーキで方向転換」ということ。車の運転で言えば、スピンターンである。そういう社会に徐々に変わっていくなら痛みも小さいのだろうが、年収の3倍も教育費をつぎこんで、こどもを学校に入れた教育ママ(タイガーマザーというらしい)にとっては、目の前が真っ暗になる話だ。

さらに、結局、大卒者とそれ以外の人の較差は残るか、さらに拡大するかだろうから、こんな政策がうまくいくはずはない。大学の定員を減らしたって、韓国や米国の大学に行くのだろうから、もっと混迷するのかもしれない。

一方、日本の状況を考えると、高校の進学率はほぼ100%に近い(97~98%)状況では、人生で本気で勉強するタイミングは、レベルはともかく大学を受けるための準備の1~2年間しかないわけだ。つまり、多くの一流、二流、三流大学が混在する状況は、一流、二流、三流のそれぞれの若者の、人生最初で最後(唯一)の勉強の機会を与えているとも考えられるような気がする。

007 第10作、第11作

2015-05-25 00:00:29 | 映画・演劇・Video
テレ東系のBSジャパンの007シリーズの連続放送だが、着々と月2本ずつ進んでいる。といっても第5作を飛ばして放送している謎はある。そろそろ第5作を何らかの方法で観ることができるのかどうか確認しなければならないかもしれない。

まず、第10作「私を愛したスパイ」。
英国の原子力潜水艦が行方をくらます。潜水艦ジャックだ。(もっとも、英国人の母国であるノルウェイの北まで行ってソ連に対してのスパイ行動をとっているのだから、捕まってもしかたない。)しかし、同時にソ連の原潜も行方がわからなくなる。

そして、どちらの国のスパイも捜査線上に浮かんだ怪しい国、エジプトに向かうが、そこではすでに、英国の高官とソ連の高官が、共同作戦を実行しようということに決まっていた。

ソ連と英国(米国)とを同時に敵としていたのはC国だが、まだ、原潜ジャックの実力はない。

そして、ストーリーは、その首謀者の原潜捕獲方法とその目的といういつもの荒唐無稽な展開と、もう一つはジェームズ・ボンドと手を組むソ連の女性スパイの関係。敵であり味方である。

さらに、今回登場する悪役が悪役史上に残る「ジョーズ」。サメを鉄製の牙でかみ殺す。次の第11作にも登場。役者の方は2M18CMの巨大男。バスケットの選手だったらしい。昨年(2014年)9月に74歳でご他界。

そして潜水艇にも変身する自動車が登場。なんとなく007に登場した荒唐無稽な小道具だが、数十年後に実用化されることが、ちょっとこわい。というか、新製品を開発する人は007映画を観て影響されているのだろうか。

そして、盗まれた原潜から米ソ両超大国の都市に向かって核兵器(水爆)が発射される数秒前に着弾目標が変更となる。それぞれの原潜に向かって核兵器が発射される。

007シリーズで最初に核兵器がさく裂した。世界の大部分の人は、米ソの都市が狙われたと思わず、最初から原潜に向かって発射されたと思うだろう。10年は海の魚が食えなくなった。

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次に第11作『ムーンレイカー』。よく考えると第10作と似ているような気がする。

荒唐無稽であることとか、二国間でスパイが協力すること。(今度は米英協力)

最初にスペースシャトルが奪われる。そして、宇宙の果てから、ブラジル奥地で見つけた猛毒植物から抽出した毒ガス兵器を地球に向かって発射。

レーダーにとらえられない謎の宇宙ステーションの中で、レーザー銃で打ち合い。あぶないじゃないか、暴れるのは表でやってくれ、ということで、宇宙ステーションの外で撃合い。撃たれた方は、グッバイになり宇宙空間を漂う。いずれ化石になって人間型隕石として地上に落ちるだろう。

監督のせいもあるのだろうが、ユーモアが過ぎて、恐怖感を感じるシーンが少ないような気がする。

岡本太郎の生命体

2015-05-24 00:00:29 | 美術館・博物館・工芸品
表参道の岡本太郎記念美術館で開催中の『岡本太郎の生命体』展へ。

都会の中の美術館。ようするに彼の自宅兼アトリエ。没後、残された作品や使われていたアトリエを保存し、小規模の庭園とともにミステリアスなスペースとして市民に公開している。もっとも一般的に岡本太郎の作品は巨大なわけで、小品をこのような形で集めるというのは、いい考え方なのだろう。

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何回か訪れているのだが、こういう場所にあると、文化人仲間が集まってきて、毎晩宴会を続けて体を壊すというのが洋の東西を通じて一般的なような気がするが、そういう欲望はあまりなかったのだろう。普段はとっつきにくいオッサンタイプだったのかもしれないし、突然、「爆発だ!」なんて言われると酔いも醒めてしまうかも。

で、彼の生命体は、もっとも輝いていたのは大阪万博の時だ。万博のメーンシンボルである太陽の塔には、四つの顔があった。顔の部分にある「黄金の顔」。胴体に輝く「太陽の顔」。背中には「黒い太陽の顔」。そして四つ目が胴体内部の下部にあった「地底の顔」。

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この顔には曰くがあり、万博終了後、姿を消し、その後、杳として所在がつかめないわけだ。そんなに小さなものじゃないのにどこに行ったのだろう。持ち主情報はまったくないし、廃棄業者からの公表もないところを見ると、誰かが秘蔵している可能性がある。美術品とは、そういうものだ。

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現在、太陽の塔は耐震補強のため工事中なのだが、2016年に再オープンの際は、「地底の顔」を復元するそうだ。姫路城よりも楽しみにしているのだが、たぶん、1年位は長蛇の列だろう。万博の時と同じだ。

その太陽の塔の内部にいたのが、数多くの岡本式生命体。たぶんモデルは人間とか犬とか身近な生物なのだろうが、その異形の生命は人間の心のミラーなのだろう。朝起きて、鏡を見るとそこにいるのは、心のゆがんだ私の分身、ということだ。

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ところで、岡本太郎氏は、後年、縄文美術を絶賛する。原始の匂いだ。その後の弥生時代人は半島から米作を持ち込んだといわれるのが数年前までの考古学の主流だったのだが、この数年で、まったく異なる学説が主流になっているようだ。つまり、米が渡来したのは、縄文時代であり、弥生時代人とは縄文時代人と同じ民族で、長い年月を経て遺伝的に変化したものというそうだ。ちょっとにわかには信じられない。

羽生善治×磯崎憲一郎

2015-05-23 00:00:43 | しょうぎ
棋士羽生善治が作家磯崎憲一郎と一局、いや対局ではなく対談をしている。それも新潮社の書評誌「波」。まったくレアでミニでチープ(約100円)な雑誌だ。磯崎憲一郎氏の新刊「電車道」をサカナにお互いの個性を発揮するという趣旨なのだろうが、結構、違う方向に進む。

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どうも、以前、この二人に加え横尾忠則氏という大御所アーティストの三人がランチをしたことがあるそうだ。その後、横尾氏は「将棋も文学も美術もその源流は一つ」と荒っぽい結論を出したそうだが、今回はその後半戦らしい。長老抜きでやろうということだろう。

ところが、この対談、話しているのはほとんど磯崎氏で羽生氏はインタビューアーになっている(あるいは、ボケとツッコミ?)。まあ、テーマが新刊についてなので当然かもしれない。

で、ちょっとだけ磯崎氏から出た将棋界の状況についてだが、「将棋という一つの大きな問題を棋士全員で解いているような感じがあります」とのこと。確かに、小説家全員が一つの問題に取り組んでいるということは、反核運動以外、なさそうだが、1970年代にロマン・バルトが中心になって物語の構造分析が行われてきた時代があったものの、長続きしなかった。

結局、横尾忠則氏には見えていた、「文学と将棋と美術」の共通点を二人だけでは見つけることができず、ついに羽生氏が見つけた共通点は、「作家には締切があり、将棋には持ち時間という制約がある」ということになった。(締切は延ばしてもらうことが可能だが、持ち時間は延ばしてもらえないという相違点はあるが)


さて、5月9日出題作の解。

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王を下に追い、変な桂で詰ませる。

動く将棋盤は、こちら


今週の問題は、順に追っていけば、詰むはず。

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解ったと思われた方は、コメント欄に最終手と総手数と酷評をいただければ、正誤判断。

カニちらしとラーメン

2015-05-22 00:00:29 | あじ
登別・苫小牧シリーズの最後は、食べ物。

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まず、カニちらし。どういうわけか、昼と夜と二回続けて。まあ、食事の相手が違うので。他の地区のカニちらしと決定的に異なる点がある。

カニ身が白くない。なんらかの醤油系のたれにつけている。北海道の他の地区、また本州の方でもカニちらしは白いほぐし身だ。

味は、したがって複雑である。これはこれで別の料理といえるだろう。なんとなく、これが北海道的というように思う。

そして、新千歳空港。またも北海道ラーメン道場に行く。あいかわらず8店の中で、一番入口にある「えびそば」の店に行列ができている。ここで並ばなくても札幌や新宿や川崎に店がある。かっぱえびせんみたいな味のラーメンだよね。

そして、その隣に見慣れぬ一店が。どうも新しい出店のようだ。ここで初めて気が付いたのだが、なんらかの事情で店舗が入れ替えになるようだ。つまり、全店制覇なんて無意味のわけだ。

その店は「空」。いかにも空港らしい名前だ。

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定番の「みそラーメン」。これは、すばらしい。味噌味のはずが塩の味しかしないようなラーメン店も多いのだが、こちらは味噌の味がある。もっとも有名店の多くが、来客が増えてくるとスープの作成が自転車操業的になる傾向があるので、今後のことはよくわからないが、今のところは順調だ。

このラーメン道場でお勧めできるのは、「開高」と「空」であると断言できる。(もちろん、お口に合わなくても私は何の保証もしないし、もちろん返金したりはしないのでよろしく)。

海の駅にピンコロ地蔵(姉妹都市の謎)

2015-05-21 00:00:23 | たび
苫小牧の海岸には、色々と説明しにくいものがあるのだが、まず海の駅。よく考えると、道の駅というのはあるが、海の駅というのは一般的にあるものなのだろうか。

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要するに卸売市場の近くの市場と言うことは、築地市場の場外みたいなものだろう。確かに、市場感のある安い食材が多いが、観光客用に安くないものもある。まだ、きょうの行程は長いし、生魚をぶらさげて歩くわけにはいかないので、きょうは観るだけということにした。

そして、駐車場のはずれに、何か心霊ゾーンがあると思って近づくと、どうも苫小牧市の姉妹都市に関係があるらしい。

で、苫小牧には姉妹都市、友好都市が4つある。
まず、姉妹都市としては、八王子(八王子市から移住した人が多い)、日光(アイスホッケー関係)、そして、ニュージーランドのネーピア(パルプの輸出港と輸入港の関係)の3つ。

そして、友好都市として、中国河北省の秦皇島市。エネルギーの輸出港らしい。平成10年に友好都市の盟約に調印。

では、姉妹都市と友好都市の差は何かというと、特に決まりはなく、ある意味、差がないとされていたのだが、中国との場合「姉妹」となると、どちらが姉でどちらが妹かということでもめるため、友好都市ということにしているようだ。韓国とは、あちらが漢字文化を表向きは認めないため、姉妹問題は起きないし、そもそも友好的じゃない。

ところが、最近は、その他の国とも、まず友好都市という関係を作り、友好関係の実績を積み上げた上、姉妹都市ということになるようだ。結婚入籍する前に同居して相手の素性を確かめるようなものだろうか。素性なんかわかっているのだけど。

そして、その秦皇島市は、古くから中国統一のために重要な軍時事的ポジションにあり、都市の名前も秦の始皇帝に依るそうだ。中国共産党幹部の避暑地であり、古くは林彪もここから飛行機で逃走を企て失敗した。奇妙なことに、富山市と京都の宮津市とは姉妹都市であり苫小牧と友好都市になっている。街中に有名寺院や寺院遺跡があるそうだ。

そして、その寺院の中の一つが地蔵を拝しているのだが、長寿を始皇帝が祈ったといわれているため、長寿のために地蔵を敬うということになり、苫小牧にも地蔵があるわけだ。

さらに、日本国内、いや世界で僅かに展開中のある宗教が、本来、長寿を祈るための地蔵の方向性を定めている。



その宗教とは、・・・ピンコロ教。

要するに、元気な時はピンピンしていて、病気になったらコロリと死んでいけますように、という祈願みたいなものだ。

しかし、あまり同感できないのだが、普通はピンピンの人がコロリとなると、「犯罪の香り」ということになる。

個人的には、ピンピンからいきなりコロリというのは、あまり好きになれない。

ピンピンの次は、病気で横たわる期間が少しあれば、人生の失敗を振り返って反省する時間が欲しいものだと思っている。

地蔵を写真で撮影すると、カメラの中にピンコロ病ウイルスが潜入しそうなのでやめた。

苫小牧のイルカ

2015-05-20 00:00:41 | たび
苫小牧は北海道の海の玄関だ、と書くと、いかにも北海道は本州(あるいはナイチ)の植民地みたいな表現で心苦しいのだが、実際、オホーツク側の小樽は港が小さい。石原一家の父(というか祖父というか)が日本郵船にいた頃は民間の大型船はなかった。また石狩湾にも大型港湾ができているが、冬季の時化(しけ)の際は不良港となってしまう。

ということで、やはり海の玄関ということになるのだろう。

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沖合を定期フェリーが入港に向けて航走してきた。20ノット(時速37キロ)程度の速力のように見える。

海はもちろん綺麗なのだが、イルカが何頭か浮かんでは沈んでを繰り返していて、なんでこんな陸に近く浅い所にいるのだろうかと、ふと「?マーク」が頭の中をよぎる。さらにイルカの尾びれにしては黒過ぎるような気がして、目を凝らして見ると、人間だった。何か海底の方から採ってきて、海面に浮かべてあるザル状の中に収穫物を入れているように見える。それも何頭も(いや何人も)いる。

つまり、ミ・ツ・リ・ョ・ウ?

しかもよく考えると、私の立っている場所の近くに、クルマが何台も止まっていて、中に人がいる気配が・・

数日前の地元のニュースで、海岸を散歩中の人が、白骨死体を見つけたことが書かれていた。

そして、目撃者は、震えの止まらなくなった足で現場をそっと後にしたわけだ。

クマ牧場再開につき

2015-05-19 00:00:50 | たび
登別といえばクマ牧場というのは数十年前から知っていたのだが、ヒグマは恐い。確か西村寿行の小説では、ヒグマのことを「おやじ」と呼んでいたり、ヒグマが妊婦の腹を食う話が書かれていたような記憶がある。

北海道に最近行った友人は、釣り竿をかついで渓流を歩くのが趣味らしいが、自分がエサになることを考えていないような気がする。

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といっても、最近までロープウェーの補修をしていて、閉園中だったようだが、4月末から開園したようで、さっそく行ってみる。まず、ロープウェーに乗るのだが、基本的にロープウェーは恐い。原理がよくわからないので、時々、落下することがありそうで、よく仕組みを観察してみると、やはり恐い。

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そしてクマ牧場は、若干、動物の匂いが漂っているのは仕方がない。本来、一頭ずつバラバラに行動するのに、クマ牧場では団体生活だ。刑務所みたいだが、クマにとっては刑務所なのだ。終身刑。

で、エサを投げるとクマが相当な迫力で走るのだが、この迫力、やはりクマに襲われたら助からないだろう。川でも木に登っても追いかけてくるだろう。体の構造は、人間に似ているらしい。20本の爪は長さ10センチ以上だ。

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しかし、もちろん、こぐまは可愛い。成獣で500キロなのに産まれる時は500g。1000倍になる。現在、こぐまの名前の募集中だが、王女の名前が似合うかもしれない。サルにつけてもいいなら、クマでもいいはず。ただし、今のクマ牧場の女王はスリッパという立派な名前が付いているので。

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そして、アイヌ式住居の展示もあるし、倶多楽(くったら)湖も見事に眼下に広がる。8割方が外国人観光客。

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この海と湖が同時に臨める眺望についてどう思っているのか聞いてみたいが、コトバもよくわからないし、外交問題に発展するといけない。案外、この眺望付き山林群を温泉権付きで大人買いしようと下見に来ているのかもしれない。

3/9

2015-05-18 00:00:26 | たび
登別温泉には、9種類の源泉があるようだ。

酸性鉄泉、明ばん泉、緑ばん泉、重曹泉、ラジウム泉、食塩泉、鉄泉、茫硝泉、硫黄泉。

この9種類の源泉に対し、15の温泉宿泊・入浴施設があり、それぞれの組み合わせがある。たとえば、硫黄泉は15ヶ所共通だが、食塩泉は5ヶ所、緑ばん泉は1ヶ所とか。

全部制覇するためには、5ヶ所回らないと行けないと計算してみたのだが、

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もちろんそんなに時間があるわけじゃない。どうも日帰り客は、もっとも安価で、鬼がWELCOMEしてくれる某銭湯に入るのが一般的なのだが、あまり早く出ても時間の都合が合わないので、銭湯の鬼の写真だけ写して、某HOTELに移動し日帰り入浴に決める。

といっても温泉宿泊客のためのホテルであるので、私は「のけもの的」である。肩身の狭い思いをするわけで、やはり銭湯の方がという空気も漂っているのだが、鉄泉、硫黄泉、食塩泉に浸かる。どうも食塩泉は、体の芯まで温まり過ぎる。冬眠を終えたばかりの体温32度のヒグマじゃないので茹ってしまう。

とても体力的に温泉のハシゴなんてできそうもない。新千歳空港の北海道ラーメン道場全制覇みたいに温泉巡りをしようというのは、かなり難しそうだ。12種のうち3種制覇ということで卒業だろうか。

そして、どうも、このホテルには外国人観光客はいない。他所よりも少しだけ割高だからだろうか。あるいは、他国には温泉文化がないのか。(パンフレットに書かれていないさらに上級の超豪華ホテルがあるのかもしれない。グレート・マンダリン・インペリアルホテル グランデ・ノボリベツとか。)

参勤交代(大名家の旅)

2015-05-17 00:00:45 | 美術館・博物館・工芸品
羽田空港内にある美術館、『ディスカバリーミュージアム』では、細川家のお宝管理団体でもある永青文庫コレクションの展示が続いているが、今回のテーマは参勤交代。

なにしろ細川家は国元が熊本県だ。かなり遠い。隣の鹿児島の島津家の方が遠いのだろうが、記録では島津家の旅程が40日から60日となっているので、1000人を超す集団の移動では大出費だ。それも2年に一度ということは、毎年1回、片道旅行をしていることになる。

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そして、細川家のお決まりコースというのは海陸併用型。まず、九州を横断して大分県の鶴崎に向かう。そして、殿は2階建ての御用船(舟屋形)に乗る。ファーストクラスだ。その他の武士は別の船。記録に残る中では、67隻、786人、馬7匹。その後、瀬戸内海を潮をみながら東上し、大坂に上陸。その後、陸路を江戸に向かうわけだ。総費用は23億円。

実際には、費用がかさみ、多くの藩では陸路部分を増やしてコストセーブを行ったようだ。ただし、島津藩は、当初は海路だったのだが、幕末の頃は、陸路に変更の隠れ蓑の下、長崎に立ち寄ったり、各地で諸藩と接触したりしていたようだ。

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ところで、細川家に残る、参勤交代用の地図だが、瀬戸内海西部の海陸行程図になっているが、奇妙なことに九州大分の鶴崎港と兵庫方面の行程が書かれているのだが、九州と四国が陸続きになっている。いかに地図に疎いとはいえ、それは決定的に困るのではないだろうか。単に絵師が無知だったのか、誤った地図には何らかの意味があるのだろうか。

まったく、わからない。