うれしさも中くらいなり おらがメダル

2004-08-31 15:24:54 | スポーツ
0832b0f2.jpgアヌシュ選手がドーピングの再検査を受けずに失格し、室伏選手が金メダルに繰り上がった。実際にメダルを手にするまでには時間がかかるのかも知れない。新品のメダルが欲しいものと思う。

さて、このドーピングの規定はオリンピックムーブメント/アンチドーピング規定に書かれている。あまりの長さのため斜めに読んだが、禁止薬物は効果から言って大きく二つの目的に分かれる。一つは、筋肉増強剤としてステロイドなどを使うこと。二つ目は試合に際して、興奮剤を使うことである。アヌシュ選手の場合は試合前と試合後の尿が別人のものというお粗末な手口であるため、薬物が検出されなくても不正行為が行われたのは間違いない。試合前の尿が本人のものであれば、試合用の興奮剤と推定され「つい手を」というひとかけらの同情を得ることは可能かもしれないが、試合前も別人のものだとすると、筋肉増強剤の可能性が高い。1988年のソウル大会でベン・ジョンソンが金メダルを剥奪されたのが有名である。当時、取引先の企業が彼をCMに起用したり、テレカにして配ったりしていて、後始末に苦労していた。
しかし、アンチドーピング規定の解釈には問題を感じることがある。ほとんどすべての種類のクスリで、使用をゼロにすることが求められているのではなく、一定の数値以下にすることが求められているのだ。言い換えれば、たくさん使うのはNOだが少し使うのはYESということになる。また筋肉増強剤にしても、大会の時に使用痕跡が消えていればかまわないのである。

さて、10年ほど前に副作用の知識もなく、うかつにもこのステロイド系のクスリを筋肉注射したことがある。ひどく苦しんでいた花粉症のためである。正確な薬名と医師名は省く(副作用があっても使いたいと思う人がいるから)が都内某所の変な医者である。つてをたどって1本打ってもらったのだが、針を抜いてから、「ところで、心臓とか腎臓とかに異常はないか?」と聞くのだが。順序が逆である。いかにも信用ならない。しかし、花粉症はまったく出ない。薬のせいで元気はつらつである。その2年後に2本目を東京郊外のインターチェンジ近くの医院で打つ。噂を聞きつけ長蛇である。「お尻に注射するから」と言われ、ズボンを少し下ろしはじめると、「そのままでいいから」と立たされたまま、腰の横から注射された。いかにもあやしい。

心配になり友人の医師に聞くと、「二度と打ってはいけない」と厳命された。花粉症などで使うべきクスリではないとのこと。副作用は大きい。生命のリスクがあるような時に使う薬と怒られてしまった。その二回とも数ヵ月後に、眠り続けていた親知らずが生えてきた。二本目が生えてきた時には因果関係を確信することになった。歯科医が驚くほど立派な親知らずで抜歯に苦労した。

ところが、2年前に東アジアで大流行したSARS、患者にはこのクスリが大量に投与されたそうである。生命リスクのある場合の特効薬。まさに副作用は二の次という場合である。花粉症くらいはあの手この手で耐えるしかない。

ダイエー碑文谷店に見る集客力は?

2004-08-30 15:30:04 | マーケティング
f0c720b6.jpgダイエー碑文谷を見に行く。ヒモンヤと読む。読めない人間は、都会人ではない。
環状七号と目黒通りの交差する柿ノ木坂陸橋からすぐの場所に立地する。古くからおなじみのスーパーである。もちろん一階にはUFJのATMがある。

前面道路の目黒通りをクルマで走ることは多いが、私の通る早朝か深夜には開いていない。昨日、所要で近くに行ったおりに、足を伸ばし入店。

ホームページで確認したところ改装直後とのことだが、残念ながらそうは見えない。汚れた壁面を白く塗装し、タイルを一部張替えたのは確認できたが、大改装とはいえない。
7階建ての各階毎に別々のスーパーが重なっているようなイメージで、統一性は感じない。
賑わっているとは言えないが、少しはお客様は入っている。収益力の高い自社ブランド品はほとんど見えない。イトーヨーカ堂にはかなわない。普通のスーパーである。建物のカラーが肌色というか土色というか、輪郭がぼやけた色である。白くすると、幹線道路の排気ガスですぐに汚れるのだろうか。

ポジティブな評価点は、こどもが多いこと。そんなにこどもが多く住む町ではないのにと思う。
まだ、渋谷に遊びに行けない小学校低学年の遊び場なのかもしれない。ファンは大切にしなければ。渋カジの原点だ。
ところで、ダイエー再建案は、ダイエー自主再建案と産業再生機構に売り飛ばすUFJ案に分かれている。本質的にはどちらの案もそれほど違わない。優良子会社の売却とリストラと債務切り捨てである。異なるのは、おカネの出所に国家が乗り出すかどうか、現経営陣が辞任するかである。
本業の活性化が可能と考えている人は少ない。普通の総合スーパーはイトーヨーカ堂だって苦戦している。産業再生機構も機構の存続するタイムリミットまで3年半しかないし、来年早々に新規引き受けは中止すると言っている。

UFJも、産業再生機構の買取り価格が、ただ同然の査定をされ、結果として債務放棄額が膨れ上がれば、三菱との合併比率が低く(不利に)なるだけだ。その他の問題先の整理を進めると、本当に銀行の価値はなくなってしまう。
銀行も、元々回収する気のない融資金を企業に押し付けていたものを、急に元本まで返せというのもインモラルである。名案は無い。too late というしかない。

せっかくの目黒区なので碑文谷の隣町、鷹番(こちらはタカバン)を歩く。高級住宅街ではあるが、この街を歩くと、日本では、ストック型の金持ちとフロー型の金持ちは別物で、両面とも金持ちという人は少ないことに気が付く。

宮本三郎に見るゴージャス

2004-08-29 15:31:26 | 美術館・博物館・工芸品
de25fc03.jpg自由が丘駅から5分ほど、世田谷美術館分館、宮本三郎記念美術館がある。
世田谷美術館はバブル絶頂期に完成した超最高峰の美術館である。とても区のレベルで管理しているとは信じられない豪華さである。一方、今春開館した分館には、建物としては多くは期待していなかったのだ。画家の居宅とアトリエを改造したものとばかり思っていた。しかし、地図をたどるとそこにはコンクリート作り2階建ての堂々とした新築の美術館があったのである。さすがに世田谷区である(世田谷文学館だって凄い)。新築のにおいが感じられる。

開館記念の宮本三郎展は、多くのパブリシティで評論が書かれ、技術的なことについて付け加えることもない。追加すべき賛辞は「豪華」ということばである。豪華とは、値段のことではない。絵画の技法や原色のあふれる色彩のはなやかさと休憩用のソファーに座りゆったりと味わう気持ちである。こころの豪華さ。

多くの作を、画家本人がずっと私蔵していたことを考えると、画家自体、自作とともに生活する豪華さを味わっていたのではないだろうか。各作品は見れば見るほど「巧い」。

最後に、辛口の話ではあるが、所蔵品の量に比べ、展示スペースに限度があるため、詰め込み過ぎなのではないか。ちょっと視覚的に忙しい。もっと少なくても構わないではないか。浮世絵で有名な原宿の太田美術館も展示は一部だけである。
世田谷分館でも何回かにわけて展示すればいいのではないか。場所は便利だし、料金は安い。200円。

気になる人物

2004-08-28 15:32:51 | 市民A
3003c551.jpg気になる人物がいる。が、名前も職業も年齢も、正確には知らない。

その人物とは、地元の横浜つづき区の自宅から出勤の途上7時半頃に近隣ですれ違うのである。
私は駅の方へ向かい、彼は駅の方からくる。つまり彼も出勤なのだ。他人の年齢を想像するのは苦手だが、おそらく50歳台の最終盤ではないかと思う。団塊世代。
駅からは急勾配の坂道。自転車は楽ではない。白いワイシャツにスーツ。一見、銀行業かとも思うが店舗に心当たりも無い。あるいは校長先生とか学校関係だろうか。雨の日は歩きであるから、そんなに遠方までではないのだろう。

しかし、本当に気になるのはその先である。
幸運にも定時に退社し、まっすぐ帰宅する場合、よく朝と同じ場所ですれ違うことがある。夕闇の中、下り坂を自転車で疾走しているのであるが。
何でもないように思えるが、私の場合、通勤時間を終えているのであるが、彼はこれから帰るのである。つまり両側の「のりしろ」が約1時間ある。
いつも早く帰るわけではなく野暮用も多いのだが、早く帰る時にはたいてい出会うということは、いつもこういう時間帯で仕事をされているのだろうか。
私と2時間の勤務時間差である。年間250日で計算すると時間差は500時間にもなる。

団塊世代の方々には「ごくろうさま」という気持ちも少しはある。過当競争は、本人のせいではないし、望んでもないのにマキャベリズムを身に付け、外に対して創造性を発揮するのではなく内向きに同世代の足を引っ張ることでアイデンティティを確立するしかなかった非生産的な世代。

一方、そういう方々があと数年で日本の労働力シーンから立ち去って行った後では、「はたらくこと」に関する考え方も変わり、「価値創造」を実現する時代に変わるのだろう。

頑張れMurofushi !

2004-08-27 15:34:54 | スポーツ
182f9bf6.jpg競技が既に終了したのに金メダルを狙う選手がいる。ハンマー投げの大選手である室伏である。史上最多タイである日本人16個目の金メダルという皮相的な問題ではない。1位になったハンガリーのアヌシュ選手の試合後のドーピング検査へのクレームである。何しろ、同国の選手は既に今大会で二人もドーピング検査で失格している。
これは、自身や日本人選手のこれからの大会での成績につながる問題である。日本勢の好調の一因に、「ドーピング取締りの強化」をあげる声もある。それほど薬物は世界に蔓延しているらしい。開会式の選手宣誓でも、唐突に「薬物は使用せず」ということばが登場するくらいだ。

以前、ある錠剤のおかげで何日も眠らずに遊びつづける友人がいた。効果は絶大だが、後でやってくるつけは大きい。特に情緒不安が暴れだす。
薬物使用は発見されるリスクも大きいが、成功した場合に得る栄誉は絶大である。つい・・・という気にはなりがちだ。「使ってはいけない」から「見つからなければいい」に気持ちが変わる。さらに「見つからないだろう」と楽観的な気持ちになったとき、発覚するものだ。

仮に今回のクレームが認められなくても、執拗に主張することが抑制力となるのである。今後の大会で顔を合わせば気まずいことになるかもしれないが、国際関係なんてそんなものである。最後まで自己主張を続けて、タフネゴシエーターであることを証明して欲しいものだ。

そして、20年後には、そのタフさをもって外務大臣に就任して、日本の周りに永久不滅の国境線を確定してもらいたいものだ。

不動産投信ファンドは金のガチョウか?

2004-08-26 15:36:29 | MBAの意見
e91ab358.jpg少し前、8月23日の日経新聞夕刊の一面記事として「不動産投信ファンド急増」というのがあった。

残高5000億円となっているそうである。しかし、個人向け国債の発行額が1回で1兆7000億円を超えるというのに比べれば、既存の40本合計で5000億円などいかほどなのだろう。

記事はまったく興味本位の書き方で、高配当につられた個人が買っているような書き方であるが、まったく「勝手にしてくれ」というところである。
また記事自体、ファンド形式の不動産投信ファンドと株式形式の不動産投資信託証券(J-REIT)を段落もつけずに両者混在の記事にしていて、商品知識のない人が読むと誤解するだろう。

「勝手にしてくれ」というのは、もともと、資産を持っている人にとっては、自分で金融商品を見つけ、リスクを背負って投資するのは、まさに自己責任以外のなにものでもなく、日経1面に登場してから新商品に気付くような人は、投資などやめた方がいいからである。

また、不動産投資信託そのものよりも、ファンドの方がリスクが少ないかの書き方になっているが、誰もそれを証明したことはないはずだ。誕生したばかりの金融商品をくらべてリスクやリターンを論ずるのは最初の100メートルでマラソンの勝者を予言するようなものである。かつての変額保険の結末は知っての通りである。

現在の不動産投信の旗艦ビルも多くは何らかの問題(キャッシュフローまたは決算対策)で本来の所有者から移転されたものが多く、収益性だってそれぞれ違うのであるから、一律に4%程度の安定的配当を続けることは無理な場合もあるはずだ。

バブルというほどにもなっていないものを騒ぐという精神構造は、十数年前、ある社会主義国家の国営放送局が、局員の多くが官舎住まいなのをいいことに、土地私有制反対風の特番をテレビ放映してバブル破裂の引き金を引いたという説を思い起こしてしまう。

マラソンは平和の象徴か?

2004-08-25 15:37:55 | スポーツ
dcc242a7.jpg昨日(8月24日)、16個目の金メダルは「野球」という評判を紹介したが、はずれてしまった。もっとも、「日本は個人主義の国になって団体競技は弱くなった」という私見の部分は正しかったわけだ。
テコンドーの岡本さんだけでなく、あと一人がんばらなければならない。

ところで、閉会式になだれこんでいくだろう男子マラソンのことである。22日の女子マラソンは野口さんの勝利となったが、勝因は5つある。
 1.実力 2.気力 3.用具 4.作戦 5.幸運
もちろん名誉や金銭に対する欲望もあるかもしれないが、それは2の気力の変形である。強豪選手の途中棄権はまさに5の幸運である。

そして、一週間後の男子マラソンに出場する選手は全員が野口さんの用具(スポンジのくつ底)と作戦(アーリースパート)については既に頭に入れているはずだ。何しろ、いまさらできることは、それしかないから。
シューズメーカー各社は、航空便で大量の靴を空輸するのだろう。またコーチたちは何度も繰り返し女子マラソンのビデオを見ているのだろう。もうできることは少ない。

平和の祭典であるオリンピックであるが、マラソン競技のルーツは紀元前490年にアテネ郊外で起きたペルシア軍とのマラトンの戦いに遡る。約10倍のペルシア軍を打ち破ったアテネ軍の戦士が勝利の報をアテネに走り、伝えたのだ。そういう意味では、アテネにとっての平和とは戦争に勝つことであり、戦争をしないことではなかったのだ。
そう考えれば、アテネ大会のマラソンウィナーにもっともふさわしいのは、イラン人ランナーなのかもしれない。が、出場しているかどうかは定かでない。

ところで、オリンピック中、飲み続けているギリシアワインも在庫切れとなった。やっと渋みに慣れてきたのに、これからも輸入は続くのであろうか。ちょっと気になる。

17個目の金メダル

2004-08-24 15:39:20 | スポーツ
720cbf53.jpgアテネオリンピックの日本選手の金メダルは15となった。残すところあと6日である。

事前のマスコミ各紙の予想は7-11というのが相場であったので、ずいぶんと外れたものだ。もっとも本職の政治や経済の分野でもいい加減であるのだから、驚くことはないのだろう。自分で記事を書く前に、他紙のチェックからはじめるのだから。
反省すべきはマスコミより、鉄槌を下さない読者の方だろう。

本題に戻ろう。15というと、もう史上最高の東京大会(1964年)の時の16に接近している。開催国の有利さもあり、それを超えるのは至難と思われていたのであるが、もうすぐである。どうなのだろう。

できるようなできないような。ここまできたなら、ぜひ「17」を期待した方がいい。なにごとも、タイというのは良くない。「達成感」ということばは、株の世界では、下落を意味する。しばらく頑張らなくなるのである。むしろ、未達感の残る15のままの方がいいくらいだ。

現実的には、16個目は「野球」と考えられている。そして、勝手な予想であるが、その後しばらくゼロが続き、皆があきらめた最終日の閉会式の直前に行われる競技がある。一人のアスリートが個人参加している。テコンドー67kg超の岡本さんである。そう、最後に個人資格で参加した女性である。

今回の大会で、日本人は団体競技より個人競技の方が得意であることが明らかになってきた。個人主義の国になったわけである。そして、その象徴ともいえる、個人参加選手である彼女こそ、17個目の記録がふさわしいのである。

もっとも金メダルといっても、中身は銀である。銀メダルの上に6グラムの金メッキをしているだけだ。正確には金色の銀メダルである。数百年経てば見分けがつかなくなる。前回のアテネ大会では銀メダル(1位)と銅メダル(2位)だけだったそうである。

絵画の価値

2004-08-23 15:40:41 | 美術館・博物館・工芸品
de9890d5.jpgオスロのムンク美術館が襲われた。
「叫び」が強奪されてしまった。「叫び」はあと数枚が存在するということだが、写真や版画と異なり、絵画はまさに一枚一枚が代替不能の存在であり、きわめて残念である。

一方、50億円以上の価値となれば、犯人たちも売却には困難をきわめる。現場には写真を含め多くの証拠が残されたらしく、早期に逮捕される可能性もある。

この「叫び」、ムンクが遺産としてオスロ市に贈呈したものである。画家自身は後世のどたばたとは無縁で、自分の絵画の行く末には無頓着だったらしい。

絵画の価値といえば、考えさせられるのが、松下電工の「ルオー」コレクションである。昨年完成した汐留のNAiSビル。都心に吹込む海風を遮っていると評判は悪いが、ビル内に驚くべきものがある。
NAiS美術館である。来場客を圧倒する「ルオーコレクション」である。ルオーを中心に140点を所蔵している。


ルオーの絵画は例の紺色に縁取りされた女性や静物が厚塗りされ、誰にも真似ができないまさにルオー流である。

だが、ルオーの絵画は、美術館の一室に、数枚だけ展示され、じっくりその重厚な作風を楽しむというのが似合っているように思える。あれだけ並ぶと圧迫感を強く感じてしまう。

企業が絵画を集める一つの目的としては、いざという時の蓄積ということがある。最近はキャッシュフロー経営至上主義のため、まったく評判が悪いのではあるが、アリとキリギリスのたとえを思い出せばいい。

しかし、まさか松下電工ともあろう会社がイソップ童話を経営の参考にしたとは思えないが、それにしても同一画家の絵画をたくさん集めた場合、コレクターが限られてしまうために、換金しようとしても売ることすら限定的になってしまう。
ピカソばかり集めた横浜美術館あたりと現物交換でもしたらどうなのだろうか。

松下はこれから電工、電産の経営統合が待っている。美術館の存在など大事の前の小事かもしれないが、ぶざまな結末だけは見たくないものだ。

立原道造は吟遊詩人のはずだった

2004-08-22 15:42:21 | 美術館・博物館・工芸品
041548d2.jpgわたしらの夢はどこにめぐるのであろう
ひそかに しかしいたいたしく
その日もあの日も 賢いしづかさに?(晩き日の夕べに)

東大弥生門の正面に、立原道造記念館は立つ。近隣の弥生美術館は数回訪れているのだが、ここは初めてである。そして、今までもっていた大いなる誤解に気が付いたのである。
彼こそ、「吟遊詩人」と呼ばれるはずだったのだろう。

彼の詩作の多くは「人生の謎」と「夢の世界への呼びかけ」ではじまり、「不完全で納得できない解答」で終わることが多い。

建築家と呼ぶにはあまりに作品は少なく、パステル画を何枚か残し、僅か数年の間に多くの謎めいた詩作を残し、第一回中原中也賞を手土産に24歳で永久航海に出航した立原道造。

存命であれば90歳である。
若き日の人生への問いかけに対する深い思索的な解答を同時代人の前に提示することは可能だったのだろうか。
高度成長からバブル崩壊にいたった戦後の日本人に欠けていた「自己存在への疑問」を投げかけた存在であったのに・・・

その部屋はからつぽにのこされたままだった (小譚詩)

COOLってなに?

2004-08-21 15:44:06 | 市民A
7c856765.jpgゴールドメダリストの電話番号を聞きまわり、妙なレトリックを駆使して「オレオレ電話」をかけまくる一人の国家公務員を除いて、海外からの日本人の評価が高いそうである。

ミサイルの飛び交うイラクでも、じっと給水活動を続けたり、サッカー場の外まで及ぶ集団的脅迫活動にも興奮することなく対応。できたばかりのメガバンクが早くも行詰ったり、銀行が投出しそうな大スーパーマーケットに国家がスポンサーである産業再生機構がつぎこみそうなのにも耐え、年金破綻の危機にも冷静にバランス感覚のある投票を行い、一方でコミックやゲームという超平和的な文化を世界中にまきちらす国。
「COOL」と言うそうである。

COOLって日本ではあまり評価されないことばなのだが、よく考えれば、人間は「COOLになれない動物」であるのだから、海外からの「COOL」の評価は、すばらしいことなのかもしれない。

PS.友人の「haracci氏」もblog界に参入。彼も「COOL」派です。  

迷走する吉野家D&C

2004-08-20 15:47:08 | MBAの意見
76282cb6.jpg吉野家の損益計算書はきわめてシンプルである。
外部要因(米国での狂牛病発生)により、どのように変化し、何が問題なのかというようなことを、初心者が分析するには最適である。

まず、基準として昨年をみると、原価率は38%。そして、店舗や本社の費用(人件費も込み)が売上高の52%で、利益として10%が残っている。
大雑把にいえば、280円の牛丼の原料代が僅か100円。150円が人件費や本社費、店舗費といった固定費。30円が利益ということである。
年間売上高は1400億円。1店舗あたり日販は40万円である。

そして、今年度の第一四半期(3月-5月)売上は300億円。昨年から見れば50億円が足りない。しかも原価率は昨年の38%から42%へと4%上昇。売上が低下のため、固定費の占める比率が52%から62%に上昇。都合10%の黒字からマイナス4%の赤字に転落してしまった。
結果から言えば、原価率のアップと売上げの減少が損益悪化の主因であることがわかる。

問題は、ここからである。来ない牛肉を待っていてもしかたがない。新メニューを考えなければならない。
松屋や中卯やらんぷ亭も必死に新メニューを投入し、多彩なラインナップ群が完成している。
吉野家より付加価値は高い。
しかし、吉野家はいまだに右往左往である。一旦は4メニューに絞ると発表したが、また一部で新メニューを発売。どうもよくわからない。

あまりに、牛丼に偏りすぎたため、多彩なメニューには設備的困難があるのだろう。従業員にしても、オーダー伝票とか食券とかないのにメニューばかり多様化しても、対応困難でミスオーダーの山となる。新メニュー戦略では明らかに他社に出遅れている。いぜんとして吉野家は、焼鳥丼とか牛カレー丼とか、さして難しくないメニューを出したり止めたり一貫しない。

一方、社長の安部氏にいくつか気になる兆候がある。どうも「牛丼」へのこだわりが強過ぎ、輸入再開後、元の姿に戻そうと考えているようで、現在の困窮に対し本格的な経営転換を考えているようには見えない。部分的対応の連続で、ともかく牛丼待ちである。

禁輸開始当初は、輸入再開キャンペーンの先頭に立ったり、調理場にもぐり込んだ映像を公開したりしていたが、本当に必要だったのは、代替供給ルートの確保とか新メニュー開発であったわけだ。また「牛丼一筋」もいいが、お客様の方が「牛丼一筋」かどうかもよくわからない。社長の反省の談として、「牛肉の備蓄が少なかった」と悔やんでいたが、ちょっと「食の安全」という観点では違和感がある。「安い、早い、うまい」はサービス業の三大テーマであるが、「(原料代が)安い、(現金回収が)早い、(金儲けが)うまい」では長続きしない。

安部社長は、吉野家が以前破綻した時は一店長であり、現在までの再建では巨大な実力を発揮したわけである。窮地に追い込まれた経験は、普通は大きな力と評価できるのだが、「つぶれることにこだわらない感覚」であるとしたら問題である。株主優待券を持った個人株主が大勢いるのだ。

9.11、SARSといった旅行業界にとっての危機により、弱小会社が淘汰され、HIS社がさらに強力になった旅行業界のように、輸入再開後には地盤変動があるのだろうか?
それにしても、牛丼店の店舗あたりの日販40万円は、同レベルの店舗面積のコンビニの2/3。見たところ、売上げの半分はお昼の1時間のようだ。何とかならないのだろうか。

雇用統計(04年7月分)に見る二つの50%

2004-08-19 15:49:26 | MBAの意見
毎月、月初に発表される米国雇用統計はスリリングである。発表日が近づくと相場も細くなっていき、思いがけない数字となればエネルギーが噴き出す。

8月6日がそうであった。エコノミストの事前予測からまったく異なる低い雇用者数の伸びであったため、ビッグサプライズとなった。エコノミスト予想では、非農業部門就業者の増加を24.7万人と推定していたが、実際は3.2万人と大はずれだ。

一方、失業率は5.5%と予測の5.6%より低くなっている。少し矛盾した数字であるが、「よくあること」だそうである。おそらく、母数である労働人口の読みが誤っていたのかもしれない。7月というとハイスクールの卒業生が統計に加わるのであるが、何しろ10代の失業率は17.6%に達している。
統計は多岐にわたるのであるが、その中で新規雇用者の約50%が派遣会社という数字がある。また新規就業者の約50%は時給10ドル以下である。この二つの50%が同じグループかどうかは分らないが、随分なものである。10ドルというのは1100円。日本ではほとんどアルバイトである。年間1800時間働いても年収200万円以下。森永先生の名著(年収350万円で暮らす本)の改訂版が必要である。

これらの数値を見ると、確かに就業者数の増減は、かなり正確に企業業績の限界的指標であるということがわかる。しかし、この低賃金をみれば、米国の繁栄の裏側で所得の二極化が進んでいることもうかがわれる。手元の資料だけでは判らないのだが、いわゆる人口メディアン値の所得が下がっているとも、よくいわれている。

次の(8月統計)発表は9月3日8時30分(金)(東部時間)である。

これから重い三セクのつけ

2004-08-18 15:50:53 | MBAの意見
39555f37.jpg先週、8月5日付けのNIKKEI NETに小さな記事が掲載されていた。
累積損失の積み上がっている第三セクターの問題である。これは少し危険な兆候であると考えられる。

記事では、累積赤字が100億円を超える3セクの23社の合計では赤字が5,768億円で一年前に比べ412億円拡大しているとのことである。赤字が100億円以下の会社は試算では計算していない。

そして、大阪の例として、債務超過の大阪ワールドトレードセンタービル、アジア太平洋トレードセンター、湊町開発センターについて再建が始まったというように書かれている。
実際、大阪市ではその他、大阪ドームやUSJへの出資、オリンピック誘致と組み合わせであった港湾開発事業などの出資は多いが、リターンは少ない。大阪市の対策としては、有利子負債の債権化のような形で、追加融資でなんとか凌ごうということのようだが、前途は苦しい。

一方、川崎市では、見込みのない事業は議会審議に耐えないとして清算を進める方向である。
実際、先延ばし方式が成功すればいいのだが、単年度決算すら改善しない以上、追加融資が無駄になることは十分に予測できる。

そして、問題はここからであるが、この第3セクターに出資しているのは、公共団体のみならず、地元の地銀(第二地銀も含む)、と旧興銀であるみずほFGが中心である。

折から、半年後にはペイオフ解禁である。各都道府県にわたり存在する第三セクターの経営不振。金融界の次なる問題であるが、民間企業と異なり簡単に整理もできず、また武家商法のマンパワー。追加融資となれば地方議会の議決が必要なことを考えれば、これから荷物は重いと言わざるを得ない。

EUのアウトサイダー

2004-08-17 15:52:59 | 市民A
32806641.jpg報道の瑣末な誤りを指摘して騒ぎ立てる趣味はないが、少し気になる間違いからの連想である。

数日前、五輪の柔道をテレビ観戦していたところ、地元ギリシア選手の紹介の中で、「人口1億人で柔道人口はわずか5000人・・・」とあった。
柔道人口は知る由もないが、総人口1億とは、「あれっ、そんなにいたかな?」ということになる。手元のジェトロの資料集をみると、1050万人。ケタの違いである。
スポーツ担当者に国際感覚が不足しているのだろう。

なぜ、人口が気になったかと言えば、今、欧州で大問題となっている問題がある。ギリシアの宿敵、トルコのEU加盟の是非である。

相対的に安い労働力のトルコは、実質的な関税フリー化になるEU加盟を強烈に希望しているのである。が、EU側は冷たい。
一つの問題は、キプロス問題で対決しているギリシアの反対であるが、もう一つはやはり「トルコは欧州か?」という根源的問題である。さらに人口問題。現在のEU加盟国の中で最大人口はドイツで約8000万人。一方トルコは7000万人であるが、人口増加率が大きく、10数年後にはドイツを追い抜くと予想されている。
また、巨大なイスラム国家であり、髪や目の色が違うことで、欧州各地での移民が差別されているのも実態。
しかし、欧州各国からすれば、トルコは重要な「中東とのバルブ」である(パイプではない)。あまりむげに扱い、イラン、イラク、トルコ同盟ができたら大変なことになる。
政治的には取り込みたいが、社会的には抵抗があるし、経済的にはトルコばかり儲かるようになると困るのである。
また、将来ユーロ導入などになれば、ユーロはEU後発参加国中心の弱い通貨になる可能性もある。
一方、トルコは軍事的にはNATOに属したり、サッカーは欧州選手権に入ったりして、着々と欧州化を狙っている。

欧州側から見た歴史上では、トルコは野蛮な邪教国家である。数々の戦闘だけではなく、海賊が美女を略奪して、スルタンのハレムに売り飛ばす国として悪名が高い。実際、ナポレオン王妃ジョセフィーヌの従姉妹、エメ・ドュブク・ド・リビュリも海賊の手で当時59才のスルタンのハレムに売られてしまったりしていて、フランス人は今でも忘れない。
ついでに、もう一つフランス人が忘れないのは、ジャンヌ・ダルクを火あぶりにしたイギリス人たちのことであるが。(もっとも、海賊はアルジェリア人だったし、ジャンヌ・ダルクを捕まえた後、1万フランでイギリス軍に売り渡したのは、ブルゴーニュ軍なのだが・・・)

トルコ加盟問題の次はロシアである。こちらは日本にも若干の影響がある。