円安で始まる新たな雇用問題

2014-10-01 00:00:41 | MBAの意見
基本的には、「今の瞬間」の雇用問題はかなり逼迫状態だろう。ファストフードのバイト時給だって、首都圏では1000~1300円あたりまで上昇。地方でも850円位のようだ。

社長やっている関係で、いくつかの営業所で正社員募集しても簡単には集まらない。大局的に言うと、団塊世代の後半(1949年生まれあたり)がいま、65歳の年金生活に入りつつあって、おそらく60歳を過ぎて、社会のどこかで高額給料ではなく低額給料で働き続けていて、やっと所得税を払わないで済むようになってきたからだろう(でも選挙権はあるが)。

その世代の人口は、年間約180万人。一方、今、学校を卒業して就職しようとする世代の人口は年間110万人。必然的に急速に職場に穴が開き始めた。だから、女性の社会進出とか首相が言っているが、アベノミクスには何の関係もなく、ここ2~3年程度は、基調としては雇用タイトなのである。フリーターが正社員になるには、今しかないわけだ。そして、2~3年後には、団塊世代の多くが去り、求職と求人は拮抗し、雇用の窓は再び閉ざされるわけだ。


ところが、急に、別の「雇用にとってマイナスの風」が吹き始めてきたように感じている。

地方都市のちょっとした募集に対して、30代の高学歴男女が応募してくるようになった。語学留学して、得意の英語で外資系企業で働いている人たちが、動きだしているようだ。というか急に席を失っているように見える。若い人だけじゃなく、超高給の役員クラスにも肩たたきが始まったようだ。つまり、外資の日本離れ。

つらつら考えるに、過去にもあったのだが円安の時に見られる傾向である。たとえば1ドル=80円なら、1ドル稼ぐのに日本市場では80円もうければよかったのに、1ドル=110円だと110円儲けなければならない。といっても、日本国内の商取引はドルではなく円なのだから、急に2割も3割も利益率を改善できるわけじゃない。とくに売上を増やすのは簡単じゃない。

そうなると、一にリストラということになる。そしてコストダウン。サービス低下になり結局は米国ビジネスをそのままのマニュアルでやろうとして、自滅。そして日本撤退。

そう思うと、国内で見ている限り絶好調だったスターバックスジャパンも、ドル表示にすると、減収減益ということだったのだろうと気付く。そして、米国本社の傘下に入った(入れられた)わけだ。従業員が感じる「訳のわからない不安」というのも、実は「訳はわかっている不安」ということなのだろう。

早く、日本経済を何とかしないと、スカスカになっちゃいます。

ヘッドハンターの言う「役員になる」共通点

2013-09-18 00:00:07 | MBAの意見
雑誌「プレジデント」は、かなり食えない部分もあるが、たまには面白い記事もある。9月30日号の中にある『ヘッドハンター10人が実感する「役員に昇る人」の小さな共通点』について。

タイトル通り、たった10人の意見だし、「小さな共通点」とは、ずいぶん遠慮がちなタイトルだ。私が編集長だったら『らつ腕ヘッドハンターたちが強調する「役員に共通する」小さな秘密』とかにしてしまう。

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12項目ある。無論12のすべてで役員ポイントの人はいないだろうが、9個以上は必要か。

1.初対面の人に対して
 「平」 好きなようにふるまう
 「部長」 上下関係で態度を変える
 「役員」 腰が低く、懐が深い

2.お世話になった人に対して
 「平」 困った時だけ連絡する
 「部長」 適宜、お礼メールを送る
 「役員」 丁寧にお礼し、仕事を運んでくる

3.話し方は
 「平」 自分の話したいことを話す
 「部長」 専門用語を羅列する
 「役員」 相手に合わせて言葉を選ぶ

4.上司に意見を聞かれたら
 「平」 上にひたすら合わせる
 「部長」 正論を言う
 「役員」 バランスの取れた正論を言う

5.仕事を選ぶときの優先事項は
 「平」 待遇と福利厚生
 「部長」 肩書と年収
 「役員」 そこで何ができるか

6.二十代の頃の評価は
 「平」 何の実績もない
 「部長」 優秀なマジョリティである
 「役員」 優秀なマイノリティである

7.人間の器が
 「平」 誰が見ても小さい
 「部長」 大きく見せようとする
 「役員」 自然に大きくなっていく

8.海外では
 「平」 海外に興味がない
 「部長」 語学力や相手の肩書を気にする
 「役員」 日本語でも渡り合える

9.食事のときは
 「平」 「食」に興味がない
 「部長」 よく飲み、よく食べる
 「役員」 好き嫌いなくきれいに食べる

10.身だしなみは
  「平」 好きなものを身につける
  「部長」 時計にこだわる
  「役員」 靴やペンにこだわる

11.趣味
  「平」 仕事より趣味が優先
  「部長」 「仕事が趣味」という
  「役員」 一つの趣味を極める

12.SNSでは
  「平」 思ったことを発信する
  「部長」 ほとんど発信しない
  「役員」 戦略的に発信する


12項目で、どうだっただろうか。つまり、役員になるのは簡単ということだろう。もっともプレジデント誌が理想像とする役員というのは、おカネとゴルフと高級クラブしか考えてない俗っぽい社長のようなので、本来目指すものではないような気がする。先日、『エグゼクティブの朝食』という特集で日本マクドナルド会長が「毎朝日本食を食べる」と絶賛していたと思ったら、退陣したら一転して「逃げ場ない外資の苦悩」なんてこきおろしているわけだ。


ところで、個人的には12項目を点検したところ、ペンを購入しないといけないことに気付く。ふだんは四色(黒・黒・赤・青)ボールペンを愛用していたのだが。それでパーフェクトか・・(自分の年収交渉でいつも粘るからダメかな・・)

シェールガス輸出の前段階のサイン

2013-06-24 00:00:34 | MBAの意見
いきなり野球の話だが、スクイズのサインを出す時、監督は一番緊張するそうだ。一つは、作戦自体がリスキー(結果が出る前に三塁走者が走り出す必要がある)であることと、もう一つは、他の作戦とは異なり、「スクイズ」は「スクイズをすることが妥当な場面にのみ」決行され、「作戦の最高責任者=監督によってサインが出される」ため、相手チームは必然的に監督の一挙一動を観察することになり、サインを見抜かれる危険が高いからだ。そのため、監督の立つ場所を変えたり、ヘルメットやバットといった小道具を使ったり、帽子やベルトを触って偽サインを使ったり・・。

横道に逸れてしまったのだが、米国のエネルギー政策のこと。

基本的には、米国はエネルギーの輸出をしていない国である。もちろん、国内に大きな油田を持っているのだが、その生産量をはるかに超える消費を行っているのだから、国として輸入国なのだから輸出の余力はない、と言えばそれまでだが、自由主義経済の王様のような国なのだから輸出を制限する必要もないはず。

例外的に、隣のカナダとメキシコとはパイプラインがつながっていて、天然ガスの出し入れは行っているし、製油所で絞り取った後の超重質油などは海外に出している。


つまり、国防上の理由で輸出を禁止しているわけだ。20世紀からの伝統政策である。敵対国にはエネルギーを回さない。これで、日本もエネルギー包囲されて、戦争を始めることになった(結果として米国の政策が成功だったかどうかは疑問で、日本が満州で得た利益の半分を米国に還元できるような仕組みを作った方がよかったのかもしれない)。


そして、今、問題になっているのが国内産シェールガスの輸出問題。シェールガスといっても、精製した後は、メタン(CH4)、エタン(C2H6)の天然ガスで、カナダ・メキシコといった陸続きの国には、パイプラインで送れても、その他の国には、超低温のLNGとしてタンカーで出荷することになる。

そして、一般的には、2010年代後半から輸出を開始する方針になっているのだが、その具体的な国や、価格の問題については、明らかになっていない。製造コストの差や、マーケット価格の動向から言えば、今までの天然ガスの価格がかなり下がっていくだろうと予測できるが、未来の事に何の保証もない。

で、冒頭のサインの件だが、小さなサインが出たのが、精製段階で副次的に生産される少量のLPGのこと。こちらは、主にプロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)である。数量的には僅かだが、日本のT社が、2010年代半ばから輸入を開始することになったようだ。価格はマーケット価格リンクということで、日本の異常に高いプロパン価格がほんの僅かに下がる可能性もある(倉敷に借りた1LDがプロパンなので、ガス代対策で、フライパンを小ぶりに買い替えたり、計量カップできっちり計った水を電気で沸かしたり、お風呂もシャワーにして、時々スーパー銭湯に行ったりしている)。

米国が「日本のエネルギー政策に少しは協力しないと、70年前のようになるのではないか」と思ったわけでもないだろうが、同盟国の中の序列が、そう下がっているわけではないだろうと、小さなサインを読み取るべきなのだろう。

あなたも発電所長になれる

2012-12-07 00:00:41 | MBAの意見
幕張メッセで開催中の第7回再生可能エネルギー世界展示会へ行く。会場内は撮影禁止なので遠景だけ。といっても外国人は、ところかまわずデジカメで撮影しているがおとがめはない。こういうところからして日本人と外国人の違いがある。実際のところは外国人の方は、日本に出張して仕事をした証拠を残しているだけなのかもしれない。半日はビジネス。残り2日はディズニーランドと都内見物というのかもしれない。日本人が海外のコンヴェンションに行くのと同様。
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それで、再生可能エネルギーといえば、風力や地熱発電も含まれるのだが、この会場の80%は太陽光発電パネル関連である。というかパネルのモデルハウスといった感がある。

内外の各社が会場にパネルを持ちこんで優劣を競いあっているのだが、見ているだけでは何とも違いがわからない。この会場を設営する時でも世界中から見かけがかわらないパネルが同時に搬入されたのだろうからずいぶん混乱しただろう。自分のブースの太陽光パネルが行方不明になっても捜索不能だ。

looopそれで、一番、驚いたのが株式会社Looopが出店した「MY発電所キット」。12KWのMY発電所キットが3,350,000円である。これを空地に設置することで、売電収入が年間60万円だそうだ。5年半で元が取れる(はず)。さらに空き地にこれを設置した場合、下草が伸び放題になるため、除草シートというのも売っている。これを敷くと雑草は伸びない(らしい)。

さらに帰宅後、L000P社を調べると、楽天市場でエントリーモデルとして56,000円の発電キットを売っている。バッテリーと組み合わせれば色々と利用可能である。まさに、あなたも『発電所長』になれるわけだ。というよりも、電力会社社長の気分になれるかもしれない。

貸し犬商法に応用は効くか?

2012-07-19 00:00:22 | MBAの意見
「貸し犬商法」というのがある。決してMBAコースでは教えてくれないが、各種販売促進策の一手法である。

正統派「貸し犬商法」というのは、ペットショップで、子犬を前にして、飼うか飼わないかをあれこれ思案している優柔不断な人に対してのアプローチ法なのだが、・・

店員が、「とりあえず、お代は結構ですから、とりあえず1週間、子犬を預かってみたらどうです。幼犬用のフードも1週間分おつけしますから。気に入らなかったら返していただけば結構ですし、気に入ったら払っていただければ結構です。」というようなこと。

まあ、ほとんど成功するだろう。「お試し商法」の一形態だろうか。

ところが、これが成功するのは、商品が犬だからだ。


これを応用してみようかと思っている案件がある。

なんとなく能力の今一歩の社員を、系列の別の会社に移籍させようと目論んでいるのだが、その会社でも人の採用となると慎重になる。犬だって、子犬の価格よりもその後のエサ代の方がずっとかさむ。人間におきかえれば、毎月のサラリーが必要だ。犬のフード代より割高だ。

それで、気乗りしていない系列会社に、「3ヶ月ほどは、こちらで給料払うので、とりあえず無料で預かってくれませんか」というようなことになるのだろう。

たぶん、成功しないと思う。

いくら雇っても、何らかの感情が生まれるとは思えないからだ。


捨て犬?

続・JAPAN2012(経済広報センター)

2012-04-24 00:00:38 | MBAの意見
きのうの続き。軍事費。2009年のデータで、圧倒的1位が米国。なにしろ戦闘中だった。次が中国、イギリス、フランス、日本と続く。以下、ドイツとなぜかサウジアラビア。見方を変えて人口一人当たりに計算すると、米国(2153ドル)に肉薄する国が二カ国ある。

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イスラエル(1816ドル)とサウジアラビア(1626ドル)。イギリス(956ドル)とフランス(870ドル)も多い。自国の近くに敵国があるのだろうか。よくイスラエルはイランを仮想敵国としているといわれるが、そうではないことがわかる。なにしろサウジという国はサウド家のアラビアという、あまりあり得ない国名の国である。本当に守るべき人数で割り返すと、もっと巨大な金額になるだろう。

一方、日本は一人当たり400ドル。韓国は460ドルと同レベルだ。中国に至っては、一人当たり軍事費は54ドル。一人の価値が低いのだろうか。裏を返せば、中国が民主主義国になると、とんでもないことになるのかもしれない。

民主主義の話だが、現代日本にある様々な政党の英語表記がまとめられているが、なかなか考えさせられるものがある。中には、意味不明も。

 Democratic Party of Japan たぶん日本民主党?

 Liberal Democratic Party たぶん自民民主党

 New Komeito 新公明党?

 Japanese Communist Party 日本共産主義者党?

 Social Democratic Party 社会民主党?

 Your Party 君たちの党?

 People’s New Party 新人民党?

 New Party Nippon 日本新党?(あれっ)

 Sunrise Party of Japan 太陽党日本支部?

維新の会とか石原新党とか、もう英語は決まっているのだろうか。

まず、維新の英語はリストラということ。リストラ党ということだ。石原新党、New Ishihara’s Party。

JAPAN2012(経済広報センター)

2012-04-23 00:00:00 | MBAの意見
japan0経済広報センターがまとめた日本についてのデータ集『JAPAN2012』だが、残念なことに英語版である。900円なのだが、日本語版がない。

大量のデータがあるのだが、いくつかの気になった点とかピックアップ。

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まず、日本の人口ピラミッド。2011年のピラミッドはおなじみだが、2051年のピラミッドが紹介されているが、果たして40年後の人口動態に予測が付くだろうか。この資料だと日本の人口は9500万人。別の資料だと1億人となっている。さらに50年経つと5000万人程度になりそうだが、その穴埋めはどうなのだろう。

2050年頃は世界人口が93億人で、インドが17億人。中国は13億人、アメリカとナイジェリアが4億人でインドネシアとパキスタンが3億人。人口爆発が予測される国は、コンゴ、タンザニア、ナイジェリアとなぜかフィリピンだそうだ。

ところで、日本の減少した人口を埋めるのは、インドとかフィリピンなのだろうか。あるいはロボット? まあ、どちらがコストが安いかで決まるのだろう。

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人口関係で驚いたのが、世界の都市人口。

世界チャンピオンに輝いたのは・・・

なんと、1位が、TOKYO だそうだ。3600万人以上だそうだ。第2位のデリー(2200万人)を大きく引き離して優勝。どうも都市の名前を英語にすると、面積が広がるらしい。

米国債格下げで儲かるのは

2011-07-20 00:00:57 | MBAの意見
サッカーをテレビで観ていると、しょっちゅう右足首の古傷が痛む。チャンスあるいはピンチの時に思わず足が動いてしまい、その度に、騙しながら使っている箇所が痛みだす。特に18日未明の決勝では、PK戦を決した熊谷選手のゴール左上へのシュートは、足首に力をこめたキックであり、思わず激痛で涙がこぼれてしまった。女子の方が体が柔らかいのか、足首を深く曲げてパスが出せるようで、その都度、痛い。

それで、負けた方の米国だが、さらに追い打ちがある。

格付会社による米国債の格下げである。(世界ランキングみたいな話だ)

なにしろ米国債は、今まで「最高」のものとされていた。二大格付け会社の格付けは、スタンダード&プアーズが「AAA」。ムーディーズが「Aaa」である。

AAAとAaaは何が違うかというと、同じである。AAAがS&P社の登録商標であるため、ムーディズはAaaを使っている。トリプルBの場合、BBBに対して、Baaというのになるため、ちょっとややこしい。

以前のことだが、S&Pの日本支社の人と話す機会があって、AAAの基準というのを聞いたところ、きわめて簡単なルールがあると答えてくれた。

「AAAの基準は米国債」ということだったのだ。要するに、国家としてみた場合、短期的な不調はあるとしても、あれだけの国土と資源と人口があるのだから、短期間で立ち直ることは間違いない、という安心感があるそうだ。

となると、今回の格付け見直しにより、どういうことが起きるのかというと、今まで基準としていたものの価値が変わるのだから、かなり多くの国の国債、優良企業の社債などは、全部格付けが変わる、ということが十分に考えられるわけだ。

となると、格付けの見直しが、世界中で無数に行われることになり、儲かるのは格付会社ばかり、ということになるような気がするわけだ。

メキシコ湾BP海底油田漏洩で、何が始まる?

2010-05-06 00:00:38 | MBAの意見
海底油田からの漏洩は、とりあえずコンクリート・キャップで蓋を閉めることに成功したようだ(注:どうも、結局、失敗したようだ)。実際に、蓋をすることが困難な場合、大変まずいことになりそうだったが、今後は、後始末に長い時間と多くの費用がかかるということになるのだろう。(もちろん、コンクリキャップが吹き飛ぶ可能性はあるだろうが)幸い、1989年のエクソンのアラスカでのタンカー座礁事故とは異なり、気温が高いために、1年程度で油分は蒸発ないし、分解されるのではないだろうか。



タンカー輸送中の事故については、石油会社が油濁保険をかけているが、油田からの漏洩には保険があるのだろうか。世界三大メジャーの一つであるBP社の株価が急落して時価総額が数兆円減ったという報道もある。保険が有効であっても、保険会社は再保険を掛けあっているために、世界中の保険料率が上がる可能性はないのだろうか???

そして、今回の事故は、オフショア油田の開発に許可を与えようとしていたオバマ政権にとって、再度方向転換を余儀なくさせるとともに、原発、風力、太陽熱などへの過度の傾斜と、脱ガソリン依存社会への急ハンドルという結果になることが予想される。

背景としては、弊ブログ2008年11月20日「World Energy Outlook
で記したように、既に地球上の陸上大型油田の生産量はピークを打っていること。そして、今後の新興国を中心として、大幅なエネルギー転換が困難なこと。これにより、新規油田の開発がかなり進むと思われているが、そのほとんどが海上(海底)油田であることだ。

つまり、原油価格は高コストに推移すると思われる一方、それによって最大の利益を得るのが、皮肉なことに既存の油田を持っている中東各国ということになる。そして、それらの国は必ずしも米国と同じ方向の政治性を持っているわけじゃないわけだ。



前述の弊エントリから1年半が経っているのだが、その間に起きたいくつかのエポックをまとめると、

1.原油需要はリーマンショックを吸収し、2年前の水準を追い越している。

2.中東産油国はイランに限らず、原発に熱心であるが、一方で火力発電を増やしている。

3.ロシアは、将来に向けて秘蔵すると思われていた東シベリア原油の開発を促進し、市場に登場させた。

4.原油価格は、投機的水準の直前といわれるバレル当り85ドルに達したところである。

5.海上油田の弱点がBPという巨大メジャーによってしても、明確になった。

このうち、問題は2と3。一説では、産油国が火力発電(それも原油をそのまま燃やす方式)と原子力発電と二系列を確保するのは、原油価格が下がる時に(あるいは上昇させたい時に)国内で消費してしまって、市場をタイトにするためともいわれる。何しろ、彼らは、この原油価格をいくらにするかというのが数十年間もっとも重要な政策だったのだから、巧妙である。

そして、東シベリア原油。以前は、質が悪いといわれていたが、現在、市場に出てきたものは高品質である。主に中国や日本が購入している。いまのところ、極東パイプラインが完全には完成していないため、量的制限があるが、何となく前の戦争の最終局面のように、石油時代の最後のどさくさに慌てて登場したような嫌な雰囲気だ。


これらから、もっともありうるシナリオを予測するなら、

A.原油価格は、すぐに投機相場となる。100ドルを超えれば200ドルが次のターゲットになるだろう。

B.そして、需要減退をもたらし、一転して、一挙に暴落へ向かう。

C.そして、中東地域全体が政治的に不安定化していく。

そこから先は、よくわからない。

不景気.COM

2010-02-15 00:00:00 | MBAの意見
fukeikiカカクドットコムは有名な価格比較サイトで、葬儀まで取り扱っているようだが、上場までしているビジネスモデルである。しかし、同じドットコムでも不吉なものを見つけた。

 不景気.com

ある倒産しそうな会社を調べているうちに、行き当たった。

一体、誰がどういう目的で運営しているのかよくわからないが、かなり細かい。

まず、不景気ニュースを9項目に分類。

不景気ニュース、株・企業、国内倒産、海外倒産、国内リストラ、海外リストラ、買収合併、雇用問題、景気対策。

中には、不景気とは言い切れないものもあるようだが、買収・合併などは、その後にリストラという話になるのだからやはり不景気関係なのかもしれない。

例えば3月14日版を開くと、

閉店ものでいえば、パリ三越、ジョンレノン・ミュージアム河原町ビブレ。

倒産ものは無数で、新しいところでは、動画サイトのVeoh 、山加電業、キタジマ食品(中国産タケノコを福岡産に偽装したため)、神保町の国際書房。変わったところでは英国スキー連盟、米英西で小さな航空会社が一つずつ。タイガーウッズの近眼をレーシック手術で治したTLCヴィジョン(弱り目に祟り目か)・・・

リストラものでは、五洋建設200人、豊和工業250人、CSK545人、ヤマハ発動機800名、バンダイナムコ630名・・海外でいえば、製薬会社アストラゼネカ10,400人、ウォルマート系サムズクラブ11,200人、フォード40,000人、英国ロイズ10,000人とか。

読んでみると、一つずつの記事は、不景気に至った原因などを手短にまとめていて、ビジネス上の経営のミスを放置すると、こういう結果になるという、きわめて有用な内容ではあるのだが・・

ただ、読めば読むほどに、気持ちが暗くなっていくのだ。

明るい気持ちに戻るため、民事再生法を申請したゴルフコースを探して、安く回ろうかな・・

入学しました

2010-01-11 00:00:06 | MBAの意見
gakko1何種類かの学校に行った経歴があるが、それだけではあきたらず、ある伝統校に入学。

「足利學校」

日本最古の学校と自称している。

正門は、東大の赤門よりも威厳がある。

しかし、実のところ、いつできたかには、諸説があるようだ。奈良時代、平安時代、鎌倉時代とか。

はっきりしているのは上杉憲実(室町時代)が1480年頃には、荒廃した廃校を復活したこと。

天文18年(1549年)にはフランシスコ・ザビエルが「日本国で最も大きな『坂東大学』」と世界に紹介。学徒三千人とある。当時は全国にこのような大学が10個あったそうだ。

江戸時代末期にはまたしても廃れ、明治5年にクローズ。以降、小学校だったらしい。

<gakko2しかし、平成二年になって、小学校がなくなった(少子化?)こともあり、江戸時代のスタイルで復興。

入学金は、当時は無料だったが、入学証書をもらうためには、入学金400円が必要。授業料を払わないで他グループのガイドを盗聴したので卒業証書はなし。

では、何を教えていたかというと、漢学、国学、実用學などだ。現代で言うと松下政経塾みたいなものだろう。

ところで、室町時代の人口は現在の1/10程度だろう。それで全国にこのような学校が10もあるというのは、現代でいえば100大学ということになる。

ちょっとした才能の持ち主を、歴史の表舞台に登場させる仕組みが、わが国にはあったことになる。

今より、ましなような気がする。


gakko3たとえば、今年4月から、横浜にある「横浜山手女子中高学校」が中央大学の系列に組み込まれる。これによって中央大学の学生の中の女子大生比率が高まる効果があるそうだ。

もともと、中央大学は男子比率が高い大学だったのだが、現在のように大学が「レジャーランド」になっている状況では、『女子学生が少ない大学』というのは、それだけで男子学生にすら嫌われるわけだ。男子学生だけのレジャーなんて碌なものがない。

要するに、中央大学が青山学院を目指しているようなものなのだが、そういえば「中央青山」というのがあったっけか・・

家庭鉱脈

2009-10-30 00:00:17 | MBAの意見
jitakukoumyaku「都市鉱山」という言葉がある。1980年代に提唱された考え方で、家電製品やIT機器に含まれるレアメタルをリサイクルして使おうというもので、スクラップの山を鉱山に見立てて、資源超小国である日本の悲哀が感じられる言葉だった。

鎖国下の日本の江戸時代でも、金属は重要な資源で、底の抜けた鍋を再加工するとか、いろいろやっていた。

その後、鉱山の場所は、家電やITだけでなく広く金属類一般になり、一時はアルミ製の門扉や墓地のステンレス製の生花立てにまで及んだことは記憶に新しい。個人的は、自宅に眠っていた古いゴルフクラブを中古店に持ち込んだところ、真鍮製のパターヘッドとチタン製のドライバーのヘッドだけが換金対象となったことからして、金属不足は相当のものだったと想像。

一方、もう一つの種類の鉱脈があるわけだ。

それは、各家庭の宝石箱の中にあるそうだ。

(宝石箱のない家庭は、あきらめるしかない。また宝石箱にイミテーションを詰め込んでいる場合も、残念!)

世界的に、金のリサイクル量が急増している。

2007年には、世界で958トンだったが、2008年には1,212トンに増加。27%増。さらに2009年1-3月では566トン、4-6月には334トンと半年でほぼ2007年の実績値と等しい状況にある。

特に、中東最大のリサイクル市場のドバイには、インドや中東諸国からリサイクルされた金が大量に流れ込み、金が溢れ、需給上、余った金がロンドンに空輸されているそうだ。そしてHSBC銀行の金庫に向かうそうだが、金庫係が大忙しになって自分の足に金塊を落として大けがをしたそうだ。バブル期の日本でも、貸金庫が金の重みでこわれて、誰の金塊かわからなくなった事件があったという噂を聞いたが、そういうことが時々起こる。

ところが、田中貴金属の金ディーラーの方の話によれば、中東、インド、中国のような新興国は、金が安いときに買っていき、金が上がるとリサイクルで売るという流れであるが、欧米先進国は逆で、金価格が上昇するときに波に乗って現物を買うということらしい。この安値の時の「新興国の金買い」と高値の時の「新興国から先進国への金シフト」というサイクルを繰り返しながら、徐々に金価格は上昇していくという現象が続いているそうである。

ということで、本来、国としては先進国でも、家庭単位では貧乏な日本では、現在の金価格上昇局面では、かなりの宝石箱が家庭鉱脈となっているのだそうだ。

とはいえ、金の延べ板であれば評価は不要だが、宝石類に使われる金は、純度が実用的に落としてあるし、それらを外見で見ただけで鑑定することは難しい。

そこで登場したのがX線検査装置をはじめとする各種鑑定システム。日本人はシステムに弱いからかもしれないが、これらの装置で、評価額がすぐに算定できるようになったそうだ。

思えば、ギリシア時代のアルキメデスが、入浴中にバスタブから溢れるお湯を見て、「わかった」といって裸で神殿に走っていったのが「業者が納入した金の王冠の不純物の推定法」。

古代ギリシアも現代日本もたいして変わっていない。一応、デモクラシーの名の下に、「こども手当」という名前の制度で、「こどもは国家が育てる」というのもソックリである。

もちろん、国家がこどもを育てたには理由があって、周りの国から自国侵略を阻止するために優秀な軍人が必要とされていたからだ。

にも、かかわらず、都市国家群としてのギリシアは衰退し、「デモクラシー」と「オリンピック」と「アルキメデスの原理」が、現代に残った。

人的資源の組織戦略(4)

2009-04-24 00:00:49 | MBAの意見
6.人事制度の変換は可能か

日本企業の現在の人事制度は源流の一つは、戦前の重商主義時代の官僚的なピラミッド型の組織であろう。また二つ目の流れは、戦後の大量生産型高度成長期に確立した終身雇用制、企業城下町型の出資会社下請け制などのクローズドシステムである。

一方、米国では1930年代の不況下に雇用と解雇に関するルールが芽生え、その後海外から流入する多国籍の労働力と資本をベースとした開放型の組織が発展したと考えられる。一方、米国でもカソリック協会のような縦長ピラミッド型企業もあるし、CEOは社内から内部昇格(適任者がいればだが)させるべきとの考え方も根強い。

しかし、一般的に見れば、米国はオープン型、日本はクローズド型と考えられる。

日本においては、旧来のシステムの大部分を残したままで、部分的に退職金前払い、社外取締役、契約社員の増大、レイオフの代わりのワークシェアリング、コンピタンシー評価などの新手法が組み合わされている。

しかし、私見であるが、旧来型の終身雇用、クローズ型のシステムを手直ししたところで、うわべだけの米国流におわるものと考えられ、中期的には収拾不能になるのではないかと考えられる。たとえば、日本流の評価を15年続け、40前頃に管理職になると同時に米国流の評価法に切り替えるなどというようなことは、実際は困難であるといえる。

伝統とか組織を変えることは、今までその企業にいるほとんどの役員や従業員にとって居心地の悪い事態であって、まして日本では株主が経営権に積極的に介入するのは、経営危機の際くらいであることを考えれば、抜本的な転換は困難と考えられる。

むしろ、景気低迷で冷え込んではいるが、新興企業、個人企業が組織力で既存の旧システムの会社に対抗するという図式が見えてくるのである。

論文終了

あとがき

2003年の論文を2009年に読むと、時代は、さらに60歳以上の再雇用制度、そして製造業の派遣労働者問題という新たな難問に直面している。

この二つは、マクロ的には表裏一体関係にあり、年金給付開始の65歳と企業定年の60歳の穴埋め制度の対象は「団塊世代」であり、団塊世代が引退しないために「団塊ジュニア世代」のある比率が正規従業員になれなかった、という関係にある。とはいえ、団塊世代はおおむね5年で65歳に到達するのだから、雇用問題が縮小に向かうのは5年後ということになる。


私見ではあるが、終身雇用型の正規社員と短期限定の派遣社員という二元論ではなく、期間数年の「契約社員」という形態の中間的な雇用形態をもっと多く活用すべきだろうと考えている。普通預金と30年国債の二種類だけではなく、定期預金があってもいいじゃないか、ということである。


人的資源の組織戦略(3)

2009-04-23 00:00:43 | MBAの意見
4.評価

評価には、日常的な個人の業績に対して業績評価による給与の上下を行い、生産性を向上させる狙いがある。一方、生産性の悪い従業員は、その結果として低いPAYを受け続ける結果となる。しかし、実際に評価というのはあくまでも基準があっての話であり、また数値的あるいは具現的な結果に対するものでなければならない。基準としては、前年比とか業界の平均といった外部的水準を用いるのが一般的であるが、往々にしてコストプッシュ要因により、評価配分財源をインナーで固定してしまうケースがあるが(絶対評価でなく相対評価)、自分の成績を上げることのみならず、他人の成績が落ちることも有効な評価材料になることから、足を引っ張るといったマキャベリズムが横行することになり、企業業績にとって全体ではマイナスになる。また最近では個人目標を明確化することが重要なことと認識され、事前に決定した目標に対する達成が問われることになるが、実際には現実の世界の変化に対応するように目標そのものが柔軟に変わることが多く、完璧を欠く。

また、組織的には日本ではほとんどの企業は内部昇格制が採用されており、ピラミッドの階段を昇るかどうかも評価の結果である。従来の大企業では、多少の速度差があっても大部分の従業員は徐々に、地位を上げて行き、ポストの不足は出資会社への出向や移籍により対応してきたが、無闇にさして重要でない事業のため出資会社を作る制度そのものがあまり正しくないと考えられており、行詰り感がある。

また昇格に対する考え方については、上下移動のポストを増やせば、業務スピードが遅くなる結果を招くため、簡素化の方向となりピラミッドの階段数は少なくなり、かつ階段の上と下では、業務内容が大きく変わる。そのため、下の階層で実績を上げたからといって上の階層で業務を行えるかどうかは未知数であり、内部昇格制度との折り合いには問題がある。

評価と裏腹な問題は、インセンティブであり、結果としてはモラールの問題である。

しかし、単に給与だけでモラールを高める(あるいは維持する)には限界もある。よく給料を10%上げても生産性は5%しか上がらないし、逆に10%下げれば20%生産性は落ちると言われる。この言い方をつきつめれば、あまり給料は変化させない方がいいと言う事に他ならない。また裏側には、終身(あるいは長期)雇用の保証があるため、どうしてもプラス側よりマイナス側への下ぶれの方が大きくなると考えられるのである。


5.退職制度

退職制度には大きく、定年制による退職と、自己都合による任意の退職との2種類と考えられていた、このうち定年制についていえば「終身雇用制」の裏返しとしての制度であり、また従業員から見れば、日本的な慣習である若年時の低位な給与(右肩上り)と年代別に必要な資金計画(30台から40台に集中する学費、住居費)とのギャップを借入れで穴埋めするための将来の所得を担保に考えるという制度である。

一方、自己都合によるものとしては、単に文字通りの個人的な都合によるものが一般的で、会社の用意した終身雇用コースよりは低額な退職金が用意されるのが一般的である。このため(税制、年金制度も大いに関係するが)、早めに辞めると損という関係がなりたち、労働力の流動化がはかられない結果になっている。(もちろん急成長が必要な産業で、人材の不足の産業においてはまったく別である)

ところが、90年代になって、日本でも人材の生産性が大きなテーマ(コスト論)となり、早期退職制がとりいれられるようになるのである。

大別すると、特定事業の圧縮、廃止に伴う、「事業上の整理解雇」のケースと、従業員全体の過剰感を広く会社全体から退職募集するケースが一般的である。その他、違法とは知りつつ不当労働行為に抵触するような指名解雇も非組合員に対しては行われており、労働問題に詳しい専門弁護士は、労使どちらのサイドでも多忙を極めている。外資系企業の場合、特殊性をもって人材を確保するため、配置転換が困難なケースが多く、1年程度の予告あるいは退職金割増をもって、職場ごと整理解雇するケースが多いのだが、国内の大手製造業では希望退職の選択を行うことが多い。が、そのケースでは個別の指名を行うことができないため、企業にとって好ましくない結果(残すべき人材がやめる)が起こることが多い。希望退職にしても、数年前から残したい人材の処遇を上げ、残したくない人材の処遇を引下げるような施策を先行させるとか計画的に行わないと企業にとって不本意な結果となる。

また、現在、ベビーブーマー世代(世代の特徴としては内部抗争体質であって協調性を欠く人材が多いとされる)が50歳台後半になっていて、60歳まで待つことができなくなっているのが企業の現実と考えられる。

また、決算上は特別損失となるのだが、毎年毎年のように小出しに整理を行うのも、見通しが甘いと言わざるを得ない。


人的資源の組織戦略(2)

2009-04-22 00:00:08 | MBAの意見
2.能力開発

OJTからOFFOJTへという考え方がある。かなり以前、企業は大量採用時代には、一人一人の個を見て採用するのではなく、特定の指定校から大勢の学生を、就職協定という、あたかも平等感を装うルールにのっとり、きわめて短時間に採用していた。(就職協定などは、部分的な平等感が全体的としてみれば社会的不合理さを生み出す結果になるということにつながる)そのため、ひとりひとりの従業員は単に社員番号と学歴、経歴といったデータ管理の対象であっても、得意範囲とか人格、創造性とかいったきわめてアナログ的な情報で把握されることはなかった。また人材としても、きわめて一般化した没個性的な人間が必要であった。そのため、採用した多くの従業員は定期的に集合型の教育を行い、会社の必要なパッケージ型に成長することが好ましいと考えられていた。

しかし、その後何回かの不況や、人口構成上もベビーブーマー以降の世代になると、各企業の戦略も個性的になり、むしろ最初から教育は職場に合わせて行うという考え方に立ち、OJT型が中心となっていくのである。もちろん、教育にかかる経費もOJTの場合、人件費に埋もれてしまうので、特にうるさく言われるものでもない(もちろん、生産性の低い従業員が職場にいるということ自体はマイナスであろうが)。

ところが、90年代も終わりになると、必要な人材は非常に高度化し、特定問題の専門的分野になることが起こっている、たとえば、米国での法人の法律的問題とか為替予約のプロとかもちろん人事問題でも細分化された問題があり、専門的な知識が要求されるものである。また、専門性の世界では、技術や知識の進歩は日進月歩であり、OJTによる社員による教育では最新情報を教えることは困難である。したがって、専門のスクールというような形態により最新情報、最新理論を磨くことは、新人社員のみならず、多くの社員にとって有用なことと考えられる。

また最近よく言われるように、中高年が企業のほしい人材とミスマッチの状態と言えるが、それこそ、教育によりミスマッチを改善していくしかない。

以前は、「変節は人間として恥ずべき態度」といわれていたが、ことビジネスの世界では、「変節は、身替りの早さを示す」と評価される時代である。


3.組織論

孫正義氏が展開するビジネスそのものの評価は別にし、彼の組織論には興味を惹かれる。孫氏によれば、一人が管理できる人間の数は最大限8人である。また縦型に見て4層構造以上になると、企業のサイズが大きくなりすぎ、社員の管理の上でも、社長が目を届かせることが困難になる。彼の言う4段階とは、社長-部長-課長-一般社員であろう。ピラミッドを組み立てれば、人数的には1+8+64+512=585となる。実際にこれを超えた組織では、縦、横の通風が悪化し問題点が多くなる。もちろん中規模企業では1+8+64=72人が適正な規模であり、小企業では1+8=9名というのが妥当な数値であろう。

しかし、多くの古典的企業においては、リストラによって、人員の削減は行うものの、実際的な意思決定までのプロセスを抜本的に変えることは難しい(部の統廃合とかいう算数的な処置を行うにとどまる)。しかし、既存の組織では扱えないような、一時的な課題や、縦割り構造の企業組織を超越しておこなうべきプロジェクト型の業務は頻繁に発生することになり、縦型の表面的組織に加え、横型の組織が発生することが多い。横型の組織について言えば、TPM活動的なボランタリー組織や、臨時的な委員会組織、もっと組織的になった臨時(期間限定)のプロジェクト型組織などがある。しかし、縦型意識の強い組織で、横型の業務を行うことは、違和感が発生するし、また様々な副作用がある。
  
IT化の組織に与える影響も大きい。初期段階では、表向きの縦割り型組織に対して、上下左右の関係をまったく無視した情報の流れが発生し、いわゆる「根回し」がLAN上でスピーディかつ細部にわたり念入りに行われることとなり、職務上のキーパーソンとはことなる、ネット上のキーパーソン(場合によれば社外に存在することまである)が別に現れたりする(表面化することはない)。これによって組織は実質的には、ある意味では効率的になるのだが、組織論的にはまとまりがつかなくなるのである。

次にERPの動きであるが、世界的にみて、企業活動は一社完結型から、複数の独立的企業が契約によって有機的に組み合わせになる連携型になる動きが顕著である。一見して企業内統一システムであるERPがSAP社、ORACLE社の2社に集約されていく流れを考えると、その2社のシステムが、連携型企業の情報連携の共通言語化するものと考えられる。もちろん自社開発システムで出資会社のすべてをカバーしようという動きもあるが(国内の場合、むしろ動機はQ毎の連結決算をすばやく作成する目的が多いが)所謂デファクトスタンダードの理論により、今後は高額であっても上記2社に収斂するのではないだろうか。