大ヒットしたブロードウェイミュージカルの映画化作品。
児童文学「オズの魔法使い」の物語を、魔女側の視点で再構築した「ウィキッド」。
前評判は高く、アカデミー賞では作品賞にノミネートされていたし(受賞は逃した)、衣装デザイン賞と美術賞を受賞。
ジョージ・ルーカスはこの映画を観て感激のあまり、この映画を撮ったジョン・M・チュウ監督(傑作「クレイジー・リッチ!」の監督)に直接電話して謝意を伝えたとかいう噂もある。
そんなわけで、平日の昼間、渋谷の映画館で観てきた。
その感想。
これは傑作。
平日の昼間の上映なのに、なんと映画館はほぼ満席。
クチコミで人気が広がっているのだろう。
星4つ。★★★★
「オズの魔法使い」に思い入れがあればあるほど感激もひとしおだと思う。
ミュージカル映画としてたいへん完成度が高く、主演の2人の歌と演技が秀逸で、それぞれアカデミー賞で主演女優賞、助演女優賞にノミネートされていたのも納得(アリアナ・グランデが少し痩せすぎているのが気になったが)。
原作の「オズの魔法使い」では完全な悪者として描かれていた「西の魔女」の背景に、こんな友情ストーリーがあったというのは実に興味深い脚色だし、今回の映画はパート1で今年の冬にパート2が公開されて完結するのだが、そのパート2の方でこの「本当は良い人だった西の魔女」をどう描くのかがとても気になる。
プロット上、最後が感動必死の悲劇になることが約束されているので、楽しみだ。
映画のメッセージ性もとても素晴らしい。
かつて「オズの魔法使い」で一方的に悪者として描かれていた「西の魔女」だが、もしかするとそれは体制側が煽り立てたプロパガンダに過ぎず、西の魔女側からしたら体制の方が「悪」かも知れない。
そんな疑問を出発点に、いつの時代にも通じる世の中の姿を描ききっている名作とも言えるだろう。
なおパート2には、ドロシーとトトもおそらく登場する。
さらにそれと一緒に、かかし、ブリキ男、ライオンも出てくるので、その辺がどんな感じでビジュアル化されるのかも見どころになる。
僕は、ジュディ・ガーランド主演の1939年の映画「オズの魔法使い」や、マイケル・ジャクソンがかかしを演じた映画「ウィズ」ぐらいしか、かかし、ブリキ男、ライオンの実写化は見たことがないので、2025年のいま、どんな感じでこの3つのキャラクターがビジュアル化されるのか?
すげーリアルなCGで処理されるのだろうが、楽しみだ。
最後にコレ。
なによりDisney作品ではないのが素晴らしい。
「オズの魔法使い」だから、てっきりDisney作品だと思って身構えて見にいったら違ったのだ。
本当に良かった。
Disneyが作っていたら、こうも名作にはならなかっただろうからね。
というのも、政治的な、あるいは、反差別的な、いわゆるポリコレ的なメッセージがDisneyが作る映画の不自然なそれと違い、ごく自然に物語の中で処理されているからだ。