家で一人になったナミは、もう少しで1億ベリーが貯まることを秘かに喜んでいた。
(長かったけど、あとたった1回の航海で全てが還ってくる・・・!!全てが報われる・・・!!アーロンから解放されるんだ・・・!!ベルメールさん、そしたら私、やっと!!心の底から笑えそうな気がするよ。)
だが、アーロンは甘くなかった。
「アーロン帝国」の建設に必要不可欠なナミと、金づるであるココヤシ村を解放するつもりなど、毛頭なかった。
金で買収し、裏でつるんでいた海軍第16支部の「ネズミ大佐」をココヤシ村に呼ぶと、ナミがコツコツと盗んで貯めた1億ベリーを没収するよう手配した。没収したなら、その3割はネズミ大佐の取り分である。
ネズミ大佐は、ベルメールの家にいたナミに「君が海賊から宝を盗んでいるとの通報が入った。相手が海賊なので強く咎めるつもりはないが、しかし、泥棒は泥棒、罪は罪だ。当然その盗品は全て我々政府が預かり受ける。貴様が盗み蓄えたものを全て提出しろ」と迫った。
ナミは必死で訴えた。
「アーロンの支配でこの島の全員が「奴隷」にされているのよ!!?その大問題を無視して泥棒一人から盗品を巻き上げるのが政府の意向なの!!?島中の人達は、ずっとあんた達の助けを待っているのに!!!よくもそんな人達を素通りしてここへ来れたわね!!!」と言っても、ネズミ大佐は無視して、部下に宝を探させた。
その海軍の前にわって入ったのは、海軍をここまで案内してきた、駐在のゲンゾウだった。
「この娘の金は、このココヤシ村を救うための金だ!!!それでも貴様らに金を奪う権利があるのか、海軍!!!」
驚くナミにゲンゾウは「知っていたよ、ナミ。村中のみんなが全てを知っている。だが、お前がそれを知ってしまっては、お前がここを逃げ出したいと思った時、私達の期待が足を引っ張ってしまうと、知らぬフリをしていた。」と8年間隠してきた真実を告げた。
さらにルフィ達の元から戻ったノジコが「政府が頼りにならないから、あたし達は一人一人が生きる為に戦ってるんだよ!!!村を救う気がないなら、さっさとここから消えな!!!
ぐすぐずしてると、あんたらの船もアーロンに襲われるよ!!!」と怒鳴ったが、ネズミ大佐は「ほぉ・・アーロン氏に?それはどうかな?」とニヤニヤと笑って、「1億ベリーあるはずだ、さっさと探せ!」と部下に命じた。
そこで、ナミはようやく気づいた。
アーロンがハナからナミとの”約束”など守る気がなかった事、1億ベリー貯まるまでわざと泳がされ続けていたこと、
人々の唯一の希望だった海軍が海賊の手下となって村人を見捨て続けてきたこと、人々を救うはずの1億ベリーが海軍によって取り上げられようとしている事、8年間騙され続けていたこと・・・・。
自分の想像をはるかに絶する絶望と悔しさに、ナミは混乱し、怒りに我を忘れた。
さらにナミの目の前で、ノジコが”海軍”によって撃たれた。
8年前のベルメールさんが撃たれたのと、同じ場所で・・・、海軍に・・・!!!
ここまでされて、なお生きねばならないのか・・!!!手も足も出ないまま、政府や海軍の助けなどないまま、魚人に命を握られ、生かされねばならないのか・・・・!!!8年間の苦労は一体何だったのか・・・!!!
この騒ぎを聞きつけて、寝転んでいたルフィが「ナミ、何かてつだおうか?」と呑気に声をかけ、ナミは「あんたには関係ないっ!!!さっさと島から出てって!!!」と怒鳴ると、全速力でアーロンパークへと走り出した。
気がおかしくなる程の怒りに身を震わせたナミは、アーロンに飛び掛って、わめいた。
「アーロン!!!どういうこと!!お金の上の約束は死んでも守るんじゃなかったの!!?」
するとアーロンはナミの頭をその大きなヒレのある手で鷲掴みにすると「おれが、約束をいつ破った!?言ってみろ!!シャハハハハ!!!!」と高笑いを響かせた。
8年前に絶対に泣かないと誓っていたが、アーロンの非情な支配に、裏切りに、絶望に、悔しさに涙が止まらなかった。
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