世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

論文データ捏造の上原亜希子の請求を仙台地裁が棄却!(改訂前)

2012-02-29 23:16:00 | 社会

「東北大大学院歯学研究科のグループが発表した論文に不正があったとされる問題で、実験結果を捏造(ねつぞう)したとして懲戒解雇された同研究科元 助教の上原亜希子さん(42)が同大に地位確認と慰謝料1000万円を求めた訴訟の判決で、仙台地裁(斉木教朗裁判長)は28日、請求を棄却した。 [1]」

こんなの当たり前。あれだけデータ流用をやっていて捏造がなかったと争う方がどうかしている[3]。2010年5月に仙台地裁は 「データに類似性が認められたからといって、流用があったと結論付けることは早計」とし、上原亜希子の地位保全の仮処分を命じていたが、予想通り覆った [2]。そもそもこんな判断をしたことが間違いだった。裁判官の科学レベルの乏しさを証明する判断だったが、きちんと覆って本当によかったと思う。裁判で はデータ流用が認定され、懲戒解雇は有効と判断された。上原亜希子は仮処分中に受けた給料等をきちんと返還しなければならない。

以 前にも述べたことであるが、なぜ上原亜希子はこれほどの流用による捏造の証拠がありながら、不正はなかったと争うのか理解不能だ。端的に言って異常であ る。訴状によれば論文4本でデータ流用による捏造をしたとして懲戒解雇されたが、複数の論文の複数のデータにわたって流用が行われたのは、故意の不正の決 定的証拠といえる。異 なる条件での複数の実験で偶然酷似した結果が得られることは絶対といっていいほどないことだし、流用があったと断言できる。また複数回それを繰り返してい ることからも過失ではなく故意と断言できる。異なる実験で偶然いくつも酷似した結果になったとか、複数回データをうっかりと使いまわしてしまったというの は、過失とすると極めて不合理である[4][5]。

不正の決定的な証拠をいくつも突きつけられながらも、 まだ不正を否定し争うのは非常に悪質である。上原亜希子には全く反省がない。科学界から永久追放されるのは当然だ。上原亜希子の異常さを考えると、どうせ 高裁に控訴すると思うが、やはり控訴した。事実上決着はついているのに、なぜ時間やお金を大量につぎ込んでまで争い続けるのか全く理解できない[3]。い い加減に不正を認めて、研究界と関わろうとすることをやめてもらいたい。

端的にいって、これほど悪質な人物は大迷惑である。

参考
[1]nikkansports.com 2012.2.28
[2]世界変動展望 著者:"データ捏造の東北大元助教の地位保全等を仙台地裁が決定" 世界変動展望 2010.5.18
[3]世界変動展望 著者:"上原亜希子は不正の明白な証拠がありながらなぜ争うのか?" 世界変動展望 2011.8.22
[4] 裁判で要求される合理的な疑いを超える程度の証明とは「刑事裁判における有罪の認定に当たっては,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であ る。ここに合理的な疑いを差し挟む余地がないというのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らして,その疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には,有罪認定を可能とする趣旨である。」(平成19年10月16日最高裁決定)、民事事件でも基本的に同じです。
[5] 裁判の認定ではデータ流用があったことを合理的な疑いを超える程度で証明しなければなりません(あくまで裁判での話[7])。本文で書いたとおり、上原亜 希子の被疑事実のような異なる実験でデータが酷似する可能性はどれくらいかというとはっきりと調査したわけではありませんが、科学常識から考えて100回 やっても1回もないでしょう。確率的にはもっとずっと低いと思います。流用に関しては合理的な疑いを超える証明があったことは明白です。

このように客観的な事実から流用に関しては争えないことがほとんどです。ですから大概のデータ流用事件は、被疑者は流用は争わず、過失だったと争うのが普通です(その意味でも流用を否定する上原はかなり珍しいといえるでしょう)。では、流用があったとしてそれが過失で起きた可能性はどのくらいあるでしょうか。これに関しては正確な調査データはなくわかりません。毎日新聞によると『日本学術会議が全国の大学、研究機関、学会を対象に初めて実施した論文や研究資金などに関する不正の実態調査で、有効回答数の12.4%にあたる164機関が「過去10年間に不正行為の疑いがあった」と答えた。[6]』 ここでいう不正とは捏造、改ざん、盗用だけでなく論文の多重投稿、研究資金の不正使用などあらゆる不正を含みます[6]。『不正行為の疑いは計236件あ り、そのうち150件が「不正があった」と認定された。認定された不正の内訳は、▽論文の多重投稿52件▽研究資金の不正使用33件▽研究の盗用31件▽ データ改ざん5件▽プライバシーの侵害4件▽データねつ造3件▽その他22件。論文にまつわる不正が全体のほぼ3分の2を占め、研究資金の不正使用が約2割だった。 』とあります。

単純計算で不正の疑いのうち150/236 = 0.6355 ≒ 63.6%が不正だったことになります。逆に言えば過失か無実だったものは36.4%だったと いうことです。論文に関する不正が全体の3分の2ですから、論文に関する不正の疑いは全研究機関のうち8~10%くらいの割合あった感じがします。データ 流用に当たる捏造、改ざんは150件中5件なので、認定された不正のうち3.3%です。不正嫌疑全体に占める捏造、改ざんの割合もあまり大きく変らないで しょう。1割より有意に小さいと思います。仮に1割が捏造、改ざんの嫌疑、そのうち過失か無実だったものが36.4%だとすると、全研究機関のうち論文の 不正の疑いが発生した割合が8~10%なので、「全研究機関のうち0.8~1%程度で、過去10年間に捏造、改ざんの疑いが発生した。そのうち過失か無罪のものは0.29~0.36%だった。」という計算になります。

無論これは「過去10年間で研究機関で不正の疑いが発生した件数や割合」ですから「全研究資料中でデータ流用が疑われる件数や割合」ではありません。しかし、こういう数値だけみてもデータ流用が疑われる研究発表はほとんどなく、疑いが生じてもそのうち過失のデータ流用の割合はもっと少ないこ とは一般の読者でもわかると思います[8]。実際に研究をしている人ならうっかりデータ流用してしまったというミスがほとんどないことは経験的にわかって いるはずです[8]。研究資料を100本読んでもデータ流用の疑いを持つ資料に遭遇することはほとんどないでしょう。現実にあなたが研究資料を100本読 んでどれくらいデータ流用の疑い持ったでしょうか?そんな資料に遭遇することはほとんどないでしょう。100本中1本もないのが普通だと思います。全研究機関で10年間に発生する捏造、改ざんの疑いの割合が1%未満ですから、5年間に過失のデータ流用が発生する確率は1%よりずっと小さく、発生確率を1%としても非常に高い見積もりです。

現 実にどれくらいの確率で過失のデータ流用が起きるのかわかりませんが、少なくとも上原亜希子のように約20回もデータ流用をしたというのは、過失とすると 極めて不合理です。仮に過失のデータ流用発生確率が1%とすると、不正行為当時の上原の発表文献数が100本程度だとして、うち20回過失のデータ流用が 起きる確率は100C20(0.01)20(0.99)80≒2.4×10-20。上原亜希子が過失でデータ流用した可能性が絶対といっていいほどないことは大雑把な計算からも明らかです。

仮に研究資料を21件発表したとしてデータ流用の疑いが2件あったとします。2回過失のデータ流用をしてしまった確率は21C2(0.01)2(0.99)18≒0.0173 (1.7%)。研 究資料21件中で過失のデータ流用が起きる確率は1.7%しかありませんから、20件程度の文献中で2件過失のデータ流用が見つかっただけでも、「うっか り新しいデータと過去のデータを取り違えて発表した又は同一データだが条件を書き間違えて発表した」と言い分けするのはかなり苦しいといえます。「過失により1.7%の確率でしか発生しない珍しいことが偶然起きた」と考えるのは不合理だからです。即ち、このケースでは故意を認定すべきということになります。

[6]毎日新聞 2006.12.12 記事はここ

[7]裁判では立証責任がある方が合理的な疑いを超える程度の証明をする義務があります。しかし、研究機関の不正の調査では文科省のガイドラインで 「調査委員会の調査において、被告発者が告発に係る疑惑を晴らそうとする場合には、自己の責任において、当該研究が科学的に適正な方法と手続に則って行わ れたこと、論文等もそれに基づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない。」(第2部ローマ数字 4.3(2)①)「・・・被告発者が自己の説明によって、不正行為であるとの疑いを覆すことができないときは、不正行為と認定される。また、被告発者が生 データや実験・観察ノー ト、実験試料・試薬の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により、不正行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示せないとき(上記(2)2)も同様とする。」(第2部ローマ数字4.3(3))と定められているので、立証責任は被疑者側にあり、自己の説明で科学的根拠をもって不正でないことを立証しないと不正とされるルールです。

[8]このように計算しなくても、科学者は過失のデータ流用が非常に珍しいことだと経験的にはわかっています。にも関わらず、研究機関でデータ流用を過失で済ますことが珍しくないのは、研究機関の保身やリスク回避のために「本当は故意だがわざと過失と裁定する」ことがしばしばあるということです。無論、被疑者の過失という言い分けは嘘の可能性がかなり高いで す。わざと不正を握りつぶす研究機関は自己改善してほしいものです。以前も述べたことがありますが、被疑者の所属研究機関に調査裁定を委ねる現状の制度は 公平な調査等を行わないことが珍しくないので、制度を改善し、第三者的な機関に調査裁定を委ねる等した方がいいでしょう。


論文データ捏造の上原亜希子の請求を仙台地裁が棄却!

2012-02-29 23:16:00 | 社会

「東北大大学院歯学研究科のグループが発表した論文に不正があったとされる問題で、実験結果を捏造(ねつぞう)したとして懲戒解雇された同研究科元助教の上原亜希子さん(42)が同大に地位確認と慰謝料1000万円を求めた訴訟の判決で、仙台地裁(斉木教朗裁判長)は28日、請求を棄却した。[1]」

こんなの当たり前。あれだけデータ流用をやっていて捏造がなかったと争う方がどうかしている[3]。2010年5月に仙台地裁は「データに類似性が認められたからといって、流用があったと結論付けることは早計」とし、上原亜希子の地位保全の仮処分を命じていたが、予想通り覆った[2]。そもそもこんな判断をしたことが間違いだった。裁判官の科学レベルの乏しさを証明する判断だったが、きちんと覆って本当によかったと思う。裁判ではデータ流用が認定され、懲戒解雇は有効と判断された。上原亜希子は仮処分中に受けた給料等をきちんと返還しなければならない。

以前にも述べたことであるが、なぜ上原亜希子はこれほどの流用による捏造の証拠がありながら、不正はなかったと争うのか理解不能だ。端的に言って異常である。訴状によれば論文4本でデータ流用による捏造をしたとして懲戒解雇されたが、複数の論文の複数のデータにわたって流用が行われたのは、故意の不正の決定的証拠といえる。異なる条件での複数の実験で偶然酷似した結果が得られることは絶対といっていいほどないことだし、流用があったと断言できる。また複数回それを繰り返していることからも過失ではなく故意と断言できる。異なる実験で偶然いくつも酷似した結果になったとか、複数回データをうっかりと使いまわしてしまったというのは、過失とすると極めて不合理である。

不正の決定的な証拠をいくつも突きつけられながらも、まだ不正を否定し争うのは非常に悪質である。上原亜希子には全く反省がない。科学界から永久追放されるのは当然だ。上原亜希子の異常さを考えると、どうせ高裁に控訴すると思うが、やはり控訴した。事実上決着はついているのに、なぜ時間やお金を大量につぎ込んでまで争い続けるのか全く理解できない[3]。いい加減に不正を認めて、研究界と関わろうとすることをやめてもらいたい。

端的にいって、これほど悪質な人物は大迷惑である。

参考
[1]nikkansports.com 2012.2.28
[2]世界変動展望 著者:"データ捏造の東北大元助教の地位保全等を仙台地裁が決定" 世界変動展望 2010.5.18
[3]世界変動展望 著者:"上原亜希子は不正の明白な証拠がありながらなぜ争うのか?" 世界変動展望 2011.8.22


平成23年度和算に挑戦上級問題、一関市博物館解答の補足

2012-02-28 00:26:15 | 物理学・数学

26日に平成23年度和算に挑戦の解答が公表されました。ネットで公表されている一関市博物館の解答は岩手県和算研究会の解答ですが、その内上級問題の解答例の中で一部わかりにくいと思う箇所があったので補足説明します。具体的には、

の部分ですが、これはシュタイナーの円環に関する定理を用いています。シュタイナーの円環に関しては「偶数個の円がシュタイナーの円環をなしているとき, 向かい合っている円環の円の半径の逆数の和は一定である」という定理が成り立ちます[1]。詳しくは参考[1]の定理7を見てください。これから、

1/(甲円の直径) + 1/(丙円の直径) = 1/(乙円の直径) + 1/(乙円の直径)

が成り立つわけです。最近の中等教育の教科書がどうなっているのかわかりませんが、おそらく教科書にはなく、シュタイナーの円環に関するこの定理を知っている人はほとんどいないと思います。一関市博物館の解答例は何の説明もなくいきなり「1/甲+1/丙 = 1/乙+1/乙が成り立つから」と記載していますが、この定理を知っている人がほとんどいないことを考えると、なぜ成り立つのかわからなかった読者は少なくないでしょう。

私は何の説明もなくこの式が記載されていたので、読者には自明なので説明が略されているのかと誤解してしまいました。しかし、よく考えても根拠がわからず、少なくとも自明でないことがわかりました。調べてみると上記のように特殊な定理により成り立つことがわかり、一関市博物館側の解答は説明不足だと判断しました。スチュアートの定理に関しては答案中できちんと明記しているのに、なぜシュタイナーの円環の定理は説明しなかったのでしょうか。繰り返しになりますが、教科書に書いてないこんな特殊な定理は明記し説明しなければ普通読者はわかりません。

一関市博物館は「・・・答案は同じような立場の人が読んでわかりやすい内容、あるいは解答者が教える立場で作成して欲しいものです。[3]」「また説明不十分、つまり考えの根拠がなく突然使われる式のため誤答になった例もありました。[4]」「また、解答の進め方、作り方に第三者に見せる工夫が欲しいもの、論理を整理して表現する点で努力が欲しいものもありました。[4]」と講評で述べていますが、こういうことを言うならまず自分達が第三者が読んできちんとわかる解答例を作るべきだと思います。

ところで参考[2]を見ると上級問題と同様の問題が「精要算法 巻之下」(著者 藤田定資)に載っていることがわかります。この本の正確な出版日はわかりませんが、藤田定資は1734~1807年に生存していた人なので少なくともこの本は1807年より前に出版されたと思います。上級問題の出展は『算法新書』の巻の五で文政13年(1830)刊行なので、少なくとも上級問題のオリジナルは『算法新書』ではないようです。

私の上級問題解答例で補足しましたが、私の解答例④と上記のシュタイナーの円環の定理を組み合わせると、次のような解答も可能になります[6]。x,yはそれぞれ丙円の半径、乙円の半径です。

4次方程式でなく2次方程式を扱うことになり、しかも因数分解で簡単に解けます。[6]で最初に紹介した解答よりかなり簡単です。詳しくは参考[6]を見てください。

参考
[1] "円環の諸定理" 数学対話第4期
[2] "和算の問題" 数学対話第4期
[3]一関市博物館、平成23年度和算に挑戦、中級の講評
[4]一関市博物館、平成23年度和算に挑戦、上級の講評
[5]藤田定資の生存時期はこのページによった。
[6]世界変動展望 著者:"平成23年度和算に挑戦上級問題解答" 世界変動展望 2012.2.1


ニュートリノの超光速は測定ミスか?

2012-02-23 22:33:03 | 物理学・数学

昨年ニュートリノが超光速であるという測定結果が発表され世界中が驚いた。アインシュタインの特殊相対性理論に矛盾するため、間違いではないかと検証が求められた。結果を発表したCERNは「GPS受信機につながるケーブルとコンピューターの間の接続に不備が見つかり、誤差の原因になった可能性がある[1]」と発表した。

超光速はミスだったか?物理学の基本原理を覆すのは簡単ではない。

参考
[1]"「光より速いニュートリノ」実験、間違いの可能性"  asahi.com 2012.2.23


店が身分証明書のコピーをとることについて

2012-02-18 00:17:05 | Weblog

携帯電話会社などで身分証明書の確認が必要なとき、確認だけでなく身分証明書のコピーまでとられるケースがある。提示だけで確認は済むはずなのになぜコピーまでとる必要があるのだろうかと考えると、業者側の事務処理手続きのため又は将来紛争が生じたときために、事後的にきちんと確認したことが証明できるように証拠としてとっているのだろう。

ただ、私は悪用防止のため身分証明書のコピーはとられたくない。実際に悪用されることはあまりないと思うが、例えば身分証明書が偽造されたり、知らないところで個人情報が流出する原因になるかもしれない。コピーをとるのは業者側の利益のためでしかなく、客には何の利点もないし、たとえわずかでも業者側の便益のために自分が犠牲を払って協力したいとは思わない。一言でいえば、業者側の都合だけでコピーをとられるのは嫌だということだ。

いろいろな店で「身分証明書のコピーをとらせてください。」といわれるが、業者側は身分証明書を見るだけで十分本人確認できるはずだし、コピーまでとるのは正直遠慮してもらいたい。もっとも、こんな意見は人によっては客側のわがままにみえる人もいるだろう。コピーの悪用が完全に防止できるなら協力してもいいですがね。


深浦、橋本、共にA級へ昇級

2012-02-06 00:00:06 | 囲碁・将棋

B級1組の順位戦が行われ深浦と橋本がA級昇級を決めた。深浦は4期ぶりの昇級、橋本は初の昇級となる。思えば深浦は今まで何度も不運のために頭ハネになってA級に定着できなかった。その頭ハネにはすべて三浦が絡んでいた。今度こそA級に定着してほしい。実績はあるのだから定着できないはずはない。

橋本は前期に続き連続昇級。実力はあると考えられていたので、いつかA級にいくだろうと思っていたが今期昇級が実現した。来期はついにA級八段だ。橋本はNHK杯戦などで派手な髪型や服装で登場したことがあり、勝った直後にテレビ目線で映るなど私には目立ちたがり屋の印象が強い。まだタイトル獲得や挑戦こそないが、一流棋士の証ともいえるA級棋士になることで、その実力は証明された。正確にいえば前から証明されているので、今期のA級昇級は橋本の実力評価をさらに上げるものとなろう。

2人の来期のA級での活躍を期待している。

思えば山崎は後輩橋本に抜かれてしまった。今期A級昇級を期待していたが、来期がんばってほしい。


研究機関の不当調査裁定と人事・査定への助言- 獨協医大の不当調査裁定を例として

2012-02-05 00:39:19 | 社会

獨協医大の不正行為の調査概要が発表された[1]。発表内容によると元データは多数あったようだ。これを意図的に別な画像に置き換えたので改ざんと判定された[1]。非常に悪質だ。獨協医大の不正調査はいくつか不自然な点等がある。

(1)二重投稿が不正でないという主張

『三つの論文において画像及び大部分の文章が他の論文と同一であり、二重投稿に当たるという指摘がある。調査の結果、いずれも論文全体の約8割が同一内容の論文がそれぞれ二つの学術誌に掲載されている。しかしながら、これらは前述した定義上の不正行為(捏造、改ざん、盗用)に当てはまらない。しかも、研究者によれば、いずれも後に投稿した一方の学術誌を研究会の抄録であると誤認していたため投稿したものであり、故意によるものではなかった。』

獨協医大の発表では「二重投稿が不正行為の定義に当てはまらない。」「故意でない。」と主張している。おそらくそれを理由に二重投稿を処罰対象にしていない。しかし、これは明らかに不適切である。確かに文科省等のガイドラインは研究上の不正行為を捏造、改ざん、盗用の3つに限っている。しかし、それはその他の不正行為を排除するものでなく社会通念上不正とされるものは当然不正であり処罰されるべきである。二重投稿が不正行為であることは文部科学省ガイドラインの他の部分の記載や東北大学調査検討委員会の公式見解からも明らかである。

東北大学の調査委員会は大学等のガイドラインは確かに不正行為を捏造、改ざん、盗用に限っているが、それは不正をそれらに限るわけではなく二重投稿等の一般的に不正とされるものも同様に不正として調査裁定すべきという趣旨を述べているが、これは当たり前ではある。獨協医大は定義に当てはまらないから不正とせず処罰対象にもしないと主張しているが、これは大学としてのモラルが欠如しているか不正で処断することが彼らにとって都合が悪いので、あえて不正でないとしたのだろう。

モラルのある研究機関なら一般に不正とされることはきちんと処罰する。独協医大にも「大学の名誉・信用を害する行為」など懲戒事由が規定に設けられているだろうから、そういう他の規定で処断すべきだが彼らはこの点は無罪放免のようだから、不正を握りつぶしたと言わざるを得ない。

著者は「学術誌を研究会の抄録であると誤認していたため投稿した」と主張しているが、抄録はフルペーパー等からの抜書きか抄録用に簡略に執筆されているため一般にフルペーパー等に比べてずいぶん分量が少ないし、フルペーパー等の論文を抄録のつもりで投稿することなどほとんどないだろう。また、研究者は投稿先が学術誌かそうでないか普通はわかっているので、学術誌に抄録のつもりで投稿することはまずない。また、論文掲載が決まったときにはアクセプトの通知を受けていただろうし著作権譲渡契約もしたはずだから、抄録だと思っていたはずがない。アクセプト後になぜ論文を取り下げなかったのか。端的にいってこれは保身のための嘘で、故意だったのが真実だろう[9]。大学は故意と判断すると大事になるから、わざと過失と判断したにすぎない。

(2)論文の結論に影響がなければ重大でなく、科研費を返還しないという主張

『委員会としては、論文の結論に影響を与えるような操作を行っているものではなく、むしろ真正の結果に類似する、より鮮明なデータを代用したものであり、オリジナル画像を発見できなかったものについても不適切な使用が行われたということは確認されなかったことから、研究活動自体は適切に行っていたものと判断した。』

これを理由に科研費等は返還しないつもりらしい[4]。少なからず科研費等が不正行為に使われたのは事実だろうから、科研費を返還するのは当たり前だ。不正が論文の結論に影響を与えるかどうかとは関係なく、悪いことに科研費を使ったのだから返還されなければ道理が通らない。獨協医大は「結論に影響がなければ悪いことに金を使っても返さなくていいんだよ。」という主張らしいが、とんでもないことだ。こんな身勝手な主張は認めるべきでなく、科研費返還は当然だし、不正行為に基づくペナルティが科されるべきである。こんな大学に公的研究費を交付すべきではない。もっとも、獨協医大は上のように主張しているが、学振等は不正行為が認められた以上科研費の返還を要求するだろうし、返還しないという不条理な主張は認められないだろう。

また、獨協医大は論文の結論に影響がなければさも流用等の不正行為が重大でないかのような主張をしているが、改ざんは人々の科学に対する信頼を致命的に傷つける行為であり、それを40件以上も行っておいて重大でないというのは大きな間違いだ。

(3)不正行為関与者が一人だけでしかも諭旨退職で済んでいること

獨協医大によれば『指摘された27編の論文の内、不正行為に該当する10編の論文については、7名の研究者が筆頭著者として、また、18名の研究者が論文の共著者として関わっている。・・・服部研究者以外の6名の筆頭著者は、服部研究者の指導を仰ぐ立場にあったので、論文について口を挟めるような状況ではなかった。また、17名の共著者は、論文の基本的な内容については服部研究者に任せていたので、特段、改ざん等に該当するという認識もなかった。本件のケースは、いずれも真正な結果に類似する見栄えの良いデータを代用又は流用したものであることから、論文の結果から特に疑念を抱くことはなかった。なお、いくつかの論文の共著者である主任教授については、10論文中9論文において、研究上の助言は行ったが、内容を把握していなかったことから、不正行為には関わっていない。ただし、主任教授としての管理責任は免れられない。[1]』

不正行為論文の筆頭著者は6名、共著者は17名、これだけいて元教授以外誰も不正行為に関与していないというのは不思議だ。特に筆頭著者が6名もいて誰も不正に関与していないというのはかなり不自然な感がある。医学系の研究はよくわからないが、通常筆頭著者はその論文の主たる研究遂行者で論文に対して最も貢献があり内容を一番よくわかっている者だ。だから、改ざんが行われていたことを知らなかったというだけでもかなり疑わしいし、6名もいて誰も不正に関与していないというのはほとんどないことだろう。

よくわからないのは「服部研究者の指導を仰ぐ立場にあったので、論文について口を挟めるような状況ではなかった。」と不関与の理由が説明されているが、自分が筆頭著者の論文なのに口すら挟めないのは不自然ではないか。筆頭著者なら普通は自分が主導的に動き、指導者とも議論する。もっとも、医学部というところが私はよくわからないので、ひょっとすると教授がたいへんな権力者で部下に実験を実施させて後はワンマンに論文を書いていくようなことがあるのかもしれない。しかし、これだけ著者がいて元教授以外誰も不正に関与していないのはおかしな話だ。

あと、流用は40件以上という大規模に行われた。これだけ流用しても元教授は諭旨退職で済んでいる。例えば東北大学の上原亜希子のように、これだけやれば懲戒解雇が当たり前だろう。琉球大学医学部教授のような停職10ヶ月の事例はあるが、これは大学との慣れ合いで起きた不当処分なので参考にすべきではない。「・・・本人の本学へのこれまでの貢献度や反省度合いについても勘案しつつ、・・・」と説明されているが、これほど大規模でも懲戒解雇にならないのだから不思議だ。処分が軽い理由なんてこのように適当に何とでもいえるし主観判断なので、不当な処分になっても大学側としては何とでも言い分けできるのだろう。私が同大の学生でこれだけ大規模に不正をやった元教授に払った授業料から退職金を支給するのはたまったもんじゃないが。

(4)2011年8月末までには調査結果を公表するという公言を翻したことに何の説明もないこと及び処分者が2011年4月30日で諭旨退職になっていること

獨協医大は2011年8月末までには調査結果を公表すると公言していたが、これを翻したことに何の説明もない[5]。また調査結果の公表は2012年1月末だから、調査結果が出る約9ヶ月も前に処分が下されている。普通は結果が出ないと適切な処分はできないから、それまで処分されないはずだが、なぜこれほどはやく処分されたのだろう。その点が不自然だ。もっとも、これは不正調査の概要とは直接関係はないので[1]で説明されていなくても不思議はないが、公言を翻したことや調査結果が出るよりも、かなりはやい段階で処分を行ったことは不当な裁定を疑われる要素だから大学としては別途説明すべきであろう。

(5)不正の具体的な態様を明らかにしない

不正があったことは明らかにされたが、流用が具体的にどのような態様であったのか明らかにされていないし、本当に研究の核心に抵触せず結論に影響しないのか保障されていない。これは説明不足であり、大学は責任を十分果しているといえない。具体的な論文名や不正データを明らかにすれば元教授以外の著者の名誉に関わるので公表していないのかもしれないが、大学としては「不正行為に関与していない」としているのだから全く問題ないだろう。きちんと態様を公開し、本当に論文の結論に影響しないものなのか、悪質な流用かどうか第三者がきちんと検証でき、本当に公正な判断がなされたのか判断できるような透明性のある調査公表がなされるべきである。

(6)総合判断

獨協医大の調査・裁定は二重投稿を不正として処分しないこと、6名もいる筆頭著者が誰も不正に関与していないこと、不正を行っても科研費を返還しないと主張していること等、概して調査裁定において「できる限り不正の処断範囲やそれに伴う不利益を小さくする」という意思がはたらいていると考えられる。無論、同大の調査裁定は不当である。今の調査裁定の制度は被告発者の所属機関が調査裁定する仕組みになっており、構造上不当な調査裁定が行われる危険が高い。裁判でいえば被告人が裁判官を兼ねて裁判を行うのに似た弊害がある。

大学等の幹部で構成される調査委員会が開かれて調査裁定されたので、その結論には権威があり正当で信頼性があると思うかもしれないが、調査裁定には利害関係が絡むから機関や各研究者の保身のために不当な調査裁定になることは十分考えられ、現に本件や東北大総長、琉球大学医学部教授の不正事件など不当調査裁定は珍しくない。特に故意か過失かという判断は、かなり不自然でも過失と判断されることが驚くほど多く、保身のため嘘をつく可能性が極めて高い被疑者の主張を半ば盲目的に信じ過失と判断しているケースが多い[6]。そういう表現より大事になることを回避するため、わざと過失と判定しているというのが実態に近いだろう[6]。残念だが、これが実情である。

二重投稿は社会通念上不正行為と認められているにも関わらず、処罰による不利益を回避するためわざとガイドラインの不正行為の定義に限定して処理し不処罰にするとか不正行為に科研費等を使っても返還しないなど、明らかに社会通念に違反する獨協医大の判断の数々は大学としての良識が欠如していると言わざるを得ず、社会を構成する一員としての資格がなく、不条理で到底認められない。

また、このような不当調査裁定が珍しくない現状の調査裁定制度は即急に改善しなければならない。

(7)人事、査定への助言

上で述べたように調査委員会が正式に調査裁定しても現状では保身や利害関係のために不当な調査裁定が行われることは珍しくない。真実不正行為をはたらいても表向きには不正をしなかったと扱われている。しかし、それはあくまで表向きのことであり、慧眼な人なら真実と異なることが多々あることはわかるだろう。そうした表向きが善人というだけの研究者をよく査定したり、昇進・採用したりすれば研究機関にとって大きな損失となる。端的にいって、表向きは善人だが実は不正をした人をあなたは採用したり昇進させたいですか?

不正行為の態様が公開されれば、評価側は真実不正かどうかを客観的に判断できるだろう。評価者は研究機関等の表向きの調査裁定に惑わされることなく、適切に人事や査定を行い、表向きは善人だが実は不正行為をしたという研究者を人事等において排除しなければならない。

例えば獨協医大の二重投稿の著者のように「学術誌を研究界の抄録と誤信して投稿した」と普通あり得ないようなことを弁明している研究者は注意すべきだろう。私ならこういう人物は保身のために嘘をついているだけで、真実は不正をしたと判断する。私が人事担当ならこのような人物はまず採用しないだろう。人事や昇進は研究機関の基礎となるから、調査委員会の表向きの判断に惑わされることなく適正に判断することが必要である。

参考
[1]獨協医大の不正調査概要写し 2011.2.3
[2]文部科学省のガイドライン 「不正行為とは、・・・同じ研究成果の重複発表・・・などが不正行為の代表例と考えることができる。」と明記されている。
[3]"研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会報告書"  東北大学調査検討委員会 2012.1.24  『・・・不正行為は、捏造、改ざん及び盗用と定義されている。大学のガイドラインは大学として認められない研究行動を判断するための最低限の基準を制定しているものであり、あらゆる研究活動を判断するための基準ではない。・・・論文の二重投稿など研究者の倫理が問われる行為を含んでいないが、もとより研究活動の研究者コニュニティにおいて認められない行為を積極的に許容する趣旨ではない。』
[4]世界変動展望 著者:"獨協医大は不正研究に使った科研費を返還すべきである!" 世界変動展望 2012.1.28
[5]世界変動展望 著者:"独協医大はいつになったら研究不正の調査結果を公表するのか?" 世界変動展望 2011.10.29
[6]獨協医大の二重投稿の過失判断だけでなく、例えば東北大学井上総長のデータ流用は確認されているだけでも10件くらいあり、すべてを過失と考えるのはかなり不自然だが、東北大学はすべて過失で処理している[7]。本件に限らずジャーナルの論文撤回例をみるとデータ流用は驚くことに珍しくなく、ほとんどが過失で処理されている。ジャーナルの編集局としては不正かどうかの判断は重要でなく、論文が間違っていることがわかれば十分なので大事にならないようにわざと過失で処理しているに過ぎない。

例えば名古屋市立大学医学部のデータ流用事件は「学会発表の練習用に複数画像を貼り付けたが、論文を執筆する際に訂正し忘れて発表してしまった。」という創作したかのような言い分けですら編集部が信じ過失で処理された。無論、多くの研究者は信じておらず故意という見方が多数だ。この事例は編集局が故意・過失の判断はどうでもよいと考えているよい例だろう。

現実的に考えると、研究者なら経験的にわかるだろうが何度も確認してから研究発表するのが通常だから同じデータをうっかり使いまわしたとか実験条件を書き間違えたというようなミスはほとんどない。にも関わらず驚くほどデータ流用による論文撤回例があるということは、少なくない論文が真実故意の使い回しであると考えるのが合理的だろう。むしろデータ流用がめったにないことを考えれば、そうした撤回事例の多くが意図的な不正と考えた方が自然である。

被疑者が保身のために過失と嘘をついている可能性が極めて高いことはいうまでもなく、盲目的にそれを信じるべきではないのは言うまでもない。故意と判断すると大事になるからそれを避けるためにわざと過失と判断することも言語道断である。むしろ文科省のガイドラインにおいては「被告発者が自己の説明によって、不正行為であるとの疑いを覆すことができないときは、不正行為と認定される。[8]」と定められており、疑わしい場合は罰されるのが規定である。どの研究機関でも「故意でないことが証拠を持って立証された場合は不正でない」と同様の趣旨の規定があるが、この規定に関しては大事になることを回避するため事実上無視されているといってよい。

[7]井上総長の研究不正疑惑の解消を要望する会(フォーラム)
[8]文部科学省、不正行為対応のガイドライン ローマ数字4,3(3)


羽生、8戦全勝で名人挑戦権獲得!

2012-02-04 01:26:12 | 囲碁・将棋

1日第70期A級順位戦8回戦が行われ羽生が谷川を降し8戦全勝で最終局を待たず名人挑戦権を獲得した。これで昨年に続き森内との永世名人対決となる。羽生は来月の最終局で9戦全勝での名人挑戦がかかる。これは2003年3月に森内が達成して以来まだないし、まだ森内しか達成していないので実現すれば2例目。

今期の羽生の順位戦での強さは安定していた。ここまで調子がいい挑戦者は名人獲得を期待できる。ただ森内にもがんばってほしいと思うので名人戦ではよい対局を期待している。