世界変動展望

私の日々思うことを書いたブログです。

2010年もお世話になりました。

2010-12-31 00:00:00 | Weblog
今日で2010年も最後です。今年はアクセス数の面で昨年よりわずかな上昇となり、その面では安定期に入ったと思います。主に物理・数学、囲碁・将棋のカテゴリー、無銭飲食の法律関係で大きなアクセスがあり、それに関心のある読者に必要とされ嬉しく思います。

思えば、このブログをはじめた頃は1日のアクセス数が50以下で、ほとんど誰も見ない状況でしたが、今では1000位以内がランクインするgooアクセスランキングに載ることもしばしばとなり、個人ブログとしては人気を獲得したと思います。皆様のおかげだと思います。

今年も1年間ありがとうございました。

世界変動展望 著者

2010.12.31

問題の解答・解説記事作成について

2010-12-30 00:00:00 | Weblog
最近は「愛知県公立高校入試問題 解答」、「和算に挑戦」というキーワードでのアクセスが増えている。今月は「愛知県公立高校入試問題 解答」が多い。私のブログは解答、解説を公開しているから、アクセスされるのだろう。

しかし、私の解答・解説はそんなにいいものじゃない。なぜなら、たいして検討せずに作成してるから、よい解法ではないものも多い。なんせ、問題を解いて、解説を作るのに全部で1時間くらいだから、手間をかけてないんですよ。

今年の3月は愛知県の受験生がたくさんやってきて、私の解答を見ていったが、3月公開という即時性の価値はあっても、今ではあまり価値のある記事ではないと思う。本屋で売ってる解答・解説を見た方が、よほど有益です。ネットで無料で見れるところに価値があるのだろうか?

それにしても、12月になって公立高校入試のキーワードが増えるところを見ると、中学生は今頃過去問をチェックするのだろうか?おそすぎる。もっと前から見るべきですよ。入試は約3ヵ月後なんですよ!?

入試の時期や和算に挑戦の時期になると、愛知県の受験生や和算に挑戦の挑戦者がよく訪れるので、解答・解説以外に何か有益な情報を伝えられないかと考えている。勉強に役立つこととか、数学の面白さとか、いろいろと。普段それはやっていることなのだが、訪問者が解答・解説のページしか見ず、そういうページに誘導できないところが難しいところだ。かといって、解答・解説のページに上のことを書くと、記事の趣旨がはっきりせず、わかりづらい文章になるし。

最近、問題の解答・解説ページを作ることに疑問を持っていて、やめようかと思っている。確かに、多くの人に読まれ、それは私のブログの目的なのだけど、記事の質が書店の本に勝てるわけではないし、私の解答・解説記事に本当に価値があるのか疑問だからだ。

解答・解説をせずに、問題に対する講評や学習の方法論などを述べた方が読者にとって有益ではないかと思う。

ハイカラさんとは?

2010-12-29 00:00:00 | Weblog
NHKで放送された「坂の上の雲」を見たら、秋山季子(石原さとみ)らが女学生の格好をして出てきた。それを見た知人と以下の会話をした。

A「あれはハイカラさんの格好だ。」
B「え?あれのどこがハイカラなの?」
A「ああいうのをハイカラさんっていうんだよ。」

明治時代の女学生や卒業式の女子大生の格好を俗にハイカラさんというらしい[1]。しかし、こんなの現代では全然ハイカラじゃないと思う。こういうのをハイカラさんというのは「はいからさんが通る」(1975年、原作・大和和紀)の影響じゃないか。

なぜ参考[1]のような格好を現在ハイカラでないと思うかというと、高い襟でないし、全然西洋的でもないし、流行的でもないからだ。着ているものは袴と着物だし、日本的な服装だと思う。国語辞書によると、

--
ハイカラー 【high collar】

1 「ハイカラー」に同じ。(丈の高い襟。)
(中略)
2 《明治31、2年ごろの議会で、1を着用していた洋行帰りの議員たちを、「万朝報」がハイカラー党とからかって書き立てたところから》西洋風を気どること。流行を追ったり、目新しいものを好んだりすること。また、そういう人や、そのさま。
3 西洋風に結った髪。ハイカラ髪。日本髪に対していう。

デジタル大辞泉より

--

原義のハイカラは西洋紳士の格好だろう[2]。19世紀の西洋女性の服装は参考[3]である。いずれも参考[1]とは全然違う。明治時代は参考[1]の格好でも目新しいため、その意味(流行的、目新しい)でハイカラなのかもしれない。しかし、それは正確にはトレンディ(trendy)又はファッショナブル(fashionable)だと思う。

少なくとも現代においては、上でも述べたとおり、明治時代の女学生のような格好は高い襟でもないし、西洋的でもなく、流行的でもないため、全くハイカラではない。現在このような服装をハイカラとよぶのは間違っている。参考[1]の服装はハイカラというより、日本的な服装だ。現代では、正確にはトラディッショナル(traditional)だろう。

参考
[1]明治時代の女学生の格好の
[2]西洋紳士の服装の
[3]19世紀の西洋女性の服装の

クイズ王はすごい!

2010-12-28 00:00:00 | Weblog
すごいと思う人に、クイズ王がある。クイズ王決定戦の番組を見たことがあるが、よくあれだけ幅広く知識を得ているものだ。

Q「新聞を広げたとき、対角線の長さは約何センチ?」
A「約99センチ」

そんなこと普通知りませんよ。こういうことは通常どうでもよいことで、知識を得る利点がないため、多くの人はクイズの知識を得ることを無益で苦痛だと思うだろう。クイズ王が他の人と違う点は、普通の人には無益で苦痛なことを、苦もせずやり続けることだ。また、すごい記憶力だと思う。

だから、若者じゃないとクイズ王は無理だ。

東北大学、井上明久総長の研究不正について

2010-12-27 18:58:50 | 社会
東北大学総長・井上明久氏が論文の二重投稿の嫌疑を持たれ、問題になっている。その他データ流用など捏造疑惑も持たれ、裁判で争うことになっている。東北大学といえば、非常に高い研究実績を持つ大学で、典型的な研究大学だ。主に、材料科学の分野で世界一、二の研究実績を誇り、世界的研究機関としてその名を知られている。

そのため東北大学の金属材料研究所は非常に著名な研究所で、井上氏はそこの所長だった。金属ガラスの研究では世界的研究者で、実績は傑出している。しかし、そんな研究者がデータ流用や二重投稿など研究上の不正行為を行っていたとなると大問題だ。しかも、井上氏は旧帝大である東北大学の総長だし、その意味でも責任は大きい。

二重投稿に該当すると疑われた論文は他の共著者が、すでに取り下げたらしい。しかし、取り下げたからといって二重投稿の責任が消えるわけではなく、嫌疑が確かなものとなれば責任をとらされるだろう。

近年は東大の某助教の論文盗用等、某教授らのデータ捏造、阪大の某教授グループのデータ捏造、琉球大学某教授のデータ流用など、研究者の不正行為が続く。しかし、東北大学のような大規模研究大学の学長が不正行為をはたらいたとなると、東北大学の信頼は著しく失墜するだろう。

この事件はどうなるのだろう?

マジシャンはすごい!

2010-12-27 00:00:00 | Weblog
すごいと思う職業の一つにマジシャンがある。マジシャンの魔法のような行いは本当に驚くが、それ以上にマジックを考え出す知恵が素晴らしいと思う。マジックのたねを公開した番組を見たことがあるが、その知恵に感動した覚えがある。

マジシャンの叡智はすごい。

学費を捻出する親はえらい

2010-12-26 00:00:00 | Weblog
最近、東京などの私立高校の学費を見たが、入学金、授業料、施設設備費などを含めた初年度納入金の平均は87万7675円だという[1]。東京や神奈川は全国平均より高い[2]。おそらく全国平均は70万円台だろう。

思えば、東京や神奈川は進学校が中高一貫の私立や国立だから、小学校の頃の塾の費用、中学以降の学費がたいへんかかる。以前に中学受験を控える家庭の事情をテレビで見たことがあるが、年収1100万円の家庭でも、教育費の支出が多く、家計が苦しいという。それだけ子供にお金をかけるのだから、親はえらい。

東京、神奈川など首都圏の家庭と地方は進学コースが異なるから、余計にお金がかかる。

(1)東京、神奈川
公立小学校→有名私立中学・高校→東大、一橋、東工大、早慶など

(2)地方
公立小学校→公立中学校→名門公立高→住む地域の旧帝大

具体的にいくらかは、わからないが(1)と(2)では相当学費が違うだろう。つくづく親は偉い。

参考
[1]"私立高学費:平均は87万7675円 来年度、3090円増 /東京" 毎日新聞 地方版 2010.12.10
[2]"私立高等学校等の授業料等の調査について" 文部科学省資料 2002.9.9

大学紹介動画

2010-12-23 00:00:00 | Weblog
最近Youtubeでお茶の水女子大学の紹介動画を見た。大学も動画サイトで学校紹介の宣伝をするようになった。大学の雰囲気がわかってよい。お茶の水女子大学というと国立では珍しい女子大で、長い伝統を持つ名門大学だ。同大学は女子大の最高峰であり、学生はいわゆる才女であろう。

女子大というと、女性が好むことが多い語学、文学、家政といった学部ばかりだと思っていたら、理学部もあった。これは珍しい気がする。同大学は元々、東京女子師範学校だから、教員養成系の学問分野が多いのだろう。思えば、理工学部等、教育学部以外の出身者が教員になるルートの方が今はメジャーだろう。

動画では理学部の紹介もあり、物理の研究室や講義の様子が紹介された。なかなか質の高い研究や教育が行われている感じがした。同大学は研究施設もよさそうだ。その他、図書館や食堂など大学の施設も紹介されており、大学の雰囲気がよくわかる。国立大だから私立女子大ほど設備が立派という感じではなく、どちらかというと他の国立大学とあまり差はない感じがする。通常の女子大より研究を重視した設備になっている印象がある。さすが才女たちが通う名門大学という感じだ。

動画には学生も何人か出てきたが、それを見た限りでは同大学の学生の雰囲気はよくわからなかった。それを動画で伝えるのは難しいのかもしれない。大学祭にいくと、大学のカラーが出ていて、ある程度わかるのだが、私は同大学の大学祭に一度もいったことがない。

思えば、お茶の水女子大学は名前を知っているだけで、全く接したことのない大学だったが、動画をみると上で述べたようなことはわかるので、動画による大学紹介も宣伝として有効だと思う。

男女間の契約

2010-12-22 22:16:55 | Weblog
女「あれからいろいろと考えたけど、やっぱり私あなたのことが好き。」
男「お前さ、俺がどれだけ声かけても見向きもしなかったじゃない?それに別な奴のところいったじゃない。今更何いってんだよ。」
女「確かに、あの時はそうだったわ。ごめんなさい。でも、あれから色々考えて、あなたの良さがわかったの。」
男「口では何とでもいえるからな。信じられないね。」
女「どうして信じられないの?」
男「今まで何度も声をかけてきて見向きもしなかったのに、今更好きだっていわれたって、突然でおかしいじゃん?疑っちまうんだよ。」
女「じゃあ、どうしたらいいのよ?この気持ちを信じてもらうしかないわ。」
男「お前は口だけなんだよ。確かなものが何もない。だからだめなんだよ。」
女「仕方ないじゃない。今までは交際してこなかったんだもの。これから始めて確かなものを作っていけばいいじゃない。」
男「お前、わかってないね。例えばさ、売買契約が結ばれたって確かに示すには、当事者間で契約書作ったりとか、確かな実体のあるものを作るじゃない?」
女「何よ、口だけじゃ信用できないから、書面でいえっていうの?」
男「そんなわけないでしょ。ま、お前の気持ちもあるし無理強いはできないけどね。けど、今までのことを考えると、それくらいやってもらわないと信じられないんだよ。」
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男の気持ちや女が振られるかどうかあなたはわかりますね。この文章はあるところで見た。これを見て、私はめぞん一刻の最後の方や秋元康の「バナナの涙」という古い曲を思い出した。この曲は私が生まれるずっと前の曲だが、動画サイトのおかげで昔の歌も聴けるのだ。この類の曲は全く好みでないが、歌詞が強烈で印象に残ったので覚えている。

一般に契約を締結するときには、契約書を作成する等はっきりと形のあることを行う。口だけでは信用できないし、紛争が起きたときに立証できないからだ。上の男女の関係でも似たようなことをやる。

思えば、こういうのも契約っていうんだよなー。売買契約と比較すると契約とよぶ理由がわかるかもしれない。

エスカレーター進学校の良し悪しについて

2010-12-21 00:00:00 | 社会
高校から系列大学へのエスカレーター進学は一長一短があり、悩む。長所は勉学に拘束されずに、高校時代を過ごせるため、生徒の興味がある点を伸ばせるところだ。短所は楽して大学進学できるため、怠惰な生活になるおそれがあることだ。

特に短所の方が気になる。エスカレーター進学の高校の事情をネットで見ると、楽をして大学進学できるため、「楽をするのが当たり前。きちんと勉強するのはバカなことだ。」と間違った考え方を持つ者がいる。それは単に成長を放棄する愚かな考えだ。

それに一部の地域を除いて、進学先の大学に魅力がない。東京の早稲田大学高等学院や慶応義塾高等学校など、早大や慶大といった一流大学への進学が約束されている高校は少ない。旧帝大に比肩する大学へエスカレーター進学できる高校は早大と慶大の系列高校だけだろう。

例えば、名古屋の南山中学・高校は系列の南山大学へエスカレーター進学できるが、東海地方では名門の南山大学も全国規模でみると、一流大とはいい難い。エスカレーター進学してまで南山大にいきたくないという家庭もたくさんある。

そもそも、大学の社会的評価で進学先を決めるのに批判があるかもしれないが、就職との関係上、それを考えずに進学先を決める人はほとんどいないのが現実だろう。

以上の理由から、エスカレーター式中学・高校に進学するのは躊躇するところがある。

エスカレーター進学高校の良し悪しは、判断できないが、怠惰な生活をしないことが重要なのは間違いないだろう。

必死になったら、潔く投了しよう!

2010-12-20 00:00:00 | Weblog

必至の例 (日本将棋連盟HPより)


将棋で、相手がどのように受けたとしても次の手で詰み[用語1]を逃れられなくなることを必死(必至とも書く)という。必死になると、相手を詰ます以外勝ちがないため、事実上勝負が決する。

素人以外の対局では、詰みまで指すことはほとんどなく、どちらかが負けを悟った時点で投了[用語2]する。上のように必死をかけられると、もう勝ち目がなくなるので、必ずといっていいほど投了となる。

上の必死の例は、典型的な必死で、こうなったら棋士は100%投了するだろう。つらいだろうが、投了しないでがんばるのも、一つの手かもしれないが。一例として、人気漫画「月下の棋士」の最終対局で次のような会話がある。

氷室「どういう計算で88手で投了という構図になったんだ?」
滝川「そう、君の強さは強靭なる精神力。言い方を変えれば、しつこい。」
滝川「完全なる負け将棋でも、たやすく投了しない。しないどころか、それでも勝ちを見出す。」
滝川「普通の棋士なら、この手で間違いなく投了する。左右対称の金、必死の見本形。」
滝川「でも、君は投了しない。その猶予もあと少しだ。」

(中略)

氷室「わかったぜ、滝川。この勝負、オレの勝ちだ!」
(中略)

氷室「そういやじいちゃんが、言ってたっけな。勝負とは結局我慢くらべ。水槽に顔をつっこんで、耐え切れなくなり先に顔をあげた方が負けだってな。」

確かに、上の会話のように、粘ったがために勝ちが見えたということもあるだろう。しかし、そういうことはほとんどないのが現実だ。必死になったら、潔く投了した方がよい。さもなくば、玉が詰むまで進めるだけだ。

途中で負けを認めたほうが、まだダメージが少なくてましですよ。

自分の玉がどこにも逃げ場がなくなるまで、追いつめられるなんて、非常に辛いし、計り知れないダメージを受けますよ。

そこで、将棋を指してるあなた。必死になったら、きちんと投了しましょうね。

用語
[1]詰み:将棋で玉がどこにも逃げられなくなること。詰みになると負け。
[2]投了:対局の途中で、負けを宣言し、勝負を終えること。

江と春日局

2010-12-19 00:00:00 | 歴史

来年の大河ドラマ「江~姫たちの戦国~」で注目しているのは、江が息子家光と忠長にどのように愛情を注ぐのかということだ。周知の通り、江は家光より忠長の方を愛し、育てたため、将軍の跡をめぐって、兄弟間の骨肉の争いが起きた。

家光の乳母は春日局で、彼女が育ての母で、事実上の母といってよい。昔は身分の高い人の子供は、母の乳がよく出たとしても、乳母が乳を飲ませる風習だった。その方が子供が丈夫に育つと考えられていたからだ。乳母と子は親密な関係になることが多く、乳母は子を愛し、子も実の母以上に乳母を愛することが少なくなかったという。春日局と家光もその例である。

一方、忠長は珍しく江が直接乳を与えて育てたという。そのため、江は家光より忠長の方を愛し、彼を次期将軍にしようと考えていた。上の論理からいっても、自分が乳を与えて育てた忠長を家光より愛するのは当然だ。

このため家光は母親の愛情を受けずに育ち、江も父・秀忠に次期将軍を忠長にするように勧めたため、父親にも愛されていないと感じてしまった。おまけに、弟・忠長からもあまり良く接せられなかったようだ。子供の頃の家光は非常に辛い思いをして育ち、自殺まで考えたかもしれない。

これが史実であろう。これを見ると、江はあまりよい母親ではない印象を受ける。江は主人公だから、さすがに悪役に描くわけにいかないから、どうするのか気になる。また、春日局との関係もどう描かれるのか気になる。

江と春日局は母親同士の敵対関係で、お互い育てた子供を将軍にしようと激しく争った。周知のとおり、その戦いの結末は、春日局が駿府城の家康に家光を将軍にするよう直訴し、家康が秀忠に世継を家光にするよう命じることで決着した。次期将軍を決めるのは、将軍の専権事項だから、隠居した家康の命令で世継が決まるのはおかしいと考える人もいるかもしれないが、秀忠が家康の命令に従った理由は、さすがにわかるだろう。

家康は江戸幕府の開祖であり、秀忠等徳川家の人間がその地位にあるのは、すべて家康のおかげだ。家康は江戸幕府の最大功労者である。秀忠が将軍で、武家の棟梁というのは形だけのこと。事実上の最高権力者は家康であり、家康の命令には将軍・秀忠といえど、絶対服従なのだ。大御所政治ともいわれるゆえんだ。

このように家光が将軍になれたのは春日局のおかげだ。それだけではない。子供の頃に辛い思いをして育った家光を愛し、支え続けたのは彼女である。春日局がいなければ、家光は自殺していたかもしれない。家光が助かったこと因果関係はないだろうが、家光が天然痘にかかって、死にかけたときに、水ごりをして「私は今後病気になっても決して薬を飲まないから、家光様の命を助けてほしい。」と願ったのは有名だ。

どんなことがあっても、春日局は家光の味方だったし、家光がどれだけ春日局に助けられたかわからない。それは家光もよくわかっていた。「春日局はどんなことがあっても私の味方だ。絶対に私を裏切ることがない。」と家光は心の底から思っていたに違いない。まさに二人は母子といってよい。かくして、春日局は家光の絶大な信頼を得ることになる。つまり、家光は春日局のいうことなら何でもきくということだ。

「政治をしているのは家光ではなく、坊主と乳母だ。」と当時誰かが影でささやいていたように、春日局は大きな権力を持っていた。江は御台所だから、春日局よりずっと地位が高く、大奥のトップは江だが、それも形だけのこと。真のトップは春日局である。

春日局はもともと夫・稲葉正成や子供たちを出世させるために、乳母になったといわれるが、春日局が強大な権力を得たためか、稲葉正成は下野で二万石の大名となり、長男・正勝は老中となり、小田原城主になって、八万五千石をもらったという。

はっきりいって、政治能力は江より春日局の方がずっと優れていて、この時代の女性で、ここまで主体的に活動し、政治力を持った人はいないだろう。当時は儒教的価値観が浸透し、女中庸に書かれた「三従の道[用語]」に代表されるような女性観に合わない彼女は否定的評価だったらしいが、私は江より春日局の人生の方が、よっぽど女性の強さを表していて、よいと思う。また、そっちの方が面白いと思う。1989年に放送したから、取り扱えなかったのだろう。

江と春日局の関係はどう描かれるのだろう。田渕久美子のことだから、篤姫と和宮のように一時期対立しても後で和解するという話にするのだろうか。私はそれに関心がある。

用語
[1]三従の道:女性は幼い時には父親に従い、長じては夫に従い、老いては息子に従うという考え。江戸時代の代表的な女性観。


江~姫たちの戦国~の放送開始に先立って

2010-12-18 00:00:00 | スポーツ・芸能・文芸
来年の大河ドラマは「江〜姫たちの戦国〜」で、江戸幕府2代将軍徳川秀忠の正室・江の生涯を描く。脚本は「篤姫」(2008年)を担当した田渕久美子。おそらくまた女性の生き様を強調したホームドラマ的な話になるだろう。

江というと自分も含めて家族の多くが悲劇的な人生で印象が強い。彼女は浅井長政と市の娘で、淀、初、江の三姉妹。もともと信長の妹・市は政略結婚で浅井長政と結婚したが、浅井の裏切りで、浅井家は織田に滅ぼされることに。幼い時に実父と弟を叔父に殺され、燃えさかる小谷城から母とともに織田に引き取られた。その後、市は柴田勝家と再婚するが、織田家の後継者争いで、勝家が秀吉に敗れ、今度は秀吉に母を殺される。

彼女は合計三回結婚するが、一度目は佐治一成と結婚したが、秀吉に離縁させられ、二度目は豊臣秀勝と結婚し、娘・完子が生まれるも、豊臣家は崩壊し、後に秀忠と結婚し、家光、忠長、和子らをもうける。

姉の淀君は秀吉の側室で、秀頼の母。しかし、嫁ぎ先である徳川氏に死に追いやられた。

徳川家に嫁いでからは、天下人の正室となり、一見成功しているように見える。息子・家光は三代将軍となり、娘・和子は後水尾天皇の中宮、その娘(つまり江の孫)は明正天皇。徳川家に嫁いでからの子孫はすべて高い地位についた。

しかし、苦労は絶えない。実の息子・家光は事実上養育権を春日局にとられ、江より春日局の方が家光に近い存在となり、江と春日局の衝突は絶えなかった。次男・秀忠だけは、自分の手で育てようと、家光以上に愛情を注いで育てたらしいが、それが原因で家光との家督争いが起き、兄弟間で骨肉の争いに。結局、家督争いに敗れた忠長は家光にいじめぬかれ、乱心し自刃した。

江や篤姫は平民や下士から見れば、高貴で、まさに高嶺の花だろうが、その生涯は現代人の基準では不幸なものだろう。むしろ、身分は低くとも自由な恋愛をし、よい家庭や仕事を築いてきた町人らの方が幸福な人生であったろう。

「江〜姫たちの戦国〜」では、おそらく「女性である江は、こんなに立派に女の人生を生きました。」と女性の人生の立派さを描くだろうが、現実の江の人生はそんなに立派で幸福なものではない。

少なくとも、江戸時代以前の女性は結婚する男性の人生によって生涯が決まるといってよい。江の母・市、姉・淀は夫と運命を共にし、死んでいった。江が将軍の正室、息子は将軍、孫は天皇と家族が高い地位に就いたのは、嫁ぎ先の徳川家が天下をとったからに他ならない。女性はまさに夫と一蓮托生だった。

昔の女性は本当に不幸だ。江も例外ではない。