最近また交通被害者や遺族らが飲酒運転、ひき逃げの厳罰化を求める署名活動を開始した報道がなされた。私は飲酒運転やひき逃げの厳罰化はこの程度で十分であり、これ以上罰則を強化する必要はないと考える。
例えばひき逃げして、被害者を死傷させた場合の罰則は現在では最高15年の懲役だ。厳罰化を求める交通被害者・遺族らは福岡の飲酒運転死亡事故を例にして、事故が起きても加害者を厳罰にできないことがあり不当だと主張し、署名活動を行っている。しかし、この主張は現在では当てはまらない。福岡の飲酒運転死亡事故の頃はひき逃げの罰則が現在よりも軽く確か最高5年の懲役だった。しかし、今やその3倍の罰則に引き上げられている。懲役15年は故意犯である傷害罪などと同じ量刑だ。他の刑罰との量刑の均衡を考えると、懲役15年は十分すぎる。
それに、最近従来の3倍の量刑に引き上げたばかりなのにまたすぐに厳罰化をするのは、時期が早すぎる。刑罰は1,2年という短い期間でこまめに変えていくものではないだろう。懲役15年からまだ重くする必要があるのかを、ある程度時期がたった後に状況を分析し慎重に決めるべきである。
飲酒運転やひき逃げの行政上のペナルティーも最近重くなったばかりだ。ひき逃げや飲酒運転で悪質な場合の欠格期間は最高10年と大幅に引き上げられた。
最近の飲酒運転やひき逃げの罰則は刑事上も行政上も大変重くなっている。上に例に挙げたひき逃げの罰則のように、現在でもかなり重めの罰則となっている。それに加えて、危険運転致死傷罪や自動車運転の致死傷罪の成立など、この数年で自動車運転の罰則は十分すぎるほど引き上げられた。
このように自動車運転違反に対する罰則は現状で十分すぎるほど重く、過剰という感さえある。もう少し軽めに設定してもいいくらいだ。もう十分重い刑罰であるので、厳罰化したからといって交通事故減少や飲酒運転撲滅に結びつかないのではないか。それなら罰則をあげる意味がない。
交通事故被害者・遺族の厳罰化運動の目的は交通事故減少や飲酒運転撲滅にあると思っているが、一部の交通事故被害者や遺族の活動はそれらが目的でなく、飲酒運転やひき逃げの行為者、事故の加害者にできるだけ重い刑罰を与えて復讐したいだけではないかと思う。特に井上郁美氏にはそんな目的を感じる。そのような交通事故被害者・遺族は罰則の目的を履き違えないでもらいたい。遺族や被害者の復讐の手段として罰則があるのではない。
以上、私は飲酒運転やひき逃げ、その他道路交通違反に対する罰則は現段階で十分すぎるほど重いものなので、これ以上厳罰化する必要はないと考える。また、仮に厳罰化するにしても、現在は十分な厳罰化を行った直後だから、もう少し時期をおいて状況を分析した後に、慎重に厳罰化を判断すべきだと考える。