安村茂樹(Shigeki Yasumura)、WWFジャパン(会長 徳川恒孝)らの論文、資料が盗用、ゴーストオーサーシップで撤回された。徳川恒孝は徳川宗家の現当主。
(1)安村茂樹,中井達郎(経歴),島崎彦人(関連、経歴、他),柴田剛(関連)
「GISを用いた南西諸島生物多様性優先保全地域地図の作成と活用」
地図 Vol. 48 (2010) No. 3 p12-20
(2)WWFジャパン(会長 徳川恒孝)
「南西諸島生物多様性優先保全地域地図」
学会機関紙「地図」の添付地図
(1)と(2)の撤回理由は以下のとおり。
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(1)の撤回理由
この論文執筆のきっかけとなったWWFジャパンの「南西諸島生物多様性評価プロジェクト報告書」は,著者らを含め,40名以上の関係者の長年に渡るアイデアやデータ提供により出版に至った(発行日2009年11月)ものである。今回の論文掲載後,参加した研究者より,「当該論文はプロジェクトにデータ・アイデアを提供した者全員の合意に基づいて準備されておらず,そのため倫理的に深刻な問題を伴っており、既刊の報告書のオリジナリティを損ねるものである」との指摘があった。共著者間で協議の結果,報告書の執筆者である研究者に対して事前に共著への意思確認,投稿内容の相談をせずに,論文が査読付きの,初出の,原著論文の形で発刊されたことは,配慮不足であったとの認識に至り,当該論文の取り下げをお願いするのが妥当との判断に至った。
(2)の撤回理由
この地図は「南西諸島生物多様性評価プロジェクト報告書」の一部をWWFジャパンが複製し,「地図」の添付地図として日本国際地図学会に提供したものである。しかし,同報告書の作成にデータ・アイデアを提供した関係者全員に地図添付の合意を得ておらず,倫理的に深刻な問題を伴っていることから,提供を取り下げることとした。
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要するに共著者の同意を得ずに成果を発表した事が撤回理由。これは盗用、ゴーストオーサーシップ。
盗用の定義は「他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること」である。データやアイデアを提供した盗用元の報告書の共著者の適切な同意を得ずに成果を流用したのだから盗用に該当し、著者から省いたのでゴーストオーサシップである。もちろん不正行為。
同様の盗用等は過去にも起きている。ここ2年くらいでは鈴木洋子(関連)、瀧川薫(関連)、元藤女子大学の盗用及び著作権侵害罪の犯人(関連1,2)の盗用事件があった。これらの事件では盗用犯が解雇又は辞職。他にも例がある。
撤回公告によると(2)は『「南西諸島生物多様性評価プロジェクト報告書」の一部をWWFジャパンが複製し』たのだから、作成者はWWFジャパン。撤回の申し出も会長の徳川恒孝から行われた。団体の研究不正は珍しい。このケースは東芝や三菱自動車の不正で社長に責任があるのと同様だ。論文で捏造、改ざん、盗用があれば責任著者が不正を実行していなくても不正の責任を問われる。
こう考えると徳川恒孝にも盗用等の責任があるという事になる。江戸時代なら間違いなく隠蔽され、告発者がお手打ちになっていただろう。現在でもお手打ちとまでいかなくても、告発者へのハラスメントが行われ、不正の隠蔽もある。某国立研究機関などが例。
盗用やゴーストオーサーシップは許されないので、本件も処分の必要がある。現在それを確認できない。