滋賀医大は瀧川薫(Kaoru Takigawa、経歴1(写し)、経歴2(写し)、他)医学部看護学科教授が指導した院生の修士論文から論文を盗用、改ざんしたとして瀧川薫を懲戒解雇にした。処分は1月28日付。匿名告発で発覚。盗用論文は女子大学院生(当時)の修士論文とほとんど同じだった。大学は不正行為者の氏名、性別、年齢を公表しなかった。原則氏名を公表するのがガイドラインの規定で、これに反する。盗用論文は2012年12月20日に学会誌に投稿、2016年1月27日付で取り消し。
不正論文は
瀧川薫
維持透析患者への健康教育-自己管理と生きがい感の関連に着目して-
日本健康医学会雑誌 22(2), 98-106, 2013年7月31日
要旨(写し1、写し2)
日本健康医学会雑誌22巻2号の目次を調べるとp98~106(写し1、写し2)までが2016年1月27日付で削除された(写し1、写し2)。確かに不正論文が掲載された事は目次の複写からも確認できる。
本意ではないが、客観的証拠を示すために原論文を紹介。
糸井美帆(Miho Itoi)
維持透析患者の自己管理行動と生きがい感との関連
滋賀医科大学 修士論文 修士(看護学) 2012年3月9日
要旨(写し1、写し2)
不正論文の要旨(写し1、写し2)と修士論文の要旨(写し1、写し2)を比べると類似性は明白。不正論文が修士論文を参考にしたのは間違いない。それなのに瀧川薫の単著で発表したのだから盗用と言われても仕方ない。
公的研究費が不正論文の研究に使われた事は確認できなかった。調査結果も同様の結論。
瀧川薫は糸井美帆の修士論文から論述や数値データの約95%も盗用し、調査データの調査期間を改ざんしたのだから懲戒解雇が相当かもしれない。
一つ気になるのは調査概要で言及された重大な懸念事項。
「調査対象論文と修士論文は研究協力施設から収集した同じデータを解析した結果から導き出されたものであり、二つの論文に示されている結論もほぼ同じである。しかし、調査対象論文と修士論文に記載されている統計解析図には顕著な相違がみられる。対象研究者への意見聴取の結果、調査対象論文の統計解析図は、修士論文の最も重要となる回帰分析の結果を本文中から削除し、相関関係の解析結果に基づいた図が作成され、本来の重回帰分析の結果を踏まえた結論との間に齟齬が生じたものと認められた。図が不適切に変更されたことは、科学論文として非常に問題である。」(調査概要より)
これは端的にいって不正論文に改ざんの可能性がある。不正論文は修士論文を約95%も盗用、結論もほぼ同じだからほぼ同一の論文。不正論文は修士論文の最も重要となる回帰分析の結果を本文中から削除し、相関関係の解析結果に基づいた図を作成し、本来の重回帰分析の結果を踏まえた結論との間に齟齬を生じさせた。それなのに二論文がほぼ同一の結論になるのは不合理。
データや結果を削除し、別なデータや結果を追加し、研究を正しく表さないのは改ざん。不正論文の回帰分析の結果削除や相関関係の解析に基づいた図表の作成に基づく結論が修正であれば改ざんでないが、修士論文の結論を証明できないなら改ざん。
修正の場合は修士論文の結論が間違っているということになるが・・・。解析結果の削除、追加で別な結論が導けるのに調査で改ざんが認定されなかったのは修正だからか。一般論文は結論が間違っていると撤回になるが、学位論文だから仮に結論が間違っていてもオネストエラーなら学位取り消しにはならない。改ざんがないとは断定できないが、それを示す証拠も全くない。修士論文に不正があると言えない。
調査概要が正しいなら少なくとも不正論文と修士論文の結論のどちらかは間違っているだろう。
滋賀医大は氏名公表等の文科省ガイドラインをきちんと守って、公正な研究や調査を行ってほしい。
余談だが、滋賀医大は2016年1月28日付で瀧川薫を懲戒解雇したのに、2016年1月29日付で公式研究情報データベースの瀧川薫の紹介を更新したのはウェブページの虚偽作成ではないか。例えば瀧川薫は2016年1月29日時点で教授でない。正しくは瀧川薫のデータベースの削除だ。
滋賀医大-調査概要(写し)、懲戒処分公表(写し)、東京新聞(写し)、京都新聞(写し)、中日新聞(写し)、読売新聞(写し)、毎日新聞(写し)、NHK滋賀、その他(写し)
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(2020年4月12日追記)