廃棄物彩生処

主にジムニーの廃品利用による改造、メンテ、及び4×4トライアル競技などを掲載する場として・・・・!

ジムニー・Fシャフト破断位置とその破断面について

2013年10月27日 | 駆動系

 我が競技用P車の前輪ドライブシャフトは、ジョイント部が大きなJA51純正品を組み込んでおり、長年使用してきたがこれまでにこれの折損は一度もなかった。
 今回このシャフトが折れてこの奇跡的記録の更新は終わってしまったのだが、このシャフトの破断面が自分の常識と異なものだったことから、その原因について考えてみることとした。

この破断シャフトの外観観察から、次ぎのことが分かる。・・・シャフトは右側の短い方
①破断点は等速継ぎ手側の断面変化部で、その破断面は軸に垂直、かつ平面であり、通常の高強度鋼材のねじりせん断破壊ではない。
②デフ側スプラインのねじれ歪み状態から、相当のねじり力が加わったが、ここで破壊しなかった。
③このスプラインのねじれ歪みの方向から判断すると、異常なねじり力は、エンジン側からでなく、車輪側からのものである。





〔異常破断の原因追求〕
 回転軸のねじりせん断破壊面は、力学的に45度の角度を成すものだが、この破断は軸に垂直で、しかも刃物でスパッと切断したような破断面であることから、せん断破壊ではないような気がする。

 通常のねじりせん断破壊面の例

 なお、破断面が滑らかなのは、破断後もシャフトを回転させていたため、双方の破断面が少し研磨されたものである。

この原因に対する素人推測では
・シャフトセットに何らかの無理があって、シャフト破断点に過大な曲げ応力が生じ、
・これが長年使用での金属疲労で、微少なクラックが生じ、
・そこに大きなねじり荷重が加わって、クラック点で破断した。

 そこで、実車のシャフトのセット状態を確認した結果、左右にハンドルを切ってもシャフトは浮動状態を保っており、無理な曲げモーメントは一切かかっていないことが分かった。

となると、上記の推測はボツなり・・・!

鋼材破断面の調査
インターネットで鋼材のねじり破断面記事を検索・調査したところ、概略以下のようである。
①高硬度(もろい)のものは、45度の傾斜面で破断する。
②・粘りあるものは、垂直面の破断となる。

〔①の例〕
 シャフトのスプライン側
 もろいチョークのねじりせん断

〔②の例〕
 針金:横
 針金:破断面

と云うことは、このシャフトの破断は、単なる”ねじりせん断破壊”であったと思われる。


ここで、このシャフトが切れた主な原因を紹介すると、
・ヒューム管の先に巾広のU字溝が埋め込んであるような、障害物を越えなければならないため、前輪デフをロックしてジャンプ→左車輪が着地してロック→右側の重量車輪が空転するねじり衝撃荷重で、シャフト破断。

スプラインのねじれ方向から、車輪側の荷重であることが明確である。下図

 デフ側スプライン (右車輪用)

なぜ、ここで破断しなかったのだろうか? ここが熱処理強化されているからなのだろう。熱処理で固いものが割れずに、こんなにねじれるものか、と驚きである。

以上について、余り釈然としないが、この分析はこれで 「一件、落着~」とする。 私的事情で余り時間がないので・・・!




ジムニートランスファ2駆Low加工時の確認方法

2013年08月26日 | 駆動系
ジムニーJA11トランスファのワンレバーによる2駆Low切替改造をする際には、以下の問題があるが、その対策一例とその後の確認方法について自分のやり方を紹介する。

・2駆Low切替時にレバーの球部下端ロッドがアルミケースに当たってしまい、確実な切替ができない。
・かろうじて切替できたとしても、完全なロッド移動・ロックがされず、またレバーフィーリングが悪い。

・対策は、その当たり部分を削る必要がある。・・・下図の赤丸(下側の)部分



〔当たり対策の確認方法〕
・2分割アルミケースのフロント側に2本のシフトロッドを仮セットし、レバー用ケースとレバーをセットする。(下図)
・レバー先端ロッド部に、マジックインキ等で当たり識別用の塗色をする。

 フロントケースへの仮セット状態

・2駆Lowへレバー操作して、2・4駆切替ロッドの移動状況を、確認する。

 鋼球用切り込み部がわずかに見える状態では移動不足

 切り込み部がこの程度見えれば、OK

上図のように、2・4駆切替ロッドの切り込み部が2mm程度見える状態が、完全シフト状態である。

 完全なロッド移動が確認されるまで、レバーとケースの当たり部分を削る。



トランスミッション・シフトレバーのぐらぐら修正

2012年10月19日 | 駆動系
 シフトレバー球部の位置決め用縦溝が摩耗拡大すると、レバーがぐらぐらしてくる。

今回、レバーの溝摩耗が余りに大きいため、これを荒料理でもって修正した。

摩耗部分を溶接盛りして、サンダーで仕上げて完了。

 溶接盛り状態

 仕上げ完了状態

これで、ガタ付きが完璧解消した。 
しかし、溶接盛り金属の摩耗強度は高くないので、無理のないシフト操作が必要だ。

 ところで、大方のレバーは、ほとんど摩耗していないので、普通のシフト操作では、それほど摩耗すものではなく、摩耗が大きいレバーは、ドライバーの手癖が悪いのだと思う。
 内部構造を認識して必要以上に横方向への力を加えないような、優しいシフト操作をすべきである。

エアロッカー組込みノウハウ集-⑧ エアタンク方式

2012年10月15日 | 駆動系
〔・コンプレッサを使わずエアタンクで動作させる方法について〕

最近、車にエアコンプレッサを搭載せずに、エアタンクの空気圧で動作させる方式が散見される。

この利点は、
■安価であること。 新品タンクでも6~7千円程度以下で。
■配線が極めてシンプルであること。
■コンプレッサ・トラブルの問題が無く、信頼性が高いと思われること。
■競技用などでは、コップレッサ電源の入れ忘れによる時間ロスが回避できること。

欠点としては、
■タンク容積が大きく、嵩張ること。
■別に充填用コンプレッサが必要なこと。
■エアロッカー本体にエア漏れトラブルがある場合は、エア消費が多く空気圧低下の懸念があること。

エアロッカー本体には、エアパイプ、ソレノイドエアバルブとスイッチが付属しているので、下図のように組み付ければよい。
太線部分が追加手配する配線材料。極めて簡単・シンプルである。

 配線図

 ヤンキータンクへのソレノイドバルブ取付状態

なお、上記はエアロッカー1個取付の例示であるが、2個取り付ける場合は同じものを並列追加すれば良い。

容量3.5Lタンクに空気圧7kg/㎠を充填した場合、新型エアロッカ-では2kg/㎠まで動作して、何と50回程度ロックすることができる。 (旧型は未確認)

下図のヤンキーホーン用タンクは、エア注入バルブ、圧力計付きで、ソレノイドエアバルブ取付穴PT1/8があり、また車体への取付ステーも付いているのでおすすめ品である。





■キタハラ HKT-A921型
■耐 圧 10kg/cm2以下
■容 量 3.5L
■サイズ 長さ340mmx高さ135mm
■接続部 圧力計・エアーバルブ、・高圧ナイロンチューブ用コネクターPT1/8が付属←これを外してソレノイドバルブに交換


 手持ちコンプレッサがない場合、またはタンクのみでは不安な方は、安価な12Vタンク付きコンプレッサ(1万円以下)が市販されているので、これを使う方法ある。   

おわり

エアロッカー組込みノウハウ集-⑦ 配線関係

2012年09月28日 | 駆動系
【 配 線 関 係 】

・〔スイッチの内部構造について〕

 純正のswitchは、5端子の何やら難しそうな形をしているが、何のことはない。 LEDランプ2個内蔵の単なる2極スイッチである。
 コンプレッサSWとエァロッカーSW(front、rear)は、内部構造は全く同じ物である。



このSWを純正ハーネスでなく、単独で使う場合は、
・端子2に電源を、端子3に負荷(コンプレッサ、エアロッカ・ソレノイドバルブ)を接続する。 
   これを逆接続すると、パイロットランプが点き放しなるよ。
・イルミネーションランプ用の6、7端子は夜間のボタン表示用のため、夜間照明灯回路につなげるもの。 競技用には接続不要。


・〔リヤとフロントを単独動作させるには〕
  
 コンプレッサ付属の純正ハーネスでは、下図のような結線のためコンプレッサをONして、リヤをロックしないと、フロントをロックすることができない。



通常の四駆車ではそれでも良いのだが、競技用としては前輪を単独ロックできないと、利用価値が半減する。
前輪を単独ロックには、フロントSWへの電源線(黄色)を上図の赤線表示のように変更すればよい。


・〔SWをセットする角穴の加工方法例〕

 樹脂製ダッシュボードへの穴加工は、カッターでもできるが、アルミ板への加工例として、以下を紹介する。

・まず、穴形状をマーキングして、その内側へ下図のように適当なドリル穴を明ける。



・穴-穴間をニッパー等で切断し、仮穴を作る。



・平ヤスリ等で所定の形状・寸法に仕上げる。 大き過ぎぬよう注意する。




エアロッカー組込みノウハウ集-⑥ 銅管処理等

2012年09月23日 | 駆動系
【銅管のリングギヤまたぎ位置の選定方法について】

・改良新型はシールハウジングがリングギヤ側になったため、銅管はリングギヤをまたがなければならない。(跨がずにセットできるとは思われるが・・・)
・この跨ぐ位置は、ホーシングへ挿入する際に破損しないことも考慮する必要がある。

具体例として、
・下図のようにリングギヤを挿入し、指でホーシングとのすき間が大きい所を探り出す。
・その位置をマジック等でマーキングする。
・そのマーキング位置までの深さを測り、その寸法でキャリアに組んだリングギヤの跨ぎ位置を決定する。



 ホーシング内部には溶接フランジがあるので、それを越え、かつリングギヤの中心を越えた位置がベストのようだ。


【銅管の成形方法について】

 銅管の曲げ成形する際に、銅管が長いためやりにくい。このため、予め必要な長さにカットすれば成形が非常にやりやすくなる。
 そこで、下図のように柔らかいアルミ線、細い鉄線等で成形用テンプレートを作り、それの長さで銅管をカット、および成形する。

 銅管成形用テンプレート

 【注】銅管をディスクサンダー等でカットする場合は、切り粉が銅管内部に残らぬよう細心の注意を! ハウジング側から要エア吹き。

【ホーシングのデフキャリア組込穴の切削について】

・次項で説明するリングギヤ・スペーサの有る無しにも関係するのだが、デフ玉の交換等によって外形が変わるため、ホーシングの切削加工が必要になる。

・切削する位置と寸法は、キャリアを当てて実測で作業する。 位置は下図の赤マークの3ヶ所となる。

 なお、リングギヤ取付ボルト頭部が当たるが、これについてはリングギヤを少し回転させて、ボルト位置を変えれば良いのでこの分の切削は要しないのだが、不慣れで挿入し易くしたい人は、ボルト分も切削すればよい。

・切削工具は切削量にもよるが、車下部での作業性を考えるとエアベルトサンダーがベターである。



【リングギヤ・スペーサについて】

 デフケースフランジとリングギヤの間に入れる厚さ3mmほどのスペーサが付属しているが、この使い分けが自分には解らない。

 スペーサ (ボルト8本のフロント用)

 このスペーサを入れると、デフ玉が厚さ分だけリングギヤ側へ移動するので、以下のような使い道なのか?
・以前のシールハウジングがリングギヤと反対側の場合、デフ玉を移動してシールハウジング出っ張りを無くする。
 (しかし、新型の場合は、リングギヤ側にシールハウジングがあるので、出っ張りが増す)
・オートマ車デフのようにリングギヤの厚みが薄い場合の調整用。

 自分はこのスペーサは、その時の気分で入れたり、入れなかったりしており、入れなくても問題はなかった。

 改良新型はシールハウジングがリングギヤ側になったことから、このスペーサを入れるとデフ玉がシールハウジング側へ移動し、ホーシング切削が必要、または、切削量が増すことになる。

 以上から、不要なものであるならば、このスペーサは入れない方が良いと思っている。

 もし心配ならば、これを入れないで仮組みしてみて、要否判断をすればよい。


エアロッカー組込みノウハウ集-⑤ シールハウジングのセット

2012年09月21日 | 駆動系
【シールハウジングのセットについて】

 ジムニー用新型ARBエアロッカーのシールハウジングは、以下の問題がある。
・セットするシャフトからはみ出して、内部のOリングが飛び出し、エア漏れすること。
・内径がシャフトより2mmほど大きく、またスプリングピンで固定する方式のため、中心にセットするための修正が必要なこと。

〔飛び出し対応〕

  飛び出し状態(Oリングは未挿入)

 下図はシールハウジングの飛び出し状況を、少し誇張して描いたものである。



 このシールハウジングが上図のように飛び出していると、以下の悪条件が重なってOリングが飛び出し、エア漏れが生じる。
・シャフト先端が面取りされていること。
・Oリングが溝付であること。(従来の丸形の方が飛び出し難い)
・シャフトとシールハウジングの直径に2mmほどの差があって、相互間に大きなギャップがあること。
・また、シールハウジングはスプリングピン固定方式のため、必ずしもシャフト中心にセットされるものではなく、偏芯したセット状態では、このギャップが更に大きくなること。

この飛び出し対応としては、以下の2つの方法がある。
・シールハウジングの内側にセットされるアジャスタの厚みを、飛び出しがない状態まで研磨する。
・サイドテーパーベアリングの外輪(アウターリング)を、飛び出しがない状態まで研磨する。

現実的には
・アジャスタ材質が柔らかなため、これを研磨した方が楽である。
・アジャスタの研磨面は、ベアリング側(内側)を研磨する。・・・外側はスプリングピンを引っ掛けるため研磨厳禁。

・研磨工具は、
 *厚みを均等、かつ平坦に削るためベルト&ディスクサンダーが良い。
 *高速カッター刃の側面も結構良し。
 *柔らか鋼材で、薄肉のためヤスリでもOK。

 研磨用ベルト&ディスクサンダー
 修正後(Oリング挿入してある)

〔スプリングピンセットの調整〕 
・両端のコの字引っ掛け部の間隔を測定して、差がある場合は両側を同じ寸法に修正する。
・中間部にマイナスドライバー等を引っ掛けてセットするが、この状態で両端コの字部が完全に噛み込んでいることを確認する。不完全状態は、マイナスドライバー等でこじって修正する。

 不完全セット状態・・ちょっと不鮮明だが
 上図:右下矢印部ピンのコの字が完全に噛み込んでいない。
このため、ピン両端が不揃いとなって、上図:上矢印部でアジャスタのコの字切り込みとハウジングのコの字切り込みが揃っていない。・・・・ピン両端が正常にセットされれば、双方の切り込みが揃う構造である。

 ピンが正常にセットされた状態。 

〔シールハウジングのセット状態の調整〕

 シールハウジングの支持方式は、以前はボルト式だったが、現状はスプリングピン固定方式に変更されている。
この方式では、必ずしもシャフト中心にセットされるものではなく、偏芯したセット状態では、Oリングの一部が圧縮されて異常変形し、他方はゆるくなるためエア漏れの懸念がある。
 
 このため、センターにセットするように確認・修正する。

 ここは回転摺動し機密保持する重要部分なので、機械構造的に好ましくないのではないかと思っている。・・・偏心状態での機能確認はされているとは思うが?

シールハウジングはシャフト中央にセットされていることを確認する。偏芯状態は修正する。

〔その他〕
・ベアリングキャップの銅管接触部にディスクサンダー等で溝を掘る。
・シールハウジング内のOリングの全溝にグリースを塗布する。
 

〔あとがき〕
・このシールハウジングの飛び出しは、寸法設計上の不適正によるものであるが、china製コピー品も全く同じ構造・寸法のため修正が必要のようである。

・「china製で、スプリングピンが外れた」という話しを聞いたが、構造が同じなのでchina製に限ったことではないものと思っている。
 外れた原因は、前述のようなスプリングピンのセットが不完全状態でもって、デフキャリアをホーシングに組み込む際に、スプリングピンをこじって外してしまったのではないかと推測している。
 何故なら、このスプリングピンは適正にセットされていれば、構造的に絶対に外れない筈である。

 ホーシングへのセットは、重量物かつ狭い穴に組み込むため、非常に作業がし難い。
 また、万一、接触すると大きな力が加わるので、後述するホーシングのカットを余裕ある寸法とすると共に、特にシールハウジングがぶつかり易いので慎重にセット作業をする必要がある。



エアロッカー組込みノウハウ集-④ バックラッシュ調整

2012年09月19日 | 駆動系
【バックラッシュ調整】
 バックラッシュは、両側のサイドベアリング・アジャスタを締め上げて調整するが、このアジャスタ締め上げには、以下の2つを同時に満たさねばならない。
 ① バックラッシュを適正値に調整すること。
 ② 2個の向かい合うサイドテーパーベアリングに適正なプレロード(予圧)を与えること。・・・(余り、または全く配慮されていないようだが、大きなスラスト荷重が加わり運転時にバックラッシュが変動するので、重要な要素である)

このバックラッシュ調整の作業標準は、ダイアルゲージ計測によるのだが、以下の理由からダイアルゲージ計測の意味がないと思っている。
・リングギヤ全周で歯当たりが均一でないこと。・・・かなり不均一度が大きい
・競技ではタッピング操作や急発進など過激なクラッチ操作をするため、バックラッシュは可能な限り少なくしたいこと。

そこで、自分は以下の方法で調整している。 邪道なのかも知れないが・・・。
・バックラッシュ量は、ピニオンシャフトのフランジを手で回して、コツッ、コツッと感じる感触で。
・リングギヤ全周でバックラッシュが不均一なので、最も少ない部分をほぼゼロとする。
・プレロードはピニオンシャフト・フランジへのバネ秤で起動トルク測定する。
  その基準値は、ピニオンシャフトのプレロード値+1~3 kg.cm とする。(前輪、後輪とも同じ値)

【注】
・スズキサービスマニュアルには、このプレロードについての大げさなダイアグラムが記載されているが、結果的に上記の値である。
・このプレロード増分値が小さい理由は、云うまでもなくピニオンギヤ減速比が大きいためである。
   (実際の起動トルクは減速比3の場合、3倍の3~9 kg.cm である。)
 
文章で表すと上記のようになるのだが、実際の調整作業は以下のことなどから簡単に落ち着くものではなく、幾度もの繰り返しで調整するしかない厄介な作業である。
・片側のアジャスタを締める際には、他方をゆるめるて調整する必要があること。
・アジャスタ廻し時は、ベアリングキャップのボルトをゆるめるが、これを締め付けるとバックラッシュが変化すること。

留意点として
・スタート時には、リングギヤを地面に強くたたき突けて、ベアリングとアジャスタとの収まり状態を落ち着かせること。
・スタート時と最終段階では、アジャスタを一旦締め上げてから、少し締め戻して計測すること。・・・遊びを取るため


【ベアリング・アジャスタの締め付け工具について】

アジャスタの締め付けには、ローターホルダーが必要だが、エアロッカー付属アジャスタは下図・上部のような汎用品ではピン支持部がシャフトに当たってしまい締め付けができない。

また、このエアロッカー付属アジャスタの材質は柔らかで、メクレ上がり易く、メクレた状態でここにシールハイジングを密着セットすると、シールハウジングが突き出してOリング飛び出しの要因となる。
よって、キッチリ噛み合う工具を使う必要があり、ドライバーなどでの叩き締めは論外である。

 上:汎用品、下:専用として改造したもの

そこで、自分は手持ち品を若干変形して、専用の工具として使っているので、一例として紹介する。
この原品は、ホンダ・スポーツカブの専用工具(クラッチ用?)で、50年ほど前に購入した骨董品である。

ピン部を角穴に合わせて削っており、柄も長いことから、非常に使い勝手が良いものである。



【 後 記 】
・メーカー基準バックラッシュ量は、競技用としては大きく不適切ではないかと思っている。これまでにデフ破損の実績は新車購入したままのJA11C前輪用のみで、自分が調整したデフの破損はない。
・競技でのデフ破損の話しをよく聞くが、ジムニーデフの見た目強度は可成り大きいと思われ、破損原因はデフ組み付け不適切によるものが多いのではないかと思っている。
・しかし、自分は車に関して全くの素人である。このブログは自分の知識と経験でもって信じ、或いは推測したことを書いているので、間違いを含んでいる可能性がある。これを参考にされる方は、このことを充分に考慮し決して鵜呑みにしないで欲しい。


エアロッカー組込みノウハウ集-③ ピニオン切削

2012年08月29日 | 駆動系
【ピニオンの歯先切削について】

 シールハウジングがリングギヤ側になった新型ARBフロント用は、ピニオン歯先がデフギヤケースに接触する不具合品である。

・この対策は、ピニオン歯先を1mm程度研磨する必要がある。(ギヤケース研磨は大変なので)
・ピニオン歯形は、リングギヤとの噛み合い上、重要なので、研磨は必要最小限に留めること。
・研磨量の確認は、ギヤケース全周に光明丹、あるいは塗料などを塗って、仮セット→回転し、ピニオンに塗料が付く部分を研磨していく。

 ギヤケースを着色する

 接触するとピニオン歯先に塗料が付く


【ピニオン・ナット締め付けについて】

取り外したピニオンシャフトを戻す場合の、ピニオン・ナットの締め付け方が重要であり、それについて少し詳しく説明する。

 ピニオンシャフト説明イラスト

〔構造説明〕
・ピニオンとリングギヤは極端なハス歯噛み合いのため、ピニオン軸方向に大きな荷重(スラスト荷重)がかかり、その荷重方向は前進と後退によって反転し、軸の両方向に発生する。
・このため、両方向の荷重を支える2個のテーパーベアリングが向き合ってセットされている。
・この2個のテーパーベアリングを緩み無くセット(プレロード/予圧をかける)するには、軸に固定する訳にはいかず、ナットで締め上げる方式となっている。
・外輪(アウターレース)は固定しているが、内輪(インナーレース)ついては、
 ピニオン側ベアリングの内輪・・・・軸に圧入して固定、
 ナット側ベアリングの内輪・・・・・軸と一体にせずフリーとして、締め上げできるようにしている。
・このフリー側ベアリングの内輪を軸と一体となって回転させるために、筒状のスペーサを入れて、これをナットで締め上げて一体化する。
・この筒状のスペーサは、中間部に膨らみ設けて、ナットで強力に締め上げると塑性変形して長さが縮む形状となっている。(締め付け方が重要)

〔締め付け方〕
・ナットの締め方は、以下の2つを同時に達成するように締め上げなければならない。
  ①向かい合う2個のテーパーベアリングに適正なプレロード(予圧)を与えること。
  ②スペーサが2個のベアリング内輪をガッチリ固定し、ピニオンシャフトと一体回転するようにすること。
・これを実現する締め方は、スズキ・サービスマニュアルに示されているが、理解し難いので少し噛み砕いて説明すると、
 *ナットを締め上げていくと、2個のベアリングローラーのすき間が減少してくる。
 *更に締め上げると2個のベアリング内輪にスペーサが当たり、ナット回転が重くなる。
 *この状態で、軸方向に若干のガタがあれば、スペーサ長さが有効である。・・・この状態がない場合は、スペーサ要交換。
 *更に締め上げると、スペーサが圧縮力で縮み、ベアリングローラーすき間が無くなって、プレロードが生じ回転抵抗を感じてくる。
 *このシャフトの回転抵抗(起動トルク)をトルクレンチで測定し、プレロードが基準値になるまで締め上げる。
   プレロード基準値(kg・cm):フロントデフ=5~13、 リヤデフ=9~17

・トルクレンチがない場合は、ばね秤で起動荷重を測り、プレロードを算出する。
・測定機器を使わず、手廻しで回転抵抗を体感で調整する方法もある。 ←我流だが!

〔注意事項は〕
・スペーサ再使用時のナットは、前述によりスペーサ長さの有効性を確認しながら、必ずプレロードがかかるまで締め付けること。 そうしないと前記のスペーサによる一体化が不十分となり、ナット側ベアリングが空転する。
・プレロードを大きくし過ぎた場合は、スペーサを新品と交換する。締め戻し再締めは厳禁である。
 その理由は、締め過ぎると、スペーサが縮んで塑性変形し長さが足りなくなって、上記と同様にシャフトとの一体化が不十分となる。

・テーパーベアリングは必ずプレロードを与えるが、その締め付け方は、一旦、過大に締め上げてベアリングを落ち着かせ、それから締め戻して規定プレロードに締め付けるのが一般的である。
 しかし、このデフ・ピニオンは構造・機能を熟知して、締め過ぎは御法度であることを、認識すべきである。
 テーパーベアリング締め付けを熟知したベテラン整備士などは、要注意である。

・この締め過ぎ防止として、微妙な締め付けトルク調整ができないインパクトレンチは、使用厳禁である。

〔その他〕
・中古品デフについては、以下の理由からスペーサの再使用が可能である。
 *一旦締め付けたスペーサを緩めると、弾性限度分は縮みが戻り、これを再締めで元に戻すだけであること。
 *当初よりもベアリングが摩耗すれば、その分、締め上げ量が増すこと。(テーパーのため僅かな摩耗でも締め上げ長は大きく変化する)
 ただし、ベアリングを交換する場合は、別である。再使用不可!

・ピニオンを外したついでに、オイルシールを交換すると後々有効である。
   純正品番は: 09283-35008 ・・・ JA71:F,R、 JA11、12、22、JB23、31:F
          09283-40027 ・・・ JA11、12、22、JB23、31:R、 JA51、JB41、42、43:F、R
・オイルシールの打ち込みは、外縁ゴムがめくれ易いので慎重に打ち込むこと。・・・外径が大きいものは、めくれ易いようであり、自分は失敗経験者である。
・ナット締め付けはインパクトレンチが便利なのだが、これが使えないとなると、回わり止めが大変だぁ。下図の工具を準備して!

 ナット締め付け方の例

〔ここだけの手荒なノウハウ〕
・締め過ぎや、ベアリング交換等などで、スペーサの長さが足りなくなった場合は、膨らみ部分を均等につぶして長さを延ばし、再使用する方法がある。
・新品スペーサは長さが縮んでいないので、締め上げには相当の締め付けトルクを要す。(1000~4000kg・cm)
 締め上げ長が余り長い場合は、若干短く削って締め付けると楽である。 削り過ぎにご用心!

【参考:ばね秤によるプレロード測定】



ばね秤でプレロード(起動トルク)を測定する方法は、
・フランジボルト穴に、2~3kg程度のばね秤を引っ掛けて、軸に対して直角に引き、回転開始する荷重P(kg)を読む。
・フランジの穴と軸中心までの距離L(cm)とPの積が起動トルク(プレロード)となる。
  起動トルク=L×P (kg・cm)
・フランジ穴ピッチは以下の通りであり、半径のLはおおよそ 4cmである。
   SJ30、JA71前期の小径は 75mm → L=3.75cm 
   JA11などは         80mm → L=4.00cm
   JB23などの新型は      85mm → L=4.25cm
・よって、ばね秤の起動荷重Pが1.5kgとすると、その起動トルクは 
    起動トルク=L×P=4×1.5= 6(kg・cm) となる。

・自分の測定事例では、ベアリングの回転抵抗のバラツキが大きく、その起動荷重、起動トルクは1.3kg~2kg→5.2~8.0kg・cmであった。・・・中古品デフを分解・組立したもので計測
・また、10kg・cm程度に締め上げると、ベアリング回転のゴロゴロ感が感じられて、余り適切な締め上げではないように感じた。
・このことから、前記のプレロード基準値(kg・cm):フロントデフ=5~13、リヤデフ=9~17は、この計測値のバラツキを考慮したものなのだろうか?

・いずれにせよ、ベアリングは厳重に洗浄、注油したものをセットし計測する必要がある。 そうしないと計測値のバラツキが大きく、神経質な方は悩んでしまでしょうから・・・!
 また、この計測値は後に記載するバックラッシュ調整でのサイドベアリングの締め付け→プレロード決定、のベースとなるので、極力、バラツキを少なくする必要がある。

・なお、この計測値のバラツキが大きい理由は、ばね秤による計測方法によるものではない。もしろこの方法の方が直接測るので、計測器誤差は少なくなる。(ばね秤が正常であることが前提で)

 (極々こだわるとすれば、ばね秤は構造的に垂直に測るもので、水平計測では可動部分の重量分だけ少ない値となる。アルミ製なので10gほどかなぁ)

【参考:プレロードを感触で調整する手法例】

・ピニオンシャフトにスペーサを入れずに仮セットし、ナットを締め込んで、ベアリング・ローラーのゴロゴロ感が生じないプレロードでの回転抵抗を感じ取る。
・次にスペーサを入れて、この回転抵抗まで締め上げて完了とする。


  
 

エアロッカー組込みノウハウ集-② バルクヘッドの位置

2012年08月28日 | 駆動系
【バルクヘッド穴の位置】

デフハウジングのバルクヘッド(銅管接続栓)穴の位置は、外部配管の取り回しを考慮して選定すること。

後輪用は、
 配管が干渉するものがないので、下図のような配管が斜めに接続する位置がよい。
 ただし、下図(JA11用)は、デフハウジング接合ボルトの近くに設置してしまったため、インパクトレンチやラチエットレンチが使えない失敗例である。

 後輪用位置

 接合ボルト穴に接近し過ぎて、締め付け工具が使い難い失敗例 

前輪用は、
 後輪用と同じ位置にすると、配管が高温のオイルパン側へ向かい接触するため好ましくない。

下図は、真上向きでオイルパンとは干渉しないが、クラッチワイヤと干渉し易くなるものの、配管防護をすれば問題ないので、この位置の方がベターである。

 前輪用位置



エアロッカー組込みノウハウ集-① 工具、油脂類

2012年08月25日 | 駆動系
 これから、製品不具合があるジムニー用新型ARBエアロッカーの対応など、エアロッカー組込みに関するknow-howなどをまとめて列挙し、今後への備忘録とする積もりである。
 なお、この備忘録がこのブログを覗いて下さる方々の一助となれば幸いである。

 ところで予告偏にも記載した通り、このノウハウ集は自分が必要と感じた事項をまとめるものであって、エアロッカーに関する全てを網羅するものでありません。あしからず・・・・!

【必要な工具類】
作業手順の概略は、
○デフオイルを抜き、 ○ドライブシャフトを抜く。 ○デフを下ろす。
○サイドベアリングとリングギヤ取り外し、エアロッカーデフ玉へ組み替える。
◎デフハウジングへバルクヘッド用ネジ切りをする。
◎ピニオンシャフトを抜き取り、歯先をデフケースに接触しないまで切削する。(新型フロント用) ○必要に応じてオイルシールを交換する。 ○ピニオンシャフトを戻す。
◎シールハウジングのシャフト飛び出しがしないまで、ベアリングアジャスタを研磨する。
○デフ玉をセットしてバックラッシュを調整する。
◎サイドベアリングキャップの銅管通過部に切削溝を作る。○銅管の通路を確認・決定し、曲げ成型・切断してセットする。
○シールハウジングを固定する。
○仮配管、仮配線にて動作確認・エア漏れ有無を試験する。
◎ホーシング・デフ穴のデフ挿入当たり部分を切削する。
○デフキャリアをホーシングへ組み込む。
○ドライブシャフトを戻す。
◎SW取付用角穴を加工する。○コンプレッサを据え付け、配管、配線する。
○動作試験する。
○デフ・オイルを注油する。 ○ブレーキのエア抜きをする(後輪の場合)

上記は項目の列挙であり、個々の作業にはそれなりの工具を必要とするが、デフ玉セットに関する主要工具は概略下図の通り。 


なお、上図には無いが、以下のような工具が必要
・コンプレッサ、・電動ベルトサンダー(又は、高速カッター)、・電動ディスクサンダー、
・油圧プレス(ベアリング圧入)、
・ガスバーナー(焼き嵌めする場合)

【必要な油脂類】



・リチウムグリース  スズキスーパーグリースA  Oリング、オイルシールのリップ部など
・リチウムグリース  スズキスーパーグリースC  フロントアクスルの2個ベアリングの間に充填
・アクスル用グリース スズキスーパーグリースH  フロントアクスル内、リヤのオイルシールリップ部
・ネジロック     スリーボンド1303(上図は3MのTL42J) リングギヤ、デフケースボルトのロック 
・シーラント     スリーボンド1215    デフハウジング(キャリア)の接合面
・切削油       バルクヘッド用ねじ切り用
・パーツクリーナ   各部洗浄用

上図以外に、
・光明丹       ピニオン歯先の研磨状態確認など
・デフ・オイル    #90(GL-5) 数量は:前後共に1.5L
・ブレーキフルード  後輪(ドラムブレーキ)補充用
・セメダイン     366E                前後アクスル接合面の防水
・防錆塗料      アンダーコート             デフハウジング外面

 

ジムニー用新型ARBエアロッカーの不具合対応-その2

2012年08月20日 | 駆動系
 この記事は、ジムニー用新型ARBエアロッカーの2つの不具合のうち、
”シールハウジングが、セットするシャフトからはみ出して、内部のOリングが機密不良を起こす懸念あり。”に対しての対応である。

 下図の画像でもはっきり判るほど、ハウジングが飛び出している。

  飛び出し状態(Oリングは未挿入)

 下図はシールハウジングの飛び出し状況を、少し誇張して描いたものである。



 このシールハウジングが飛び出した状態でセットすると、以下の悪条件が重なって、Oリングが飛び出し、エア漏れが生じる懸念がある。
・シャフト先端が面取りされていること。
・Oリングの形状が、溝付であること。(従来の丸形の方が飛び出し難い)
・シャフトとシールハウジングの直径に2mmほどの差があって、相互間に大きなギャップがあること。
・また、シールハウジングはスプリングピンで固定する方式であって、必ずしもシャフトのセンターにセットされるものではなく、片寄ったセット状態では、上記ギャップが更に大きくなること。


この飛び出し対応としては、シールハウジングの内側にセットされているアジャスタの厚みを、飛び出しがない状態まで研磨した。

 修正後(Oリング挿入してある)

研磨に際しては、厚みを均等、かつ平坦に削る必要があることから、ベルト&ディスクサンダーを使って、厚みを測定しつつ慎重に研磨した。

 研磨に使用したベルト&ディスクサンダー

 研磨面については、シールハウジングをこのアジャスタにスプリングピンを引っ掛けてセットするため、ピンを引っ掛ける側は研磨しないこと。(引っ掛け部の厚みが変わってしまうため)

このアジャスタに関しては、
 ・アジャスタ研磨に先立ち、その厚みを測定したところ、厚みが均一でなく歪んでいて、仕上げ形状をどうすべきか悩まされた。
・材質が柔らかく、締め上げ時に工具当たり部がめくれてしまう。・・・これはハウジング飛び出しを助長するので要注意。


 以上、新型ARBエアロッカーの不具合について対応したのだが、この2つはいずれも寸法上の問題であり、基本設計にかかわる事項であって、どうしてこんな事態が生じるのか理解に苦しむものであった。

 この新型についてネット検索した中に、”その卓越したコンセプトと品質は米国SEMAショーでも高く評価され、"BEST NEW OFF-ROAD・4WD PRODUCTS賞を受賞した”、との掲載があったが、外国品の品質管理はこの程度なのかと、改めてMADE IN JAPAN の品質の高さを認識させられた一件であった。
 また、本品のchina製コピー品の品質について、あれこれ云われているが、ある面似たり寄ったりではないのか、と・・・・!


【追記】
 今回の新型組込みの中で、自分なりの幾つかの改良点を見出した。後日、それをノウハウ集として掲載する予定なので、乞うご期待・・・・!





ジムニー用新型ARBエアロッカーの不具合対応-その1

2012年08月12日 | 駆動系
 ジムニー用ARBエアロッカーの改良新型であるRD207型(JA71、JA11、JB23前期等のフロント用)を、JA71フロントデフへ組み付けしようとしたところ、2つの不具合が生じて、その対応には以下のように難儀した。

不具合は、
 ・その1: デフケースの外径が大きいためピニオンに接触して、かじりが生じる。
 ・その2: シールハウジングが、セットするシャフトからはみ出して、内部のOリングが機密不良を起こす懸念あり。

 この新型について、インターネット検索をしたが、強度アップとかシンプル化などの賞賛記事のみで、これらの不具合記事は見つからなかった。
 ということは、「今回のデフキャリア特有の問題なのだろうか」、との疑問も抱いたのだが、いずれにしても組み付けしなければならないので、以下のようなことで対処した。

まずは、デフケースの問題だが、

 デフケースとピニオンギヤ歯先が接触かじる状態

 仮セットでかじってできた傷跡

収まり寸法関係を概略計測した結果は、
 ・デフケース中心軸からピニオン先端までの距離 L=  53.0mm
 ・デフケース(デフ玉)の外径 D = 107.0mm、→ 半径 R=D/2= 53.5mm 

ここで R>L のため、寸法的に明らかにかじってしまうのであって、組み付け不良によるものではない。

また、リングギヤとピニオンの製品番号は、双方とも同じ番号であり、パーツ組合せ上の問題はない。
 双方に同じ製品番号:L773が電気ペンで表示されている。

 なお、ピニオンシャフトは、オイルシール交換のため取り外したが、規定の締め付け値で組み付けしたので、組み付け不良はない。 (・・・向かい合う2個のテーパーローラーベアリングの回転抵抗(プレロード)が5~13kg・cm程度に締め付け)

〔対応について〕

 デフケースを削ることは設備的にも無理なので、好ましいことではないがピニオン側を削ることとした。
幸いにピニオン歯先は面取りされているので、この面取り代までの切削は噛み合い上の問題ない、との判断をした。 


 ピニオン歯先の面取り状態

 面取り代の切削後は、切削量を最小限にするため、デフケースにマジックインキ(光明丹がないので)を塗布し、ピニオン歯先の付着状態を見ながら接触しない状態まで切削を進めた。

 デフケースにマジックインキ塗布状態

 ピニオン歯先へのインキ付着状態

 結局、ピニオン歯先をおおよそ1mmほど削り落とすこととなった。

 ピニオン歯先切削が完了状態

 この不具合の対応は、悩みつつピニオン歯先を削ることとしたのだが、このデフが中古品であることからギヤ設定が正常かどうかを確認する必要がある。
 このため、急きょ光明丹を入手し、歯面当たり状態を確認することとした。

 その確認結果は、全く正常の歯面当たりであった。よってピニオンは正規状態収まりであることから、現時点でのこの不具合の原因はエアロッカー製品の設計、あるいは製作上の不備によるものと思わざるを得ない。

 ホワード(前進)歯面当たり状態
 リバース歯面当たり状態

 リングギヤの正しい歯面の当たり状態は、下図のようにホワード、リバース共に当たり位置が歯高さの中間で、歯巾の中心よりやや内側に寄っていること。

 リングギヤの正規の歯面当たり図


【参考:光明丹とは】

 今回、はじめてお目に掛かった光明丹

光明丹(こうみょうたん)は、一般には”鉛丹(えんたん)”と呼ばれるようだが、鉛化合物の極めて細かや微粒子粉末で、赤色顔料、錆止塗料、電子部品、ガラス添加剤、バッテリー極板など色んなものに使われている。

 微粒子のためわずかな凸凹判定ができること、また、柔らか滑らかで焼き付き防止剤としても用いられることから、擦り合わせても傷を付け難いので、”すりあわせ・当たり面テスト用”として用いられている。

 すり合わせ・当たり面テストには、粉末をマシン油など低粘度の油で溶いて塗布するが、硬化しないので拭き取りが容易で、また拭き取りが不十分でも、優れた潤滑性があるため問題ない。
 このテスト用としては、粉末以外に練り状のもの、スプレー品などがあるようだ。

 純粋な光明鉛丹は橙赤色をしており、大型トラックの下回りを朱塗りにしているのを見かけるが、それがこれの油性系錆止め塗料である。優れた錆止め効果がある。
 また、朱塗りの神社や朱塗りの橋、船舶の船底の塗料もこれである。

 ところで、鉛は有毒であり、微粒子粉末は飛散し吸い込み易いので、取扱いには充分な注意が必要である。

つづく


デフのギヤについて・・・(ハイポイドギヤ)

2012年07月13日 | 駆動系
 この度、ジムニーJB23フロントデフ・キャリアに、JA11フロントデフのピニオンとリングギヤを組み替えしようとしたが、双方の各部寸法は同じにもかかわらず、ピニオンとリングギヤがどうしても噛み合わなかった。

 その理由について、興味深いことが分かったので、以下に紹介する。

〔ディファレンシャル・ギヤについて〕
 車の通常のディファレンシャルギヤは、小型、大型を問わずプロペラシャフト連結軸(ピニオンシャフト)が、中心より下方にずれている。  ・・・・(このずれ量をオフセットという)



 そのずらしている理由について、「プロペラシャフトを下げ、室内・荷台フロアを低くため」と説明している人がいるが、主目的はそうではないのである。

 これは以下の「ハイポイドギヤ」という優れものを使っているため、軸がずれているのである。

〔ハイポイドギヤについて〕

 下図の”曲がり歯かさ歯車”の直交軸がずれているものを、”ハイポイドギヤ(Hypoid,Spiral Bevel Gear)”という。


このハイポイドギヤの形状・特徴について列挙すると、

・曲がり歯かさ歯車とウォームギヤの中間の形状・特徴がある。
・曲がり歯かさ歯車より高い減速比が得られる。
・歯スジ方向へ「滑り」を加えることが出来るため、より騒音や振動が少ない。遊び量が少ない。
・噛み合い幅、噛み合い歯数が多いため、強度が高い。
・円すい状の斜歯車で、その噛み合いは非常に複雑。・・・加工が難しい
・噛み合い歯面の滑りが大きいため、極圧添加剤や耐摩耗添加剤の多いハイポイドオイルを使う。

〔噛み合わなかった理由について〕

今回、ギヤ組み替えでピニオンとリングギヤが噛み合わなかった理由は、
・JA11用ピニオン軸のオフセットは下側
・JB23用ピニオン軸のオフセットは上側

オフセットが上と下では、ピニオンとリングギヤの歯の傾斜方向が逆くとなる。
このため、オフセットが上側のキャリアにオフセット下側のギヤを組み付けても噛み合わないのである。

 左がJB23用、右側がJA11用

 上図では、歯の傾斜方向の違いがはっきり判るのだが、現物では判り難かった。 画像を観て初めてその違いに気づいた次第である。


〔メンテ上の注意事項について〕

・ピニオンとリングギヤはセットで!
  ハイポイドギヤは複雑な噛み合いのため加工が難しく、開発した米国グリーソン社の工作機械でしか製作できないようである?
 、歯切り加工が完了したリングギヤとピニオンは、これを組み合わせてラッピング(摺り合わせ)工程を経て完成するようであり、ハイポイド・ギヤはリングギヤとピニオンがセットでの供給となる。
 当然のことながらジムニー純正パーツも、ピニオンとリングギヤをセットでしか購入できない。

以上から、リングギヤだけを交換するやり方は、厳密には適切でなく、セット交換すべきである。

セットでの交換であっても、以下のような確認・調整が必要である。 

・ピニオンとリングギヤの組み付け位置関係の重要性
  ピニオンとリングギヤは複雑な噛み合いをするため、それらの組み付けは特に重要であり、これが適正でないと、伝達効率が低下するだけでなく、ギヤ歯に無理な応力が生じて強度が低下する。

 ここで、オフセットについては、キャリアで決まっているので問題ないが、ピニオンは軸方向に調整する必要があり、整備マニュアルにその方法が説明されている。
 (リングギヤの歯面に光明丹を塗布して歯当たりを確認し、その歯当たり位置に応じたシムの増減で軸方向位置を調整する)

 また、当然のことながらバックラッシュを規定値内に調整することが重要である。


〔追記〕
 ところで、JB23Wフロント・デフのオフセットが上側になっている理由は、ステアリング用タイロッドがホーシングの後方に組まれているので、このタイロッドとの干渉をさけるためである。
 よって、リヤ・デフは通常どおりの下側オフセットである。

ジムニー・ミッション5速化改造(#4)

2012年02月19日 | 駆動系
 またまた5速化改造です! 偏心ピンの自作を契機に早速友人から改造要請があり、偏心ピン2作目よる改造を行った。
実績を積み上げて随分と手慣れてきたのだが、そのためか今回は失策が・・・・!

改造内容は
・SJ30ミッションをJA11前期ギヤに組み替え
・ギヤ内部ベアリングの一部を交換
・インプットシャフトの傷付きギヤ歯を加工して利用
・オイルシール交換

〔ギヤ内部ベアリング交換〕
 ギヤのガタツキが感じられたので、内部のころベアリングを交換した。一般にはこのベアリングは摩耗が少ないのだが、ガタが感じられたので交換することとした。

 購入した純正ころベアリング
画像左から
 09263-80030 2速ギヤ用
 09263-80031 1速、リバースギヤ用
 09263-22059 5速ギヤ用
 09263-17043 インプットとメーンシャフト連結用

 今回は、3速とリーバス、インプット/メーン連結用は交換しなかった。
インプットシャフトベアリングは、30用に交換するのだが、これがガタガタだったので、新品シール型に交換した。
 【注】3速ギヤ用ころベアリングは、前期・後期で仕様が全く違うので注意を要する。前期用は2分割型だよ!

〔失 敗〕
 このギヤ内部ベアリングを交換して組み付け完了したら、1速・2速ギヤの軸方向がガタガタじゃないか?
その原因は、1速とリバースギヤのベアリング内部にはツバ付ブッシュ(筒状の内輪)が入っており、このツバはボール軸受けベアリング側になるようにセットしなければならない。
 ところが、下の画像のように1速用のツバを反対向きにセットしてしまったのである。組み付け順番等を間違えないように、慎重に分解・組立を行ったのだが、ベアリング挿入時に差し込み方向を違えたようである。

 中ほどのころベアリングの右側にツバが見えるのが、そのブッシュ

〔インプットシャフトのギヤ歯加工〕
インプットシャフト・ギヤ歯にサンダー削り傷があるのだが、ギヤ歯を全周ともに削って噛み合いを均等になるように修正して使うことにした。 
 

修正してギヤ巾が狭くなったが、インプットギヤ巾はカウンタギヤ巾より広いので、全く問題はない。
 

〔シフトレバー位置移動について〕
 この5速化によってシフトレバー立ち上がり位置が、後方へ移動するため、車体フロアの加工が必要になるようである。
このため、その移動量を測ることとして準備したのだが、写真撮影に気を取られて肝心の移動量測定を忘れてしまった。自分の車に取付するものでないので、真剣味が足りないのかぁ~!
 レバー位置の比較図