
薬師丸ひろ子が1980年代の
空前絶後の大人気の時、私
自身は全く興味はなかった。
単なる一女優としてしか見て
いなかった。
世の中のアイドル的な見方は
全くしていない。
「これ、可愛いかぁ?」とさえ
思っていた。
角川の戦略的担ぎ上げが見え
見えだったので尚更だった。
だが、ここのところ、立て続け
に彼女の80年代の主演作品を
観て、女優としてだけでなく、
めちゃくちゃこの女優の10代
から20代前半が可愛い事に気
づいた。女優の演技から来る
可愛さ。役柄ではなく、演じ
る薬師丸ひろ子が可愛く見え
る。
可愛いのだ。1980年代の薬師
丸ひろ子。
オーラというには陳腐な独特
の凝縮された空気を放ってい
るのだ。
これだったのか。
プロだ。
ただ、俳優としての実力ならば
かつての宮﨑あおいも薬師丸に
肉薄する名演を見せていたが、
薬師丸ひろ子は角川御大の秘蔵
っ子であるので、くだけた役は
演じなかった。角川娘の時は。
そういう点では『少年メリケン
サック』で見せた宮﨑あおいの
怪演は素晴らしすぎる。女優の
演技の幅としてあれは度肝を
抜く。なんたって牛糞まで被っ
ちゃうのだから。プロ。
そして、それに対作品として
みられるのが『初恋』での女
子高生役だ。三億円事件実行
犯の役。シリアスの王道。
薬師丸ひろ子も宮﨑あおいも
名女優であるのは、それは
台詞の無いシーンで顔の表情
のみで役を演じきる点だ。
俳優は男も女も演技者=表現
者だ。
そして、それが「芸」である。
プロの芸を映像で観る事がで
きるのはとても面白い。
舞台には舞台の良さがあり、
映像には映像の良さがある。
演劇は面白い。
それは、作り手、演じ手の自己
満足ではなく、あくまで観客の
存在を常に意識しているからだ
ろう。
人が観てくれて、笑って泣いて
喜んでくれてナンボの世界が
演劇だ。
舞台も映像も単独で存在して
はおらず、必ず人と人との心
の架け橋として存在している。
だから、演劇は面白い。
舞台も良いが、映画などは最
高だ。
ど素人の集客換金目的の雑な
インスタント動画ではなく、
プロたちの芸を観るのは極め
て楽しい。