人の世は悪党、泥棒が尽きない。
アメリカでも偽ミネソタファッツ
=ルドルフ・ワンデロン(1913-1996)
という卑劣漢がいた。スポーツマン
ではないバクチ打ちなので、プレー
のマナーなどは最悪だった。
映画『ハスラー』(1961)公開以降
にあれは自分がモデルだと勝手に
名乗り出したニューヨークのペテン
師である。
それまではNYファッツと名乗ってい
たが、映画が人気が出るやニック
ネームをミネソタ・ファッツに変更
してそれをネタに金稼ぎをし始めた。
『ハスラー』原作者のウォルター・
テビスは生涯この男が言うのは事実
無根であると主張し続けた。
また、キャラクタは原作小説や映画
作品に出てくる知的なミネソタ・
ファッツとはまるで別物で、口汚い
言葉を吐き、素行も悪い目立ちた
がり屋のバクチ打ち興行行商人だっ
た。
一度も公式大会ではまともに成績を
残していないが、不世出の世界チャン
ピオンだったウイリー・モスコー二
(1913-1993)を終生勝手にライバル
視して悪口雑言の限りを尽くした。
そしてエキジビションでウィリーと
対戦カードを興行師に組ませて対戦
するが、ワンデロンはどの種目の
試合でもウイリーに負け続ける。
その試合中でも口汚い放送禁止
用語でわめき散らし、会場の観客
に喧嘩を吹っかけて「文句あるなら
金を賭けてみろ。俺はこんなに
持っている」と札束をちらつかせて
声高にわめき続ける。
途中ウィリーが試合中だと止めに
入ってもお構いなしで罵詈雑言を
やめない。ウィリーが撞く番に
なっても台の周りをうろうろ歩き
回る。
日本語のウィキは「ミネソタファ
ッツ」について『映画ハスラー』の
項で誤った記載がされており、映画
『ハスラー』はワンデロンがミネ
ソタファッツのモデルであるかの
ように書いているが、それはワン
デロンが勝手に言い出してそれを
ネタに金になるからと触れ回った
事実に踊らされているのであり、
誤認による誤記だ。修正したほう
がよい。
英語版ではワンデロンについては
事実関係が記載されている。
『ハスラー』原作者は死ぬまで
ワンデロンはミネソタファッツ
とは無関係と主張し続けた。
だが、捏造でっち上げの嘘が
事実であるかのように世間では
誤認が定着してしまった。
言ったもん勝ちの卑劣な言動が
まかり通っている。
また、あまりの個人的な誹謗中傷
によってウィリー・モスコー二ら
は裁判まで提訴していたし、ウィ
リーの妻は終生ワンデロンを嫌い
抜いていた。徹底的にただ口汚く
わめきちらして他者をずっと誹謗
中傷し続ける男だったからだ。
そしてそれをネタに金を集める。
しかし、アメリカは興行師の金主
が仕切る国なので、ワンデロンが
どのような形であれプールを広く
人々に知らし広めたとして殿堂入り
させてしまっている。なんたる事か。
試合中のスポーツマンとしての
マナー違反として、相手が撞く
瞬間に言葉を発する事が挙げられる。
これはルールブックにも記載され
ている禁止事項だ。「あ!」とか
「おい!」とかは厳禁だ。
世界チャンピオンになった米国の
アール・ストリックランドも国際
大会の試合中に、彼の癖の独り言
をずっと言い続けていたため、
審判から「黙ってください。でな
いと退場です」と何度か注意され
ている。
USオープンの時には、世界チャン
ピオン高橋邦彦は、対戦後にスト
リックランドの試合中のあまりに
もひどい罵詈雑言を不正行為だと
指摘し、審判団に正式に抗議した
が、審査の結果、抗議は却下され
た。米国の手前味噌の力学が働いた
と思われるが、こうした事はモー
タースポーツでも時々発生して
いる。世界グランプリ最終戦での
原田哲也の二度目の世界チャンピ
オン目前の走りを阻止するために
わざとマシンをぶつけて転倒させ
たイタリアのロリス・カピロッシ
の行為は、本来ならばライセンス
剥奪がふさわしい。
だが、裁定はカピロッシの不正
行為は認められず、カピロッシが
チャンピオンになった。理不尽な
力学が作用していた。
ビリヤードの国際大会ではルール上、
スポーツマンシップにもとる行為
は即退場(その試合だけでなく
大会参加そのものが禁止。会場から
叩き出される)という規則になっ
ている。
プレーでは、玉を入れる気がなく
わざと別玉をセーフティ以外で撞い
たりしたら即退場。穴前残りの
9番や10番の点玉を途中でわざと
撞いて落としてフットに戻させ
たりする行為は即退場案件となる。
だが、スポーツマンではないニセ
ファッツのワンデロンはそうした
類の行為を平気でやっているのが
映像記録にも残されている。
非常に態度が悪質だ。
つまり、ルールも何も無視する
バクチ打ちなのか、スポーツ選手
であるのか、の違いだ。
贋者ファッツの態度は以下の試合を
見てもらえばよく分かるかと。
映画『ハスラー』の中でのミネソタ・
ファッツ(ジャッキー・グレースン)
のキャラクタは静寂の中で新聞を
くまなく読む知的で物静かな紳士
であり、かつ、撞球の腕は抜群だ
った。人的資質のキャラからして
別物であるのに、ただデブだから
とあれは俺を勝手に映画に使った
とそれこそ勝手に言い出して、名前
まで変えて小銭稼ぎをするように
なったのがワンデロンだった。
ナインボールではブレイクナイン
無し、フロックは認めないコール
ショットルールで対戦している。
また、この番組は両者の主張を
公正に収録している。
Minnesota Fats vs Willie Mosconi
Legendary Match
モスコー二先生も穏やかではあり
ません。怒ってます(笑)。
「この対戦を私は長年楽しみに
していた。今回、奴を葬る」
と言ってる。I'll beat him(打ち負
かす) ではない。I'll kill him です。
ひょえ~。殺すというより、始末
する、というニュアンス。要す
るに嘘つき野郎の嘘を粉砕して
やる、という意味ですが、品悪く
訳すならば「ぶっ殺したるわ」
でんがな。
そして、そこらにあったハウスキュー
のシバキューでニセファッツを完全
にいわしてもうた。
正真の世界王者といかさまゴト師の
差は歴然。