(室内の周囲の音が入らぬ
よう音声エフェクト加工し
てあります。この動画では
キュー音はパチンという音
質に聴こえますが、動画原
本のキューの音は響く木琴
のようなクォーンという音
質です)
スタンショット、フォロー
スルーショット、スクリュ
ーショット、パンチショッ
ト、他にもいろいろ。
ショットはいろんなストロ
ークと撞き出しの種類があ
り、その技法を用いて、タ
イムリーな状況に適合させ
て適切なショットをしてい
く。
これ、居て合わせる抜刀剣
法の居合剣法と同じ。
また、一本調子の一つ覚え
の振りや得物の突き出しを
しないのも、剣法と撞球は
共通するものがある。
手玉を狙い通りに次の玉の
厚みを取る位置=的玉にあ
えて近づけたので、切り押
しぎみのショットでさばこ
うとしている。これは切り
押し気味の左押しヒネリだ
が、あえてフォロースルー
の短いスタンショットでさ
ばいている。意味がある。
玉の動きの原理としては、
よく切れた押し玉によりク
ッションに入ってからの反
射で戻る時の反発は手玉は
クッションに対して逆回転
として出てくるので手玉に
ブレーキがかかる。それを
利用したキュー切れのショ
ットだ。
キューが切れないとただの
転がし玉や弾き玉になり、
このような手玉の回転を殺
しながら生きているような
ゆっくりとした移動をさせ
るショットはできない。
切り押し気味になるので、
上体は低く伏せずにスリー
クッションのようなフォー
ムをあえて取る。
極度に上体を伏せるスヌー
カーのようなフォームは厚
み当てが軸となるフォーム
で、プールにおいてもキュ
ー切れは悪くなる。
スタンショットでの右押し
の逆ヒネリ。
いわゆる逆ヒネリのイングリ
ッシュだが、スピンショット
ではなくあくまでキュー切れ
を主軸に利用したワンショッ
ト。
これも上の画像のショットと
玉の動きの原理は同じ。
結果、手玉は転がり走り過ぎ
をせずにエアブレーキがかか
ったように停止する。任意の
場所で停止させるのは経験と
技術による。
手玉とクッションの距離があ
るので、押し殺しよりも逆ヒ
ネリによる手玉の勢いを減殺
させたショット。これも状況
により私だけでなく上級者は
よく使う。ヒネリは順ヒネリ
ばかりではない。
切り返しなどでは逆入れは誰
でもやるだろう。
この動画ではラスト3玉目の
1番を逆入れ右のヒネリの押
しでの切り返しで処理してネ
クストの狙った位置に手玉を
移動させている。
的球をポケットさせてから、
手玉がクッションに入る時
入射角と反射角が等しくない
のでヒネリを入れている事は
動画からも誰でも読み取れる
事だろう。
無論、ビリヤードをやる人に
とっては何がどう起きている
かは即座に判る常識的な動き。
手玉を利かせて走らせる逆
ヒネリなどの典型はダブル
レールだが、それの対極に
あるのが手玉を押しの押し
抜き入れでキュー切れを利
かせて強い突き出しををし
ながらクッションに入って
からビタリとレール付近に
止めるショットがある。
その特定名称は存在しない
が(昔は押し止めとか呼ば
れて来た)、そのうち最近
流行の「スタンショット」
の呼称登場のように、あた
かも最近登場した新技法で
あるかのような知ったかの
レクチャー行動が斯界で為
されそうな予感がする。
だが、「スタンショット」
と同じく、それは新呼称の
名称を付加しただけであり、
新登場の技法ではない。
押し止めをさらに進めると、
キューを水平にした平撞き
でマッセ(英語発音マッセィ)
ショットのような撞き方も
できる。
このショットを使うと、穴前
に2個ある玉の1個を入れてか
ら手玉がクッションに入って
から台上でUターンして戻っ
て来てからまた穴前の的球
に進む、つまりマッセと同
じ動きでワンショットで次
の穴前玉を落とす事ができる。
押しでの切れによる押しの
手玉のバックスピンでのクッ
ション玉。
キューが切れる人にしかでき
ない。
この原理を使ったショットで
手玉を走らせることをすれば、
コーナー左右の穴前にある
2個の玉を真ん中にレール際
にある邪魔玉をよけて手玉に
カーブを描かせながら的玉
を左右連続でワンショットで
落とす事も簡単にできる。
キューが切れれば。
キューの切れ方というのは、
キュー出しのフォロースルー
を大きく取る事によって生ま
れるものではない。
すべては振り=ストロークと
突き出しの際の手の内の冴え
による。
撞き方は、ハンドルをインパ
クトの瞬間に軽く握って冴え
を出す事が多いが、場合に
よってはまっすぐにキューを
手の中で滑らせて投げ出す
技法もある。私も時により
使用するが、故立花プロや
エフレン・レイズなども多
用している。
但し、手の中での動きと二
の腕の振りが同調している
ので、キューを投げ刺して
いるようには見えない。知
らない人にはただのストロ
ークショットにしか見えな
いようだ。
キューを利かせる撞き方=
キュー切れは、腕の振りと
手の内にこそ要諦あり。
これは日本刀を用いる剣術・
抜刀剣法と全く同じだ。
キューは「握り締めない」。
日本刀も柄を「握り締めな
い」。
フォロースルーショットでの
押し殺し。これもキューを利
かせる事によって手玉をコン
トロールして、的球を入れて
から次に狙った15センチ四方
の位置に手玉を移動させてい
る。
ここでスタンでもパンチでも
ないフォロースルーのショッ
トを選択しているのも意味が
ある。
上の動画では、見る人が見れ
ば、各シーンでどんなショッ
トをやっているかが即判る事
だろう。
これはオートバイの走行と全
く同じで、「できる人間」こ
そが「できる人間」を正確に
見抜ける。できない人間程、
できる人間を見て貶すのは
どのジャンルでも同じだ。
ただし、ブルーのクッショ
ン横の2番を入れてからの次
の黄色の1番の取り出し配置
で直線にしてしまったミス
の為、次のピンクの4番をサ
イドに取るには直線並びに
なった的玉-手玉を右上ヒネ
リで厚めに見越しを取って
クッション後に中央に出そ
うと計画した。
よくあるイージーなショット
だ。
だが、思いのほかイングリッ
シュを乗せ過ぎてしまい、黄
色の1番の的玉を薄く外して
しまった。完全なミスショッ
トだ。
これは的球の歯車効果による。
ここでは差し込みの速度の速
い突き出しではなく、滑らか
な短ストロークのフォロース
ルーショットにすべきだった。
この動画でラストボール1個
前の緑の6番のショットのよ
うな撞き方に。
この動画での1番トバシ=外
しは非常にいただけない。下
手をやったショットだ。下手
打ったという典型。
この見越し選択ミスはソリッ
ドシャフトだろうとハイテク
シャフトだろうと出てくる。
人為的な選択判断予測の外れ
は撞球ではミスとなる。
やった結果がすべて正確に如
実に出るのが撞球だ。
ミスショットも穴外しのミス
シュートも手玉の移動軌跡も
移動先までの動きも、すべて
自分がやった事なのである。
この自覚は撞球においては
絶対に必要な精神的地平と
なる。
すべて自分がやった結果が
台上に正直に物理現象とし
て結果が現出して残るのだ。
それがビリヤード。
よく勘違いしている人たち
はミス出し等をした時に言
う。
「もっと転がるかと思った」
等。
移動距離が短かったり長すぎ
たりさせたのは自分だ。他人
ではない。
そこを弁えないと、自分以外
の事のせいにして自分のミス
を免れようという保身的な
人間として堕落以外の何物
でもないところに心が行く。
それを不朽の名作映画である
『ハスラー』(1961)では「ル
ーザー=落伍者」と呼んでい
る。翻訳すると「負け犬」と
もなる。
撞球で何か自分の不都合が起
きた時に自分以外のせいにす
るのは、それは敗北者の発想
なのだ。
これはなにも撞球だけではな
く、人の一生において人に大
切な事を教えている。
一種士道に通じる。
ビリヤードはそれを人に教え
る。
台上の景色には深い箴言があ
る。
ここ一年ほどで「スタンショ
ット」なる単語がクローズア
ップされるようになって来た。
だが、ウィリー・モスコーニ
の頃の半世紀以上前の大昔か
ら、ごくごく普通に使われて
来たショットの仕方でしかな
い。
上級者は数種類のショット方
法を巧みに使い分けて状況に
合わせてさばいていた。
今「スタンショット」が大流
行のようだが、一番駄目なの
は一本調子でそればかりだと
思い込む石頭になる事。
その時点で伸びは終わる。
これは確実に。
どんなジャンルでもそう。
固定観念に凝り固まると、人
間の知的生命体としての機能
が停止する。
人間はそのように創られてい
る。