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渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

イエローマイカルタ

2022年12月09日 | open
 


ビリヤードキューの先角素材と
して極めて優秀な性能を持つマ
イカルタ。
特にイエローマイカルタは、そ
の色合いもとても上品で美しい。
柑橘系の清涼な果実のようだ。
サウスウエストやボブ・ランデ
やTADなどが象牙代替品の素材
として好んで使っていた。
 
ただ、樹脂でありながら、マイ
カルタはリネンメラミンやベー
クライトと同じく、経年と共に
色が濃くなる。
イエローマイカルタは、本象牙
のようにパティーナという経年
変化での濃色化が出てくる。
これは別な樹脂でもそうした
色合い、風合いの変化が出てく
る。
私の持つシャフトの先角も、樹
脂であるのにどんどん象牙と見
紛う程の風合いになって来てい
る物も何本もある。
大抵は30年〜50年以上過ぎて
いる個体だ。
 
このマイカルタなどは、最初は
ややオレンジがかったレモン色
風だった。オレンジレモンと愛
称で呼んでいた位で。
今や飴色を通り越して濃い蜂蜜
色になって来ている。
 
イエローマイカルタの先角が着い
たジェリー・フランクリンの作る
サウスウエストの撞き味と性能は
抜群で、彼の死没後のサウスはま
るで別物となっている。中身が
まるで違う。
あくまで、推測だが、先角の素材
は、極めてキューの持ち味の方向
性を決定づけると思える。
マイカルタの次に良好な素材は
LBM(リネンベースメラミン)だ。
これは非常にマイカルタに撞き
味が似る。
 
だが、一番撞き味が超別格なの
は、それは象牙だ。
象牙の良さは撞き味にこそある。
私も象牙を30数年使い続けてい
るが、本象牙に勝る人工素材の
先角は未だ出会った事がない。
象牙というのは、とても不思議
なもので、硬度は硬いのだが、
撞くと独特の柔らかさがあるの
だ。高音で惑わされやすいが、
象牙先角の撞き味はしなやかな
のである。
音もキーンキーン系ではなく、
クォーンクォーン系だ。
ほんの微妙な差なのだが。
だが、ギターのチューニングで
1/4音階がずれていても脳で判別
できる者には、その違いをつぶ
さに感知できる。電子チュー
ナー
を使わないと6本の弦を
チューニン
グできない人には
キューの違いの
感知もまるで
理だろう。
そういう人は、キューも何を使っ
ても一緒だ。
味噌ラーメンと醤油ラーメンの
違い程の簡単な識別ではないが、
違うものは違うので、繊細なセ
ンサーという知覚力があるなら
ば、すぐに違いは判別できる。
 
実はキューにおける打球音とい
うものはとても大切で、それに
より撞き手のポテンシャルにま
で影響が出る程の要素を持つ。
総じて1980年代の世界トップ
ランカーが全員良音キューを
使っていたのは、それは単なる
偶然ではない。
日本人でもトッププロで日本人
初のポケットでの世界チャンピ
オンになった奥村プロは、
キュー
選びの第一条件として
「サウン
ド」と明言していた。
きっぱり
と。
良音の存在はとても大切なのだ。
これはエンジンでもそうで、
例えば二輪では、2ストならば
良い燃焼を得ているマシンの
排気音はパァーーンと快音が
する。これはチャンバー如何
ではない。
また4ストマルチでは、よく
回っている時はまるでF1マシン
のような良音を轟かせる。
ガリガリバリバリとしたノイジー
で耳障りな音質ではない。
ゴルフでもそうだろう。
ナイスショットは常に快音だ
し、野球でもそうだ。
ボコン、ベコン、バコン、ボヨン
という系統の音をさせる道具で
良質な物はこの世に一切無い。
ビリヤードキューでは、澄んだ
音、透き通る音、抜けるような
高音域のくぐもりながらもクリ
アな音が良質音にあたる。キン
キン音はあまり良いとはいえな
い。
もっと厳密に言うならば、和音
になっている高域音の音質を持
つキューが良く、その音を奏で
るキューに外れはゼロだ。
だから、トップ選手たちは音に
こそこだわり、良音質=良品質
の定理を知っているので、サウ
ンドを大切にするのである。
ペシペシ音やボコボコ音、雑音
混じりなどは最悪だ。
音を気にしない製作者やプレー
ヤーは、キューという道具に
おいて、製作加工精度及び接着
の密着度とサウンドとの関連性
についての考察に欠ける思考の
経路でしか道具に接していない
と断言できる。
キューの音はキューの中身、
キューの内実を体現するので
ある。
 
マイカルタは最近はなかなか
出てこない。
これはナイフのハンドル素材
でも。
もしかすると、製造メーカー側
の問題かも知れない。

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