正真ブラジリアン・ローズウッド
の私のギター。
ブラジリアン・ローズウッド
の事をギター界ではハカランダ
と呼びならすが、厳密にはハカ
ランダとブラジリアン・ローズ
ウッドは異なる。
こちら、南米の街路樹で一般的
な「南米の桜」とも呼ばれる
通称ハカランダ。シソ目ノウゼン
カズラ科。
この南米に多い秋に咲く美しい
街路樹が通称でハカランダと
呼ばれているので、ギターや
高級家具材で使われていた
ブラジル紫檀ともいえるブラ
ジリアン・ローズウッドの別
名のハカランダと混同してい
る人は多い。
実は私も不勉強で、この紫の
花を咲かせる樹木がブラジリ
アン・ローズウッドかと思っ
ていた。ギター用材に詳しい
方が教えてくれて違いと世界
中で起きている混同誤認を知
った。
こちらがいわゆるワシントン
条約で輸出禁止となった本物
のブラジリアン・ローズウッド。
ローズウッド系木材の帝王。
マメ科ツルサイカチ属。マメ科
特有の白い花を咲かせる。地球
上でブラジルのごく一部の地域
にしか生息しない。
かつてはその音質の良さから
高級ギター用材に多く使われた。
また、木目の美しさから高級家
具やビリヤードのキュー、仏壇、
太鼓のバチ等々に多く使われた。
大量に伐採され、莫大な量が北
米や日本、ヨーロッパに輸出さ
れたため絶滅危惧種となり、国
際条約により現在は伐採禁止。
新たな新材は今後も一切手に
入らない。条約批准以前に流通
した在庫材料しか入手できない。
ある意味、象牙と同じ扱い。
ワシントン条約以前は、米国
のアコースティックギターや
ウクレレなどの撥弦楽器で
きらびやかなシャラーンと
いういわゆる業界用語での
「ドンシャリ」系の音を狙う
楽器ではブラジリアン・ロー
ズウッド(広義でのハカラ
ンダ)一択だった。
規制も全く無かったので、ごく
普通の高級トーンウッドとし
て木材市場に流通していた。
日本のメーカーもヤマハや
モーリス等は本物のブラジ
リアン・ローズウッドを使用
し、ハカランダという名称で
中級~高級ギターを作っていた。
ハカランダ単板は超高級だが、
ベニヤであるハカランダの
0.3ミリの突板を使った物も
ハカランダ合板として明記
して楽器が作られていた。
ところが音の世界は不思議な
物で、合板であろうともハカ
ランダを使って作られたギター
はドンシャリ系なのだ。
ギターの音はトップで鳴りの
良し悪しがほぼ決定する。
ブレーシング等の技法の違い
もあるが、ほぼトップで決ま
る。
ただし、音の鳴りではなく音質
は材料によって決定される。
ハカランダの材料を使うと、
単板だろうが合板だろうが
ハカランダの音がするのだ。
これ、ギター界では常識。
そして、今はこちらも輸出入
禁止となってしまったマホガ
ニーのギターもマホガニー独
特の音がする。
木琴のような鍵盤打楽器でも
木材の種類によって音が違う
のがトーンウッドの特徴だが、
ギターのような撥弦楽器でも
木材の種類によって音の質は
決定づけられる。
そして、ブラジリアン・ロー
ズウッドがこれまで地球上に
存在するアコースティック
ギターの頂点の材料であると
されてきた。
ただのシャランシャランでは
なく、とてもふくよかで深み
がある音なのに鈴の音のよう
な清らかな音がするのがブラ
ジリアン・ローズウッドのギター
の音だ。典型的なのがマーチン
のD45やD28の音。D35はバック
をスリーピースにしていて、
あえてメロウな音の質にして
ある。D18などは若く荒い音
で、JTSバーボンの8年物の味
のような音の味を出す。
楽器は木材の材料によって全て
音の質の類別性が決定づけられ
る。アーチトップのトップ板
などにはメイプルのほうがシダー
やスプルースよりもアタック感
が出る。これは確実に。
シダートップにマホガニーの
ギターなどは、超甘いトーンを
醸し出すので、曲によっては
そうしたギターを使い分ける
事も多くやられている。
ビリヤードのキューの材料でも
かつて1980年代末期頃までは
まだ国内残存材料のブラジリアン・
ローズウッドが使われていた。
ギターなどの楽器の世界では、
ワシントン条約で国際取引が
禁止されて以降は、ホンジュラス
等からのローズウッド系や別な
ローズウッド系をハカランダの
代用として使用するようにな
っていた。
ただし、音は決定的にブラジリ
アン・ローズウッドとは違う。
これは聴けば判る。
ハカランダよりもハリがあり
すぎたり、もっこりしたり、
樫の木のような音だったり、
抜ける澄んだドンシャリは
なかなか実現できていなかっ
た。ただし、ブレーシング等々
の研究が進んで、かなりハカ
ランダの澄んだ音に肉迫する
個体も多く出て来たのが80年代
後半だった。
ビリヤードのキューでは、90
年代以降は、ほぼハカランダ
のキューは見なくなった。
代用ローズウッドばかりが
使われるようになったが、その
中でも一番使われたのはココ
ボロというローズウッド系の
木材だった。
これまたかつてのブラジリアン・
ローズウッドのようにギター
や家具やナイフのハンドルや
あらゆる物に使われた。
結果、2017年からワシントン
条約で輸出入禁止となった。
世界中に普及したココボロさえ
もがもう手に入らなくなった。
今世紀初頭、ワシントン条約
以前に日本に入って来ていた
本物のブラジリアン・ローズ
ウッド=ハカランダを使って
キューをコンバージョンで作っ
てみた。
撞き味は最高である。よく切れ、
よく入り、そして音が高音で
澄んだクリーンな清涼音。
ハカランダ最高!
ジョイントプロテクターはTAD
コハラ製。バットスリーブは
本ハカランダ。フォアアームは
86年製アダムだが、木目を鑑す
る限り、国内在庫のローズウッド
を使っているものだろう。スリ
ーブは正真ブラジリアン・ローズ
ウッドだ。ただし、スタビライズ
ウッドのセンターコア方式。
コアがハンドルとフォアの連結部
にネジ兼用で入っている。
先角は本象牙。シャフトの1本は
5年前にマエストロさんのおす
すめで人工象牙に交換した。
それがまた頗る調子が良い。
タイガー社が開発した人造象牙。
これは結構おすすめだ。
ただし、本象牙とは明らかに音
と弾き具合は異なる。ただ、打感
はスティッフで申し分ない。
微細な部分では、ダイレクト感は
本象牙よりも高い。象牙は硬い
中にも吸収力があるようなタッチ
だが、タイガーは直に反発する
感触のタッチ。象牙特有の音とも
異なる。象牙はクォンに近い高音
だ。和音のような。
タイガーは単音でキンという音質。
これは同じシャフトに着けたのだ
から間違いない。
本象牙の先角。
上のシャフトは1987年東京神田淡路
亭製。メインシャフトだ。
下のシャフトは厳選アダム2003年製。
どちらも私のオリジナルテーパーの
タイプAとタイプCにしてある。
この先角象牙は2本ともBuddy製。
象牙は最高の先角材だが、実は
気温湿度変化にかなり弱い。
何もせずとも勝手に浮いたり割れ
たりする。象牙先角時代は、象牙
先角はいつか交換するものという
消耗品感覚が多かったのが1980年
代末あたりまでの撞球人のセオリー
感覚だった。
今のハイテクシャフトの先角程
ではないが、よく壊れたのが象牙
の先角だったのだ。
打感は今でも象牙が世界一。
交換したメインシャフトの人工
象牙。これ調子良い。ハクキュー
のマエストロ製。仕事日本一。
タップは私が手作業でいつもの
ように交換。先角交換してから
もう既に何個使い切りでタップ
交換したか分からない。
象牙削り出し新品のような風合い。
上:人工象牙
下:本象牙