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渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

キュー独自の理論

2023年04月19日 | open


物体の連結は、工業的には力学
等の諸学問の応用で、産業生産
物にその理論が利用されている。
だが、スポーツ用具であるビリ
ヤードのキューについては、科
学的なメスが入れられるように
なったのは日が浅く、今世紀に
入ってからだ。日本人が科学的
なキューの解析を始めた。

しかし、未だに専門の学識が導
入されてはおらず、多岐に亘る
部分が不明な点が多いのがビリ
ヤードのキューだといえる。
その解析思考方法は、極めて
原始的なトライ&エラーの思索
と実験を繰り返す事により経験
的な紐解き方法によっての特性
特定と構造の関係性解明という
手法に頼っている。
だからこそ良いのかも知れない
が。
全てが単純なデータ頼りで、使
う人間不在で人間工学的な部分
を全て捨象した日本製二輪車が
悉くダメバイクになった轍を踏
まぬという意味においては。

分割キューの連結にはさまざま
な方法がある。
これは、持ち運びの際の利便性
の為に20世紀半ばに発案開発さ
れた。
それまでは、撞球杖は全て上から
下まで一本の木だった。

一番ポピュラーだったのは、1960
年代に入ってからアメリカのバラ
ブシュカがブランズウィックの
キューを切断して分割連結した
際に多用したパイロテッド型だ。

凸凹で連結してネジで締め込む。

多くのメーカーがこの凸凹型を
採用した。




本物のパイロテッドはきっちりと
凸凹の凸部突起と凹のへこみ内壁
が密着するタイプだ。
これは一体感を得る為にそういう
精密な加工をした。
そのパイロテッドの凸凹密着の
進化がこのタイプ。ダブルネジ
構造になっている。

だが、アダムをはじめ、多くの
メーカーでは、凸の突起が締め
込み無視のほんの僅か出ている
だけという物も登場した。
連結密着締め込みはネジのみが
担当する構造だ。


この構造は、実質的には凸凹の
密着がないのでパイロテッドと
しての効果はゼロで、センター
ピンのみによって連結を確保し
ている構造だ。
ほぼフラットフェイスと同じ効
果しかない。

フラットフェイス構造。


木ねじタイプのフラットフェイス。

しかし、である。
ある現象が発生する事が明らかな
ので、私のオリジナルキューでは
フラットフェイスシャフトに凹型
パイロテッド受け型を連結させる
事をしている。

最初は完全密着パイロテッドと
して作ったが、どうにも振動収
束性がよくない。
はたと思いついてフラットフェ
イスにシャフトをしてみた。
すると、中央部の振れがシュッ
と早期収束して後ろに抜ける
特性を見せるようになった。

瓢箪から駒で、TADのブライ
アンタイプにした延長デルリン
のバランサー効果も大きい。
これにより共振点が移動する
ので、セッティングがマッチ
した際には、非常に良い打感
とディフレクションの不正振
動が瞬時に消滅する。
多分、最近時々見るプロたちの
エクステンションを付けたまま
というのも、単に長さだけでな
く、打感向上が得られる知覚が
プロたちにもあるからではなか
ろうか。
TADタイプの長っちりは単に
延長の為だけではない効果を
僅かながら生んでいる事は実
際に撞いてみるとその差異が
感知できる。微細ではあって
も差異は差異として存在する。


かといって、プールのキューは
スリーキューのように全く振動
しない物だと、キューで手玉を
ピュンと弾いて強烈に移動させ
たりスピンを乗せたりする事が
難しくなる。
その為、プールキューはシャフト
とバットのテーパーが命となる。
そのテーパー設定も、シャフト
には個体差がかなりあるので、
この性質のシャフトにはこのよ
うなテーパー、というような深
い知見とデータが必要かつ有効
になって来る。これは事実とし
て。
プールキューにおける複雑な
テーパーの実態とセオリーが
非常に多いのは、それはシャフト
の無垢木に個体差があるからだ。
単純に言うと、硬度10の材と
硬度6の材では同じテーパーに
したら性能特性は違って来る。
これは当然だ。
そのため、解っているビルダー
の作るキューのシャフトは全て
の製品で同じテーパー径のシャ
フトにはなっていない。
同じテーパーにしたら、個々に
性質が異なる状態になる。
あえて、同じテーパー設定で違
う特性のスペアを作る場合もあ
るが。

けだし、かつてパイロテッド風
なのに凸の突起部が締まり具合
に無関係な少しの出っ張りの物
が多くあったのには意味がある。
それは、結果として、フラット
フェイスのあの高質な打感を
もたらしていたからだ。
完全密着連結をすると、一体化
させすぎの為に、いつまでも中
央部の振動が収まらない。
これはどのキューでも確実だ。
特にパイロテッドは重たい金属
カラー使用が多い為、いつまで
もぶるぶると揺れる。
このショット後の揺れというの
は、ショットの衝突時に発生す
るので、手玉の進行にも大きな
影響を与えている筈だ。
軽いカラーもしくはカラー無し
のスニーキーのようなキューの
打感が素晴らしいのは、そうし
た原理によるものだろう。
だが、金属カラーパイロテッド
であっても、フラットフェイス
のシャフトを連結させると、
振動収束に明らかな違いが出て
来るし、打感も芯のあるような
ものに変化する。
パイロテッド系はどちらかとい
うとボヨーン系の打感の物が多
いが、それには理由がある事だ
ろう。
だが、パイロッテッド金属カ
ラー装着の凹受けにフラット
フェイスシャフトの組み合わせ
は、実はフラットフェイス連結
よりも打感が良くなる事がある
のはあまり知られていないよう
だ。
これ、この現象はかなりレアな
事実。
なぜレアかというと、あまり
やってる人はいないから。
凸凹では密着性を求めている。
だが、空間を利用する発想で
試してみたら、明らかに良化
する現象が発生したのは事実。
違いは凹空間の存在と、シャ
フトのフラット面をバットの
フラットな面全体ではなく、
凹の円周部分の頂点のみで受け
ている、という事だ。
何がどうなってそうなのかは
判然とはしないが、打感と振動
収束性が向上するのは確実だ。
爾来、私は凹型バットにフラッ
トフェイスシャフト連結を最良
の動態性を見せるキューとして
常用使用を励行している。


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