渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ジャパニーズ オリジナル ナイフ

2022年01月15日 | open


もう30年近く愛用していて、実に
多くのアウトドアシーンで使い込
んで来たナイフがある。
それが日本のG.サカイのキャンプ
スタッグだ。
サカイは戦後1947年(昭和22年)の
創業時にはポケットナイフを作っ
ていた岐阜県関市の小さな町の刃
物屋だった。
しかし、進駐軍を通してその精度
に目をつけたアメリカのガーバー
社がサカイに下請け生産を委託し
た。
ガーバーという会社は、設立当初
から、技能の高い職人に外注委託
する事で世界的に力をつけて来た
トップマスプロメーカーだ。
だが、大手ながら、その製品の全
てを外注でプロモートのみを主軸
とする経営方法は、思わぬ品質を
生んだ。
それは、職人によるカスタムライン
並の品質を備えるマスプロメーカー
のナイフ、という結果を生んだのだ。
ガーバーは売れに売れ、世界トップ
のナイフメーカーとなった。
あくまで自社製造にこだわっていた
バック社とは対極にあった。
(のちにバックもガーバーに倣い、
外注による自社製品の製造に転換)
ガーバーのモデルケースは、世界史
の中でも一つのビジネスケースと
して定着した。
日本のトヨタなどもそうで、ある
言い方をすれば、トヨタはトヨタ
の車は持たない。
すべて関連製造者をトヨタグループ
にする事で成長して来た企業だ。
トヨタ2000GTなどはまるきりヤマハ
の車であるのに、トヨタの車である
とする資本の論理で絡めて取って世
に出した。
また、トヨタの70年代の名車には
ヤマハのエンジンが多用された。
実質トヨタではなくヤマハの心臓
なのだ。2TGなどはもろにそれ。

米国ガーバー社からの下請けから
OEMを手がけて来たサカイは、
ガーバー.サカイと社名を変え、
その後も多くのガーバー製品を
製造すると共に、自社オリジナル
も製造販売し始めた。
そして、社名をG.サカイと変え
現在に至る。

G.サカイのナイフの特徴は、製品
の出来がカスタムナイフ並の製品
である事だ。
会社はポケットナイフから始まっ
たが、G.サカイはフィクスドのシー
スナイフに見るべき物が多い。

その中でも、海外には存在しない
形状のナイフが誕生した。
私は即買った。
とてつもなく使い易く、そして
大切れする。物凄く切れる。
それは、洋式ナイフには存在しな
い日本の和式刃物に特徴的な「片刃」
になっているからだった。
世界広しといえども、こうした
洋式ナイフを発想して作り出せる
のは、美濃刀の伝統を受け継ぐ世界
有数の刃物の町の関の職人メーカー
だからだ。外国人にはこのような
作り込みは思いもつかない事だろう。

20数年程前、キャンプ場で何度か
豚の丸焼きと子牛の丸焼きをやっ
た。キャンプの会で。
私はスタッフ側として準備にも参加
協力した。
そして、アウトドア立食パーティー
では、このG.サカイのナイフは
大活躍した。良いナイフだ。

だが、良い物はいつまでも製品
ラインナップとして続くかとい
うと、そうでもない。
このキャンプスタッグなどは、
スタグホーンが輸入困難になっ
てからは廃番となった。
東南アジアの鹿ではなく、北海道
や本州の鹿の角を使えばよいかと
も思うが、害獣駆除による国内
鹿の角の流通は、国内ナイフメー
カーへの生産材料供給としては
うまくリンクしていない現実が
あるようだ。

このナイフは四半世紀前に買って
おいて大正解だった。
ハットリと共にここ30年で一番
使い倒したナイフかも知れない。
それ以前に最も使っていたのは
軍用シースナイフと折り畳みの
ヴィクトリノックスだった。

このG.サカイのキャンプスタッグ
の再販を強く願う。
シースもかなり深く、ナイフ本体
の脱落の危険性は無い。
歴史に埋もれた名品とは、これの
事かと思う。


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