カフェレーサーは1950~1960
年代のレーシングマシンを模
したカスタム公道車の事をい
う。
1960年前後の英国の二輪乗り
の若者は、エースカフェに集
まり、ジュークボックスの曲
が終わるまで市内公道私的レ
ースで競い合った。
乗るマシンは当時のロードレー
サーを模した市販車改造車で、
それぞれのカスタムを自慢し
合った。
彼らは米国ロックの影響を受け、
ロックンロールばかりを聴いて
いたのでロッカーズと呼ばれた。
そして、TON(時速100マイル)
を超える速度で競って走る事を
TON-UPと称し、爆走行為を行
なっていた。
30年前の日本でいうなら「競争
型暴走族」というローリング族
のようなものだ。
ロッカーズのスタイルは全員もれ
なく革ジャンにロングブーツだっ
た。
一つの抵抗文化としてのブリティ
ッシュサブカルチャーの一面を
持っていた。
恰好だけでなく、彼らにはライフ
スタイルにおいて魂があった。
事の法的善し悪しではなく、魂
の善悪で生きていた。
現代では抵抗文化の魂は抜け落
ち、カフェレーサースタイルは
単なるファッションとなりつつ
ある。
1960年代から時は流れ、1980年
代。日本から世界に発進したと
んでもない究極の市販車カフェ
レーサーが登場した。
それらは日本の若者を熱狂させ
た。
そのマシンは、世界グランプリ
のレーシングマシンをモデルに
公道市販車に落とし込んだ二輪
で、レーサーレプリカと呼ばれ
た。
しかし、これは、コンセプトそ
のものが進化したカフェレーサー
だといえる。
1960年代カフェレーサーはユー
ザーが改造して当時のレーサー
に近づけたが、1980年代の日本
製レーサーレプリカは、そのまま
保安部品を外せば競技車両のベー
スとなるような作り込みだった。
1960年代カフェレーサーも1980
年代レーサーレプリカも、どち
らもお手本としたのは、その時代
の世界グランプリを走るレーシン
グマシンだった。
レーサーレプリカは進化した究極
のカフェレーサーだといえる。
そして現代。
レーサーレプリカを駆る走り屋は
マシンの生産中止と共に絶滅した。
乗り手の側も、抵抗文化が潰えた
今、日本の二輪乗りたちはコンプ
ラ警察気取りの良市民ぶった潜在
的なファシストたちが蔓延する世
の中になった。
それは、ネオコンに支配された
世界地図を背景に、その精神を
色濃く反映するものとなっている。
そう。日本の二輪乗りたちは牙を
抜かれた事と共に魂を売り渡した
のだ。
とりわけ若年層にその傾向が顕著
であり、これは現代日本の若者の
右傾化と密接に繋がっている。
排外主義の横行と自主警察良市民
気取り。
歴史上、戦争準備段階の戦争前夜
はいつもそれだった。
今の日本は「戦後」ではなく、
「戦前」なのだ。