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渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ワイルド7の思想性

2023年09月20日 | open





インドシナの戦場にて。

ちなみに当時の日本の各派の
思想性は
・自民党・・・武装安保米軍支援
・共産党・・・反安保武装自衛
・社会党・・・非武装中立
・新左翼・・・反米反ソ暴力革命
共通項は、日本のどの党派であろ
うとも「反日」というのは掲げて
いなかった。日本人であって、
立場と主張は違えど、「反日」
というのは絶対矛盾となるので

それは唱えない。唱えたのは
1970年代中期の完全テロリスト
としてしか活動しなかった企業
連続爆破の爆弾
闘争主体のグル
ープのみだ。
彼らは日本の人民労働者をも殺戮

した。労働戦線に属する組合の
労働者をも殺害した。企業に
勤務しているというだけで。
そこには日本を変革しようという
日本革命の思想は一切存在しない。
革命とも無縁であるし、世直しの
志士でも
無い。
自分は傷つかない位置から人を

傷つける。そんな革命は人類史
の中では存在しない。

武装中立。
これがワイルド7の思想性だ。
だが、作品の各編に多く出て来る
が、権力を盾に人々を弾圧する
勢力に対しては誰であろうと
徹底的にその傘下
に与する事を
拒否し、時に命令違反も
犯し、
人民を守ろうとする。

その思想性は、日本人に対して
だけでなく世界のすべての人々
に向けられる。
その為には暴力も武力も行使する。
それがワイルド7だった。
それゆえ、時には日本では新左
翼全学連
とも共闘したり(『緑
の墓』)、アラブゲリラを支援
したり(『死神を処刑』)、
逆に学園紛争の学生を蹴散らし
たり(『コンクリートゲリラ』)、
左翼銃武装テロリストと対決し
たり
(『谷間のユリは鐘に散る』)
もした。
また、警察の暗殺組織でありな
がら警察の組織自体を毛嫌いし
ているが、人々を思う真面目な
警察官に対しては共鳴する。
とにかく、徹底的に「権力」に
抵抗するのがワイルド7だった。

『ワイルド7』という作品が登場
する事ができたのは、1969年と
いう日本の時代背景もあっただ
ろうと思える。
人々の社会意識が現代とは雲泥
の差だったからだ。
徹底管理社会になった今の日本
では、このような作品は二度と
生まれ
ないだろう。
また、国民自体が米軍ポチの
さらにポチとなり餌くれワン
ワン状態となり、そしてコン
プラ
風を吹かせて市民警察気取
で特定個人を吊るし上げて
喜ぶ
ような気風が蔓延する日本
なってしまったからだ。

劇画『ワイルド7』の結末は、
日本を軍事独裁国家にしよう
とするヒグマ防衛大臣とそれ
を陰から法的にサポートする
悪徳弁護士の遠井、そして
ヒグマになびく勢力によって
日本が独裁国になってしまう。
自衛隊や警察組織の中にも
そうした軍事独裁国家になる
ことを阻止しようとするレジ
スタンスグループが地下組織
化を図る。
そうした中、ワイルド7のメン
バーは、リーダーの飛葉を
残して全員が一人一人国家
権力に殺害さ
れる。
1979年の事だ。


1979年当時の日本は、実は
タイムリーにそうした日本を
目指そうとする保守派の躍動
が非常に激しかった。
その為、角川映画『野性の
証明』(1978)では近未来
の日本の軍事独裁が描かれて
いた。日本国家に異を唱える
者は日本の自衛隊の秘密工作
部隊が全員暗殺していく、
という国家造りをしようと
する日本の「権力者」たちを
描いた作品だった。
それに嫌気がさして特殊工作隊

を退いて自衛隊も退職した味沢
(高倉健)は、やがて国家権力
に抹殺されそうになる。引き
取った孤児の頼子(15才の薬師
丸ひろ子)も国家権力によって
銃殺されてしまった。
そして、味沢は銃を取って
日本の国家権力に適わぬまで
も死んだ頼子を背負って、戦車
群に突撃して行くのだった。
味沢を逮捕した刑事(夏八木勲)
は、味沢によって国家の陰謀
を知り愕然とするが、やがて
はそれに抗しようとする味沢
の情を理解して自ら自衛隊戦車
を止めようとトラックで突っ
込んで死んでいった。味沢に
「死ぬなよ」と声をかけて。

実際に、そうした国家権力の
動きは、戦後
の日本には1980
年代初期まで
あったのだ。
映画『皇帝のいない八月』
(1978)にしても全く同じ
テーマの作品だった。
それゆえ、多くの国民がそう
した国家体制の流れに対して
反対の声を上げていた。
決して漫画や小説や映画の中
だけの
絵空事ではないのだ。
現実
問題として、そうした社
会的
な動きが国家レベルで存在
ていたのである。
だからこそ、『ワイルド7』は
国民的支持を得て、1969年から
現在まで累計
900万部突破の購
読量と
なっているのである。

ワイルド7を一言で言うならば、
「反骨」。
これに尽きる。


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