渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

私が考えた樹脂先角とタップ

2022年03月01日 | open


これは私が考案したブレイク用の
樹脂のキュー先です。
一般的なブレイク用樹脂キュー先
は通常の樹脂先角にタップ形の
脂を接着した物や、先角とタップ
先端部一体型の樹脂のキュー先と
なっています。

接着タイプはトラブルが出る事も
ある。
一体型は真っ黒でかっちょこ悪い。
なんとか見た目がノーマルであり
ながら、耐久性も十分にあって、
ヴィジュアルもスマートな物は
できないかといろいろ考えてこの
ブレイク専用の先角を考案しまし
た。
内部は三重構造になっていて、
タップ部分の樹脂には芯が先角下
端まで突き通しになっています。
先角は完全にチクワ。材質はとて
も粘りながら硬度も持つ材質の
先角にしています。
あえてネジ止め式ではなく破損時
の交換が容易なようにチクワの
突き通し構造。
そして衝撃はタップ部樹脂とその
下側に来るシャフトの木部先端部、
シャフト木部の段差で受け止める
ようにしています。
シャフトのプラグの外側にある先
樹脂の筒と先角の円筒部の役目
は、樹脂一体型のようにモロに
シャフト木部に衝撃が行かないよ
うにあえて円筒部分で衝撃を適度
に緩衝させるようにしている。
これには構造と樹脂の材質の選択
に時間を割きました。

私のブレイクシャフトをプロト
タイプとして作りテスト。
設計構想段階でかなりビルダーと
協議して、材質、構造、寸法等を
練りに練ったので、プロトタイプ1
号から絶好調でした。
その後、細かい点をさらに改善さ
せて最終タイプに絞り込んだ。
うちの撞球会のメンバーの多くが
このブレイクトップにブレイクキ
ューを改造しました。
大絶賛。
今は引退した盟友だった同い年の
凄腕リペアマンの千葉のバディ
藤田さんが作業を施工。

他のバディ藤田さんのお客さんも
このブレイクトップの話を聞きつ
けて改造して貰ったそうですが、
かなり快調なブレイクキューとな
ったようです。
プロテーパーではなくストレートA
テーパーのシャフトで威力を発揮し
ます。割れすぎる(笑
特許申請して、「ブレイクトップ」
という名称で販売しようかと思い
ましたが、このブレイクトップに
は欠点がある。
それは、精密加工ができる職人さ
んがいないと簡単には作れない事。
これは、「作品」としては良いの
ですが、工業製品としては歩留ま
りが悪くて製品化できません。
日本刀の注文打ちのようになって
しまう。
そして、万一の破損の時のリペア
は、多分製作者以外は受け付けて
くれないだろう事。
一般的なリペアマンは、職人ファ
ーストでして、依頼主を素人扱い
して、依頼の趣旨を咀嚼したり、
願い通りにはなかなか作ってくれ
たりしません。どうしても職人
さんたちは仕事に「自分」を出し
たがる。
それはそれで良いのですが、依頼
の趣意との擦り合わせをしてくれ
る人は多くはいない。
メニューがあって、それをどうぞ、
というスタンスです。
細かいトライアル要件を依頼主と
職人の知恵を出し合っての合議で
製作の方向性を固めて行く、なん
ていうことはまずやってはくれ
ません。
それをやってくれるリペアマンは
日本国内ではバディ藤田さんただ
一人でした。
廃業されたので、とても残念です。

リペアの仕事自体は、凄く腕の良い
方々は現在も現役で活躍してらっし
ゃいます。
ただ、小回りが利かないというか、
フットワークがなかなか渋い。
どうしても、既存メニュー通りの
既成の作業内容になります。
そうした中でも茨城の凄腕業者さ
んと、大阪のプレーヤーでもある
業者さんは、かなり打ち合わせや
途中経過等でも完璧な仕事をして
くれて感動しました。実に良い腕
です。
他にも、多くの凄腕職人さんが
いらっしゃるかと思います。

しかし、このブレイクトップは
多分作ってはくれないかも(笑
今は私も作れない事はないので
すが、本職ではないので、なか
なかビリヤードキューの新規製作
は例えパーツでも簡単ではない。
これは、実際にキューを作ってみ
てそう感じます。ハギなども私
は作れないし。

そうした欠点はありますが、この
私が考えたブレイクトップの性能
はメーカーさんのブレイク専
シャフト先にもひけを取らない
どころか、運良くかなり優れた
ブレイク用トップになりました。
材質と構造と寸法にかなり検討と
テスト時間を割いた甲斐はありま
した。
ブレイク用トップって、硬すぎて
玉離れが早すぎてもだめなのよね。
そこらの塩加減が難しい。
まあ、良い物は出来た。
2005年完成。

モノヅクリって、とても面白い。

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