自作炭素鋼ナイフ。
折り返し鍛錬刀工二代目小林康宏、
火造り、成形、焼入れ、研ぎ私。
斬鉄剣ナイフ。
ステンレスナイフ。
私がきちんと研ぎ上げたなら、
炭素鋼もステンレス鋼も切れ味
は変わらない。
切れ味ではなく、その先の切り
味の獲得の実現も研ぎの技術
の範疇に入る。
の範疇に入る。
炭素鋼もステンレス鋼も、切れ
と切りに関する成果は研ぎ次第。
炭素鋼だろうとステンレス鋼だ
ろうと、素材の質として鋼の切
れ味を決定づけるのは「高硬度
である」という事だ。
だが、よく切れる現象として、
「あま切れ」という刃味も切り
の世界には存在する。
切れ味に関して炭素鋼かステン
レスかで分けて思考しようとす
る事は、それは素人のやりたが
る事であり、鋼の何たるかをま
るで解っていない。
現在のステンレスは半世紀前の
鋼材とは全くの別物で、極めて
よく切れる素材も多くある。
粘りと高硬度を得ている刃物用
特殊合金=ステンレス鋼は多く
存在する時代となった。
「炭素鋼かステンレス鋼か」と
いう発想や議論自体が時代遅れ
なのだ。
ステンレス鋼の良いところは
錆に強いというところだ。
これは実用刃物であるナイフや
包丁では如何無く素材としての
威力を発揮する。
ステンレス鋼は圧延鍛造してあ
るので再鍛造の必要は無いが、
実は再鍛造した場合、靭性付与
が助長される現象を見せる材料
も多い。
但し、メチャクチャ硬い。
純炭素鋼である日立の白紙など
がまるで飴のように思える程に
ステンレス鋼は焼入れ前の鍛造
段階で硬い。
そして、ステンレス鋼は一つだけ
ネックがある。
それは炭素鋼は鍛治仕事で焼入
れができるが、特殊合金のステ
ンレス鋼は科学的に適正な熱処理
が必要な為、鍛治炉では焼入れが
できない。
焼きに1050℃で何時間保持し、
焼戻しには560℃で何十分、な
どという温度管理は鍛治炉では
不可能だ。
それゆえ、特殊合金は熱処理工
場でのソルトバスや特殊合金鋼
専用大型炉での熱処理となる。
つまり、個人ビルダーのナイフ
メーカーは自分ではステンレス
鋼の焼入れと焼戻しは不可能で
あるという事。
これがステンレス鋼の最大の
ネックとなっている。
当然、私が過去に作ったステ
ンレス鋼の洋式ナイフも、全
て熱処理専門業者に焼入れと
焼戻しを依頼した。
炭素鋼とステンレス鋼で切れ
味に大差は無い。
これは断言できる。
切れ味に関して炭素鋼かステ
ンレス鋼か、炭素鋼のほうが
切れる、とかいう思考や議論
は、刃物に関して非常に低
レベルな思惟と見識であると
断言できる。
炭素鋼とステンレス鋼の違い
はもっと別なところ、もっと
先のところにある。
ちゃんと研ぎ上げたなら、巷間
「切れない」と人口に膾炙され
てきた440材であろうと、背筋
が寒くなる程の切れ味を見せる。
また、切り手の好みに寄り添う
「切り味」も実現できる。
全ては研ぎにかかっている。
刃物は生かすも殺すも研ぎ次第。