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渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

ナイフの使い方

2021年12月23日 | open
 
私は5才の時から父に刃物の使い方
を習った。
見様見真似で親不在の時に友だち
同士で集まって鉛筆を削る時に大
怪我をしたからだ。
ナイフが手の親指の腹を1センチ
以上真っ二つに真上から薪割りの
ように突き刺さった。
一切泣かない。
不始末で泣いたら父にきつく叱
られる。そちらのほうが怖かった。
激痛で夥しい出血だが黙って指を
押さえていた。周りの子どもたち
が悲鳴をあげていた。
私は痛みを堪えて、隣りの家の
大人
病院まで連れて行って
くれるよう
に頼んだ。
その傷は今でも残っている。
 
私の父も母も刃物を取り上げる
はせず、特に父は適切で正しい
使
い方を底して教えた。
おかげで今も刃物が使える。
 
ナイフの場合、用途により大きさ
や形状が異なるが、大型も中型も
同じように使える必要がある。
小型ナイフには小型ナイフの用法
があるので、能く能く研究された
い。
 
大型ナイフ


大型ナイフと中型ナイフ
 
小型ナイフ
 
えてして、大型ナイフは汎用性に
乏しくなるのは致し方ない。
最大に広範囲をカバーするのは、
8センチ程のブレードの長さの中
型ナイフだ。

どの大きさのナイフでも、絶対に
外せない握り方の基本がある。
それは、決して力任せに握りしめ
ない、という事だ。
フワリと包むように握る。
これは打撃系の割断の時であって
も細かい作業の時であってもだ。


このような使い方はめったに無い
が、全く日本刀と同じ用法、理論
となる。


大型ナイフでも小型ナイフのよう
な軽作業もこなせるホールド方法。


かなり使い勝手の良いスキナー。


ナイフのホールドの押さえどころ
は、拳銃や日本刀と通じるものが
多くある。


腕の延長線上に銃はホールドし
て構える。横握りは✖️


日本刀も全く同じ。
腕の延長線上に頭身がまっすぐに
来るような柄握りの手の内にする。
絶対に力任せには握り込まない。
金具には手は一切触れない。
 
あかんやつ。全てが✖️


そして、研ぎだ。
刃物は研ぎ上げないと切れない。
ナイフを持つ人は絶対に砥石は
一丁は持とう。
シャプトンの刃の黒幕1000番が
圧倒的におすすめ。
研ぎ方次第で800番〜3000番ま
での研ぎ目をカバーできる。


砥石の絶対条件。
それは面を常に真っ平らにして
おく事。
使い終わったら、砥石を面出し
させる磨り砥石で水研ぎして平
面を出す。必ず。これは絶対だ。
それができない、やらない、面倒
だというのであれば、刃物は一切
持たないほうがいい。
どのみち使えなくして行くからだ。
そして、切れない刃物はとても危険
なので、そのうち怪我をする。
動脈などはかすっただけで死に直結
だ。
切れない刃物は切れないから安全
とか思っているとしたらそれは大
誤認だ。スッと抵抗なく切れる刃
物こそが力が要らず、自在に制御
できる。結果、安全を使い手が
任意に狙い定めた通りに引き寄せ
られる。
刃物は背筋が寒くなる程に切れな
ければ刃物の面目がない。
 
砥石が真っ平らかどうかはプラス
ティックや金属の定規を当てて目
視で隙間を見る。緩い凹みがあっ
たら徹底して真っ平らにこする。


砥石は使う前にビシッと平面を
出しておく。


合わせ砥石も真っ平ら。


水に濡らすと真っ平らな砥石同士
はピッタリとひっつく。


そうした砥石で研ぎ上げると・・・


ステンレスナイフでも、まるで
炭素鋼のカンナのようによく切
れる。


無抵抗で切れる。


切れ味ではなく刃味をみるために
紙に当てると、ナイフの自重だけ
でスーッと切れて行く。


刃先の刃付け如何で刃物は別物に
なる。1ミリ強の小刃の中に5段階
の条筋を付ける早月(さつき)流の
研ぎ。これは判る人には意味が解る。

これは摩擦係数を可変させる技法
なのだ。平地ではこうした視点の
技法は既存であったが、1ミリの
小刃の中に摩擦係数可変の技法を
現実化させた研ぎは、これまで
見ない。
刀工小林康宏師と江戸刃物師の左
久作師は極めて実用的と称賛し、
名匠藤安将平師は「これ参考にする
のではなくパクります(笑」と言っ
た。
判る人には解るのである。山田流
寝た刃合わせの発展系のその意味
を。

だが、この研ぎは良くない。
なぜならば、この刃付けの研ぎに
は致命的な欠陥があるからだ。
技法解説伝書まで作って、昵懇の
有志にのみ配布したのだが、この
技法は理屈としては理解できても、
手研ぎでこれを忠実に完璧に再現
できるのは一般的には困難である
事が判明したのだ。誰でもできる
研ぎではなく、特殊技能が成す技
だったのである。
そうした物は秘伝でも何でもない。
ある方法を知れば誰でもできると
いう整備された技術体系こそが秘
伝だ。
究極の剣術新陰流の技法メソッド
のように。
宮本武蔵のような武蔵しかできな
いような技法は一代なのだ。後世
への継承性に著しく乏し過ぎる。
日本刀でいうならば平井千葉の研
ぎは珠玉だが、誰も平井千葉の研
ぎを再現できない時点で、平井研
ぎは一代限りなのだ。
私は高校の時に、平井研ぎの特徴
的な研ぎ状態の現出を発見した。
これは刀剣書には一切、今でも
書かれていない。
故に平井千葉が研いだ刀は今でも
私は即判別できる。
誰も気づいていない技法を私は
見抜いた。
だが、仮に私が日本刀研磨師で
あっても、あの技法を再現する事
は実現不能と思える。
試しに銀座、虎ノ門、青山の有名
刀剣商にて平井研ぎについて識別
をそれとなく打診してみた。平井
研ぎのその明瞭な特徴について、 
全く気づいていなかった。
平井先生が私たち後代の物に残し
た挑戦の、その端緒は私には見え
た。明確に見えた。
だが、あれは再現不能。

刃物研ぎの一般的なおすすめは、
シャプトンの刃の黒幕1000番だ。
だが、日本刀の研磨のような鋼の
本当の素顔を引き出す研ぎなどは、
天然砥石でないと絶対に研ぎ上げ
ができない。
 
例えば肥後守での例をお見せする。
まず、私の独自の造形の笹の葉形
に背を落とす。
これは製造者の売る笹の葉とも異
なる。幕末の水心子正秀の教えに
よる造形思考法に依拠した形状の
着眼で、シルエットは私のオリジ
ナルだ。(この画像は利器材)


日本刀の研磨方法に準じてどんどん
研ぎ上げるとこうなる。これは全鋼。


これが化粧無しの鋼の素顔だ。
ただのこすり研ぎではこの熱変態
による細かい働きは浮かび上がら
ない。これらは日本刀研磨と同じ
特殊技法で研いでいるからこのよ
うな状態の素顔を見せられる。


一般的なキャンプナイフ等の実用
刃物はここまでの研ぎをする必要
はない。これは日本刀研磨と同じ
差し込み研ぎという特殊技法での
研磨だからだ。
一般的実用ナイフ等は、エッヂを
どう作るかがキモだ。
自重で新聞紙や広告がカミソリの
ように切れるように研ぎに挑戦し
てみてください。
 
切れるだけなら誰でもできます。
ただし、「正しい見識」を持たな
とダメ。
それと心根が邪(よこしま)だと研
はできません。
それは砥石減らしですね。
刃物は清涼清純な物です。
心清らかに接しましょう。
 

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