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渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

グリップの保持位置 〜二輪走行技譚〜

2025年04月02日 | open
 


 
二輪のライディングにおいて、
グリップの保持位置はいろい
ろなやり方がある。
教習所では嘘教えが多く、グ
リップの両端近くを握らせよ
うと強制する教官も多い。
理由は「梃子の原理で、遠い
ほうが軽い力でレバーを操作
できるから」との事だそうだ。
単一的な固着思考であり、
多角的見地からみて見識が浅
すぎる。

あくまで私の場合だが、私は
スロットル側も左手側も、グ
リップ部の円筒部だけを持つ
保持方法は採らない。
グリップはなぜ凸形状になって
いるのか、ということだ。
私の場合は、凸部の平面部分
に指を接触させている。


理由は、無段階回転の円筒で
あるスロットルを1/120回転
毎に任意に制御操作するには、
円筒部だけを持って回転させ
るのは人間には困難で、円筒
保持に加えて面に接触させ
いる部分があると、円筒の
転そのものが精密に操作で
るからだ。これは物理的な
として。
特に2ストローク車でのスロ
トル操作は非常にシビア
で、
円筒部をいきなりクルン
と回
したらプラグが被ってし
まう。

とりわけレーシングマシン
などは公道車とは比較にな
らない程
超シビアで、外見
上は見えない
ほんの僅かな
力を指に加えただ
けでエン
ジン回転は3000rpm程
跳ね
上がる。レーサーのスロッ

トル操作はアクセルを回転
させ
ない。繊細に絞るよう
に操作す
る。ガバッと開け
てツキを待つ
ようなのは
「馬鹿右手」と呼ば
れて、
そんな雑で出鱈目な操作

2ストレーサーに乗るレーシ

ングライダーは誰もやらな
い。
そのような馬鹿右手だと、
鈴鹿
のS字登りで被って止
まって
レッカー車載りがオ
チだ。


この技法は何も2ストレーシ
ング
マシンだけでなく、繊
細なスロッ
トルワークが要
求される公道で
の二輪走行
にも同条件の物理
現象が発
生する。4ストマシンで
も繊
細なスロットル操作は必須

だが、特に2スト。
2ストに乗っていながらスロ
トル操作が全くできない
人は
多く、目の前で実見し
てみると、有名なユーチュ
ーバーも
まるでスロットル
コントロール
ができていな
い。動画でも然り。

要するに「馬鹿右手」であ
り、
ガバッとアクセルを回
して、あ
とからエンジンの
ツキを待つ
ようなスロット
ル操作をして
おり、ツキが
来るまでのタイム
ロスと混
合気の不完全燃焼を
乗り手
が与えてしまっているの
だ。

日本の毛筆書きは空中に手
浮かせて筆を操作して文
字を
書く。
これは非常に高度な技が必
だが、筆書きだからでき
る。

鉛筆やペンなどでは手の部
を机の盤上に接地させる
が、
非常に安定して文字が
書ける。

この原理と同じ事が二輪の
スロットルの凸部の鍔部分
手を接触させる事で発生
する。

そして、それにより、スロ
トルは1/120段階分けの
微細で
繊細な適切開度を与
える操作
が可能となる。
二輪のアクセルは回して開
るのではなく絞るのだ。

なお、上掲図は走行状態の
ある
部分のシーンでの保持
方法で、
これは走行シーン
により形状
は可変する。
親指側が鍔部分にくっつく
場合
もあるし、人差し指と
親指の
付け根を全部ペタン
と鍔部分
に接触させる場合
もある。

手の内は握りしめない。
日本刀の操作と異なるのは、
本刀の保持方法は一切鍔
に指が
接触しない(でない
と自在に
刀身を振り回せな
い)点だ。

これは縦横無尽に円弧運動
させる日本刀の運刀原理
二輪車での回転方向しか
動か
ないスロットルの操作
という
差異による違いだ。
どちらも物理的特性から来
操作の違いとしてある。
二輪のスロットルはぐるり
と回転させるよう
に操作す
るのではなく、繊細
に絞る
ようにして最適適合燃
料量
をエンジンに送り込んで

るのだ。
たとえ超低速時でも200km/h

超の場合でも。速度により
開け幅は異なるが。

「アクセルは回すな、絞れ」
というのは私が1970年代中期
にヤマハ系レーシングチーム
にいた頃に先輩レーシングラ
イダーたちから徹底的に教え
られた事だった。
その後、日本選手として初め
世界チャンピオンになった
片山
敬済さんのメカニックを
やって
いた柳沢雄造さんと懇
意になっ
た時も、ゆうさんか
ら耳タコ
程にスロットルは絞
れと叩き
込まれた。どやしつ
けられるように。
店に到着すると、雄造さんは

私の二輪の排気管部分を指で
触り、オイルで濡れていたら
どやしつけられた。
スロットル操作ができていな
い、二輪などやめちめえ、と。
サーキットではレーススター
以外では半クラ発進などせ
ず、
短い半クラでつないでか
らは
あとはスロットル操作だ
けで
パパパパァァァ~とピッ
トロード進ませろ
とも。
公道でさえも信号からの発進
などでもそれをやれ、と。
交通事情など無視なのだが(笑
とにかくスロットルは回すな
絞れ、を大昔から叩き込まれ
が、それは先達たちの共通
長い実践経験から得た高度
知見があったからだ。
そこには事実としての物理現
の現出に対処する適合処理
とし
ての操作というものが存
在する。

私が手をグリップの内側に寄

せるのにはもう一つ大きな理
由がある。
それは、グリップエンドのバ
ランサー付近を保持するより
も手を中に寄せたほうがハン
ドルの振動が減少する現象が
どの二輪でも発生するからだ。
たぶん、共振点の問題が作用
していると推察できる。
そして、さらに重要な事があ
る。
それは、手を中に寄せたほう
がフロントフォークの伸縮と
タイヤが路面を捉える状態、
つまり微細な振動や挙動が
ダイレクトに感知でき、それ
によって接地感を掴みやすい、
という物理的現象から来る
適切な操縦判断を促進しやす
い、という事柄が確実に存在
する事。
それゆえグリップは中側方向
に寄せた部分を私は保持する。
グリップの外側を握ると挙動

把握が大味になるのだ。
力でねじ伏せる場合には端

握りのほうがよいのだろうが、
それよりも微細な挙動を逃さ
ず感知して適正操作を下す
のほうが重要だ。
接地感は
走行の命だからだ。

レバーの握り位置については、
可変の手の内を用いて任意の
位置に指をかけて操作する。
テコの原理が云々だから端を
握れなどという一面的な偏波
な発想は全捨象しないとなら
ない。
二輪走行の大敵が固着脳、思
の停止だからだ。
モーターサイクルは「考えて
乗る」乗り物なのである。

 

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