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渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

「夏この頃」 かぐや姫

2022年08月04日 | open

夏この頃 かぐや姫

作詞: 伊勢正三
作曲: 山田つぐと
編曲: 瀬尾一三
1974 シングルレコード「妹」B面曲

私が中2の5月に発売されたシングル
のB面。
この当時のレコードはB面に結構
名曲があったりした。
ダウンタウンブギウギバンドの
「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコ
スカ」などは「カッコマンブギ」
のB面だったのに、そちらのほう
が大ヒットしたりした。

このかぐや姫の「夏この頃」は
いかにもかぐや姫らしい曲だ。
とりとめのない日常をうたう。



作詞は中原中也の影響を強く
受けた伊勢正三さん。
フライフィッシャーだ。90年代
末期には伊勢さんはフライをやり
まくっていた。
伊勢さんの出身地大分の地元
フライマンで「正三の兄弟」と
も呼ばれていた人から連絡を
貰った事がある。
伊勢さんとそのうち一緒にフライ
フィッシングに行きませんか?と
いう連絡。
大分は福岡と並んでかなり音楽
活動が盛んな土地で、2000年頃
にはアマチュアの活動も盛り上
がっていた。
そうした音楽仲間を通しての
ごくプライベートな誘いだった。
大分の「うたうたい」たちの
特徴はとても爽やかだった事だ。
人柄が。屈託なく、澄んでいた。
あと、とてつもない実力派が
多くて驚いた。ポプコン地方大会
上位入賞者がつきあいのあった
人たちにゴロゴロいた。
音楽スキルはもうほとんどプロ(笑
大阪もそうだったが、ハマリマン
たちは本当にプロはだしだ。
そして大分の人たちは誰もが
「うた」が最高に良かった。
勿論人の曲などは歌わない。
すべてオリジナルだ。
大分の人たちの「うた」には感動
した。本当に心に染みる。私も
かなり影響を受けた。
大阪の人たちは超絶テクの技巧派
が多かったが、大分の人たちは心
でうたい上げる自作曲で表現して
いた。

今世紀初頭はインターネットが
どうにか普及し始めた頃(ブロ
ードバンド出始め)で、まだ
動画サイトなどはこの世に存在
していなかったが、自主製作
CDなどは各人がよく作っていた。
そして全国的にネットを通して
親交を深めていた。
まだ、心腐ったヤカラたちは
世の中で大手を振っておらず、
ネット上でも2ちゃんあたりの
ここはひどいインターネット
ですねのスクツで屯している
程度だった。2ちゃんにしても
「オマエモナー」で済ます大ら
かさがあった。
現在の2ちゃん5ちゃんとは全く
世相が異なっていた。
今世紀初頭あたりまでは、薄汚い
連中は世の中の表には出て来れ
ない時代だったのである。
今は人間の悪意が露骨に表面化
して歯止めが無い世の中になった。
21世紀が始まったあたりまでは
この「夏この頃」の1974年頃から
の延長のような人々の心の平安
が健全に存在していた。
現在のSNSや匿名掲示板中毒の
人々は、人として一番大切なもの
を亡失しているか、最初から保有
していない。持っているのは人と
しての心の貧しさのみだ。

音楽シーンの時代的変遷を振り
返って、ふとそんな事を思った。

この「夏この頃」の歌詞内容は、
別曲「あいつ」(作詞伊勢正三)
との連曲だと思える。
「山で死んだあいつ」は、「僕」
の親友であり、妹がいる「僕」の
家に下宿していたのだろう。
もしかしたら実話がベースかも
知れない。
スリーフィンガーのうちアメリ
カンスタイルのタンタカタカタカ
ではないターンタッカ、タッカ
タッカの独特のリズムは日本人が
作ったのではなかろうか。譜面に
下すと結構複雑な音符となるやつ。
これ、音符からでなくギターから
音とリズムを創り出したのだろう
と思う。大元はアメリカスタイル
だが、それに和風の独特のタメと
こぶしのようなものをサラリと
くどくない音で出す独特のリズム。
しかも、それはかぐや姫と風の
音楽の特徴的なリズムであり、他
のミュージシャンにはあまり見ら
れない。「22才の別れ」などはこの
リズムの代表曲だろう。
私の曲もかぐや姫と風のこの独特
のリズムがベースになっている。
これをフラットピッキングでやる。
ブンチャカ音を出したい時はノー
ピックで。

風「あいつ」はイントロの石川
鷹彦さんの編曲と演奏が秀逸。
もろにマーティンの音だ。
マーティンDラインの一番良い
部分を一番マーティンらしく
引き出している音を奏でる。
石川さん、気さくな人で、うち
らのうたうたい仲間が呼んだら、
気軽に焼き鳥屋の飲み会に顔出し
してくれたりしていた。
石川さんの演奏がまた独特で、
音だけ聴いても石川鷹彦のギター
と判る演奏とアレンジをする。
日本の音楽シーンでは歴史的な
奏者だと感じる。

石川鷹彦さんのギターが、この
澄んだ山と人への慕情をうたい
あげる。
朴訥な正やんのうたいかたも味
がある。
そして、この曲のこのカットは、
弦楽器の素晴らしさを味わえる
構成になっている。アコースティ
ックギターもそうだが、バックの
フィドルの澄んだ音色が遠い雪山
と雪代が渓流に流れ出す春の山の
景色を心に浮かばせる。
そこに素朴な伊勢さんのうた声
が重なる。決して「うた」を前面
に出さずに、流れる音と溶け合う
ように。
この「あいつ」は名曲だと思う。
あいつ




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