またぞろ、統計批判が世上を賑わせておるようだね。日頃、若手に言い聞かせてきたのは、「統計は真実の一側面、真実は多面体」ということ。経済の実態をつかむには、個々の統計の問題点も知りつつ、複数の統計を眺めて総合的に判断しなければならない。さらには、「数字の選り好みは、真実を捨てるに同じ」、「矛盾する数字こそ、新たな発見のカギ」というのは、理工系の方なら、身にしみて分かるはずだ。
………
確かに、毎月勤労統計の現金給与総額は、この3か月は特に高めに出ていると思う。しかし、その根拠となる参考の系列の低さが正しいとも限らない。こちらには、前年が高めだったウラが出ている可能性がある。また、もし、毎勤が虚像なら、やはり高めに出ている家計調査の勤労者世帯の実収入はどう解釈するのか。今年の春闘の結果は、経団連、厚労省の集計とも数年来の高い数字だったし、バイトの時給は、一層、高まっている。結局、前にも記したように、程度は別にして、賃金は上がってきていると判断するのが妥当と考える。
実は、先週のコラムは「伸びる税収、伸びない消費」を仮題にしていた。それで数字を眺めると、従来の認識は修正が必要だと気がついた。とかく人は自分の考えに沿った数字を集めがちなもの。失敗の経験を糧とし、心して事に当たらねばならない。ビジネス全般でも、当てはまることではないだろうか。むろん、消費の浮上の背景には、必ず賃金の向上がある。考えてみれば、認識には矛盾も潜んでいたわけだ。「まずは数字や事実を受け入れる」という態度がいかに大切かということになる。
さて、月曜公表の4-6月期GDPの2次速報では、設備投資が大きく上方修正され、実質成長率は年率3.0%に達した。1次速報の段階で、設備投資が主導する自律的成長への転換点を迎えたという見方を示したが、それが更に鮮明になった形である。図で分かるように、設備投資は、輸出などの追加的な3需要とパラレルに動いてきたことが分かる。需要が不足気味の経済では、需要リスクが最大の決定要因になるので、需要に従う形となる。ところが、これまでとは矛盾する数字が現れだした。
3需要が4四半期も横バイが続いたにもかわらず、設備投資の増勢には変化が見られない。しかも、この2四半期は、3需要の中核たる輸出まで伸び悩んでも、むしろ、設備投資の勢いは増すほどだ。今後については、設備投資の先行指標である機械受注は、木曜公表の7月分でも順調に推移しており、日銀短観、政投銀調査での企業の設備投資の意欲は高い。そして、消費にも3需要を離れて伸びる動きがあり、GDPの名目値では消費増税後の最高を更新した。すなわち、総合的に判断して、設備投資が需要を増やし、需要が設備投資を促す、自律的成長への変化を見つけることができる。
(図)
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アベノミクスの是非が喧しいけれど、あれもこれも否定してかかるのは、よりマシな政策の選択には有害無益である。アベノミクスの失敗は、消費増税で消費を落とし、伸びを失わせたことであり、アベノミクスの成功は、金融緩和による円安で企業収益を増やし、補正後歳出の抑制と巨額の税収増で財政赤字を大幅につめたことだ。こうした事実を踏まえれば、更に消費を圧迫する増税を行う選択など、冷静に考えたら、到底、理屈が立つまい。
しかるに、アベ批判の先鋒に立つ大手紙ですら、「予算の膨張が止まらず、緊急支出の余力が乏しい」と書く始末だ。ストックの「借金比率」のようなおなじみの数字に浸かってしまい、フローの基礎的数字を調べず、当局発表の当初予算の数字しか見ないからだろう。来週は、前回、季節調整値ながら、政府の収支が「黒字」になったことを示した資金循環統計の4-6月期分が発表される。あれもこれも見たい筆者は、実に楽しみだ。
(今日までの日経)
ドル16年ぶり高値。労働生産性 改善続く。欧州中銀 資産購入 来月から半減。QBネット 値上げ 試行錯誤。バイト時給 飲食業も1000円超え。
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確かに、毎月勤労統計の現金給与総額は、この3か月は特に高めに出ていると思う。しかし、その根拠となる参考の系列の低さが正しいとも限らない。こちらには、前年が高めだったウラが出ている可能性がある。また、もし、毎勤が虚像なら、やはり高めに出ている家計調査の勤労者世帯の実収入はどう解釈するのか。今年の春闘の結果は、経団連、厚労省の集計とも数年来の高い数字だったし、バイトの時給は、一層、高まっている。結局、前にも記したように、程度は別にして、賃金は上がってきていると判断するのが妥当と考える。
実は、先週のコラムは「伸びる税収、伸びない消費」を仮題にしていた。それで数字を眺めると、従来の認識は修正が必要だと気がついた。とかく人は自分の考えに沿った数字を集めがちなもの。失敗の経験を糧とし、心して事に当たらねばならない。ビジネス全般でも、当てはまることではないだろうか。むろん、消費の浮上の背景には、必ず賃金の向上がある。考えてみれば、認識には矛盾も潜んでいたわけだ。「まずは数字や事実を受け入れる」という態度がいかに大切かということになる。
さて、月曜公表の4-6月期GDPの2次速報では、設備投資が大きく上方修正され、実質成長率は年率3.0%に達した。1次速報の段階で、設備投資が主導する自律的成長への転換点を迎えたという見方を示したが、それが更に鮮明になった形である。図で分かるように、設備投資は、輸出などの追加的な3需要とパラレルに動いてきたことが分かる。需要が不足気味の経済では、需要リスクが最大の決定要因になるので、需要に従う形となる。ところが、これまでとは矛盾する数字が現れだした。
3需要が4四半期も横バイが続いたにもかわらず、設備投資の増勢には変化が見られない。しかも、この2四半期は、3需要の中核たる輸出まで伸び悩んでも、むしろ、設備投資の勢いは増すほどだ。今後については、設備投資の先行指標である機械受注は、木曜公表の7月分でも順調に推移しており、日銀短観、政投銀調査での企業の設備投資の意欲は高い。そして、消費にも3需要を離れて伸びる動きがあり、GDPの名目値では消費増税後の最高を更新した。すなわち、総合的に判断して、設備投資が需要を増やし、需要が設備投資を促す、自律的成長への変化を見つけることができる。
(図)
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アベノミクスの是非が喧しいけれど、あれもこれも否定してかかるのは、よりマシな政策の選択には有害無益である。アベノミクスの失敗は、消費増税で消費を落とし、伸びを失わせたことであり、アベノミクスの成功は、金融緩和による円安で企業収益を増やし、補正後歳出の抑制と巨額の税収増で財政赤字を大幅につめたことだ。こうした事実を踏まえれば、更に消費を圧迫する増税を行う選択など、冷静に考えたら、到底、理屈が立つまい。
しかるに、アベ批判の先鋒に立つ大手紙ですら、「予算の膨張が止まらず、緊急支出の余力が乏しい」と書く始末だ。ストックの「借金比率」のようなおなじみの数字に浸かってしまい、フローの基礎的数字を調べず、当局発表の当初予算の数字しか見ないからだろう。来週は、前回、季節調整値ながら、政府の収支が「黒字」になったことを示した資金循環統計の4-6月期分が発表される。あれもこれも見たい筆者は、実に楽しみだ。
(今日までの日経)
ドル16年ぶり高値。労働生産性 改善続く。欧州中銀 資産購入 来月から半減。QBネット 値上げ 試行錯誤。バイト時給 飲食業も1000円超え。
都合が悪い数字=誤った数字。
都合が良い数字=正しい数字。
〇〇が悪いから、景気は回復していない!!
とか。後でその数字が良くなったら、今度は他の悪い数字を取り上げて
〇〇が悪いから、景気は回復していない!!とか。