日経によれば、基礎的財政収支の赤字をゼロにする財政再建の目標を2025年度に設定するようだ。『中長期の経済財政に関する試算』では、自然体だと到達が2027年度であり、2025年度時点では、GDP比で0.5%のギャップがあったから、2019年度以降、概ねGDP比0.1%の緊縮の積み増しをする必要がある。自然体では、社会保障費の伸びが毎年1兆円の設定なので、これを5000億円程度に抑制すれば、可能となる。つまり、この3年間にしてきたことを、そのまま続けることを意味する。そして、間抜けなのは、ここからだ。
………
ベースになっている『中長期試算』の税収は、2018年度予算額を出発点としている。そのため、2018年度の税収が上ブレすると、2025年のギャップも縮む。実は、2017年度の税収は大きく上ブレすることが確実で、そこから計算される2018年度の税収も上ブレする。どのくらいかと言うと、国だけで2兆円弱だ。すなわち、2025年度のギャップは、大半が解消されるということだ。すると、緊縮の積み増しをしなくても、財政再建の目標は達成できてしまう。これでは、一体、何のための緊縮であり、計画なのだろう。
他方、日銀は、2019年10月の10%消費増税の純増税額は2兆円どまりと計算している。つまり、消費増税は、2兆円分の財政再建を行うためのものだ。仮に、社会保障費の毎年の増加幅を従来どおり5000億円に抑えた上で、2017年度の税収上ブレを勘案すると、2025年度の財政再建目標を2兆円ばかり過剰達成してしまうため、消費純増税は、見送っても差し支えないことになる。なるほど、そういう利点があるわけだ。すなわち、目標年次を2025年度にするのは、消費純増税を見送る布石と考えれば、間抜けさも、あっさり了解できる。
この秋には、自民党総裁選があり、年末の予算編成までに、10%消費増税の最終決断をしなければならず、それを翌年夏の参院選で問う形となる。候補には増税堅持派もおるようだが、「過剰達成になるから、純増税は見送る」という秘策を現首相が土壇場で出してきたら、太刀打ちできまい。「景気腰折れの危険を犯しても、純増税で財政再建を2年早めるべき」という主張では説得力が乏しく、とても国民に受けないからだ。総裁選のライバルには、今のうち財政規律を叫ばせておき、ここぞの場面で論拠を折る。筆者なら、そうするよ。
(図)

………
もっとも、一番ありそうなシナリオは、ライバルに脅威を感じなければ、秘策を使うまでもなく、社会保障費の抑制と10%消費増税は、そのままに、税収の上ブレを補正予算でバラまくというものだろう。緊縮と増税にバラマキを並行させるいつものパターンである。日本にとっての最大の不幸は、こうした矛盾に満ちた経済政策を超えるような魅力ある代案を、誰も出してくれないことかもしれない。
(今日までの日経)
米失業率、4月3.9% 17年ぶり低さ。肩車型社会の回避なるか 就業者1人が支える非就業者 1980年の0.62人が2010年には0.77人まで増えたものの、直近の17年は0.69人に減少・小川和広、島本雄太。オフィス賃料上昇 2年ぶり。大機・伸びる税と課する税・和悦。
※小川さん、島本さん、良い記事ですね。
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ベースになっている『中長期試算』の税収は、2018年度予算額を出発点としている。そのため、2018年度の税収が上ブレすると、2025年のギャップも縮む。実は、2017年度の税収は大きく上ブレすることが確実で、そこから計算される2018年度の税収も上ブレする。どのくらいかと言うと、国だけで2兆円弱だ。すなわち、2025年度のギャップは、大半が解消されるということだ。すると、緊縮の積み増しをしなくても、財政再建の目標は達成できてしまう。これでは、一体、何のための緊縮であり、計画なのだろう。
他方、日銀は、2019年10月の10%消費増税の純増税額は2兆円どまりと計算している。つまり、消費増税は、2兆円分の財政再建を行うためのものだ。仮に、社会保障費の毎年の増加幅を従来どおり5000億円に抑えた上で、2017年度の税収上ブレを勘案すると、2025年度の財政再建目標を2兆円ばかり過剰達成してしまうため、消費純増税は、見送っても差し支えないことになる。なるほど、そういう利点があるわけだ。すなわち、目標年次を2025年度にするのは、消費純増税を見送る布石と考えれば、間抜けさも、あっさり了解できる。
この秋には、自民党総裁選があり、年末の予算編成までに、10%消費増税の最終決断をしなければならず、それを翌年夏の参院選で問う形となる。候補には増税堅持派もおるようだが、「過剰達成になるから、純増税は見送る」という秘策を現首相が土壇場で出してきたら、太刀打ちできまい。「景気腰折れの危険を犯しても、純増税で財政再建を2年早めるべき」という主張では説得力が乏しく、とても国民に受けないからだ。総裁選のライバルには、今のうち財政規律を叫ばせておき、ここぞの場面で論拠を折る。筆者なら、そうするよ。
(図)

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もっとも、一番ありそうなシナリオは、ライバルに脅威を感じなければ、秘策を使うまでもなく、社会保障費の抑制と10%消費増税は、そのままに、税収の上ブレを補正予算でバラまくというものだろう。緊縮と増税にバラマキを並行させるいつものパターンである。日本にとっての最大の不幸は、こうした矛盾に満ちた経済政策を超えるような魅力ある代案を、誰も出してくれないことかもしれない。
(今日までの日経)
米失業率、4月3.9% 17年ぶり低さ。肩車型社会の回避なるか 就業者1人が支える非就業者 1980年の0.62人が2010年には0.77人まで増えたものの、直近の17年は0.69人に減少・小川和広、島本雄太。オフィス賃料上昇 2年ぶり。大機・伸びる税と課する税・和悦。
※小川さん、島本さん、良い記事ですね。
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