にちにち蛙鳴蝉噪

大阪・兵庫・京都・奈良で食べられるトルコライスの紹介を中心に。制作:近藤亨 2004-2023

津田食堂(奈良/橿原市・畝傍)

2016-12-30 23:30:01 | 関西トルコライス巡礼

年末のこの時期は恒例の仕事もあって、普段なかなか行く機会がない奈良市周辺に足を運ぶことが増える。今回も仕事ついでに(とはいっても仕事先から電車で30分ほどかけて移動したわけだけど)何年かぶりに橿原市に足を踏み入れた。

近鉄八木西口駅から歩くことおよそ10分、スマホの地図によると多分この路地なんだけど…というところにこの看板が立っていた。


路地の奥をのぞき込んでも食堂らしき灯りがない。ずかずか入り込んで見知らぬ土地でもめ事になるのも嫌だったので、地図を見ながら路地の反対側に回り込んだら全く同じ看板が立っていて困り果てた。

仕方がないので路地入り口の花屋の主人らしき男性に津田食堂について尋ねたら、津田さんならこっち、とやはり路地の奥を指さす。「あの提灯が下がってるとこ。電気ついてないみたいだけど…」とのことで、やれやれこんな遠くにまで来て空振りか、と肩を落としながら店の前まで移動したら、提灯の明かりはついていないが店内の明かりはついている。ダメもとで入口の戸を開けて「いいですかー」と入ったら、「はあいどうぞ」という力の抜けた女性の声が答えた。

店内はL字型カウンターのみで8、9席といったところ。先ほど応えてくれた白髪交じりのおばさんが一人で切り盛りしているようだ。メニューを見ると(食べログ)、何でも屋というか、いかにも近隣住民の胃袋を支える町の食堂というラインナップである。

メニューを眺めているうちに運ばれてきたトルコライスは、ずばりカツのせチキンライス。ソースはデミグラスではなくとんかつソースだ。シンプルだし色も薄くて見た目のインパクトには欠けるけれど、チキンライスは混ぜ込まれた野菜が強めに炒められていて香ばしく、カツはやや肉薄だけど衣のラードの香りがこれまたとても香ばしい。全体的にからっとした印象の一品だった。

シンプルな料理でこれだけのものを出す実力があるのだから、まあ余計なお世話だとは思うけれど、もうちょっと商売っ気というか、とりあえず12月の真っ暗な17時過ぎにはちゃんと営業してることをアピールする灯りくらいはつけたほうが良いと思う。あんな看板も立ってるわけだし。

それからもうひとつ情報を付け加えると、橿原神宮前駅近くにも同名の食堂があるようだが、そちらのメニューにはトルコライスはない。同好の士はご注意されたし。

それでは皆様よいお年を。



トルコライス 750円

橿原市兵部町7-26
0744-24-1400
12:00~18:00、19:00~22:00
土日祝休




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ビアカフェキッチン新神戸(兵庫/神戸市中央区・新神戸)→エスタシオンカフェ新神戸

2016-12-25 00:16:13 | 関西トルコライス巡礼

神戸・三宮で暮らし始めて9ヶ月になる。

神戸といえばハイカラ、ハイカラといえば食では洋食であるし、その中心である三宮にはうまくて安い洋食屋がたくさんあるのだろうと思って引っ越してきたのだが、その期待は若干裏切られることになった。
美味しい店は多いのだけれど、そのいずれも本気度が高いというか、有体に言えば結構勘定が高くつくのだ。
僕がイメージする洋食屋というのは、やや貧弱なフライの盛り合わせとライスのセットが「Aランチ」などと称され安価に提供されているような、レストランの香りがする定食屋、といった風情なのだけれど、神戸のそれは、あくまで食のいちジャンルとして、その技術と味と、場合によっては伝統を誇示しているような印象を受ける。
そしてそれはそういった雰囲気を支持する土壌に支えられていることも確かだ。かなり高値の神戸牛ステーキを基本的に受け入れている神戸市民の根底には、西洋料理に対して「しっかり払ってよいものを食べる」という意識があるのではないかと思う。

だから、これまでAランチもBランチも目にしたことがなかった。
無論、B級洋食の代表、トルコライスも同様だったのだが。

10月中旬に全面改装なったJR新神戸駅のコンコースにある店にそれは突如登場していた。
ドライカレーと薄焼き卵とポークカツのおなじみの三層構造に、かけるソースはデミグラスかカレーかを選ぶことが出来る。僕はデミグラスを選んだのだが、かなり薄味でさらりとしている印象だった。ドライカレーもスパイシーさは抑えられていて、衣が薄めのカツと共にさくさくと食べられる。
駅ではありがちだが、新幹線の時間が迫ってきてしまい急いで食べなければいけないという場面にもこれならばぴったりだ。

と、よく言えばそうなのだけれど、言い方を変えればちょっと物足りない感じも否めない。

店を出て、駅を出る。右手には神戸のハイカライメージのひとつの象徴、異人館が立ち並ぶ北野の街並みがあり、フラワーロードを下っていけば三宮はすぐそこだ。
「トルコライスなんてものは所詮邪道なのです。物足りない?そんなものですよ」
「この街では正統派の洋食をきちんと味わっていただきますので」
神戸の街を覆う西洋料理への本気魂が、神戸の玄関口で高らかにそう宣言しているようにも感じるのだ。



トルコライス850円

兵庫県神戸市中央区加納町1-3-1 JR新神戸駅改札外コンコース 
078-262-7104
営業:7:00~21:30
無休





料理における「彩りの重要性」はもはや疑いのないところであり、それが商売であるならばなおのことだろう。皿に盛り付ける際に気を配るべき基本色は「緑・赤・黄」の3色であることも広く知られている。

ちなみに、同じ会社のもと同じ店名で運営されている「エスタシオンカフェ三ノ宮」のトルコライスはこれ。


そして、それより320円高い新神戸店のトルコライスはこれだ。


重要色である緑を、この場合はドライパセリをどこに配するか、各店の哲学がそこには見え隠れする。三ノ宮店のように黄色の卵の上に配してそれぞれの色の鮮やかさを上げるやり方もあれば、新神戸店のように彩度は捨てても料理の中心部に配することで心地よいバランス感を演出するやり方もある。

最も重要なことは、その違いのみに300円余りの価値を見出すかどうかはあなた次第だということだ。



トルコライス 1200円

所在地はビアカフェキッチン時代と同じ
078-241-2334
営業:7:00~21:00
年中無休



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こうの史代

2016-12-23 09:21:15 | その他
前に書いた「この世界の片隅に」の原作コミックを3度読み返してから、「平凡俱楽部」に進み、「長い道」「さんさん録」そして在庫僅少で版元取り寄せとなっていた「夕凪の街 桜の国」をそれぞれ複数回読破した。我ながらどっぷりはまったなあとしか言いようがない。

絵柄の好き嫌いは理屈ではないと思うのだけど、この作者の紡ぐ物語にどうしてここまで引き込まれてしまうのかを考えつつネットで情報を拾っていたところ、自分の言いたかったことはほぼここで言い尽くされていることが分かった。

「飛ぶ鳥を落とす勢いで、鳴かず飛ばず 出張版」:「小さな恋のうた/こうの史代」コミックバンチ06年35号 引越してたら雑誌が出てきたので……以下引用。

”こうの史代は甘美な喪失を描く作家だ。彼女の出世作『夕凪の街』も、やはりその甘美な喪失によって作品に光が与えられているといえるだろう”
”この『夕凪の街』以外の、例えば日常のほのぼのエピソードを描いた『さんさん録』であっても、まず主人公が妻を失うという、「喪失」から物語が始まるほどに、彼女の作品にはこのモチーフが多く登場する。だが、こうのが浮き彫りにするその失われるものとは、決して仰々しくあるのではなく、読者が共感しうる、日常的なほんの些細な感情なのである”
”こうの史代はインタビューに度々「私はいつも真の栄誉を隠し持つ人間を書きたいと思っている」と答えているが、もしその「真の栄誉を隠し持つ」平凡な者を読者の鑑賞に耐えうるものに、「劇的に表現せずに」劇的にするならば、不謹慎な物言いだが喪失というのはもっとも便利なツールなのかもしれない”

もうひとつ付け加えるとすれば、ほぼすべての作品で、喪失ののちに再生・前進の予感が提示されることも忘れてはなるまい。喪失と、それもひっくるめた世界への温かな眼差しとのバランスが毎度秀逸だからこそ、独特の読後感を持つのではないかと思う。

だからだろうか、「ぼおるぺん古事記」は大変野心的な作品だと思うけど、どうも食指が動かない。それは記紀の世界であり、こうのワールドではないから、ということになるのだろう。




平凡倶楽部
こうの 史代
平凡社


長い道 (アクションコミックス)
こうの史代
双葉社


さんさん録 : 1 (アクションコミックス)
こうの史代
双葉社


さんさん録 : 2 (アクションコミックス)
こうの史代
双葉社


夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)
こうの 史代
双葉社

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窓拭き

2016-12-22 21:36:12 | その他
家内と娘たちはクリスマスパーティーにお呼ばれ。好きな音楽を聴きながら久々にひとりの夜の時間を満喫している、と書きたいところだけど、雨のせいで後で車で迎えに行かなければならず、ビールを飲めないのがつらい。人は何かを制限されると代償行為を本能的に求めるのか、炒飯を食べた後に冷蔵庫に残っていた海苔巻きを平らげ、それでも足らずにレンジごはんに納豆をかけて食べてしまった。

ここ数日は年賀状書きと大掃除に没頭していた。年をまたいでの恒例の仕事の作業量が例年に比べ増えることが決まっているので、今のうちに片づけておかなければと腹をくくったのだ。ま、大掃除といっても僕の担当は家じゅうの窓拭きと風呂の徹底的な掃除だけなので、偉そうなことは言えない。

ただ窓拭きに関しては、リビングに光を多く取り入れようとした建物の構造上、通常の建物の2階部分にいわゆる掃き出し窓サイズのハイサッシがはめ込んであるので、これを拭くのはひと仕事だ。設置場所の形状により脚の長さが変えられるプロユースの7段脚立と、伸縮する柄をいっぱいまで伸ばすと長さが4メートルくらいになるガラスワイパーを使っている。

ただ道具は揃えても、最初からうまく事が運ばないのが世の常だ。去年の大掃除で初めて奮闘してみたものの、線のような拭きあとが結構残ってしまっていまいち、というかむしろ小汚い仕上がりになってしまったので、年明けに業者を呼んで拭きなおしてもらった。無論、作業中はプロの仕事ぶりを後ろからじっくり観察させてもらった。たかが窓掃除に毎年毎年1万4千円も払ってられない。

プロがやっていて僕がやっていなかったことは以下の2点に集約される。
・窓を磨く際、ワイパーのスポンジ部分をきちんと絞る。水気が多いほうが汚れ落ちもいいのではないかと思いがちだが、後の拭き取りでの弊害のほうが大きい。
・拭き取りの際、ワンストローク毎にゴムブレードを布で拭く。柄が長いと手元にワイパーを持ってくること自体が面倒なのだが、これをサボるとブレードを何度動かしてもガラスに細かな水滴の跡が残る羽目になる。

まあ、この業者も完璧ではなく、ちょこちょこ拭きあとを残したまま帰っていったわけだが、プロでもこの程度の仕上がりが精一杯なのだということが分かって自分の中での要求水準が下がったのも心理的に楽になった。

で、先日の再挑戦なのだが、これが結構うまくいった。結果論になるが、もう一つポイントを挙げるとすれば、
・窓拭きは曇りの日にやるのがベスト。
ということになる。

Livedoor天気情報の豆知識ページには「晴れた日は太陽の光が窓ガラスにあたるのでキラキラ光ってしまい、汚れがよく見えません。くもりの日か朝日が上がる前の方がガラスがキラキラせず、汚れをきちんと落とせるのです。また拭き残しも確認しやすいですよ。もうひとつは、晴れた日は空気が乾燥するので、汚れがこびりついてしまい落としにくくなります。ですから湿度で汚れが緩んでいる雨上がりや曇りの日だと、比較的楽に汚れを落とすことができるのです」とあるが、まさにその通りだと思う。ガラスを下から見上げる格好での拭き掃除では「拭き残しの確認のしやすさ」が最も大きな利点だと感じた。

と、ここまで書いたところで窓を見たら、折からの横殴りの雨でガラスに水滴がびっしりついているという…。


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エスタシオンカフェ(JR西日本・神戸市以西主要駅)

2016-12-13 10:41:29 | 関西トルコライス巡礼

ジェイアール西日本フードサービスネットが運営する、いわゆる「駅ナカ」カフェ。かつて当欄でも紹介した「ビアカフェキッチン」も既にこのブランドに改称されたようだ。今回は三ノ宮駅店を訪問した。

同名のカフェはほかに大阪駅や新大阪駅、京都駅など京阪神の主要駅に設置されているが、食べログやら電話取材の結果を総合すると、かつてトルコライスを提供していた新大阪や京都の店舗ではいつのまにかメニューから消えてしまったようだ。まあ駅ナカカフェの宿命というべきか、待ち合わせや出発時刻までのちょっとした時間潰し、もしくは限られた時間内での食事では、わざわざトルコライスを食べるという選択には至りにくいのだろう。出来上がるまでの時間も読みにくいし。

といったことを考えているうちに、注文後意外に早くトルコライスがやってきた。カレーピラフをふわとろ感満載の卵が包み、厚みのあるポークカツとその周辺にはたっぷりのデミグラスソースがあしらわれている。

カレーピラフは辛さ控え目ながらスパイスの芳醇な香りで、それを包み込む卵はバターの香り豊か。デミグラスソースはよくある甘酸っぱさで個性に欠けるきらいはあるが、オムライスサイドの上品な味にアクセントを与えていて、分厚いカツがボリューム感を演出している。

でもまあ確かに時間に追われて食べるもんじゃないよなあ、とひとりごちつつビールを飲みながらのんびり食べていたら、狙いの電車にはきっちり乗り遅れた。



トルコライス 880円

JR三ノ宮駅・神戸駅・姫路駅の店舗において同価格・同じ構成(多分)で提供
新神戸店のみ1200円
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この世界の片隅に

2016-12-10 00:49:05 | その他
映画「この世界の片隅に」。

ネットでの評判プラス、たまたま聴いていたNHKラジオの出演者による絶賛を耳にして、時間を無理矢理空けるようにして見てきた。

物語としては最後の最後、原爆孤児のエピソードが反則気味。幼い子を持つ身であのくだりに無反応な者があろうか(涙)。

で、それに飽き足らずamazonで原作コミックを急ぎ買って読んだ。

「ザ・鉛筆画」という感じのこの絵柄をアニメーションに仕立てようとしたチャレンジ精神にまず感服。「夕凪の街 桜の国」という前例があったからかもしれないが、いやはやそれにしても。

原作で物語に深みを与えているある三角関係のエピソードが、映画では大胆にカットされていることがわかった。その結果映画では「すずの懐妊話はその後どうなったのか」という伏線が回収されないし、哲との一夜の感情の揺れもやや浅いものになっている。

しかし、その他のエピソードは愚直なまでにきっちり映像化されているし、これを落としても128分という、商業映画としては長めの尺なわけで、苦渋の選択だったことは想像に難くない。

いずれにせよ最終章、原爆孤児の(以下略)

戦時下の日常が笑いも交え淡々と大量に描かれる分、徐々に侵食してくる破壊や死といった非日常を、見る/読む側もいつのまにか淡々と受け止める流れに、すずの「歪んどる」という台詞が思いきり楔を打ち込む。128分にしろ三分冊にしろ、意味のあるボリュームなのだと思う。



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カレー

2016-12-02 20:32:39 | その他
会社帰りに夕食難民になったので仕方なく空席があったココイチに何年かぶりに入る。

カレーの辛さと量で料金が上がっていくお馴染みのシステムだけど、なぜかフリーで使える「とび辛スパイス」が存在する懐の深さも相変わらずだ。盛大にかけさせてもらった。

まあ全体的に割高に感じる価格設定も相変わらずだけど、食べている最中はそんなことを一切忘れてしまう。高いトルコライスだとそれなりに緊張して食べるのに。

やはりカレーのスパイスには脳中枢を麻痺させる何かがあるのではないかと思う。

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自炊

2016-12-01 10:29:26 | その他
家内が仕事で夜不在のとき、これまでは娘二人を外食に連れ出していたが、最近は思うところあって自分で夕飯を用意して出している。娘達にとってはイベントがひとつ消えた訳で、はじめはブーブー言っていたのだが、反発はすぐなくなった。要は腹が減っていればなんでも食べるし、ディズニーチャンネルを夕飯ぎりぎりまで見られるのはそれはそれで嬉しいのだ。

食育とか健康面とか真面目なことはさておき、とりあえず外食先のよくある「お子さまセット」についてくるくだらない安オモチャが増えないのが嬉しい。

一応リクエストは受け付けていて、月曜には季節外れのざるうどんを食べた。次回はオムライスとのことなので、クレハのキチントさんシリーズのオムライス製造器を買って準備万端である。
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