見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

向左走、向右走/幾米

2004-10-31 23:13:03 | 見たもの(Webサイト・TV)
○幾米Spa、その他

http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD5767/index.html

 今週末から公開の香港映画『ターンライト、ターンレフト』。金城武とジジ・リョンが、不器用にすれ違う恋人たちを演じるラブ・コメディー。ふだんの私なら、この手のジャンルは素通りするところだが、ちょっと見に行こうかと考えている。(こんな”ロマンチック”な映画で、ひととき現実を忘れたいと思うのは、最近、少し疲れているせいかも知れないが、まあ、いい)

 映画の原作は、台湾の絵本作家、幾米(Jimmy)の作品『向左走、向右走』である。たまたま、この映画とは何の関係もなしに、中国人留学生の女性(20代)が「私の好きな作家」と言って、いくつか幾米関連のサイトを教えてくれた。

■「junejune.net」>これはたぶん、個人が趣味で作ったサイトではないかと思う。ピアノの演奏とともに『向左走、向右走』の挿絵と本文が5分ほどのアニメーションで流れていく。画像が荒いのが残念だが、ちょっと引き込まれる。映画を見に行こうかどうか、迷っている人におすすめ(ただし中国語)。
http://www.junejune.net/ok.htm

■「kanunu.net」>『向左走、向右走』を全ページ、読むことができる。もちろん挿絵つき。画像も問題ない。日本人の感覚では、著作権がクリアされているのかどうか、心配になってしまうが、いまどき中国語圏では、小説や絵本は、まずネットで読むのが当たり前らしい。
http://www.kanunu.net/jimmy/

■公式サイト「幾米Spa」>きれいな壁紙がダウンロードできる。
 http://www.jimmyspa.com/

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宮内庁楽部(写真のみ)

2004-10-30 22:15:17 | なごみ写真帖
雨の中、書陵部の史料展示会を見てきました。

その報告は別項にするとして、とりあえず、これは書陵部の隣にある楽部の建物。
見たことのある人は少ないでしょ!?
正面入口から中を覗くと、目の前に大きな雅楽の舞台があって、びっくりします。

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消化不良の座談/不安の正体!

2004-10-26 22:56:10 | 読んだもの(書籍)
○金子勝、アンドリュー・デウィット、藤原帰一、宮台真司『不安の正体!:メディア政治とイラク戦後の世界』筑摩書房 2004.10

 4人の著者は、いずれも私にとって親しい名前である。近年の著作は、よく読んできたし、ナマの対談や講演で聞きにいったこともある(一部には多少の面識もある)。それぞれ、異なる学問分野をバックグラウンドとし、少しずつ異なる主張の持ち主であるから、かなり刺激的で知的なコラボレーションを期待して本書を手に取った。

 しかし、残念ながら、話題が広範囲に広がりすぎて(結果、盛り込みすぎのこのタイトルを見よ)散漫に流れた印象が否めない。喋っている4人は分かり合っていて面白いのかも知れないが、その面白さがいまいち伝わってこなかった。残念である。

 そんな中で、印象に残った宮台真司の見解をひとつ挙げておこう。日本のネット・コミュニティが、諸外国のような公共性を獲得できず、「敷居の低い梯子外し」に終始している現状を憂い、「悪貨が良貨を駆逐しがちな電子掲示板の欠点」を批判しながら、これを補うアーキテクチャーとして「ブログ」に期待を寄せる。ただし、ブログの将来は「良貨がどれだけ存在するのか」にかかっているとも指摘している。

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中世の風景/鎌倉国宝館

2004-10-25 21:50:58 | 行ったもの(美術館・見仏)
○鎌倉国宝館 特別展『鎌倉考古風景』

http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kokuhoukan/

 鎌倉国宝館としては、ちょっと珍しい展示企画ではないかと思う。

 この特別展は、鎌倉近郊で発掘された考古遺物(瓦、陶器、かわらけ、木簡、工具、木製の人形など)が中心ではあるが、数の上ではこれを凌駕するくらい、岩手県平泉や、伊豆韮山、千葉館山など、各地で発掘された中世の考古遺物を請来して、展示している。

 ポスターになっている「操り人形男カシラ」は、はじめ、どこにあるのか気がつかなかった。とても小さな作品である。もうひとつ、「山猫」のカシラもあって、宮沢賢治の童話にでも出てきそうな表情をしている。当時、どんなクグツ芝居が演じられていたのか、想像がふくらんで面白い。

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逗子の神武寺/神奈川県立歴史博物館

2004-10-24 20:41:01 | 行ったもの(美術館・見仏)
○神奈川県立歴史博物館 特別展『湘南の古刹 神武寺の遺宝』

http://ch.kanagawa-museum.jp/

 私は2001年~2002年の間、逗子に住んでいたので、鎌倉や三浦半島の名所旧跡は、ずいぶん回った。しかし、東逗子の神武寺へはついに行かず仕舞いに終わってしまった。展示された写真パネルを見ると、四季の自然も美しく、山岳寺院の趣きを残す伽藍配置を眺めるだけでも楽しめそうである。近日、紅葉の色づく頃になったら足を運んでみたい。

 展示品のうち、宋風の装飾的な十一面観音坐像は、鎌倉国宝館で何度も見たお姿である。小ぶりな阿弥陀如来坐像は、確か平安期の作とあり、こんな古いものも持っているのかとびっくりした(博物館のサイトに展示リストがないので記憶による)。そのほかの仏像は近世の作が中心だが、全体に作風が古様で、質がいい。代表格は十二神将。伝統の意匠に対する忠実さは、天台寺院らしいと言えるかもしれない。初めて見る木彫りの三猿坐像は抜群にかわいらしかった。

 仏画では、鎌倉末期の大威徳明王図があり、これも鎌倉国宝館で見ていると思う。すっかり黒ずんで描線が定かでない状態だが、江戸期の摸本が並べられており、なかなかよかった。迫力があって、豪快だが品がある。

 しかし、やはり最大の寺宝は薬師三尊像だろう。33年に1度しか見せない「秘仏」だというから、今回、大型の写真パネルを出してくれただけでも良しとしなけれなならない。次回のご開帳は2017年だそうだ。へんな商売気を起こして中開帳などせず、13年後までのんびり待ってみたいものだ。
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永福寺址のススキ

2004-10-23 19:29:48 | なごみ写真帖
 今週と来週は職場を離れて研修中である。その分の仕事を土日出勤で片付けているので、読書も博物館めぐりもあまり進まない。とは言え、忙中閑あり。外は秋晴れ。鎌倉・永福寺址の薄は今が見ごろ。





   花薄穂に出て招く頃しもぞ過ぎ行く秋はとまらざりける

 この和歌を探していたら、下記のサイトを見つけた。なかなか、いい。

http://www5.pobox.ne.jp/~kochou/koten/susukiogi.htm
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《人生幾度秋涼》始まる

2004-10-19 23:19:55 | 見たもの(Webサイト・TV)
○連続電視劇『人生幾度秋涼』30集

http://ent.sina.com.cn/v/f/rsjdql/

 CCTVの新作ドラマ。本国では今年の夏に放映されたもの。スカパーでは先週から始まった。毎週日曜日の夜に2話ずつ放映されるようで、比較的落ち着いたペースで見ることができそうである。

 時代は民国初期、北京南城の海王村街には古玩(骨董品)店が軒を連ねていた(もちろん瑠璃廠を念頭に置いた設定である)。尚珍閣の店主・周彝貴は、先代の主人から「決して利に走った商売をしてはいけない。利に走れば眼が曇る」と教えられて店を引き継いだ。別の骨董店を営む富嗣隆は、豊かな財力に恵まれ、京劇の劇団のパトロンでもあった。

 そんな感じで物語が始まったばかりである。富嗣隆を演じるのは”皇阿瑪”張鉄林。皇帝役しか見たことがなかったので、老百姓の扮装が新鮮。このおじさん、いつもご陽気で好きなんだけど、どうも今回は野心家の悪役らしい。でも、ドラマの終わりでは京劇ふうの発声で主題曲も歌っていて、聴かせる。

 ドラマの見どころは、こだわりの”京味”(古きよき北京らしさ)である。骨董家協会(世界収蔵家協会)の全面協力の結果、劇中に使われた骨董の7割は本物で、最も高価なもの3点(明成化時代の闘彩鶏缸杯(※こんなのか?)、釉里紅の大瓶、藍釉の花挿)は、合計で一億元を超えたとか。

http://www.toukagen.com/cgibin/chahai4/cb-0401.html

 おもしろいことに、大陸の作品なのに、タイトルロールは全て繁体字である。しかも「主演」とか「導演」というロゴが凝っていて、古籍の版心っぽく作ってある。ドラマが描いている時代の雰囲気を大事にするとこうなるのかな。もっとも、私は繁体字の字幕(中国語)になじみが薄いので、ちょっと辛い。

 そのほか、監督のもとに、台湾のある老人から長距離電話がかかってきて、子供の頃に離れたきりの北京の風景を思い出したと感謝を込めて語ったとか、ネットにはいろいろ面白いエピソードが流れているようだが、あまり先走るのはやめておこう。

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祝・文庫化/蒼穹の昴

2004-10-17 23:51:11 | 読んだもの(書籍)
○浅田次郎『蒼穹の昴』上下 講談社 1996.4

 浅田次郎の「蒼穹の昴」が文庫化された。たまたま、発売日(15日)に三省堂に行って、大きなポスターと山積みの新刊を見つけた。

 それより私の目をひいたのは、書店員のPOP(手書き広告)である。「8年前に涙した同じ本を、書店員として購買者に薦めることの感慨」みたいなことが、比較的律儀な文字で書いてあった。たぶん若い店員さんなのだろう。そうか、8年経ってもこの本の感動って色褪せないんだなあ、としみじみした。

 私がこの小説を読んだのは、つい1年ほど前のことである。清末~民国初期を舞台にした中国のTVドラマ「走向共和」に興味を持って、ネットでいろいろ調べているうちに、この小説のタイトルにめぐり合った。ネット上に感想を掲載している人が、口をそろえて誉めているので、読んでみたら、なるほど納得した。

 時代は中国清朝末期、貧しい農民の少年、春児(チュンル)は宦官になり、西太后の側に仕えるまでに出世する。彼を取りまく登場人物のうち、西太后、光緒帝、李鴻章、袁世凱くらいまでは、日本人でも知っているだろう。栄禄、李蓮英、恭親王奕訴あたりになると、一般にはなじみの薄い名前だと思う。

 この複雑な時代、多様な登場人物をよく調べあげたものだと感心した。小説家ってすごいものだな。しかも、紋切り型の善人/悪人でなく、作者の深い理解と愛情によって、いずれも魅力と生彩に富む人物に造型されている。教科書では絶対に学べない歴史がここにはある。

 さらに、万朝報特派員の岡圭之介、京劇役者の黒牡丹など、くせのある創作人物を加えることで、清末の中国という舞台を、より多面的に描き出すことに成功している。ただし、主人公の春児と第二主人公の梁文秀(梁啓超がモデルという説あり)を除くと、創作された人物より、実在の人物のほうが生き生きと動いているように感じる。

 物語の主題は、人間の善意に対する信頼。違うかしら。歴史というものの巨大さ、冷酷さの前では、人間なんて、大清帝国の皇帝も糞拾いの孤児も大した違いはなく、無駄と知りながら一片のはかない善意を通すことによってしか、存在を示せないものだ、と言われているように思ったのだ。まあ、とにかく泣きましたし、泣きながら癒されました。

 文庫化によって、新しい読者、特に若い読者が生まれることに期待したい。

 ところで、2003年に制作された中国のTVドラマ「走向共和」は、「蒼穹の昴」の影響を受けていないだろうか? 私はひそかに、深く疑っているのである。

 それと、本編に続いて、続編「珍妃の井戸」(講談社 1997.12)を発表した作者であるが、さらに第三編に当たる、中国近代史を題材とした小説を執筆中という噂をネットで読んだ記憶があるんだけど、いま、見つからない。どうなったのかなあ。

【追記】後日、上記のPOP広告は、手書きに見せかけて、実は印刷形態で全国に配られていたもの(らしい)と判明。いやになっちゃうなあ、まあ、騙された私が悪いわけだが。

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柏木~雲隠/源氏物語(7)

2004-10-16 00:34:36 | 読んだもの(書籍)

○玉上琢彌訳注『源氏物語 第7巻』(角川文庫)1971.6

 とうとう、源氏物語の本編が終わってしまった。

 病みついた柏木は、次第に衰弱し、死んでしまう。女三の宮は多くを語らず、出家する。作者は冷酷にも彼女にほとんど言葉を与えない。自分の内面を語ることのできない、未成熟な女性として造型しているためだ。しかし、出家後の女三の宮は心すこやかな毎日を送っているように描かれており、愛する源氏を残し、つまりこの世に未練を残して死んでいく(ように見える)紫の上や、傷心の老境を送る源氏とは対照的でもある。

 終幕一歩手前の「夕霧」の巻は、これまで堅物で通してきた夕霧の、女二の宮(落葉の宮)に対する執着を描く。

 夕霧は幼なじみの雲居雁と一途に言い交わし、今は子だくさんの安定した家庭を築いている。だから、何をまあ、いい中年が血迷って、と思ってしまうのだが、よく数えてみると、まだ29歳なのだ。本気の恋愛はそろそろ卒業する年齢だが、父の源氏だって30を過ぎて、秋好む中宮や玉蔓に色気を出していたのだから、そうは責められない。

 ここは雲居雁の嫉妬ぶりが見ものである。源氏の家庭においては、紫の上は、夫を困らせるような嫉妬は見せない女性だったし、源氏も決して紫の上を裏切らないということが、読者には分かっていた。その他の女性たちは、嫉妬はしても、しょせん源氏の最愛の女性ではないという引け目がどこかにあった。

 それに比べると、雲居雁の嫉妬は「妻の嫉妬」である。ともに手を携えて幸せな家庭を築いてきた自信と、にもかかわらず、新しい女性の出現によって、今までの幸せが崩れ去るかも知れないという不安と動揺、そして強い怒りが感じられる。疑わしい手紙を夫から取り上げて隠してしまうとか、腹の立て方がリアルで怖い。今の家庭を壊したくはないので、妻を怒るに怒れない夕霧も、いかにも平均的な「夫の反応」である。

 五島美術館の「源氏物語絵巻」夕霧の巻は、何度か見ているはずだが、あ~こういう場面だったのか、と初めて納得した。

http://www.gotoh-museum.or.jp/collection/index.html

 いよいよ、紫の上の死。まわりの女性たちと歌を交わし、孫(養女である明石の姫君の子)にあたる匂宮に別れを告げ、自分の死期を感じ取って几帳の内に引きこもるようにして死んでいく。ドラマチックではないが、余韻嫋々とした死の描き方である。

 源氏を待っていたのは悲しみの日々だ。二月の紅梅に紫上をしのび、五月雨の物思いに沈み、夏の蛍に亡き人の魂を重ねあわせ、十二月の仏名をしんみりと過ごす。たぶん源氏の寿命の尽きるまで、いや、もしかしたら未来永劫、四季のめぐりとともに世界は紫上の死を傷み続けるのではないか。そんな思いとともに物語は終わる。いいな、この息の長い、永遠につながるような悲しみの感覚は、現代の小説にはないものだ。

 さて、一気に宇治十帖に行こうかな。

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南宋絵画ふたたび/東京国立博物館

2004-10-14 23:23:27 | 行ったもの(美術館・見仏)
○東京国立博物館 特集陳列『中国書画精華』

http://www.tnm.jp/

 東京国立博物館の東洋館では、中国書画の名品展が開かれている。「中国国宝展」と客層が重なりそうなものだが、こちらの会場に足を向ける参観者は少ない。まあ、かくいう私も、これが恒例企画であることは、この秋、初めて知ったのだが。

 展示品のラインナップは、めちゃくちゃ贅沢である。1日眺めていても飽きないような名品が目白押し。超高級中華料理のテーブルに着くようで、初めから満腹気分だ。特に前期は南宋絵画がてんこ盛りである(後期は時代が下って、元~明が中心)。

 この春、根津美術館で行われた特別展「南宋絵画」は、どこにこれだけの中国絵画ファンがいたのかと驚くような盛況だった。あの会場では、人の流れを気にしながらしか見ることのできなかった同じ作品を、ここでは好きなだけ、独り占めすることができる。

 李迪の「紅白芙蓉図」や宋汝志の「雛雀図」など明るい彩色の小品、梁楷の「李白吟行図」みたいに線のはっきりした作品は、さほど印象に差がない。だが、梁楷の「雪景山水図」は、根津美術館で見たときは、周囲のざわざわした雰囲気に気が散って、あまり感銘を受けなかったが、今回、あらためて好きになった。沈黙の中で向き合うと、(深い雪の日みたいに)絵の中から幽かな音が聞こえてくるような作品である。画像はこちら↓

http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=D01&processId=01&colid=TA141

 李氏筆「瀟湘臥遊図巻」は、図巻を初めから終わりまで大様に広げてあるのがうれしい。絵とともに旧蔵者の書き込みを楽しむことができる。

 「中国国宝展」とあわせておすすめ。後期にもう1回行こうと思っているので、混雑するのはありがたくないが、今の状況はもったいなあ。

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