リステリア菌 listeria monocytegenesは、河川や動物の腸管など環境に生きる菌です。芽胞非形成グラム陽性桿菌です。この菌の特徴は、4度以下の低温でも増殖できること。このことから、乳製品やソーセージなどの食肉加工品のように、低温で保存して、そのまま食べることが多い食品に混入し、食中毒を起こします。
最近では、昨年米国で、28州にわたり、メロンから感染したと考えられるリステリア感染症に、146人が感染し、30人が死亡という事例がありました。
CDCが公表した最終報告書、地図、エピカーブはこちらから読むことが出来ます。
この食中毒の特徴は、「妊婦さん」。妊婦さんが感染すると、流産や死産を引き起こしてしまいます。
妊娠20週の妊婦が10日前から発熱していたとして病院にかかった。胎児は子宮内で死亡しており、母体の血液および胎盤からはリステリア菌が検出された、という報告が日本産婦人科学会関東連合会誌に掲載されていました。(2010年6月)
一般には、もしリステリア感染症をおこしても、その症状は急性腸炎症状(腹痛、下痢、吐き気、嘔吐)や風邪様症状(発熱、悪寒、頭痛)など、あまり特徴的ではなく、「あ、リステリア感染症だ!」と、気づかれることはあまりありません。ただし、重症化すると、髄膜炎、敗血症を起こし、その場合の致死率は20%と跳ね上がります。
日本では、過去に1事例だけ、集団発生事例が報告されています。2001年、北海道で造ったナチュラルチーズが原因でした。ただし、このときも、発症者から分かったのではなく、食品の検査から見つかり、さかのぼり調査(追跡調査)の結果、見つかった86人の喫食者の聞き取りにより、38人(44%)が症状を示していたことが分かりました。
国内でリステリア症がどのぐらい起こっているかの調査がおこなわれています。
国立医薬品食品衛生研究所の研究者が2001年から2003年にかけて、全国の病院にアンケートを送るという方法で国内の発生状況を推定しました。
その結果、1996年から2003年3月までに確認できた患者95人から換算し、国内全体の年間の患者数は83人、人口100万人当たりの患者数は0.65人としています。
同時期のデータでは、アメリカが100万人当たり5、フランスが4.1、イギリスが1.6~2.5、オランダが0.7だそうです。
2011年2月24日に厚生労働省で開催された食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会の資料が公開されています。議事録やスライド資料がありますが、とてもわかりやすく、国内外の状況、分かっていること、分かっていないこと、決まっていること、これから決めようとしていることなどが、見えてきます。
一括資料はこちら。
議事録はこちら。なかでも、五十君(いぎみ)さん(国立医薬品食品衛生研究所)の発言の部分は、難しいことをわかりやすく話しておられ、リステリア全般の理解に役立ちます。
その五十君(いぎみ)さんの資料スライドがこちら。んー。これはいい資料です!
資料:食品健康影響評価のためのリスクプロファイル~ 非加熱喫食調理済み食品(Ready-to-eat食品)におけるリステリア・モノサイトゲネス ~(改訂版)2011年版