語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】「イオン」の産地偽装 ~中国猛毒米~

2013年10月18日 | 社会
 (1)9月29日、「イオン」で販売されていたおにぎりと弁当1,500万食に、産地偽装された中国産米が混入していたことが発覚した。
 産地偽装したのは、米卸業者の「三瀧商事」(三重県四日市)。
  中国産米 → 三瀧商事 → 日本デリカフレッシュと日本フーズデリカ(商品化) → 2府21県のイオングループ店舗

 (2)イオン発祥の地で大規模な産地偽装が発覚したことで、衝撃が広がった。
 2012年12月から今年9月までに、三瀧商事がフジパンの子会社(日本デリカフレッシュと日本フーズデリカ)経由でイオンに納入した米の4割が偽装中国産米。偽装が始まったと目される2005年から現在に至るまでに流通した偽装米は、少なくとも4,400トンに及ぶ。さらに、同社は、本来は酒・味噌・菓子などに使用される加工米を主食用に大量に販売していたことが判明した。紛れもなく、過去最大の食品偽装事件だ。

 (3)中国産米は、重金属汚染、遺伝子組み換え米、農薬汚染、ズサンな検査体制・・・・といった危険を抱えている。中国の米どころとして名高い長江下流域では深刻な土壌汚染が進み、当地で収穫された米からカドミウムが日本基準の4.2倍、ヒ素が1,500倍、クロムが2,000倍も検出されている。BHCなど猛毒の有機塩素も数十倍が検出された。いずれも強力な発癌性や催奇性を持つ猛毒だ。

 (4)三瀧商事は、売上げは年間70億円程度で安定推移している。この2年間は80億円まで伸びている。服部洋子・社長は、四日市商工会議所女性部会長を務め、ブランド物に目がない。服部社長は、産地偽装が発覚して以来、姿をくらましている。
 三瀧商事が摘発されたのは、今回が初めてではない。
  (a)2007年、中国から輸入したもち米54トンからメタミドホス(有機リン系殺虫剤、2008年の毒ギョーザ事件における混入剤)が輸入時検査で検出された。処分。
  (b)2009年、中国から輸入した米粉に、遺伝子組み換え米が混入していた。処分。
 三瀧商事による検査は、加工メーカーから要請されて初めて行う。6回に1回程度だ。6分の5が無検査で出回っているわけだ。

 (5)現在まで発覚しなかったのは、販売業者であるイオンによる検査体制にも原因がある。イオンは、仕入れ段階でじつに怠慢であった。
 イオンは、2010年にはなんと全商品の8割を中国から仕入れていた。岡田元也・社長は、2010年の決算説明会で、中国政府の対日輸出規制に触れ、「現在8割を占める中国からの商品調達率を早期に半分以下に落としたい」と明かした。
 イオンのプライベートブランドのりんごジュースは、多くが中国産だ。しかも、その表示ラベルの原産地表示はバラバラだ。同じ1リットルパックのラベルでも、2種類が混在する。次の(b)に中国産が使用されていれば、消費者は知らないうちに中国産ジュースを飲まされていることになる。
  (a)「りんご(中国、アメリカ)」 138円
  (b)「りんご(記載なし)」 98円
 安さと利益を追求する一方で、イオンの検査体制はまったく機能していない。

 (6)イオン創業家は、もともと中国と縁が深い。岡田元也・社長は、父の岡田卓也・名誉会長の後を継いで「アジアシフト」を謳い、積極的に中国進出を推進してきた。イオンは、広東省広州に出店した(1996年)のを皮切りに、現在中国内の店舗数は約50ヵ所にのぼる。
 岡田克也・衆議院議員(元也社長の弟)も「親中派」として知られる。
 だが、中国戦略の成功によって強大な力を持ったイオンに対する地元の反発は根強い。
 イオンの「買い叩き」のせいで中間業者が苦しくなり、中国産を使わざるをえなくなった、という事情も今回の事件の背景にある。
 イオンへの仕入れは、かなり厳しい。ある和菓子店は、売上げの7~8割をイオンに取られてしまうため、餡や桜の葉は安価な中国産を入れている。米も、農家に対して信じがたいほどの買い叩きをする。通常、コシヒカリの新米は300円/kgほどの卸値で取引される。しかし、イオンは「200円/kgのコシヒカリを持ってこい」というような要求を平気で出す。精米や物流に要するコストを計算すると、そんな値段で入れられるはずはない。だから、イオンの求める値段では不可能だとすぐわかる。イオンの仕事を引き受けるなら、中国産米などを混ぜ合わせないと採算が合わない。
 中国産米ならずとも、加工米を主食用に偽装して販売するケースが少なくない。

 (7)買い叩きに抵抗すると、倒産が待っている。
 かつて納豆業界のシェア第3位だった「くめ納豆」は、イオンのプライベートブランドの納豆の下請けを行っていた。しかし、イオンの買い叩きがひどく、経営が立ちいかないということで「くめ納豆」は手を引いた。その後、同社の業績は回復しないまま、2009年に倒産した。 

 (8)今回の事件に関して、イオンは偽装中国産米が混入した商品を自主回収していない。「購入時のレシートなどの購買記録があれば、返金も見当する」と大きく構えているだけだ。
 イオンのホームページに掲載された「お詫びとお知らせ」には、「法的措置も視野に入れて対応を勧めてまいります」と、まるで被害者であるような文言が並ぶ。販売者として責任をとる姿勢は、まったく無い。

□記事「「中国猛毒米」偽装 イオンの大罪を暴く」(「週刊文春」2013年10月17日号)
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 【参考】
【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~
【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~
【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~
【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム
【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~
【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~
【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~
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