花の乱の総集編は確かに良くまとまっていますが、
やはり本編を見ないで論じてはいけなかったのですな~
私は雪舟経由で室町時代に興味を持ち、室町大河を心待ちにしていましたが、
放送当時は、主人公が松たか子さん→三田さんに変わったあたりで、あえなくリタイアしてました。
(なんじゃそりゃ)
そして十数年。
スカパーに加入し、DVDレコーダーとテレビ(モニター)を買って
時代劇専門チャンネルを見たわけです。
そして2周目・・・。
この作品は、
一般ウケが悪く、難易度が高いが、クリアする喜びがあるゲームと言いますか。
まるで「アウターワールド」のような・・・
(ちなみに↑は自力クリアしました)
このドラマを味わおうと思ったら、放送時間に正座して見る『程度』では足りないような。
そこが、視聴者を置き去りにしているなどと言われるゆえんなのでしょうな。
では、第1話。
○枠物語
物語は、寛正5年(1464年)・秋、金閣寺で催された夜能からはじまります。
将軍家御台所・日野富子(25歳)が、夫の足利義政(29歳)から
「自分は将軍を辞める」と言われたところからはじまります。
衝撃を受けた富子は、菩提寺の法界寺に参篭し、
夢のお告げを待ちます。
セットだと思ったんですが、法界寺ロケだそうです。雰囲気出すために冷房を入れたとか。よく許可が下りたなぁ・・・
○夢
二十数年前、同じくその法界寺に参篭していた日野苗子(みつこ。富子の実母)が、
鬼に犯され、子を産み、その子は川に流されますが、
放浪中の一休に救われ、椿の庄に向かうことになります。
その子は「火の橋」の扇を持っていました。
じつは、ここにはさりげない史実の改変があって、史実の日野富子の母は、「日野」苗子ではありません。北大路家の出身なので、「北大路」苗子と記すべきなのですが、そうなるとこのドラマの「富子」は日野家とまったく関係のない人物になってしまいますので。
○枠物語
富子は、まどろみから覚め、自らの扇を見ます。「火の橋」でした。
そこに亡霊が現れます。先々代の将軍・足利義教(義政の父)でした。
○亡霊が語る物語
嘉吉の乱(嘉吉元年〔1441年〕)です。赤松満祐も山名持豊も日野パパ(重政。史実では富子と勝光の実父。)も暗殺会場には居なかった・・・と、細かい突っ込みを入れるとキリが無いこのドラマ。
満祐が反乱した理由は後の話で語られることになりますが、要するに将軍の専横が過ぎたということです。

この会場に細川パパ(持之。勝元の父)がいて、山名持豊(のちに宗全)にかばわれて逃げ出しているんですが、公卿の一人ぐらいにしか認識できませんわな。
で、ここで、さりげなく亡霊の話とも、富子の夢からも離れて、
嘉吉の乱以後の数年間が編年体として語られることになります。
○語る主体の無い物語
山名持豊が播磨の赤松氏を討つ。
室町御所で軍功褒章。(ここで日野重子が細川持之を皮肉るシーンが脚本にはあるのだが、カット。)
日野「富子」が、日野重政と日野苗子の娘として生まれる。
この「富子」の納音(なっちん)は「泉中水」。水のように穏やかで人を癒す気性。
2年後、7代将軍・足利義勝(義教と日野重子の子)が、落馬して死亡。
重子は義勝を犬追物ごっこに誘った三春(義勝の実弟、後の義政)に
「そなたが死ねばよかったのじゃ!」と呪いの一言を吐く。
○21年後、浄土寺(枠物語)
29歳の足利義政が、そのことを回想している。
「実の母とも思えぬ、むごい言葉よの」
・・・と、まあ、いつのまにか、富子の前にあらわれた亡霊の語りが、義政の回想になっています。
良く考えると不自然なのですが、ドラマを見ている限りではそうは思えないでしょう。
その後、義政が、異母弟の義尋(ぎじん。のちの足利義視)に将軍にならないかと持ちかけ、
竜安寺の石庭ロケ!で、細川勝元が「富子め、将軍正室の座を失うと聞いては、狼狽するのも当然だ。何かといえば政道にくちばしをいれるあの御台所を、花の御所より追い払えるだけでも小気味よい。・・・義尋を将軍にすえてやろう」とつぶやいたりします。(注・この石庭シーンは第1話では使われず、別の回に移動しました)
富子は相変わらず参篭中で、
椿の庄に向かった赤子のその後を夢に見ます。
○夢
ここからは総集編にもありますが、
神爾を御所から奪った日野有光が椿の庄に逃げこんでくるところです。
赤子は、5歳の女の子(「椿」という名)となっており、国人・伊吹十郎太の娘として育てられていました。
伊吹十郎太には三郎という8歳の男児がいました。
日野有光は三種の神器を京の御所から奪い、吉野の南朝に送ろうとしたのですが、
剣と鏡は取り返されてしまいました。
<簡単な位置関係>
京
・
椿の庄
・
奈良
・
(険しい道)
・
・
・
・
・
吉野
・・・・簡単すぎる(汗
このとき、一休さんも椿の庄にいましたが、このドラマでは一休の母親も日野家ゆかりの人物とされ、それゆえに日野家荘園の「椿の庄」に出入りするという設定(かな?)。ちなみに47歳ですな、このころ。
椿の庄を山名持豊率いる幕府軍が取り囲み、有光は椿の庄を巻き込まないために切腹、その志をついで、神爾は伊吹十郎太が抜け道から吉野に運ぶことになりました。(以後しばらく伊吹十郎太は南朝に仕えることになります)
一休の時間稼ぎ策に怒った山名持豊が、椿の庄殲滅を決意しますが、
椿が柿の実を差し出し、山名持豊は、殲滅策の無益さを悟り、軍を撤退させます。
・・・柿は渋柿でしたが(笑)
○枠物語・富子
「あの娘がわたくしなら、いま日野富子を名乗るわたくしは、いったい・・・?」
○第1話、完。
切り絵は金閣寺。
------------------------------
今回、シナリオを見ながらまとめてみましたが、
タイトル「室町夢幻」の通り、枠物語と夢物語が交互にあらわれる話ですな。
この枠物語の時点で富子は25歳ですが、
夢物語の「富子」が25歳に追いつくまでに、いろいろ過去のことを思い出していたような気がする(少なくとも伊吹十郎太を「父」と認識していた)・・・となると、あの夢物語(11話まで)は、回想ではなく、過去を「創出」しているのでしょうか。
全体的に円環構造になっていているけど、同じところには戻ってこないような・・・
この構造、「ドグラ・マグラ」を思い出したりするんですよね。
(そういえば「胎児の夢」の話も、あったっけ・・・)
そういえば、第1話の切り絵が金閣寺で、最終話の切り絵が銀閣寺でした。
なんてセンスがいいんだろう。
切り絵についてはもっと語りたいことがるのですが、また今度。っていつだ。
なお、なんの予備知識もなく見たら、「椿」=「今の富子」だとは思わないかもしれませんね。
やはり本編を見ないで論じてはいけなかったのですな~
私は雪舟経由で室町時代に興味を持ち、室町大河を心待ちにしていましたが、
放送当時は、主人公が松たか子さん→三田さんに変わったあたりで、あえなくリタイアしてました。
(なんじゃそりゃ)
そして十数年。
スカパーに加入し、DVDレコーダーとテレビ(モニター)を買って
時代劇専門チャンネルを見たわけです。
そして2周目・・・。
この作品は、
一般ウケが悪く、難易度が高いが、クリアする喜びがあるゲームと言いますか。
まるで「アウターワールド」のような・・・
(ちなみに↑は自力クリアしました)
このドラマを味わおうと思ったら、放送時間に正座して見る『程度』では足りないような。
そこが、視聴者を置き去りにしているなどと言われるゆえんなのでしょうな。
では、第1話。
○枠物語
物語は、寛正5年(1464年)・秋、金閣寺で催された夜能からはじまります。
将軍家御台所・日野富子(25歳)が、夫の足利義政(29歳)から
「自分は将軍を辞める」と言われたところからはじまります。
衝撃を受けた富子は、菩提寺の法界寺に参篭し、
夢のお告げを待ちます。
セットだと思ったんですが、法界寺ロケだそうです。雰囲気出すために冷房を入れたとか。よく許可が下りたなぁ・・・
○夢
二十数年前、同じくその法界寺に参篭していた日野苗子(みつこ。富子の実母)が、
鬼に犯され、子を産み、その子は川に流されますが、
放浪中の一休に救われ、椿の庄に向かうことになります。
その子は「火の橋」の扇を持っていました。
じつは、ここにはさりげない史実の改変があって、史実の日野富子の母は、「日野」苗子ではありません。北大路家の出身なので、「北大路」苗子と記すべきなのですが、そうなるとこのドラマの「富子」は日野家とまったく関係のない人物になってしまいますので。
○枠物語
富子は、まどろみから覚め、自らの扇を見ます。「火の橋」でした。
そこに亡霊が現れます。先々代の将軍・足利義教(義政の父)でした。
○亡霊が語る物語
嘉吉の乱(嘉吉元年〔1441年〕)です。赤松満祐も山名持豊も日野パパ(重政。史実では富子と勝光の実父。)も暗殺会場には居なかった・・・と、細かい突っ込みを入れるとキリが無いこのドラマ。
満祐が反乱した理由は後の話で語られることになりますが、要するに将軍の専横が過ぎたということです。

この会場に細川パパ(持之。勝元の父)がいて、山名持豊(のちに宗全)にかばわれて逃げ出しているんですが、公卿の一人ぐらいにしか認識できませんわな。
で、ここで、さりげなく亡霊の話とも、富子の夢からも離れて、
嘉吉の乱以後の数年間が編年体として語られることになります。
○語る主体の無い物語
山名持豊が播磨の赤松氏を討つ。
室町御所で軍功褒章。(ここで日野重子が細川持之を皮肉るシーンが脚本にはあるのだが、カット。)
日野「富子」が、日野重政と日野苗子の娘として生まれる。
この「富子」の納音(なっちん)は「泉中水」。水のように穏やかで人を癒す気性。
2年後、7代将軍・足利義勝(義教と日野重子の子)が、落馬して死亡。
重子は義勝を犬追物ごっこに誘った三春(義勝の実弟、後の義政)に
「そなたが死ねばよかったのじゃ!」と呪いの一言を吐く。
○21年後、浄土寺(枠物語)
29歳の足利義政が、そのことを回想している。
「実の母とも思えぬ、むごい言葉よの」
・・・と、まあ、いつのまにか、富子の前にあらわれた亡霊の語りが、義政の回想になっています。
良く考えると不自然なのですが、ドラマを見ている限りではそうは思えないでしょう。
その後、義政が、異母弟の義尋(ぎじん。のちの足利義視)に将軍にならないかと持ちかけ、
竜安寺の石庭ロケ!で、細川勝元が「富子め、将軍正室の座を失うと聞いては、狼狽するのも当然だ。何かといえば政道にくちばしをいれるあの御台所を、花の御所より追い払えるだけでも小気味よい。・・・義尋を将軍にすえてやろう」とつぶやいたりします。(注・この石庭シーンは第1話では使われず、別の回に移動しました)
富子は相変わらず参篭中で、
椿の庄に向かった赤子のその後を夢に見ます。
○夢
ここからは総集編にもありますが、
神爾を御所から奪った日野有光が椿の庄に逃げこんでくるところです。
赤子は、5歳の女の子(「椿」という名)となっており、国人・伊吹十郎太の娘として育てられていました。
伊吹十郎太には三郎という8歳の男児がいました。
日野有光は三種の神器を京の御所から奪い、吉野の南朝に送ろうとしたのですが、
剣と鏡は取り返されてしまいました。
<簡単な位置関係>
京
・
椿の庄
・
奈良
・
(険しい道)
・
・
・
・
・
吉野
・・・・簡単すぎる(汗
このとき、一休さんも椿の庄にいましたが、このドラマでは一休の母親も日野家ゆかりの人物とされ、それゆえに日野家荘園の「椿の庄」に出入りするという設定(かな?)。ちなみに47歳ですな、このころ。
椿の庄を山名持豊率いる幕府軍が取り囲み、有光は椿の庄を巻き込まないために切腹、その志をついで、神爾は伊吹十郎太が抜け道から吉野に運ぶことになりました。(以後しばらく伊吹十郎太は南朝に仕えることになります)
一休の時間稼ぎ策に怒った山名持豊が、椿の庄殲滅を決意しますが、
椿が柿の実を差し出し、山名持豊は、殲滅策の無益さを悟り、軍を撤退させます。
・・・柿は渋柿でしたが(笑)
○枠物語・富子
「あの娘がわたくしなら、いま日野富子を名乗るわたくしは、いったい・・・?」
○第1話、完。
切り絵は金閣寺。
------------------------------
今回、シナリオを見ながらまとめてみましたが、
タイトル「室町夢幻」の通り、枠物語と夢物語が交互にあらわれる話ですな。
この枠物語の時点で富子は25歳ですが、
夢物語の「富子」が25歳に追いつくまでに、いろいろ過去のことを思い出していたような気がする(少なくとも伊吹十郎太を「父」と認識していた)・・・となると、あの夢物語(11話まで)は、回想ではなく、過去を「創出」しているのでしょうか。
全体的に円環構造になっていているけど、同じところには戻ってこないような・・・
この構造、「ドグラ・マグラ」を思い出したりするんですよね。
(そういえば「胎児の夢」の話も、あったっけ・・・)
そういえば、第1話の切り絵が金閣寺で、最終話の切り絵が銀閣寺でした。
なんてセンスがいいんだろう。
切り絵についてはもっと語りたいことがるのですが、また今度。っていつだ。
なお、なんの予備知識もなく見たら、「椿」=「今の富子」だとは思わないかもしれませんね。
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