名古屋のCOP10にも参加していた「世界先住民族ネットワークAINU」からの宣言書が届きましたので、紹介します。
北方領土については、知床が世界遺産に登録される際、世界遺産委員会(ユネスコ)の委託をうけて現地調査をしたIUCN(世界自然保護連合)の報告書で、
・知床と海と国後島を一体の生態系として保全する必要があること
・将来は、日本とロシアと共同で国際自然公園として管理することが望ましいこと
・両地域の先住民族であるアイヌ民族を管理運営に参画させること
などが勧告されたこと(それを日本の外務省は黙殺したこと)が思い出されます。
細川弘明/市民社会フォーラムMLから
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菅直人 内閣総理大臣 殿
前原誠司 外務大臣 殿
高橋はるみ 北海道知事 殿
2011年2月7日「北方領土の日」にむけての
「世界先住民族ネットワークAINU」の宣言
(歴史)
我々アイヌ民族は国後島をクンネシリ(黒く見える島)、択捉島をエトゥオロフ(鼻の
有る処)、色丹島サクコタン(夏の村)、歯舞アポマイ(流氷ある処)諸島等をアイヌ語で
呼んでいました。これらの島々に日本政府は無理やり漢字を当てはめ日本の固有の領
土だと言い張っています。この地域を指して日本政府は「北方領土」と呼んでおり、
ロシアは「クリル諸島」と呼んでいます。そのなかでもウルップ島以南の地域は、元々
北海道アイヌの先祖伝来の土地と海です。
それは考古学や歴史資料にある文献からも明らかで、北海道アイヌがラッコ猟に代
表される海産物や動物の毛皮の産出を行っていた地域でありましたし、住んでもいま
した。(ラッコもアイヌ語です)。実際のところ、これはロシア政府も日本国政府も否
定のしようのない歴史事実であります。ロシアと日本のやり取りはアイヌ民族から見
れば泥棒同士の権利争いでしか有りません。
それにもかかわらず、日ロ両政府は、旧ソ連時代も含め、国際条約締結からアイヌを
はじめとした北方先住諸民族を無視、排除してきました。1855年の日露和親条約では、
アイヌ民族を「日本国民である」として国境画定に利用したにもかかわらず、以後、
主権者としてのアイヌを無視・排除して条約を締結してきたのです。
1875年の千島・樺太交換条約では、大規模な強制移住事件がおきました。これらの地
のアイヌ民族やエンチュウ(樺太アイヌ)は国籍選択が求められ、それまでの生活基盤
の破壊を強いられました。
敗戦処理を巡ったヤルタ会談においても、北方先住諸民族は登場せず、国際条約締結
おいても存在を顧みられないまま現在に至っております。
(現在)
近年は世界の先住民族の大きな解放運動の機運が盛りあがり、2007年には先住民族の
国際法的主体を謳った「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が、国連総会で圧倒
的多数で採択されました。我が国政府も賛成したこの宣言の採択は、先住民族の権利
回復の第一歩が示された瞬間でした。大輪の花をさかせるべく、世界の先住民族は、
躍動を続け、ネットワークを拡げています。
2008年の洞爺湖サミットに際し、世界各地から先住民族がアイヌモシリ(北海道)に
集い、『先住民族サミット「アイヌモシリ」2008』に会した先住民族一同が日本政府
への提言をまとめ、提出しました。そこには、「アイヌ民族は、北海道だけでなく、
本州、サハリン(旧樺太)、クリル諸島(旧千島)、カムチャツカなど、広大な地域で生
活していた先住民族である。この事実にもとづき、日本政府は、いわゆる「北方領土」
の返還交渉にアイヌ民族を主権者として加えるべきである」と表明されています。
「世界先住民族ネットワークAINU」は、2009年に提出された「アイヌの政策にあり
かたに関する有識者懇談会」報告書についての見解を表明しました。この中では、
「5.その他」として、 「いわゆる『北方領土問題』に言及していない点は残念である。
クリル諸島の真の主権者はアイヌ民族であるから国際法や『先住民族の権利に関する
国際連合宣言』27条などを根拠にアイヌ民族に返還されることを求めたい。」と明確
に態度を示しました。
昨年11月、ロシア大統領が「自国の領土」として国後島を訪れ、これに菅首相が
「遺憾の意」を表明し、外相が駐日ロシア大使を呼びだし抗議しました。12月、前原
外相がクナシリ島の上空視察をおこないましたが、今度はロシア第一副首相が「私た
ちロシアの土地」としてクナシリ、エトロフを訪問しました。相次いで閣僚を訪問さ
せて「自国の領土」といわんばかりに実効支配を強めるロシアと「固有の領土」論を
繰り返して抗議や遺憾表明を繰り返す日本との間には、北方諸島の主権者たる先住民
族アイヌ(エンチゥを含む)が登場しません。頭越しに行われており、日ロ両政府は私
たちの存在を無視して領土主張していることに抗議いたします。
(要求)
「世界先住民族ネットワークAINU」は、アイヌをはじめ北方諸島の先住諸民族が国
際法上からも歴史的事実からもこの地域の主体、主権者であることを訴えます。日ロ
両政府は、わたしたち先住民族に対し、国際法や「先住民族の権利に関する国際連合
宣言」を踏まえて、これらの地域の先住民族としてのわたしたちにふさわしい対応を
するべきであります。
(1) 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が成立してから数年が経過しているこ
と、および国際法との関係を踏まえて、日ロ両政府がいわゆる「北方領土問題」を二
国間の問題にとどめず、北方諸島の先住民族を国際法的主体として承認し、この問題
への参加を認め、第三者を介した解決策を模索していくことを要求します。
(2) また特に日本政府と北海道に対しては、現在広く国民・道民に展開している北方
領土返還運動がアイヌ民族を全く無視した誤ったものであることを認め、アイヌ民族
主体の運動にあらため、アイヌ民族が自らの土地をとりもどす運動としてこれを支援
するよう要求いたします。
2011年2月4日
世界先住民族ネットワークAINU
代表 萱野 志朗
事務局長 秋辺日出男
役員一同
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連載「生物多様性と先住民族」全16回
── 『先住民族の10年News』1月号にて完結
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北方領土については、知床が世界遺産に登録される際、世界遺産委員会(ユネスコ)の委託をうけて現地調査をしたIUCN(世界自然保護連合)の報告書で、
・知床と海と国後島を一体の生態系として保全する必要があること
・将来は、日本とロシアと共同で国際自然公園として管理することが望ましいこと
・両地域の先住民族であるアイヌ民族を管理運営に参画させること
などが勧告されたこと(それを日本の外務省は黙殺したこと)が思い出されます。
細川弘明/市民社会フォーラムMLから
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菅直人 内閣総理大臣 殿
前原誠司 外務大臣 殿
高橋はるみ 北海道知事 殿
2011年2月7日「北方領土の日」にむけての
「世界先住民族ネットワークAINU」の宣言
(歴史)
我々アイヌ民族は国後島をクンネシリ(黒く見える島)、択捉島をエトゥオロフ(鼻の
有る処)、色丹島サクコタン(夏の村)、歯舞アポマイ(流氷ある処)諸島等をアイヌ語で
呼んでいました。これらの島々に日本政府は無理やり漢字を当てはめ日本の固有の領
土だと言い張っています。この地域を指して日本政府は「北方領土」と呼んでおり、
ロシアは「クリル諸島」と呼んでいます。そのなかでもウルップ島以南の地域は、元々
北海道アイヌの先祖伝来の土地と海です。
それは考古学や歴史資料にある文献からも明らかで、北海道アイヌがラッコ猟に代
表される海産物や動物の毛皮の産出を行っていた地域でありましたし、住んでもいま
した。(ラッコもアイヌ語です)。実際のところ、これはロシア政府も日本国政府も否
定のしようのない歴史事実であります。ロシアと日本のやり取りはアイヌ民族から見
れば泥棒同士の権利争いでしか有りません。
それにもかかわらず、日ロ両政府は、旧ソ連時代も含め、国際条約締結からアイヌを
はじめとした北方先住諸民族を無視、排除してきました。1855年の日露和親条約では、
アイヌ民族を「日本国民である」として国境画定に利用したにもかかわらず、以後、
主権者としてのアイヌを無視・排除して条約を締結してきたのです。
1875年の千島・樺太交換条約では、大規模な強制移住事件がおきました。これらの地
のアイヌ民族やエンチュウ(樺太アイヌ)は国籍選択が求められ、それまでの生活基盤
の破壊を強いられました。
敗戦処理を巡ったヤルタ会談においても、北方先住諸民族は登場せず、国際条約締結
おいても存在を顧みられないまま現在に至っております。
(現在)
近年は世界の先住民族の大きな解放運動の機運が盛りあがり、2007年には先住民族の
国際法的主体を謳った「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が、国連総会で圧倒
的多数で採択されました。我が国政府も賛成したこの宣言の採択は、先住民族の権利
回復の第一歩が示された瞬間でした。大輪の花をさかせるべく、世界の先住民族は、
躍動を続け、ネットワークを拡げています。
2008年の洞爺湖サミットに際し、世界各地から先住民族がアイヌモシリ(北海道)に
集い、『先住民族サミット「アイヌモシリ」2008』に会した先住民族一同が日本政府
への提言をまとめ、提出しました。そこには、「アイヌ民族は、北海道だけでなく、
本州、サハリン(旧樺太)、クリル諸島(旧千島)、カムチャツカなど、広大な地域で生
活していた先住民族である。この事実にもとづき、日本政府は、いわゆる「北方領土」
の返還交渉にアイヌ民族を主権者として加えるべきである」と表明されています。
「世界先住民族ネットワークAINU」は、2009年に提出された「アイヌの政策にあり
かたに関する有識者懇談会」報告書についての見解を表明しました。この中では、
「5.その他」として、 「いわゆる『北方領土問題』に言及していない点は残念である。
クリル諸島の真の主権者はアイヌ民族であるから国際法や『先住民族の権利に関する
国際連合宣言』27条などを根拠にアイヌ民族に返還されることを求めたい。」と明確
に態度を示しました。
昨年11月、ロシア大統領が「自国の領土」として国後島を訪れ、これに菅首相が
「遺憾の意」を表明し、外相が駐日ロシア大使を呼びだし抗議しました。12月、前原
外相がクナシリ島の上空視察をおこないましたが、今度はロシア第一副首相が「私た
ちロシアの土地」としてクナシリ、エトロフを訪問しました。相次いで閣僚を訪問さ
せて「自国の領土」といわんばかりに実効支配を強めるロシアと「固有の領土」論を
繰り返して抗議や遺憾表明を繰り返す日本との間には、北方諸島の主権者たる先住民
族アイヌ(エンチゥを含む)が登場しません。頭越しに行われており、日ロ両政府は私
たちの存在を無視して領土主張していることに抗議いたします。
(要求)
「世界先住民族ネットワークAINU」は、アイヌをはじめ北方諸島の先住諸民族が国
際法上からも歴史的事実からもこの地域の主体、主権者であることを訴えます。日ロ
両政府は、わたしたち先住民族に対し、国際法や「先住民族の権利に関する国際連合
宣言」を踏まえて、これらの地域の先住民族としてのわたしたちにふさわしい対応を
するべきであります。
(1) 「先住民族の権利に関する国際連合宣言」が成立してから数年が経過しているこ
と、および国際法との関係を踏まえて、日ロ両政府がいわゆる「北方領土問題」を二
国間の問題にとどめず、北方諸島の先住民族を国際法的主体として承認し、この問題
への参加を認め、第三者を介した解決策を模索していくことを要求します。
(2) また特に日本政府と北海道に対しては、現在広く国民・道民に展開している北方
領土返還運動がアイヌ民族を全く無視した誤ったものであることを認め、アイヌ民族
主体の運動にあらため、アイヌ民族が自らの土地をとりもどす運動としてこれを支援
するよう要求いたします。
2011年2月4日
世界先住民族ネットワークAINU
代表 萱野 志朗
事務局長 秋辺日出男
役員一同
------------------------
連載「生物多様性と先住民族」全16回
── 『先住民族の10年News』1月号にて完結
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