兵庫県が朝鮮学校への補助金を減額させたニュースが飛び込んできた。
兵庫県は2月15日、県内の外国人学校を支援するための「外国人学校振興費補助」に関する予算案を県議会に提出し、朝鮮学校の補助金を2分の1に減額するという決定を下した。
減額は2014年度から始まっていた。
現地からの発信によると、県は2014年に「補助金」の支給要件として、
ア、国際的な学校評価団体の認証を受けていること、
イ、日本の教育課程に準じた教育を行っていること―を新設。
要件イは、具体的には、主要5教科(英語、数学、国語、理科、社会)で日本の検定教科書を使用し、その旨を前年度の生徒募集要項公表時まで公表していること、としたが、県はこの要件を、すでに生徒募集要項が公表された14年2月に発表した。
県内には12校の外国人学校があり、イに該当するのは、県内で神戸中華同文学校と兵庫朝鮮学園の6校だが、県は、中華学校で主要5教科を日本の教科書で教えている事情を把握したうえで、朝鮮学校だけを対象とした要件を新設したという。事前の調査で朝鮮学校がその条件をクリアしていないことを見越したうえで8分の1を減額した。
さらに、今年に入っては2月15日に「教員の3分の2以上が日本の教職免許を有していること」を新たな支給要件に付け加え、条件を満たせなければ補助金を2分の1に減額すると朝鮮学校側に一方的に通知した。日本市民らは、「今度も朝鮮学校だけを狙い打ちにした、だまし討ち的暴挙」だと非難する。
日本の学校と同じ条件を課し、まるで朝鮮学校がルールに反しているかのような印象を与えながら、教育の財源を切り崩し、民族教育を財政的に破綻させようとするやり方に憤りを覚える。
3月24日には補助金削減に反対する兵庫同胞緊急集会が神戸朝鮮初中級学校で行われ、兵庫県が補助金を平等に支払うよう、同胞たちが声をあげた。
集会で兵庫朝鮮学園は、度重なる減額は、
「民族教育の自主的権利を否定し、運営を困難に追い込む決定であり、地域住民としてすべての義務を果たしている保護者への負担を強い、子どもたちの『学ぶ権利』を奪う不当措置」
「県政150周年を迎え、『創造と共生の舞台・兵庫の実現』を目指す県が、その基本精神を自ら否定し、『子どもの権利条約』や『人種差別撤廃条約』等の国際条約に反する決定」だとして、県が決定を見直し、朝鮮学校への補助金をすべての外国人学校と平等に支給することを強く求めた。県知事宛ての署名活動も始まった。
そもそも、各種学校である外国人学校に対し、日本の関連法令は、日本の教員免許取得者が教職につくことを定めていない。最近の無償化裁判の口頭弁論で日本政府側は教育基本法を持ち出しているが、日本人を育てることを前提とした学習指導要領に従うことや、教員免許取得を求めることは、外国人学校の実態を無視した権利侵害であり、越権行為だ。
兵庫県民族教育対策委員会は、民族学校は、アイデンティティ育成を主眼に置き、民族の言葉・歴史・文化等のの取得を目指し、他の外国人学校同様、多文化共生社会の構築に大きく寄与しているにも関わらず、「教員免許取得」という要件は、「要件を満たしていない朝鮮学校は、あたかも『劣った学習環境』であるかのような民族教育否定につながる」と危機感を表明している。
さらには、県が新設したこの要件は、教育機会の平等と母国語による民族教育を受ける権利を保障した国連「子どもの権利条約」28条、30条をはじめ、国際人権条約、人種差別撤廃条約など、「すべての者」に等しく教育権を与えるとした、国際条約の精神にも反すると問題点を指摘した。
現在、日本には、125校の外国人学校(各種学校認可校)に2万5948人の児童生徒が通っている(2016年)。
日本には外国人学校の振興を目的とした法律はなく、ほとんどの外国人学校が本国や地域コミュニティの支援、保護者の重い負担で学校運営を行っている。
このブログでも何度か書いてきたが、朝鮮学校に対する地方自治体の補助金は1970年代から始まり、他の外国人学校にも支給が広がってきた経緯がある。
限られた補助金を外国人学校に平等に支給するのではなく、朝鮮学校だけを外すこの人権感覚にあきれ果てるしかない。
自治体にまで差別が広がった悪の根源は、2010年に始まった就学支援金制度からの朝鮮学校排除、補助金問題に関していえば、文科大臣による、2016年の「3・29通知」が大きな影響を及ぼしている。
今年は4・24教育闘争から70年を迎える年。現地では、「第2の4・24教育闘争を」と、権利を勝ち取るための闘いを進めている。
兵庫の闘いに全国の力を!(瑛)