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NPO法人 ナショナルトラストチコロナイ

広く募金活動を行い、寄付金で山林を買い取り、また山林所有者と保全契約を結び、森林回復の活動を行います。

東京大学北海道演習林

2005-11-27 21:05:41 | Weblog

東大北海道演習林(北海道富良野市山部)は、1899年(明32)に
北海道庁から約24,000haの原生林を移管され、東京帝国大学農科
大学試験地として設立されました。富良野という地名もそうですが、
演習林内には西達布(ニシタップ)、老節布(ローセップ)、
幌内沢(ホロナイサワ)などアイヌ語由来の地名があります。
現在の面積は約22,800haでその広さは東京山の手線内側の面積の
約3.5倍あります。1999年、北海道演習林設立100周年を機に
アイヌ民族文化振興に協力する方針を打ち出しました。
2001年度より「天然林管理学研究室」体制をとり、
持続可能な天然林の管理経営の基礎的、応用的研究課題を追求しています。
今回は、教員の宮本先生に案内をして頂きました。
宮本先生は、前日から私達の宿舎を訪ねて下さり、
交流会の中心となって夜遅くまで本当に沢山の森の話を教えて下さいました。
その話を実際に山に入って説明を聞くと、目で見た感覚を通して内容がより理解できました
演習林の中を車で移動したのですが、とにかく広い。
落葉していたためもありますが、森が明るくて手入れが行き届いているという感じを受けました。 
 森林はエゾマツ、トドマツなどの常緑針葉樹と、ミズナラ、イタヤカエデ、
ヤチダモ、カツラなどの落葉広葉樹からなる北方針広混交林が主体で、
林業研究の対象となっている樹種は約40種あります。また最近の調査で、
演習林内に生育するシダ類、単子葉植物、双子葉植物をあわせて
930種類確認しているそうです。阿寒国立公園では8万ha
に800種と言われていますから演習林では2万haに930種ということで、
単位面積あたりの種の数が多いといえます。
その中の71分類郡が絶滅危惧種に指定されています。               
 私達は、林道法面(のりめん)に天然更新しているオヒョウの稚樹を
山引きさせていただけました。落葉したら木の種類が判りづらくなるので、
事前に10cm~20cmの稚樹に赤いテープを目印に付けてくれていました。
小さな稚樹に1本1本テープを付ける作業は大変だったことと思います。
私達は、貸し出しのヘルメットと長靴の装備で作業にかかりました。
オヒョウ以外にも自分の気に入った木があれば持ち帰ってもいいですよ
とのお言葉に私は記念にカエデを頂きました。小さな木でしたが、
根を傷つけないように掘り進むと以外と深くて、しっかり根を張っていた
ことに驚きました。結局オヒョウ100本をはじめ、
カエデ・ナラ・マツなど苗畑に用意して下さったものを含めて、
500本程得ることができました。
これは、「北海道演習林はアイヌ民族文化伝承に協力する」
という方針によるお計らいだそうです。本当に感謝します。
来年の5月にはチコロナイの森にしっかりと根付くことでしょう。

最後に見せて頂いたのは、「植えて森林を育てるより、
伐って森林を育てる」ことを実践している天然林択伐林です。
演習林はほとんどの面積が原生林でも人工林でもなく、
定期的に択伐によって収穫をしている針広混交の天然林です。
10年で一巡の計画で木を伐っていくのですが、伐る木すべてに
なぜ伐るのかという理由があるのです。植えないで伐るだけで
森を育てるには事前に森林を綿密に調査することが不可欠です。
毎年のことですが、調査には約半年かかり、
伐る木を1本1本選んで行く選木作業には約2ヶ月を要します。
学生が選木作業の実習を行った現場でその説明を受けました。
今ある木を生かすために成長を妨げている木、
幹の先端や太い枝が風雪で折れている木、葉っぱの量が極度に
少なくなって光合成が十分行えなくなっている木、
幹に木材腐朽菌であるキノコがついていて放っておくと
使えなくなる木などを切っていくのです。これを天然林施業というのですが、
大切なことは、10年間に成長する分量以下しか伐らない、
伐ることが森林の改良になるように木を選ぶ、ということだそうです。
森全体の命の生産性を視野に入れているのだと思いました。
 朝9時から1時間の講義に続き、麓郷森林資料館の見学、
林道法面の稚樹の山引き、湧き水が山の斜面を流れ落ちる場所での昼食、
苗畑に移動しての苗木取り、本当に北海道の秋を満喫し、充実した1日でした。

アイヌ語
カムイノミ=神への祈りをすること。
アイヌの人は山に入る時、物を頂いたり仕事をする許し、作業の安全をお祈りします。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
※ 宮本先生による注訳
東大演習林は全国に7箇所あります。
苗木=苗畑で育てて小さいながらも
   ”根回し”してあるもの。
稚樹=天然に生えているもの。
山引き苗=天然の稚樹を移植目的で
     引っこ抜いたもの。
事前の森林調査のことを林況調査とも毎木調査とも言います。

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