電脳筆写『 心超臨界 』

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( C・S・ルイス )

不都合な真実 《 アフガン急転と緊急事態の対応――篠田英朗 》

2024-04-10 | 05-真相・背景・経緯
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深刻なのは、偏見にもとづいて制定されている国内法体系である。「在外邦人等の輸送」を定めた自衛隊法第84条の4は、「緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合」、「当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる」とする。一読して矛盾を感じる条項である。もし「安全」が平時と同じ程度にまで確保されていたら、そもそも「緊急事態」ではなく、自衛隊の出動も不要になるはずだ。


◆アフガン急転と緊急事態の対応――篠田英朗・東京外語大学
(「正論」産経新聞 R03(2021).09.01 )

急転直下のアフガニスタン情勢に呼応し自衛隊機がカブール空港に派遣された。極めて困難な活動になることが予測された。それでも派遣の判断をした日本政府を評価したいし、迅速な対応をした自衛隊員の方々には敬意を表する。

ただし邦人1人の救出に終わったことは厳粛に受けとめなければならない。全力を尽した結果であり、批判は適切ではない。だが避難の準備を進めていながら脱出できなかった邦人がアフガニスタンに取り残されている事実を、過小評価するわけにもいかない。

〈 例外状態こそ自国民保護必要 〉

報道によれば、8月26日夕、大使館やJICA(国際協力機構)の邦人やアフガン人職員と家族ら数百人が、日本政府が用意した十数台のバスに乗り、空港へ向かおうとしていたという。ところがそこで空港付近で爆弾テロ事件が起きたため、退避は中止された。

8月17日に日本人大使館員は英軍機で退避した。政府は、そのまま他国の輸送機などを使った邦人退避を続けていくつもりだったようだ。しかし19日にG7(先進7カ国)外相会議で退避作戦の緊迫した状況が話し合われ、さらに24日にG7首脳会議が開催される直前の23日に、政府はようやく自衛隊機の派遣を決定した。

今は「あと1日早かったら」という報道が目立つ。だが23日の時点では、派遣は必要なのか、合法性はあるのか、といった議論も見られた。

まず戦争によって合法政府が崩れ、新政府の承認はもちろん実効支配も固まっていない状態での邦人保護について、「当該国政府の同意がないから国際法違反ではないか」といった見解すらみられたのは、残念だった。国際派は、自国民の保護を図る国家の権利を認めている。例外状態において、特に保護が必要だ。同意がとれない例外的な状態になると国際法は消滅して全てが違法活動になる、などという偏見をもって国際法を語る悪弊は、まず知識レベルの問題として早く取り除いてほしい。

〈 国内法体系が抱える矛盾 〉

深刻なのは、偏見にもとづいて制定されている国内法体系である。「在外邦人等の輸送」を定めた自衛隊法第84条の4は、「緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合」、「当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる」とする。一読して矛盾を感じる条項である。もし「安全」が平時と同じ程度にまで確保されていたら、そもそも「緊急事態」ではなく、自衛隊の出動も不要になるはずだ。この「緊急事態」においても「安全」であることを条件とする文言は、自衛隊の海外派遣に批判的な政党があったため、挿入されたとされる。

もちろん、「緊急事態」であることが大前提になっているので、その範囲内での「安全」だ、と解釈することはできる。今回の事柄で言えば、カブール空港は米軍その他の組織が安全確保活動にあたっていたので、邦人救出活動を可能と考えるのが妥当なレベルの安全がある、と判断できたということだ。そのため逆に、自衛隊は、カブール空港の外では活動できなかった。

頻繁に比較されているが、390人の退避に成功した韓国も、基本的な条件は同じだった。ただ数日早くやるべきことを迅速に行ったにすぎない。「緊急事態」に際しては、必要なことを迅速に行うことが、大きな意味を持つ。日本になかったのは、その重要性の認識だ。首相の政治判断が、G7首脳会議の直前まで引き延ばされた背景には、自衛隊に関する事柄は面倒になりかねない、という官僚機構の本能的な自己防衛もあっただろう。

〈 政治判断支える明晰な法体系 〉

政治判断を迅速に行う体制があれば、現行法でも相当なことができる。もっとも自衛隊員の国外犯規定など、国際法との整合性が国内法で確保されていない点も多々ある。拘束された際に国際法上の捕虜としての地位を主張するための自衛隊員の軍人としての位置づけが、過去の国会答弁で曖昧にされてきた問題もある。今回の事態を契機にして、より良い迅速な政治判断を可能とするために、明晰(めいせき)な国内法体系を整備しておくべきだろう。

今回の事態の背景には、自衛隊の位置づけを曖昧なままに済ませてきた憲法9条の解釈問題がある。「緊急事態」の概念については、現下の新型コロナ対策とも大きく関わっている。国内法体系の整備は、憲法をより良い明晰なものにしていく努力とつなげていかなければ、画竜点睛(がりゅうてんせい)を欠くような結果に終わるだろう。

物事を曖昧なままに済ませ、厳しい議論を避け続けて「調整、調整」と呟(つぶや)いて走り回るだけでは、アフガニスタンはもちろん、国内の新型コロナ対策でも、「緊急事態」を乗り切れない。もう国民はよくわかっているのではないか。欠けているのは、その認識を現実の形にしていくための政治努力である。
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