新・台所太平記 ~桂木 嶺の すこやかな日々~

N響定期会員・桂木嶺の、家族の介護・闘病・就職・独立をめぐる奮戦記を描きます。パーヴォ・ヤルヴィさんへの愛も語ります。

高井元東宝社長ほかみなさんの思い出(^_-)-☆ 映画「千と千尋の神隠し」宣伝費倍増事件の巻(笑)。

2019-01-23 11:09:30 | とにかくVIPの思い出(^_-)-☆

さて、とうとう、このエピソードを披歴するときがやってまいりました・・(笑)

「千と千尋の神隠し」、もういわずもがなの、宮崎駿監督の代表作にして大傑作、そして、日本映画史上に燦然と輝く名作です・・・が(笑)!この映画の超大ヒットの背景には、もう~「マジっすか!?」といいたくなるほど、おかしなおかしなエピソードが続出していたのでした(笑)

スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーですら全く知らない、もうひとつの「千と千尋の神隠し」のサクセスストーリーを、ここでご紹介いたします(笑)

実はこの上記のポスターを作る際、いまは東宝の、いまや常務になられた、当時宣伝プロデューサーのI先輩(私の2年先輩です。「世界の中心で、愛をさけぶ」や「シン・ゴジラ」の特大ヒットでしられる、大ヒットプロデューサーですが、普段はいたって、温厚なやさしいお兄さん、といった感じの方でした)が、当時宣伝部で宣材担当だった私に、「おーい、チコ、ちょっと相談にのってよ」といってきたのがきっかけでした。

「実はさ、このポスタービジュアル、宮崎監督がどうしても特色のピンクを2色使いたい、つまり6色印刷にしたいと言ってるんだよね・・・どうだろう、見積もり、大丈夫かなぁ?」

私は大至急、印刷会社の営業さんである、某K会社の営業さん、Oさん(いまは同社の社長さんです)にご相談しました。Oさんは「おやすい御用だよ。全然見積的に大丈夫だよ!」と言ってくださったので、I先輩に「大丈夫ですよ。宮崎監督に、6色でいきましょう、とお伝えください」と笑顔で答え、I先輩も大変喜んでくれたのでした。

ところが数日後・・私の天敵(笑)N常務(当時。その後専務になられ、いまは関連会社の社長さんになられました)が、いきなり私に怒鳴ってきたのでした!

「かつらぎ!おまえ、何年宣伝マンやってるんや!なんで、『千尋』のポスターの6色を認めたのや!お前はアホか!」

N常務の「アホ!」というのは、ほとんど定冠詞みたいなもので、私は「はーい(^_-)-☆」と笑顔で答えました。「見積的に全然大丈夫だからです」と。

6色印刷は確かに高額です。が、宮崎監督作品は大量に劇場からポスターの注文がくるので、それでうまく単価も抑えられ、総額的には黒字になると、I先輩も私も判断したのですね。

ところがN常務は「アホか、お前は!大至急4色印刷にしろ!宣伝費はそないにかけられへんで、この『千尋』には!わかっとんのか!」とどやすばかり。

私はおもわず、かっちーんときました💦(これが私がサラリーマンとして大失敗な人生をおくってきた由縁であります(笑))

「常務!何言ってるんですか!宮崎駿監督が、6色印刷を希望されたんです!監督が6色を、といったら、絶対6色でいくしかないでしょう!」

そのくらい、いまはどうなのかわかりませんが、当時の映画監督、特に宮崎監督のカリスマ性とご判断には、絶対的なものがありました。みんな宮崎監督を信じていたのです!

こまってしまったのは、I先輩です。「ごめん、チコ・・なんか、僕のせいでおこられちゃったね💦」とすっかり小さくなっておりました。

結局、ポスターは、6色で印刷することで決着し、おかげさまで劇場からも「とてもきれいだね」とお褒めの言葉を頂きました。

よかったなぁ・・とおもいつつ、私はとても気になっておりました。「千尋」に関する情報がまったく私のもとに降りてこないのです。I先輩は何を考えたのか、なかなかテレビスポット案も、予告編案も、私に相談してくれません。「どうするんですか?もうすぐ7月になりますし、公開になりますよ?締め切りが間に合わないですよ?」と、私はせっつく日々で、I先輩は「うんうん、もうちょっとまってて、チコ」と逃げ回っておりました。

すると、6月のとある日。公開を数週間後に控えたころ、I先輩がまたまた私を呼び出しました。

「チコ、きょうの夜あいてる?」

「はい?あいてますよ?」

「チコ、お願いがあるんだけど。『千尋』の映画が完成したんだよ。それで試写をみてくれないかな、18時半の回の試写を回すから。で、ボク、まってるから、だーれにも感想をいわないで、ボクだけに映画の感想、言ってもらえる?」

「もちろん、I先輩の頼みなら喜んで(^_-)-☆いいですよ。やっと完成ですか」

「うん。実は、ボク、試写をみたんだけど・・・」とI先輩は声を潜めました。

「試写を見て、正直、これ・・・あたるのかどうか、よくわからないんだよね。

どうなんだろ、チコの意見をきかせてほしいんだよね」

「え?そうなんですか、ドキドキするなぁ」

「うん、とりあえず、見てみてよ」

・・・というわけで、18時半から試写が始まりました。

とにかく、・・・・爆笑、感涙、感動、衝撃、畏怖・・すべてが爆発的に素晴らしすぎる、大傑作でした!!!

私がいままで見てきたあまたの国内外の映画の中でも、傑作中の傑作だと私は確信したのでした!

でも、当時私はまだ33歳。こっそりと「テアトロ」に演劇批評をペンネームで書き始めたものの、まだ自分でうまく映画の感想をいえない中堅のOLにすぎませんでした。

でも、これは絶対に感想をいうしかない!

私は決めました!

思わず、試写室から、大興奮のあまり、踊りながら私は出ていきました。

I先輩が待ち構えていて、「どうだった!?」と、日ごろの穏やかさとはうってかわって、信じられないほどせっぱつまった表情で聴かれたので、わたしは叫びました!

「I先輩!これ絶対あたります!大ヒットします!というか、これを当てないと、東宝の責任問題にされてしまいます!宣伝費は、倍にすべきですよ!」

I先輩が、日頃の冷静さはどこへやら、「ばんざーい!!!!!!\(^o^)/\(^o^)/」と叫びました!

「チコが、おどったぞ!!!」

I先輩はすさまじい勢いで、試写室の前の廊下をつっきると、宣伝部の奥に鎮座する、映画調整部の部屋に突進していきました。「あれ?先輩?」と私がきょとんとしていると、なんとI先輩は、(先述の)映画調整部担当重役の、高井英幸専務(のちに東宝社長、現在は相談役)に、大興奮しながらかけよったのでした!

高井専務は、ずっと私の試写の見終わるのを待っていたのでした!!!

※こちらが高井専務(現・東宝相談役)です。ね?とってもやさしそうでしょ(^_-)-☆映画大好き、芝居大好き、音楽大好きな、「ミスター東宝」ともいうべき存在です。週末はいつも渋谷のタワーレコードでしっかりDVDやCDチェックをするというオタクぶりも発揮しています(笑) もちろん宝塚もチェック済みの、オールラウンドにエンターテインメントが大好きな高井さんです♡

高井専務はI先輩に真っ赤な顔をして叫びました。

「チコは、なんて言った!?」

I先輩は、大興奮しながらいいました。

「チコは、踊りました!宣伝費を倍にしろと!絶対あたると!ヒットさせなかったら、東宝の責任問題だといいました!\(^o^)/」

高井専務は、

「やったー!!!\(^o^)/チコがおどったぞ!映画を見ておどったぞ!」

とI先輩と手をとりあって、キャンキャン子供のように跳ね回りました。

「よし!I!明日から『千と千尋の神隠し』の宣伝費は倍にするぞ!

N(常務)には俺から言っておくから心配するな!

なぁ、チコが踊っただと?わーはっはっはっは!やったな、I!!」

とふたりで、キャーキャー喜んでいるので、ぼーぜんとしたのは、ワタシです(笑)

「あの・・高井専務? I先輩?」

と私が声をかけると、ふたりともクスクス笑っているのです!!

「チコ、『千尋』は気にいったかい?」と高井専務が茶目っ気たっぷりにおっしゃいました。私は、思わずぴょんぴょんと飛び回りました。いい映画をみると、いつもうれしくなって、跳ね回ってしまうのでした。そして、いつもなぜか、高井専務が「チコ、今回の映画はたのしかったかい?」とかならず聴いてくださるので、うれしくてなんでも正直にぶっちゃけトークでお話していたのでした!

「はい、最高です!大傑作です、すばらしいです!もうこれ、当てなかったら、専務のお給料、半分にしちゃいますよ!」

と私が冗談めかしていいましたら、高井専務が「わーっはっはっは、どえらいプレッシャーをかけられたもんだな。大丈夫だよ。宣伝費を倍にするからね(^_-)-☆絶対にヒットさせるよ!」と楽しげにおっしゃいました。

「あの・・なんで私が踊ると、宣伝費が倍になるんですかぁ?(@_@)」

と、わたしがきょとんとしながら、高井専務とI先輩にきいたら、ふたりとも

「わーっはっはっはっは!」と爆笑しだすではありませんか!

「まったくもぅ~!ふたりとも、私のこと、からかって!!!!」

と私がふくれっつらをすると、高井専務もI先輩もニコニコして、「お疲れさん、きょうはもうかえっていいよ」というのでした。

私が、「え~っ!せっかく残業したんですから、飲みにつれていってくださいよぉ~\(^o^)/」といったら、ふたりとも大爆笑。

「それは、映画がちゃんとヒットしてからね(^_-)-☆」と高井専務がまたまたニコニコしていいました。

「でも、チコ、よかったね。これでN(常務)に怒られずにすむなぁ。ポスターを6色に印刷しておいて、よかったね!」

※みなさま、一番右端が、高井英幸さんです💗😄ノッポさんでしょ♪これは「午前十時の映画祭」の記者会見です。

※で、一番左端が私の天敵?(笑)、N元常務こと、現・東京楽天地社長の、中川敬さんです(笑)ね?いかにもそんな感じでしょ♪ でも、仕事には厳しいですけれど、映画への愛は人一倍熱い方です(^_-)-☆

・・・と、高井専務がおっしゃったのです!

「えーっ、ポスター事件のこと、高井専務はご存知なんですか?」

I先輩がニコニコとしていいました。

「チコのやることなすこと、高井専務はなんでもご存知だよ(^_-)-☆」

私は「はぁ・・(@_@)💦💦」すっかり恐縮したけれど、高井専務のことは「仲良しのとなりの部の専務さんで、立教の先輩」ぐらいに思っていた私でした。

高井専務は、とても背高のっぽさんで、あしながおじさんみたいで、松岡会長(=松岡修造さんのお父様としても有名です)と同じくらい背が高くて、ひょろひょろ長い手足を持て余すように、いつも社内をふーらふら、ふーらふらと歩いていたので、ポスターを社内中に掲出する仕事をしていた私とは、大の仲良しだったのでした(^_-)-☆

N常務は「俺は宣材のことは苦手だっ!」と言って、なんでも私におしつけるけれど、高井専務はポスターもちらしのこともなんでもご存知で、「チコさぁ、もっとこういう映画のポスター、研究してみたらいいんじゃないかな」といろいろアドバイスしてくださる、貴重な優しい、たのもしい大先輩でした。

ポスターも一緒にときどき張ってくださいました。高い場所にポスターを張ろうとして、わたしが「よっこらしょ」と台をもってきて、えっさえっさとポスターを張っていると、

「おーい、チコ、俺、ポスター貼るの、てつだってやるよ」

といって、手伝ってくださったのでした!

役員の方でポスターをはるのを手伝ってくださったのは、なんと松岡会長と、高井専務、このお二人だけでした。

私が冗談めかして、「専務、てつだってくださるのはうれしいですけど、正直ちょっと困ります!」といいました。

高井専務が「なんでだい、チコ?」というので、「だって、専務の時給、めちゃめちゃ高いじゃないですか、そんなに高いアルバイト代、こっちは払えませんもの(^_-)-☆」といったら、高井専務が爆笑して、「だったら、俺みたいに、背の高い男のアルバイト、雇えばいいんだよ。そしたら、チコの仕事、楽になるじゃないか」と言って下さって!

いろいろ本当に気遣ってくださる方でした。今にして思えば、畏れ多くて、大変なエピソードですが・・でも、高井専務はちっともそういうところは、気取ることなく、いつもひょうひょうとされていました(^_-)-☆

それがなんと社長さんになられたときには、本当に仰天しました!さっそくお祝いメールをお送りしたら、とてもかわいらしいメールのお返事をいただけて、とっても嬉しかった思い出があります(笑)

高井社長になられて、映画人のトップとして、映画業界では並ぶものがいないほど、尊敬を集めた名社長でいらっしゃいました。日本アカデミー賞の協会長も務められたこともおありです。

高井社長は社長になられてからも、TOHOシネマズを作られたり、中川さんとスタジオを立て直し、大改革をし、演劇でもシアタークリエを建設するなど、さまざまな社内外の改革をなさり、ついに邦画と洋画のシェアを逆転させる原動力となられました!

私が大病をしてからもずっと気にかけてくださり、病気が一段落してからは、本社の広報室に呼び戻してくださり、本当にうれしかったです!

私が広報室に異動になってからも、やっぱり高井社長は試写室で、わたしに、「チコ、こんどの映画の試写、どうだった?」とニコニコと聞いてくださり、私はやっぱり高井社長になんでも正直に感想をお話していました(^_-)-☆

「千と千尋の神隠し」の宣伝費倍増事件は、おかげさまで、この作品の驚異的な記録ラッシュの原動力となりました。

一番すごいのは、やっぱり邦画史上初の、米国アカデミー賞長編アニメーション部門の最優秀賞をとってしまったことでしょうか。あとベルリン国際映画祭も金熊賞(グランプリ)を受賞しましたし、数々の映画賞を総なめにしました!また日本映画興行記録歴代 第1位の偉業はいまだに破られていません!(今日現在で、累計308億円という大記録を達成しています!)

高井社長のご英断にほんとうに感謝し、東宝時代の最高にすばらしい思い出として、私の脳裏に刻み付けられました。

高井さん、いまでもどうしておられるのかな?

やっぱり映画超~大好き人間として、今日も映画館に通っておられるのかもしれませんね(^_-)-☆

大好きな高井社長の思い出でした!またいつかお会いしたいです!お元気でお過ごしいただきたいです!

※ここで、ご紹介。高井社長の映画愛がぎっしりつまった、「映画館へは、麻布十番から都電に乗って。」(角川文庫)を、ぜひこの機会にお読みください!

とってもたのしくて、クスクス笑えてしまう、珠玉の映画エッセイです♡

 

https://www.amazon.co.jp/%E6%98%A0%E7%94%BB%E9%A4%A8%E3%81%B8%E3%81%AF%E3%80%81%E9%BA%BB%E5%B8%83%E5%8D%81%E7%95%AA%E3%81%8B%E3%82%89%E9%83%BD%E9%9B%BB%E3%81%AB%E4%B9%97%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%80%82-%E8%A7%92%E5%B7%9D%E6%96%87%E5%BA%AB-%E9%AB%98%E4%BA%95-%E8%8B%B1%E5%B9%B8/dp/4041005213

 

※この記事をアップしたところ、ブログをお読みのみなさまから、「もう一人の先輩、I先輩って誰?!」というお問い合わせが殺到していますので、スミマセン、先輩、カミングアウトさせていただきます。

 

 

現・東宝(株)映画調整部兼映画企画部 担当役員、東宝芸能社長の、市川南さんです~😄💗 ね?なかなかのイケメンでしょ♪ でも、素顔はとってもいたずら好きで、映画も芝居も大好き、ジョークの大好きな楽しい先輩です!

私は彼のお嬢さんの名付け親なので、それで、とてもいつも親切にしていただきました(^_-)-☆ 奥様とお嬢さんたちを溺愛してやまない、二女のパパです♡

先輩、この場を借りて、その節はありがとうごさいました!また、楽しい映画の話、企画の話、させてくださいね~♪♪

 

というわけで、すばらしい映画人たちの情熱に乾杯\(^o^)/!

日比谷はきょうも賑やかです♪

またみんなに会いたいですね~♡♡♡



最新の画像もっと見る