『創価学会亡国論─最大・最悪の邪教を撃つ』幸福の科学総合本部広報局著より
第5章 「悪辣な犯罪集団の正体」
和歌山で起きた幸福の科学会員への組織的脅迫の実録
本章は、幸福の科学和歌山支部の会員たちに対し、ある特定の団体が行なっている組織的脅迫の実録である。
事件は九四年五月に始まり、今も執拗に続いている。ここにその主要部分を公表し、日本に存在する某宗教団体の実体を白日の下にさらしたい。
今回明らかになった、彼らの主な手口とは、
【1】親が子供に命じてやらせる脅迫や嫌がらせの電話
【2】家のなかに不法侵入をしての傷害
【3】仲間を総動員しての監視、尾行
などである。そして、これらに連動して、きわめて専門的で大規模な盗聴が行なわれている。
ではこの顔の見えない犯罪者集団とはいったい何者か。いかなる集団がこのような最低・最悪の卑劣な行為を行なっているのか。それは本章で明らかにされる数々の証言と証拠が順次、雄弁に語っていくはずである。すでに被害者からの告訴状も受理され、警察も捜査に乗り出した。われわれは今後も、このような犯罪者集団による不法行為をあらゆる機会を通じて徹底的に追及していくつもりである。なお、プライバシー保護のため、登場人物はすべて仮名とさせていただいた。
手口【1】脅迫および嫌がらせ電話━電話していたのは親から命じられた子供だった!
一連の不審な電話が初めて幸福の科学和歌山支部に入ったのは、五月の連休中に支部で五月研修が行なわれていた日であった。ちょうど、九四年の月刊「幸福の科学」五月号に、創価学会による幸福の科学批判を論駁する講師論文が掲載された矢先のことでもあった。
電話のパターンとしては、
・「殺す」「子供を殺す」「ダイナマイトをしかけた」などの様々な脅迫
・無言、わいせつ、プッシュホンの発信音を送ってくるなどの嫌がらせ
・盗聴を行ない、怖がらせようと、会員の行動を言い当てる
・「情報を売りたい」などと言って気をひこうとする
・会員の声色を使って情報を聞き出そうとする
・会員の周囲の人間に様々な作り話をして、不信の心を抱かせる
・幸福の科学の名をかたって寿司などを大量に電話注文して届けさせる
などである。
以下に、嫌がらせ電話の代表的パターンの実例を時間順に示す。しかしこれらは実際にあった電話のごく一部である。
(1)さまざまな脅迫と嫌がらせ
・最初は五月五日。幸福の科学和歌山支部で、講師による創価学会論駁論文を受けて学会の教義批判についての話があった直後から「死ね」「殺すぞ」「お宅の教団は……」などと言って切れる電話が続けざまに支部にかかってきた。誰が?何のために?しかし支部にいた多くの会員は一様にこの「顔の見えない」脅迫者が誰なのか、直感的に見破ることができた。
・[数日後] 和歌山支部青年部長の町田武史さん(当時二十四歳)宅に不審な電話が二本入る。いずれも奥さんの弘子さん(当時十九歳)が受ける。
一本目は男の声で「岡山の創価学会本部の○○○さんのお宅ですか」と言い、違うと答えるといきなり乱暴に切れる。一、二分後、今度は女性の声で「創価学会岡山本部ですか。番号は××××ですよね(町田さん宅の番号)」と言い、すぐに切れる。
※町田さん宅には、以後、毎日のようにさまざまな嫌がらせ電話がかかる。
・[数日後] 書籍普及係の田島さん宅にも「創価学会岡山本部ですか」と電話があり、「違います」と言った瞬間に切れる。なぜ創価学会がらみの間違い電話が、同じ地区の幸福の科学会員宅に続けてかかって来たのか?
・[二十六日夜] 町田さん宅に二人の男から別々に電話。弘子さんが出ると一本目は「だんな、おらんの知ってるぞ。」二本目は「だんな、大阪に行っとる。」事実、町田さんは大阪に行っており、不在だった。
[同日] 会員の森山さん宅に「これから町田と田島の子供を殺しに行く」と脅迫電話。
弘子さんは森山さんから、生まれたばかりの赤ちゃん(当時、生後二ヵ月)を殺すなどという電話があったと聞いたとき、頭の中が真っ白になった。どこの誰だかわからない。顔の見えない悪魔!彼らには絶対に指一本さわらせたくない。でも、いったいどこで見張られているかもわからない。会話や電話まで一言一言聞かれているのだろうか……。
・[二十九日] 会員の加瀬さんが支部からある会員宅に電話して、会員の和田さんの奥さんが今週長女を出産し、ユカちゃんと名付けたことを話す。すると夜、和田さん宅の留守番電話に「ユカちゃん誕生おめでとうございます」、翌日にも「ユカちゃん食べてもいいですか(笑い声)」などという男の声が入る。
※脅迫の内容から、支部の電話が盗聴されていたとほぼ断定できる(後に犯人も電話で自白した)。実は、五月二日以前に二度にわたり、正体不明の業者が支部のビルの電話配電盤工事に入っているのを支部職員や会員が目撃した。
しかしこの工事に関しては、ビルのオーナーもNTTも知らなかったことが分かった。
・[六月十四日] 町田さんのポケットベルに「563,563」「42,42」等の、呼び出しが入る。町田さんがポケベルの暗号の本を調べると「563」は「殺す」、「42」は「死ね」という意味で、中学生などが遊びで使うメッセージであることがわかった。
・[六月十七日] 夜、事件の調査のために和歌山入りしていた幸福の科学の職員が町田さん宅に行き、「本部のAさんは疲れを知らない方だ」などと、町田さん夫婦を元気づける話をして励ます。
その後その職員がホテルに戻ると、携帯電話に犯人から電話。
「Aさんか何か知らんが、疲れを知らんとは笑わせる」などと話す。
※これで、犯人が町田さん宅の室内を盗聴していることがハッキリした。
・わいせつな内容のイタズラ電話も、七月から頻繁に会員宅に入り始める。
・[七月七日] 会員の名をかたった注文により、近所の寿司屋から寿司七人前が届けられる。
※この日は代金を払ったが、以後、この種の嫌がらせ注文が毎日のように入り始めたので、警察に通報し、店には確認の電話を支部に入れてもらうようにした。
嫌がらせ注文で届いた、あるいは届きかけたもののごく一部をあげれば、
宅配ピザ二十人分
中華料理二十五人前
ハンバーガー七十個
弁当とお茶四十六人分
観葉植物三鉢(五万円相当)
ソファー五脚(約十六万円相当)
三万円の花束三つ
など。総額では数十万円相当にのぼった。
・[十月二日] この日、幸福の科学の行事「アフロディーテ祭」が、全国各地で行なわれ、和歌山でも近隣都市のホールで衛星中継で開催されていた。
そのホールに男から脅迫電話。
「支部長さんいますか……今すぐその会をやめないと、ダイナマイトを爆発させます。」
(2)親が子供に「電話係」を命じて脅迫させる
一連の嫌がらせ電話や脅迫電話は何人かの声でかかって来ていたが、量も頻繁にかけて来るのは、声を押し殺して凄味をきかせてはいるが、かなり若い男のようだった。この男は被害を受けた会員間で、「例の男」と呼ばれるようになっていた。
ところが、ある電話で「例の男」は衝撃の事実を口にした。「自分は創価学会に属する小学校五年生であリ、親の命令でやっていた」と告白したのである。
・[六月十六日] この日も支部に「例の男」から脅迫電話があったが、よく聞くと子供のような声であることに支部の職員が気づく。それから「例の男」は「ボク」と呼ばれるようになり、こちらとの応答でこんなことを言う。
男「いつまでもこっちがガキの遣いみたいなことしてると思ったら大間違いじゃ。お前らの動きは全部読み取れてんじゃ。」
「別に僕らのことおちょくってくれてもええけど。私たちはね、上からの指示に従ってるだけですから。上の人は怖いですよ。」
・[六月十八日] 町田さんの実姉の堀さん宅に、「例の男」の声が「オオタ」と名乗り、一連の犯行を詫びる内容の電話をかけてきた。
男「(泣きそうな声で)僕、実は小学校五年生なんですけど、町田さんが町田敬三さんの息子さんということが今日わかりまして、もうやめます。町田敬三さんと、うちの幹部の人が親しい関係なので。」(町田敬三さんは、ある団体の長を長年務めており、その関係で公明党の県会議員の支援等をしておられた)
堀「創価学会さんですか。」
男「そうです。」
堀「あなたのお父さん、お母さんも創価学会ですか。」
男「そうです。僕もやりたくなかったんやけど、お父さんに言われて命令で『電話係』でいたずら電話してました。お母さんも一緒にやってました。」
堀「盗聴されているみたいなんだけど。」
男「盗聴は、支部と町田宅と、Kマンション(加瀬さんの入居しているマンション)でやってましたけれども、近いうちにそれも取ります。資料(幸福の科学の?)も本部で今日処理しました。親に謝るように言われて電話しました。」
しかし、その後方針変更させられたのか、それからも盗聴や脅迫電話は続いた。
(3)「情報を買ってくれ」「殺される、助けてくれ」等と訴えて撹乱してくる
・[八月二十三日15時20分] 東京の幸福の科学職員に「例の男」から電話。「創価学会の情報を一千万円で買うてほしい。欲しければ、今日の夜八時、○○(職員の名前)に町田のマンションまで来させろ」と一方的に言って切る。
[同日16時25分] 町田さん宅マンションのインターホンに例の男の声。(町田さん宅はこの数週間前、少し離れた所に引っ越しており、嫌がらせ電話を避けるために電話を引かなかったところ、インターホンに割り込んできた)。
「八時までに金をそろえてマンションの前に来い。」
[同日21時20分] 職員が町田さん宅に到着。以後四十分間に、インターホンにイタズラのチャイムが十数回入る。
[同日22時00分] インターホンに職員の声を真似たイタズラが入る。
「あ、○○です。開けてください。」
※この日は21時20分から22時00分過ぎまでの間、誰もインターホンに触れていないことが確認されている。何らかの遠隔操作でインターホンを鳴らし、通話してきたことがわかった。
・[八月二十六日] 町田さん宅にいた職員の携帯電話に「例の男」からの電話が三本入る。
一本目(15時20分)
男「お宅らがこの情報を一千万円で買うてくれるなら、今から一時間以内に、マンションの五階の非常階段に金を置いておけ。」
職員「そんな金はない。」
男「百万円でもいい。その代わり、口は割らないと約束しろ。」
二本目(16時25分)
男「そのマンションは盗聴されているから、さっきの件はそのマンション内では一切口に出さないで下さい。これがばれたら、僕ら殺されるかもしれないですから。こっちには医者は何人もいて、にせの死亡診断書ぐらい、いっくらでも書きますから……。今はちょっとそのマンションの周辺の見張りがきついんで動けませんけども、僕ともう一人、サノ君ていうんですけども、二十四時間以内に必ず行きます。僕らも仲間を裏切る訳なんで、ちょっとほんとに怖いんで。僕はもう、今日警察に行こうと思ってます。その前にお宅にちょっと行くんで、それまで警察には言わないでください。じゃあ、お願いします、絶対……。」
三本目(19時02分)
男「ハア、ハア、助けてください。サノ君が見つかって殺されました。僕今から行きますんで、助けてください。」
※特に三本目の電話は迫真の演技であり、ほんとうに殺されそうな感じだったと言う。職員も、万が一、ほんとうなら大変だと思い「助けてやるから来い」と答えたが、このあと終日、町田さん宅には誰も来なかった。
この「例の男」からは一ヵ月ほど電話がなかったが、十月になって再び、脅追電話をかけてくる。
(4)声色をつかって情報を取ろうとしたり「疑」を抱かせようとする
七月二十九日、和歌山東警察署に町田さんからの告訴が受理され、警察も捜査に乗り出し始めた。
「例の男」から電話がかかって来ても、すぐ切ることにしたので、「例の男」としては取りつくしまがなくなった時期があった。
すると今度は、町田さんの奥さん弘子さんの「ニセモノ」が現われた。本人そっ〈りの声で「引っ越した自分の家の電話番号がわからなくなったので教えてくれ」「もう退会するから手続きしてくれ」などと電話をよこすようになったのである。
・[八月一日18時05分頃] 職員の携帯電話に、二十歳ぐらいの女の声で電話が入る。
「町田です。エリカちゃん(町田さんの赤ちゃんの名)どこにいるかご存じないですか。武史くんから新しいマンションの電話番号聞いてないですか。」
※声も口調もまったくそっくりであったが、話の内容がおかしいので電話を切る。
[同日22時50分] 和歌山支部にも、町田弘子を名乗る女性から電話。
女「武史くんから○○町の方の新しいマンションの住所聞いてませんか。町田です。」
職員「今、どちらですか。公衆電話からですか。」
女「ええ、今はちょっと、和歌山市駅の方にいてるんですよ。あのう、新しいマンションの方に、エリカちゃんも置いてるんですけども。」
職員「子供さんと別れ別れになっちゃったの?」
女「はい。」
職員「ええと、電話番号は、七三の○○○○です(警察署の番号)。」
女「あっ、ちょっと待って下さい。(小声で)七三の○○○○、覚えた?」
職員「あれ、誰かいるのかな、横に。」
女「ちょっと、知り合いいてるんですよ。どうもありがとうございます。」
[同日23時00分過ぎ] やはり町田弘子を名乗る女から、会員宅二軒に電話。いずれも「メモをなくしたので、自分の新しいマンションの電話番号を教えてほしい」との内容。
・[八月二十四日] ニセの町田弘子から、東京の職員に電話。
「御無沙汰してます。町田です。今、武史くんは留守にしてるんですけども、家のインターホンが鳴って、犯人から東京のこの電話番号教えてもらって、ここにかけたら○○が出るから、今から言うことを伝えろって言われたんですよ。『一つだけこちらの情報を教えてあげます。和歌山支部の会員で二人、私たちに情報を流してくれる人がいます。あなたたちで一生懸命探しなさい』ということなんですよ」などと話す。
※このように、仲間に対する「疑」の心を起こさせようとするのも、彼らの典型的なやり口である。
※ニセの町田弘子からはその後もたびたび支部に電話がかかり、「退会する」などとデタラメを話している。
手口【2】家まで来て嫌がらせ━女性ひとりの時をねらって鍵を開けて侵入してくる卑劣な手口
電話では、しょせん言葉や声で嫌がらせをすることしかできないが、もう少ししつこくなると、家の前まで来てベルを鳴らして逃げる、ドアをたたいて怒鳴るなど、子供じみた低劣な嫌がらせをするようになる。
その際、あらかじめ無言電話を入れて気味悪がらせたり、見張りと電話を連動させて怖がらせようなどとするのが、彼らの特徴と言ってよい。
しかし、和歌山ではまことに凶悪にも、町田弘子さんが家でひとりの時に、合鍵でドアの鍵を開けて侵入し、気を失った弘子さんの腕に傷を負わせて逃げるという傷害事件まで起こしたのである。彼らは犯罪集団そのものであり、その存在は、「市民の敵」以外の何ものでもない。
(1)家のベルを鳴らしたりして嫌がらせをする
・[五月二十六日] 町田さん宅に「だんな、大阪に行っとる」などの電話があった一時間後の夜十時、町田さん宅の玄関のベルが三回鳴る。
弘子さん「私は、会員さんが来てくださったかと思って、玄関に行きました。そして、ドアの覗き穴から外を見ましたが、覗いた瞬間、全身に戦慄が走りました。覗き穴は誰かの手で塞がれていたのです。
勇気を出して、インターホンで『はい』と返事をすると、三人ぐらいの大人がすごい勢いで、一気に階段を駆け降りて行く足音がしました。」
弘子さんはすぐ加瀬さんに「不審な三人組が家に来た」と電話した。
加瀬さんはすぐ町田さん宅に向けて家を出る。その直後、加瀬さん宅に無言電話。
十分後、加瀬さんは町田さん宅に到着。同刻、加瀬さん宅に例の男から「死ね」と脅迫電話。
やがて町田さんのご主人が帰宅されたので、加瀬さんは町田さん宅を去る。同刻、加瀬さん宅に例の男から「おまえ……」と嫌がらせ電話。
※ことさらに町田さん宅・加瀬さん宅の動きに合わせて電話を入れ、恐怖をそそろうとしている。数人で見張りや盗聴をし、連絡しあってやっていると思われる。
(2)家の前に汚物を置く
町田さん宅の玄関前に次々と汚物が置かれる。胸の悪くなるような、まったく下等なやり口であり、用いる汚物に彼らの心の腐敗がそのまま表われている。さらに、大川隆法主宰先生が邪教・創価学会を名指しで批判された十二月十八日のエル・カンターレ聖夜祭(東京ドームで開催。全国各地に衛星中継された)直後からは、嫌がらせはさらにエスカレートする。
・[五月三十日] 腐った魚の頭が三個置かれているのを発見。
・[六月五日] 腐った卵三個がたたきつけられているのを発見。
※町田さん宅が親子三人家族なので、ことさらに「三」という数を強調して怖がらせようとしているのがわかる。外国の映画などでは、マフィアが犯行を予告する手紙に動物の首の絵を描いてきたりするが、そのマネのようだ。
・[六月十二日] マヨネーズをかけた魚の切り身が置かれているのを発見。
町田さん「前の日に、田島さんに自宅から電話して『魚の頭を持ってくるぐらいなら、どうせなら切り身とか役に立つものを持ってくればいいのに』と、冗談を言ったばかりでした。家の電話が盗聴されている以外あり得ません。」
※彼らはこのように、卑劣、稚拙なやり方で自分たちの「力」を誇示せずにはいられない傾向を持つ。
・[六月十四日] 血にまみれた腐った豚肉がばらまかれているのを発見。
・[六月十七日] 腐った挽き肉がばらまかれているのを発見。非常な悪臭。町田さんはすぐに電話で職員を呼ぶ。実家の母親が心配で電話をしかけたが、盗聴のことが思い浮かんだので、家を出て公衆電話へ行く。
町田さんが出ていた十分ほどの間に町田さん宅の玄関のチャイムが鳴り、数人が階段を駆け降りていく音がする。直後、「○○職員の昼めしじゃ」との電話。
弘子さんが玄関を閉けると、挽肉の上に腐ったタラコが置いてあった。
・[十二月二十日朝] 鮭の切り身三枚が置かれており、一枚の上に一文字ずつ、チラシを切り抜いた文字で「コ」「ロ」「ス」と置いてあるのを発見。
(3)不法侵入、そして傷害
弘子さんが家にひとりの時、犯人グループが侵入。弘子さんはあまリのショックで気絶し、一時、夫の顔もわからない記憶喪失状態におちいってしまう。
・[六月二十四日15時00分頃] 町田さんが「ちょっと外に出てくる」と言って駅前の書店に行く。家には弘子さんが残る。
[15時15分頃] 弘子さんが玄関横の部屋にいると、彼らが来た。
数人の男がやって来て、玄関の横の窓の雨戸を「おい!おい!」と怒鳴りながら激しく叩く。弘子さんはふいをつかれて、心臓が止まりそうになり、両手で耳をふさいで、玄関横の部屋でしゃがみこんでしまった。
弘子さん「もう終わったかと思って耳から手を離すと『カチャッ』と音がして、確かに鍵をかけたはずの玄関のドアの鍵が開く音がしたのです。そして目の前で、玄関のドアのノブがゆっくり『ガチャリ』と回るのが見えました。
私の恐怖はピークに達し、次の瞬間、気を失ってしまったのです。それから記憶を取り戻すまでのことは、まったく覚えていません。私は、一時的に記憶喪失になってしまったということでした。」
※以上は、弘子さんが記憶を取り戻したときにわかったことである。
[15時30分頃] 町田武史さんの実姉の堀さんに犯人から電話。
「Lパレスの201号に早く行ってあげた方がいいと思いますけど。お宅のお嫁さん、自殺しますよ、ほっといたら。」堀さんは急いでポケットベルで町田さんに連絡を取って電話の内容を伝え、すぐ帰るように言う。
[15時40分頃] 町田さん、家に戻る。玄関の鍵が開いているので不審に思う。(ここ五日ほどで、閉めたはずの鍵が開いていることが二回ほどあった)
町田さんは室内でべタッと倒れている妻を見つけた途端、全身を冷たいものが走り抜けた。妻の体を揺すって「おいおい」と声をかけた。揺すっているうちに、彼女はようやく意識を取り戻して目をひらいたが、こともあろうに町田さんに「だれですか」と聞いたのだ!
町田さん「私は足元が崩れていくような衝撃を受けました。妻はまったく記憶を失っていたのです。自分のことも、私や子供のことも、友人のこともまったくわかりません。アルバムを見せても記憶は全然戻りませんでした。
さらに、妻の腕にはカミソリでスパッと切ったような、かなり深い傷がつけられており、血がシャツににじんでいました。」
※町田さんは急遽、弘子さんを病院へ入院させる。
医師の診断によると、弘子さんは完全な記憶喪失であった。しかも弘子さんには脱毛症状があり、長い間、精神的抑圧下にあったことが認められた。ちなみに弘子さんは、五月の事件勃発以来、一ヵ月半で十ニキロもやせてしまっていた。
※連絡を受けた各地の支部や会員はすぐさま治癒のための祈り<修法>を行なう。医師が徹底的に診察し、完全な記憶喪失であると診断書も書き、回復までには早くて二、三年かかると言われた症状だったが、次の朝、弘子さんは奇蹟的に記憶を取り戻した。
※しかし、この夜から支部、町田さんや町田さんの身内のお宅などに、「町田の嫁はん、もう一度精神病院に送り込んでやる」「お前の親戚に気違い女がいる。世間にいいふらしてやるぞ」などという電話が入り始めるのである。