長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

ジイド「蕩児の帰宅・愛の試み」

2023-02-25 19:57:00 | 

再読のための覚え書き


蕩児の帰宅・愛の試み

アンドレ・ジイド(1869-1951

中島昭和訳


《蕩児の帰宅》

聖書の中の「放蕩息子」の譬え話をモチーフにした話。


裕福な家庭に育った彼は、自由を欲して家を飛び出し、放蕩を重ね、貧しい身なりで家に帰ってきた。


父は、彼を喜んで迎え入れた。彼は、最初に父、次に兄、そして母と対話をする。


ただ、聖書(ルカによる福音書15章)と決定的に違うのは、彼に弟がいて、弟は外の世界を巡ってきた兄に憧れ、自分もいつかは出ていきたいと願っていることだ。


そんな弟に、彼は語りかける……


他、欲望の解放と絶望を描く「愛の試み」、自らを預言者と見立てる「エル・ハジ」、ギリシャ神話を土台にした「フィロクレート」を併録。



2023.2.25読了


蕩児の帰宅・愛の試み

角川文庫

昭和36530日初版発行


# #読書 #文学 #文庫 #ジイド #蕩児の帰宅・愛の試み






大江健三郎「死者の奢り・飼育」

2023-02-24 16:10:00 | 

再読のための覚え書き


死者の奢り・飼育

大江健三郎(1935-


《飼育》

戦時下。「僕」は、町の人々から蔑まれる村に住んでいた。


ある日、米軍の飛行機が山に墜落。一人の黒人兵を、村で「飼育」することになる。


その時から、村人たちは支配する側の特権を得たのだ……


しかしまぁ、大江健三郎の小説は、どれを読んでも息苦しい。



2023.2.23読了


死者の奢り・飼育

新潮文庫

昭和34925日初版発行

昭和4273010


# #読書 #文学 #文庫 #大江健三郎 #死者の奢り・飼育






シムノン「男の首」

2023-02-21 22:22:00 | 

再読のための覚え書き


男の首

ジョルジュ・シムノン(1903-1989

宗左近訳


メグレ警部は、富豪の未亡人と女中の殺人犯としてジョセフ・ウルタンを捕らえた。


しかし、死刑判決に疑問を持ち、ウルタンを故意に刑務所から脱獄させて、真相を明らかにしようとするが……


メグレ警部と犯人の心理戦が、ドストエフスキーの「罪と罰」を連想させる。



2023.2.21読了


男の首

角川文庫

昭和381015日初版発行

昭和413103


# #読書 #文学 #文庫 #シムノン #男の首








岡本かの子「巴里祭」

2023-02-19 00:20:00 | 

再読のための覚え書き


巴里祭

岡本かの子(1889-1939


《巴里祭》

妻を日本に残してフランスに留学した新吉を取り巻く、フランス人女性たちの三者三様。


《丸の内草話》

「私」は、女医として、ひとり息子の卓が勤める丸の内の会社の産業医となる。


卓の周囲の女性会社員らと接しながら、「私」はいつしか心の中で、息子の嫁となるであろう女性を探していた。


やがて卓が関西の支店に転任し、卓と親しい徳子がいつしか出社しなくなった……


大正期の東京丸の内や銀座の風情の描写を交えながら、息子に対する母の気持ちが綴られる。



2023.2.18読了


巴里祭

新潮文庫

昭和24730日初版発行

昭和3112309

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #岡本かの子 #巴里祭






丹羽文雄「遮断機」

2023-02-16 22:57:00 | 

再読のための覚え書き


遮断機

丹羽文雄(1904-2005


吾妻九三は、踏切の遮断機の前に止まるタクシーの中に、酔い潰れた調治の姿を見た。


調治は、九三の腹違いの弟だった。


しかし、九三はそのタクシーを避けた。なぜなら、彼の行き先は、調治の妻のもとだったから……


「自己嫌悪とは、何か。自分で自分をきらいぬくというのは、どういう意味か。きらう己は、何者か。もう一人の自分とは、何ものか」


『罪の自覚』について、心の底なしの奥深くまで探ってゆく作品。絶版のままなのが惜しい。


巻末の亀井勝一郎による親鸞を引用した解説が胸にストンと落ちる。


他、老醜を描いた「襤褸の匂い」を併録。



2023.2.16読了


丹羽文雄

角川文庫

昭和30310日初版発行

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #丹羽文雄 #遮断機