再読のための覚え書き
秋立つまで
嘉村礒多（1897-1933）
「私小説の極北」と評された嘉村礒多の私小説。
大江圭一郎は、郷里で妻子と暮らすものの、愛人の千登世と出奔して上京。
圭一郎は編集の仕事、千登世は裁縫の仕事にありつくが、二人の生活はままならない。
ある日、郷里の妹から手紙で、圭一郎は一人息子の敏雄が入院したことを知るが……。
貧困に喘ぎ精神を追い詰められた生活を描く。
2022.12.30読了
秋立つまで
岩波文庫
1953年9月25日初版発行
1985年11月7日4刷
旧仮名遣い
#本 #読書 #文学 #文庫 #嘉村礒多 #秋立つまで
再読のための覚え書き
冬の宿
阿部知二（1903-1973）
卒業論文を落ち着いて書くために、「私」は下宿先を探した。
そして「私」は、下宿に選んだ霧島家で、秋から春までの短い期間を過ごす。
名家に生まれながらも没落した霧島嘉門、心身ともに傷つきながら家庭を支える妻のまつ子。霧島家の寒々しい人間関係の中に、次第に「私」は飲み込まれてゆく……。
2022.12.29読了
冬の宿
新潮文庫
昭和23年7月31日初版発行
昭和50年3月20日39刷
#本 #読書 #文学 #文庫 #阿部知二 #冬の宿
再読のための覚え書き
クロイツェル・ソナタ
レフ・トルストイ（1828-1910）
長距離列車の中、居合わせた数人の旅客の間で、恋愛と結婚についての議論が始まる。
目付きの鋭い老人ポズドヌイシェフは、他の旅客の言うところの「真の愛」を否定し、自分の夫婦生活を話し始める。
彼は、妻とバイオリニストとの関係を疑って妻を殺し、刑期を終えて出てきたのだった……。
2022.12.27読了
クロイツェル・ソナタ
岩波文庫
昭和3年9月15日初版発行
昭和42年7月30日41刷
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再読のための覚え書き
下町
林芙美子（1903-1951）
《下町 ダウン・タウン》
りよは、郷里の静岡の茶を東京で売り歩いて生計を立てている。
りよの夫は戦争でシベリヤに抑留され、出征からもう6年も帰ってこない。
りよはある時、鉄材置き場の人夫の鶴石と出会うが、鶴石もまたシベリア抑留の経験があった。りよは次第に鶴石と親しくなり……。
《匂い菫》
つたは、歳の離れた老人に囲われている。
つたには頼子という娘がいるが、かつて愛人の気を繋ぎ止めるために妊娠を偽って人から赤子を譲り受けた。それが頼子だった……。
いずれも女性の深い心情を捉えた好短編。
その他、「軍歌」「折れ葦」「御室の櫻樹」を収録。
2022.12.25読了
下町
角川文庫
昭和32年5月30日初版発行
旧仮名遣い
#本 #読書 #文学 #文庫 #林芙美子 #下町
再読のための覚え書き
水晶
アーダルベルト・シュティフター（1805~1868）
手塚富雄訳
ボヘミア南部の山間の小さな村。クリスマスの前日、靴屋の子のコンラートとザンナの兄妹は、山を越えて祖母を訪ねる。
祖母の家で食事をし、たくさんの土産物を貰った二人は帰途につくが、突然の雪に方向感覚を失い、一面真っ白な山を彷徨い歩いてしまう……。
画家でもあったシュティフターの精緻な自然描写に息を呑んだ。
2022.12.24読了
水晶
岩波文庫
1952年8月25日初版発行
1982年8月20日31刷
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