長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

島崎藤村「嵐・山陰土産」

2022-09-30 22:23:00 | 

再読のための覚え書き


嵐・山陰土産

島崎藤村(1872-1943


《嵐》

妻を亡くし、男やもめとなった「私」(島崎藤村)は、4人の子どもたちを男手ひとつで育てることになった。


関東大震災が起きたり、治安維持法が制定されたりという社会の嵐と、子育てという家の中の嵐。その中で、「私」は父と母の二役をこなしてゆく。


他、娘の成長を描く「伸び支度」、子どもたちにお金を分ける「分配」、次男との旅の記録の「山陰土産」を収録。



2022.9.30読了


嵐・山陰土産

新潮文庫

昭和23615日初版発行

昭和428513

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #島崎藤村 #嵐・山陰土産









太宰治「女生徒」

2022-09-29 22:10:00 | 

再読のための覚え書き


女生徒

太宰治(1909-1948


女性の一人称による短編集。

表題作の《女生徒》は、レオン・フラピエの《女生徒》に触発されて書いたようだ。


昨年読んだそのフラピエの短編集《女生徒》の中では表題作よりも他の小品に感銘を受けたように、太宰の短編集《女生徒》の中でも強く印象に残ったのは小品《葉櫻と魔笛》と《きりぎりす》だった。


《葉櫻と魔笛》

18歳の妹は腎臓結核を患い、痩せ衰えて死を待つばかりという有り様だった。


姉の私は、妹の箪笥の奥底に、三十通ほどの男性からの手紙が隠されていることを知り、いけないと思いつつ読んでしまう……


《きりぎりす》

私は、売れない画家だった夫がいつしか有名になり、夫の思いとは逆に、夫の成功を不安に感じていた……



2022.9.29読了


女生徒

角川文庫

昭和291020日初版発行

昭和4283043

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #太宰治 #女生徒






フレドリック・ブラウン「やさしい死神」

2022-09-28 01:11:00 | 

再読のための覚え書き


やさしい死神

フレドリック・ブラウン 1906-1972


アリゾナ州の国境に近い町。

一人暮らしのジョン・メドリー宅の裏庭で、若い男が銃で頭部を撃たれて倒れていた。


男の身元はわかったものの、事件は迷宮入りの様相を呈していた。


しかし、様々な人々の証言を通して、やがて犯人の動機が明らかになる。



2022.9.27読了


やさしい死神

創元推理文庫

196133日初版発行


# #読書 #文学 #文庫 #フレドリック・ブラウン #やさしい死神






丹羽文雄「日日の背信」

2022-09-25 19:59:00 | 

再読のための覚え書き


日日の背信

丹羽文雄(1904-2005


経済雑誌社の社長である土居広之は、病弱な妻を愛しつつも、偶然知った屋代幾子と邂逅を重ねるうちに、幾子に強く惹かれはじめた。


幾子は銀座の宝石商の2号だったが、土居によって助け出され、二人は一線を越えた関係となった。


幾子は土居に身も心も委ね切っていたが、土居の心は、妻の死をきっかけに揺れ動きはじめる。


「人間とは、 何という複雑怪奇な存在だろうか。矛盾したふたつの心を抱きながら、何くわぬ顔をしている。 不貞と貞潔が、仲よく心の中に存在するかのようである。人間は、もともと矛盾に耐えられるように組織されているのか。」


・・・・・・・・・・・・


ストーリー自体はまるで昼メロなのだが、心理描写が緻密で引き込まれる。その極致である最後の章は圧巻。



2022.9.25読了


日日の背信

新潮文庫

昭和33215日初版発行

昭和4483028


# #読書 #文学 #文庫 #丹羽文雄 #日日の背信






丹羽文雄「哭壁」

2022-09-20 21:31:00 | 

再読のための覚え書き


哭壁

丹羽文雄(1904-2005


特攻隊員だった南条良平と菅達治は、復員して九州で療養した後、それぞれ元の生活の場に帰っていった。


東京で屈指の南条旅館を商う母の元に帰った良平。妻に逃げられ、郷里の栃木で息子と娘を育てる達治。その二人の思いも寄らぬ戦後の生き様。


「死に伴う自尊心を、彼はほんとうの自尊心だと考えたかった。以前の自尊心はあまりに死とかけ離れていて、それは自尊心といわれなくともよいものであったような気がした。」



2022.9.20読了


哭壁

新潮文庫

昭和2645日初版発行

昭和452527


# #読書 #文学 #文庫 #丹羽文雄 #哭壁