長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

福永武彦「草の花」

2021-11-29 10:18:00 | 

再読のための覚え書き


草の花

福永武彦(1918-1979


東京郊外のサナトリウム。私の病室に転院してきた重い結核患者である汐見は、肺の形成手術ではなく、危険視されている肺葉摘出手術を強行に望む。それは自殺行為にも等しかった。


手術室に向かう汐見は、枕の下に隠した2冊のノートを、私に託した。


2冊のノートに綴られた、汐見の2つの青春。恋愛、生と死、宗教、戦争、そして絶望的な孤独。



2021.11.28読了


草の花

新潮文庫

昭和31310日初版発行

昭和36101011

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #福永武彦 #草の花






佐多稲子「くれなゐ」

2021-11-27 06:38:00 | 

再読のための覚え書き


くれなゐ

佐多稲子(1904-1998


夫婦の危機を描いた私小説。


明子と廣介の夫婦は、ともに作家である。明子の方が廣介よりも先に作家として認められたという事実が、夫婦の間に亀裂と隔たりを生んだ。


焦燥ゆえに外での恋愛に走る廣介。作家であると同時にひとりの女であることを悲嘆に思う明子。夫婦間の愛情のあり方が問われ続ける。


「いつでも家庭的な些事から廣介を守ろうとし、彼の俗世間には当てはまらぬような性質も、彼の詩なのだとおもい、純粋に保とうとして努力した。今になって見れば、彼は明子のこの心づかいにさえ反抗しているようなものだ。」



2021.11.26読了


くれなゐ

新潮文庫

昭和27528日初版発行

昭和31759

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #佐多稲子 #くれなゐ






徳田秋声「縮図」

2021-11-24 06:59:00 | 

再読のための覚え書き


縮図

徳田秋声(1872-1943


「縮図」は都新聞(現在の東京新聞)に連載されたが、芸者の半生を描いたその内容が、「太平洋戦争直前の時局柄好ましくない」と内閣情報局からの干渉を受ける。


秋声は、「妥協すれば作品は腑抜けになる」と言って、連載を中断。そのまま未完の作品となった。


・・・・・・・・・・・・


均平は、妻の死後に家を出て、銀子という芸者上がりの女と同棲している。


銀子が均平の後ろ盾で芸者屋を始めた頃、離れて暮らす娘から手紙をもらった均平は、富士見の結核療養所の入院中の息子を見舞い、それを機に、娘に銀子を引き合わせる。


物語は、貧しさの中にあっても素朴で健気な銀子の過去に遡り、淡々と銀子の来し方が綴られる。秋声が銀子の姿を慈しみながら書いているように思われた。



2021.11.23読了


縮図

岩波文庫

昭和2675日初版発行

昭和4651719


# #読書 #文学 #文庫 #徳田秋声 #縮図






徳田秋声「仮装人物」

2021-11-22 09:35:00 | 

再読のための覚え書き


仮装人物

徳田秋声(1872-1943


再び徳田秋声の私小説。

29歳年下の弟子山田順子に惹かれて翻弄される自分の姿を自嘲的に描く。


・・・・・・・・・・・・


中年作家の庸三のところに、地方から出てきた葉子は、自分で書いた小説の原稿を持ってくる。


やがてその原稿は出版され、葉子は東京のカフェで働きながら多くの知人を得て、その美貌で多くの男を惹きつける。


妻を亡くした庸三も、そんな葉子の華やかさに、次第に惹かれ始めるのだった。



2021.11.21読了


仮装人物

岩波文庫

195619日初版発行

19893172

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #徳田秋声 #仮装人物






徳田秋声「爛」

2021-11-21 10:34:00 | 

再読のための覚え書き


徳田秋声(1872-1943

木村荘八 挿絵


浮気性の浅井は、お柳という妻がいるものの、かつては遊女だったお増を愛人として囲っている。


やがてお増は、遠縁の若い娘のお今を家に預かるが、故郷の青年との縁談で心の揺れるお今は、浅井との距離をも縮めるのであった。


先日読んだ「黴(かび)」といい、この「爛(ただれ)」といい、どちらも湿り気と気怠さが最後まで付き纏う。



2021.11.20読了


角川文庫

昭和291030日初版発行

旧仮名遣い


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