長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

芹沢光治良「女にうまれて」

2021-07-30 12:32:00 | 

再読のための覚え書き


女にうまれて

芹沢光治良(1896-1993


戦争で焼け出された作家の杉は、妻と4人の娘たちと、庶民としての慎ましい生活を送っている。


お嬢様育ちで女中のいない生活に戸惑う妻を補うかのように、杉は娘たちに父性愛を注ぐのだった。


・・・・・・・・・・・・


結婚を女の唯一の幸福と信じる母、打ち込めるものを求めつつ結婚してゆく姉たち、ひたすら自分の道を追い求める妹たちの、それぞれの心象や、戸惑いつつも関わろうとする父の姿がほのぼのと描かれていておもしろかった。


2021.7.29読了


角川文庫

昭和37130日初版発行

昭和4593017


# #読書 #文学 #文庫 #芹沢光治良 #女にうまれて






堀辰雄「風立ちぬ・美しい村」

2021-07-23 09:17:00 | 

再読のための覚え書き


風立ちぬ・美しい村

堀辰雄(1904-1953


《美しい村》

「美しい村」という小説を構想中の若き作家が、滞在中の軽井沢で見聞きしたことや、また、少女(《風立ちぬ》の節子)との出会いを綴ったもの。


《風立ちぬ》

結婚を約束した「私」と節子は、節子の結核の治療のため、富士見高原のサナトリウムに入所する。


限られた命の時間の中で、二人は幸せを確認し合うのだった。


・・・・・・・・・・・・


私小説ゆえなのだろうか、感覚的で美しい描写にもかかわらず捉えどころのない様は、まるで読み手の共感を微妙に避けているかのようにも感じてしまう。



2021.7.22読了


岩波文庫

195619日初版発行

198291030


# #読書 #文学 #文庫 #堀辰雄 #風立ちぬ・美しい村






フセーヴォロド・ガルシン「あかい花」

2021-07-23 09:16:00 | 

再読のための覚え書き


あかい花

フセーヴォロド・ガルシン(1855-1888

神西清訳


《あかい花》

精神病院に拘束された男は、病院の庭に咲く赤い花を「悪の象徴」と判断し、それを摘むことに正義感を燃やす。


他四編


・・・・・・・・・・・・


ガルシンは度々精神を病み、33歳の若さで自殺未遂し、その怪我の為に亡くなる。《あかい花》は病んでいる時期に書かれ、自分の精神病院での体験をもとにしているという。感受性の強さと正義感の強さのせめぎ合い故に自らが壊れていく苦悩を感じた。


2021.7.22読了


岩波文庫

1937915日初版発行

1978101034


# #読書 #文学 #文庫 #ガルシン #あかい花






武者小路実篤「友情」

2021-07-21 11:09:00 | 

再読のための覚え書き


友情

武者小路実篤(1885-1976


脚本家の野島は、友人の妹、杉子に熱愛する。野島は、親友である作家の大宮に気持ちを打ち明け、大宮は野島を鼓舞するのだが….…


・・・・・・・・・・・・


武者小路実篤の、あの独特なほのぼのとしたタッチの絵画の印象から、著作を読むのはなんとなく敬遠していた。


が、友情と恋愛をめぐる相剋が痛いまでに伝わってきておもしろかった。若い頃に読んでいたら打ちのめされたかも。


2021.7.20読了


岩波文庫

昭和775日初版発行

昭和4672048



# #読書 #文学 #文庫 #武者小路実篤 #友情






野上弥生子「海神丸」

2021-07-18 09:17:00 | 

再読のための覚え書き


海神丸

野上弥生子(1885-1985


海神丸は、正月前にひと稼ぎしようと、1225日に東九州の港を出帆。乗員は4人。途中で嵐に会い、帆を失って遭難、太平洋を漂流する。


極限状態の中、僅かな食糧を巡って諍いが起き、激しい飢えのため、ひとりを殺めて人肉を食おうと決意するのだった……


・・・・・・・・・・・・


実話をもとに書かれた小説。嵐や殺害の描写もさることながら、船員の崩壊してゆく思考をなぞるのが怖かった。



2021.7.17読了


岩波文庫

1929110日初版発行

197622022



# #読書 #文学 #文庫 #野上弥生子 #海神丸