再読のための覚え書き
岸うつ波
壺井栄(1899-1967)
戦争未亡人のなぎさは、再婚した夫と1年暮らした東京から、郷里の小豆島へと帰ってゆく。
夫は名の知れた作家で、三人の連れ子がいたが、家の中になぎさの居場所はなかったのだ。
小豆島では、かつて嫁ぎ先で苦労を重ねた老母が、独りで暮らしていた。
なぎさの目には古い女として映っていたはずの母の中に、今は新しさを発見するのだった。
「なにをくよくよすることがある。意地でも泣いたりしとれるかい。突きとばされて転いだら、ついでにひとりで起きあがって歩くとこを見せてやらにゃいかん。生きるというのはそんなもんやで。」
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壺井栄の妹がプロレタリア作家の徳永直のもとに嫁ぎ、2ヶ月で離縁されたことへの憤りを持って書かれた小説だが、それはともかく、封建社会の中で痛めつけられながらも自分の人生を見つけようとする女性たちの喜怒哀楽が読み手にひしひしと伝わる作品だった。
2022.3.27読了
岸うつ波
新潮文庫
昭和31年7月30日初版発行
昭和34年11月30日7刷
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