有田芳生の『酔醒漫録』

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消費増税法案に反対票を投じることを再び表明する

2012-08-08 15:39:14 | 参議院

 参議院本会議で消費増税法案が採決されるなら反対票(青票)を投じることを再び表明する。
 第1に理論的問題がある。高齢社会の日本モデルを構築するために税制を改革することは当然の道である。しかしデフレ下に消費税増税を行っても税収は増えない。消費税が5パーセントに上がったときも、内需は落ち込み、法人税や所得税も減少したため、消費増税分が相殺されてしまった。現在のように消費が冷え込む状況が続くなかで増税すれば、さらに経済は停滞するだろう。いま消費増税することは生活=人間破壊の道である。「人間破壊」とは文学的修辞ではない。消費税が3%から5%にあがった97年度には消費税滞納額は前年度より25%、98年度には34%も増加した。職業別の増加率は自営業者が最高で43%である。自営業者の自殺原因でいちばん多いのは「資金繰りに困って」だ。ちなみに自殺者が年間3万人を超えたのは、1998年が最初である。まさに生命を守るためにも消費増税を許してはならない。経済学者のレスター・サローもこう分析している。物価が持続的に下落するデフレ状態の日本で消費税増税が議論されていることは「クレージーだ。消費が減るだけで、不況を永遠に引きずることになる」(朝日新聞、2010年6月25日)。消費増税はたとえば地方税化することをふくめた抜本改革として提起し、国民がイメージできる社会福祉の具体的見取り図をまず明らかにしなければならない。ところが民主、自民、公明の「3党合意」は玉虫色の解釈をそれぞれが行い、問題となった「附則第18条2項」では、文字通り増税分を公共事業に回せることを謳っている。社会福祉を充実させるための消費増税だとスッキリ言い切ることさえできないのだ。「さっさと不況を終わらせろ」というノーベル経済学賞のポール・クルーグマンも、いま増税をやるべきではないと強調している。国際的に経済理論を見渡しても、日本政府のようにデフレ下で増税路線を取るのは少数派であり、異常なのである。

 第2に「現場感覚」である。有権者や参議院選挙で私に投票してくれた38万3834人の支持者を裏切ることはできない。衆議院選挙や参議院選挙を闘った板橋区(東京11区)を歩き、商店街で話を聞けば「上げなければ仕方ないね」の声もまれに聞こえるが、それは「財政が大変だから」という諦めのため息なのだ。しかしこのような現実主義的意見は少数で、反対意見が圧倒的だ。渋谷や板橋でミニ集会を開いたときには、消費増税に賛成する意見は1人だけだった。札幌、福岡、大阪などで聞く意見も同様だ。日々の暮らしのなかからの切実な思いを政治に反映するのが国会議員の役割である。原理的にいえば政党とは国民の利益を実現するために行動する組織だ。党のために党があるのではない。私の理解と有権者(支持者)の意志が一致した以上はためらうことなく反対を表明する。そうしなければ有権者への裏切りである。執行部は「一般の法案とは違う」から賛成せよと言う。しかし「この国のかたち」にかかわる法案だからこそ、賛成するわけにはいかない。私には一つの原則がある。党の方針が現実と齟齬(そご)をきたしていると判断したときにどうするか。生活の香り漂う現実を選択する。なぜなら灰色の理論よりも緑豊かな世界にこそ人間の真実があるからだ。
                      (2012年8月8日)